「ビタミンD」熟考

2024/03/31 16:30:00 | お勉強 | コメント:0件

一般社団法人ワクチン問題研究会という団体が、

2024年3月28日、厚生労働省にて「新型コロナワクチン接種後症候群における筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の症状改善に必要な療養指導に関する記者会見」を行いました。

この団体の活動に対して私は一定の距離を置きつつ静かに眺めているというスタンスを以前当ブログで表明しましたが、

今回の記者会見の内容は、コロナワクチンの被害者のみならず、コロナ後遺症(LONG COVID)と呼ばれる状態の人達にとって福音と感じられるものだったかもしれません。

私なりに要点をまとめると、『コロナワクチン後遺症の患者さんの間にかなり多い割合(3-6割程度)で

ME/CFS(Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome:通称、慢性疲労症候群」という病気の診断基準に合致する人がいると、

そしてそういう人達に対して血液検査でビタミンDを測定すると、

ほとんどの人でビタミンD欠乏の状態にあり、それらの人達にビタミンDを補充する療養指導やビタミンDの薬の処方を行ったところ、

およろ6割の患者さんで症状の改善が認められた』
という内容だったと思います。 こう聞くと「なるほど、ビタミンDの欠乏が原因だったのか」などとビタミンDの存在に注目が集まってしまうと思うのですが、

私に言わせると、それもまた「病原体病因論」に偏り過ぎた発想に思えます。

誤解してほしくないのは、私はこの発表が良くないと言いたいわけではありません。むしろ考えるきっかけをもらい感謝さえしています。

ただ、この発表を聞いて「ビタミンDだけに原因を求める」とか「自分の体調不良は一体どの栄養素が欠乏しているせいで起こっているのだろうか」などと思考を狭めて考え続けてしまう罠があることには、注意すべきだと考えています。

病気の原因は何だろう」という色眼鏡で現象を眺めていると、どうしてもそういう思考になってしまうと思うのですが、


そんなビタミンDですが、教科書的に書かれている作用は「カルシウムとリンの恒常性の維持」であって、

医療現場では骨粗鬆症の治療薬として使われるビタミン剤というイメージが強いですが、

確かにコロナ禍初期にもコロナの感染予防にも有効だと言われていたりとか、

それ以外にもビタミンDにはがんを予防する効果もあるという報告も数多く認められています

そこで、「なぜビタミンDはこんなにも多様な影響をもたらすのだろうか」という角度から私は考えてみたいと思います。



まずビタミンDという栄養素は、大きく2つの点で他のビタミンと比べて特殊な印象を受けます。

①日光を浴びて自分(生体)で合成できる
②ステロイド骨格を持っている


他のビタミンは基本的に食物から摂る必要があるとされているのですが、

このビタミンだけは自分で作ることができるということで、前々から軽い違和感を感じていました。

そんなことができるのであれば、「なぜ他のビタミンでもそのしくみを用意しなかったのか」と思ってしまいます。

「そういうものだから仕方がない」と言ってしまえばそれまでですが、

なぜ、ビタミンDだけにそんな盤石なしくみが準備されているのでしょうか。

単なるビタミンの一種として理解すると、この物質の本質を見誤ってしまうかもしれません。

ビタミンDは別名を「カルシフェロール」と言うそうですが、

日光を浴びることでどうやってビタミンDが合成されるのかというメカニズムを確認しますと、

皮膚の細胞にある7-デヒドロコレステロールという物質が紫外線にあたることで、光分解を受けて「コレカルシフェロール」という形に変化します。

「コレカルシフェロール」の材料である「7-デヒドロコレステロール」という物質は、「コレステロール」という名前が入っていることからも想像できますが、動物の脂肪に由来する物質です。

ちなみに植物油由来の「エルゴステロール」という物質も紫外線に当たることで、「エルゴカルシフェロール」という形に変化します。

いずれも「カルシフェロール」の名がついているので、ビタミンDの同族体であるわけですが、

動物性脂肪由来の「コレカルシフェロール」は通称を「ビタミンD3」と、植物性脂肪由来の「エルゴカルシフェロール」は通称を「ビタミンD2」と呼ぶことで区別されています(ちなみにビタミンD1はビタミンD2を主成分とする混合物であることが判明し、現在は欠番となっているそうです)。

そして「コレカルシフェロール(ビタミンD3)」と「エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)」の生理活性はほぼ同じです。

