麻疹の感染力の強さはどうやって計算されたか

2024/03/28 16:30:00 | お勉強 | コメント:2件

前回記事の小林製薬の紅麹サプリについての私の見解をまとめますと、

報道を受けて「紅麹サプリが腎疾患を引き起こしている」という前提を多くの人が盲目的に信じてしまうが故に、

紅麹サプリの中の何が腎疾患を引き起こしているのか」とか、「なぜそんな質の低い商品を開発するに至ったのか」などと、「小林製薬が悪」という方向性でしか考えられなくなっているという思考の偏りの問題を指摘しました。

特にこれに対して冷静に科学的見解を述べるべき医療者の多くも、その偏った流れに乗ってしまっていることへの絶望感を表現しました。

この前提を疑えないことによる医療者の思考の偏りは、コロナワクチンでも大きく露呈されてしまったと思いますが、

他にも至るところで観察することができます。最近話題にした唐突なはしか流行報道もそうです。

私の知る限り、コロナワクチンに対する懐疑派は、この問題を指摘する様々な人達の活躍によって少ないながらも増えてきた印象を持っていますが、

そういう人であっても「はしか(麻疹)のワクチンは有効なので打ちましょう」という見解の人がほとんどだというのが実情だと思います。

正直、私もコロナ騒動より前は、はしかのワクチンまでを疑ってはおりませんでした。その意味では私もまんまと乗せられてしまっていたと思います。

しかしコロナ騒動を通じて、ワクチンそのものを根本的に疑う必要性に駆られました。その疑う視点を持たない限り決して見えてこないものがあると思います。

はしかにおいて私がまず疑うべきだと考えたのは、「はしかが感染力が強い」という前提

そしてその根拠となっている「麻疹の基本再生産数(R0)が12〜18」という数字です。 「基本再生産数」という言葉をおさらいしておくと、1人の感染者が周囲へ平均で何人に感染させる潜在可能性を持っているか」というウイルス側の感染力の強さを表す数字です。

記号では「R0と表されます。Reproduction(再生産)の基本となる数(zero)という意味なのではないかと想像します。

例えばインフルエンザの基本再生産数は1〜3、コロナ(COVID-19)では2〜3.5くらいだと言われていますが、

そんな中で麻疹の基本再生産数は先述のように12〜18とずば抜けて高いわけです。

「でもコロナより広まっていないじゃないか」という疑問に対して現代医学は麻疹ワクチンの有効性で応えます。

要するに「麻疹の感染力は極めて強いけど、みんなが有効性の高い麻疹ワクチンを打っているおかげで感染拡大せずに済んでいます(だからみんな麻疹ワクチンを打ちましょう)」というわけです。

でも考えてみれば、そもそもその基本再生産数ってどうやって計算したものなのかが気になります。

だって、「周囲へ平均何人感染させるか」っていったって、その場に何人いるのか、どれくらいの距離が離れているのか、その場にいた人の平均年齢がどうかとか、病気を持っていた人はどの程度いるのか、など条件によっていくらでも数字が変わりそうな気がします。

その変動を踏まえて、12〜18という幅があるのかもしれないけれど、それにしてもどういう条件が設定されたのかによって、現実世界で12〜18という数字を当てはめていいかどうかの妥当性が変わってくるわけです。

場合によっては現実世界ではあり得ないほど極端な状況、あるいは動物実験などの異なる種でのデータだったりしたら、そもそも12〜18という数字で考えたらミスリーディングになってしまう可能性だってあります。

どれだけ調べても「なぜ麻疹の感染力が強いのか」を説明する際に、いつも出てくるのがこのR0=12〜18という数字です。

例えば麻疹ウイルスの構造に秘密があるのかを調べてみても、まず大きさで言えば麻疹ウイルスの大きさは直径 100~250nm程度です。

インフルエンザウイルスやコロナウイルスと大差ない大きさなので、まず大きさの点で感染力の差がつくことは説明できません。

もっと言えば、麻疹と同じ「空気感染」を示す病原体として結核菌がありますが、結核菌の大きさは細長いですがだいたい1000nm(1μm)くらいです。少なくとも病原体が空気感染するかどうかは大きさでは全く説明がつきません。

では結合するタンパク質に秘密があるのかと言えば、麻疹のエンベロープ(外殻)表面にあって標的細胞に付着するための抗原はHタンパク質(Hemagglutinin)というものです。コロナで言うところのスパイクタンパクの部分ですね。

しかしこのHタンパク質、インフルエンザウイルスとも共通しています。同じなのになぜ感染力が全く違うのか、やはり説明がつきません。

麻疹ウイルスの場合はFタンパク質(fusion)というのもあって膜融合という現象が促されるとも言われていますが、

インフルエンザウイルスでも膜融合という現象は起こるとされていますから、やはり麻疹の感染力の強さの理由としては根拠不十分です。

なので、この麻疹の基本再生産数の数字がどうやって計算されたのかを確認することは重要です。恥ずかしながら、私は今回それを初めて確認してみることにしました。

すると、大変驚くべきことがわかりました。皆さん、ぜひ驚く準備をしてこの先を読み進めて下さい。


ひとまず「R0=12〜18」の根拠となる医学論文を調べてみると、次の論文が出てきました。

FM Guerra, et al. The basic reproduction number (R0) of measles: a systematic review. Lancet Infect Dis. 2017 Dec;17(12):e420-e428. doi: 10.1016/S1473-3099(17)30307-9. Epub 2017 Jul 27.