ただ人体最も豊富なのは、「コレカルシフェロール(ビタミンD3)」です。

そして「コレカルシフェロール」の段階では、まだ非活性型の「ビタミンD3」であり、上述の生理活性機能を発揮しません。

この「コレカルシフェロール」がここから2種類の化学変化を経て、ようやく活性型の「ビタミンD3」になります。

1つは肝臓で水酸化酵素の代謝を受けて「25-ヒドロキシコレカルシフェロール(「25-OH-D3」と省略可。25位の炭素が水酸化されたという意味)」という形へ変化します。これも活性型「ビタミンD3」の1つです。

そしてもう一つ、腎臓でもう一度水酸化酵素の代謝を受けて、「1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール(「1,25-(OH)2-D3」と省略可。1位と25位の炭素で計2回水酸化されたという意味)」という形へ変化します。これも活性型「ビタミンD3」の1つです。

つまり「ビタミンD」には「ビタミンD2」と「ビタミンD3」とがあって、

人体でメインなのは「ビタミンD3」の方で、日光によって合成されるのは非活性型の「ビタミンD3」までで、

そこから肝臓と腎臓の働きによって「25-OH-D3」と「1,25-(OH)2-D3」の2つの活性型となり、ようやく様々な生理機能を発揮する
ということです。

ちなみに最後の活性型の「1,25-(OH)2-D3」は「カルシトリオール」という名前もついています。

ここまでの流れを図で説明すると以下のようになります。

ビタミンDの代謝



さて、ここまでの学びで私が大事だと思ったことを強調します。

メインの「ビタミンD」は動物性脂肪を材料にして作られる「コレカルシフェロール(ビタミンD3)」であり、皮膚で日光を浴びて合成されるのも「コレカルシフェロール(ビタミンD3)」です。

つまり、人体のビタミンDのしくみの中で動物性脂肪は、植物性脂肪よりも重要な役割を果たしているということです。

そして、もう一つ大事なことに気づきました。

コレカルシフェロール(ビタミンD3)」の材料は「コレステロール」ってことになるのでしょうか。

よく当ブログでは「コレステロール」の重要性について紹介しています。

その理由の一つに「コレステロール」は色々な人体の重要物質の材料になっているということがあります。

約37兆個あるとされる細胞膜をはじめ、ストレスに対抗するための「ステロイドホルモン」、性別の特徴に影響を与える「性ホルモン」、脂肪の消化・吸収を助ける「胆汁酸」、神経の伝達速度を高める「ミエリン」、

これらすべて「コレステロール」が材料で作られているので、「コレステロール」は決して悪いものではないという話をよくします。

では「ビタミンD」もそのうちの1つになるのかと言われると、厳密に言えばそうではないようです。

というのも皮膚にある「ビタミンD3」の材料の「7-デヒドロコレステロール」は、「コレステロール」の前駆物質だからです。

ただ理屈の上ではそうなのですが、この「ビタミンD」もこの流れに入れていいんじゃないかと個人的には考えています。

なぜ私がそう思うのか、今回私が参考にした栄養学の辞典より参考になる記載を抜粋してみます。

栄養学と食事療法大辞典

栄養学と食事療法大事典 単行本 – 2016/4/2
L・キャスリーン・マハン (著), シルヴィア・エスコット‐スタンプ (著), ジャニス・L・レイモンド (著), 香川 靖雄 (監修), 木村 修一 (監修), 鈴木 志保子 (監修), 渡邊 昌 (監修), 溝口 徹 (監修), 桑田 有 (監修), 高橋 由美子 (翻訳), 城内 良江 (翻訳), 藤田 真樹子 (翻訳), 川島 由紀子 (翻訳)


(以下、p62-67より一部抜粋)

・カルシトリオール(1,25-(OH)2-D3)は主にステロイドホルモンに似た機能を示す。その主要な作用に細胞膜受容体と核のビタミンD受容体(vitamin D receptor [VDR])タンパク質との相互作用があり、さまざまな組織の遺伝子転写に影響を及ぼす。
・ビタミンDは50種類以上の遺伝子を制御することが明らかにされている(Omdahl et al. 2002)。
・カルシトリオールは、皮膚、筋肉、膵臓、神経、上皮小体、免疫系における細胞の分化、増殖、成長に重要な役割を果たす。

(抜粋、ここまで)



つまり「ビタミンD」の多彩な影響力は、まるでステロイドのようなんです。

「ステロイドホルモン」はストレスに対抗するための重要物質である一方で、その材料は「コレステロール」です。

そして「ステロイドホルモン」には諸刃の剣的な側面があり、薬としては非常に強力な抗炎症作用を始め多彩な改善効果がある反面、長期に大量に使えば使うほど複雑な副作用が現れてくることでもよく知られています。

だから「ビタミンD」は大きく見れば「ステロイド」を中心とした人体の大きなストレス適応システムの一部だとみなすこともできるのではないかと思うのです。

ついでに書けば、腎臓での「25-OH-D3」から「1,25-(OH)2-D3」へという活性型「ビタミンD」を進める変化を、甲状腺ホルモンが促しているという情報もみました。

甲状腺ホルモンもストレスホルモンの一種ですから、そういう意味でもビタミンDはストレス対抗システムの一部としてみることができます。


以上の仮説を踏まえた上で、冒頭のコロナワクチン後遺症の方々でビタミンDが欠乏する理由を考えてみます。

まずコロナワクチン接種そのものにより強力なストレスを受けています。ポリエチレングリコールという化学的に極めて安定な構造が注入されるので、異物除去システムが強力に駆動されます。

その上でうまく除去できればいいですが、何らかの原因で異物除去システムが収束しきれない体内環境があれば、長々と異物除去反応が続いてしまうことになります。

それが慢性持続性ストレスとして身体に働きかけられ続け、それが体調不良として反映され、さらにその体調不良自体に不安や恐怖を感じて精神的な要素もストレスとして加わるようになります。

もっと言えば、医者からワクチンとの関連を認めてもらえなかったり、精神的な問題ではないかとあらぬ疑いをかけられたりすることもストレスを増幅させられているかもしれません。

そのように大きなストレスが持続し続けることによって、ストレス対抗システムの一部としてのビタミンD3産生システムがオーバーヒートしてしまい、

結果としてビタミンDが欠乏してしまうということが起こってしまうのではないかと思うのです。

そう考えると、コロナワクチン後遺症だけでなく、コロナ後遺症(LONG COVID)の患者さんでもビタミンD欠乏が観察されることにも説明がつきますし、

私が以前診療した慢性疲労症候群の患者さんの場合は、向精神薬の大量使用がありました。

これに関してはストレスがあったから向精神薬を大量使用しているのか、それとも向精神薬を大量に服用していること自体が人体に対してストレスになっているのか、「卵が先か、ニワトリが先か」のようなところもありますが、

いずれにしてもその発生にストレスが関与しているという説明で矛盾はないのではないかと思います。


もっと言えば、冒頭の会見によれば、ビタミンDの補充療法により6割の患者で症状が改善したという話も、

逆に言えば、4割の患者でビタミンDを補充しても症状は改善しなかったとも言えるわけですが、

それもビタミンD産生がストレス適応システムの一部にすぎないという仮定に立てば説明可能であるように思います。


私は、この知見を「ビタミンD」というイチ栄養素の問題だと解釈してしまうと、

人体で起こっている現象の理解を矮小化し、本質を見失ってしまいやしないかと危惧しています。

というのも「ビタミンD欠乏症」と考えれば、その対策は「ビタミンD補充」という発想にしかならないでしょうし、

もっと言えば、その原因が「日光に当たらないからだ」とか、「ビタミンDの摂取が不足しているからだ」という思考ばかりに狭まってしまうとも思うのです。

私はビタミンDが不足するのは必ずしもビタミンDの摂取不足だけが原因ではないと考えます。

その背景に栄養素が過剰に消費されてしまう糖代謝過剰駆動状態の関与を考える必要があると思います。

具体的には、私がいつも主張しているように、「糖質過剰摂取」「ストレス過多」の背景があれば、

たとえビタミンDを積極的に補充していても、それ以上にビタミンDが消費されたり、排泄されてしまったりすることが起こりえますし、

もっと言えば、やみくもにビタミンDの補充が繰り返されてしまい、本質的な原因たりうる糖質やストレスの存在がおきざりにされてしまうリスクもあると思います。

「ビタミンD」の補充は確かに「ビタミンD欠乏状態」に対する一つの重要なアプローチではあると思いますし、

それが多彩な生理活性作用をもたらすということもその通りです。

でもその多彩さは「ステロイド薬」に通じるものであって、諸刃の剣的な要素があることに注意が必要ですし、

あくまでも対症療法であって、「ビタミンD欠乏」が問題の根本であるかのように解釈されることには疑義を呈しておきたいと思います。

なお今回「ビタミンD」について調べてみて、わかったことは他にもありますが、

長くなるのでまたの機会に続けようと思います。


たがしゅう
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