この論文によれば、麻疹のR0について調べた論文は一つではなく、世界各国で様々な研究がなされているとのことで、

中でも信頼度の高い論文を18編集めてきて、それぞれの研究でのR0を一覧に示した表が掲載されていました。それがこちらです。

麻疹感染力R0が12〜18の根拠

画面が小さくて見づらいかもしれませんが、

ここではそれぞれの研究で、まずいつの年代の人達を対象にしたか、ワクチン導入前か後か、その研究が行われた場所、データの種類(Type of Data)、そして注目のR0の計算方法、最後に結果として出てきたR0がそれぞれでまとめて書かれてした。

パッと見て気づくのは、R0のばらつきが相当大きいということです。

中にはR0=1.43-770.38までばらついているものもあります。「これは同じウイルスの特徴として考えて良いんですか?」と質問したくなるような大きなばらつきです。

あとはワクチン導入前とワクチン導入後とでR0に大差がないようにも見えます。というかむしろ若干ワクチン導入後の方が数字が大きく見えるところもあります。

もしも麻疹ワクチンが有効なのであれば、これはどう説明するんだという気持ちにもなりますが、今回の本筋とはズレるのでここでは一旦おいておきます。

ともあれ、この論文で著者はおそらく「多少のばらつきはあれど、麻疹のR0はだいたい12〜18でいいですよね」と言いたいんだと思います。

さて18個の論文におけるR0の計算方法をざっと確認するのですが、

ここでの文章を翻訳して読んでみてもいまいちわかりにくいのです。

例えばある論文では「最大尤度を用いてリード・フロスト確率モデルを用いて、感受性が高い人々から時間tからt+1の相田にいつ感染するようになるかを決定」などと書かれています。全く意味がわかりません。

また別の論文では、「R0=β×S0/γ」と表現され、β=感染率、S0=流行開始時の感受性者(未感染者)、γ=除去率と書かれています。

S0はわかるにしても、βとγがいまいちわかりませんし、それがどうやって計算されたかもこれだけではわかりません。

原著を読めばわかるのかもしれませんが、難しい数式がたくさん出てくることが想定され、私の手に負えそうにありません。

一方でデータの種類(Type of Data)という箇所を見てみますと、大きく「サーベイランス(監視)」と「血清学」の2つに分かれています。

「サーベイランス」はデータを観察したり理論上の計算値などで、「血清学」は「血液検査で確認される抗体」を調べたものと思われます(抗体があること=感染防止効果が高いを私は安易に認めませんが)。

中に「アウトブレイク」というパターンもありましたが、これは麻疹の感染拡大が起こった地域・年代のデータが使われているということでしょう。

普通に考えれば「アウトブレイク」でR0は大きくなりそうですが、一覧表を見る限りでは必ずしもそうでもないようです。この辺も地味に謎です。

そんな中、一番私が注目したのは、この中で一番古い論文、つまり誰が一番最初にR0=12〜18と言い出したのか、そしてどうやって計算したのか、です。

それが赤い四角で囲った、Anderson氏らの1982年にScienceという超有名医学雑誌に掲載された論文です。

まず研究対象となった時期は、1912年-1979年という非常に長い期間となっています。

長すぎてワクチン導入前か後かの項目は「前と後の両方」と表示されています。一人の研究者の人生分くらいの長さなので、一体何をどうやって調べているのかが気になります。

場所はイギリスのイングランド地方とウェールズ地方、そして北アメリカとなっています。

データの種類(Type of Data)をみると、「サーベイランス」「血清学」「アウトブレイク」のいずれでもなく、「不明(Unknown)」となっています。どういうことでしょうか。

注目のR0ですが、次のように書かれています。

R0=N/Nt、ここでNは宿主集団の大きさまたは密度、Ntはγ/β(免疫人口率を感染係数で割ったもの)、あるいはR0=1+L/A、ここでLは平均寿命、Aは平均感染年齢である; 式15(1956年と1970年の推定に使用)

(※該当箇所をDeepLにて翻訳)



「R0=N/Nt」という箇所については、先ほどの「R0=β×S0/γ」と同様にそれぞれの意味が分かりにくく、どうやって検出されたのかがこれだけでは不明ですが、

随分簡単な式で表現されているように見えます。少なくとも宿主の背景や条件が細かく考慮されているようには見えません。

ですがその問題は置いておくにしても、問題は「R0=1+L/A」の方です。これは何ですか?

平均寿命を麻疹感染年齢で割った数字に1を足して、何でR0になると言えるのでしょうか。

これって例えば当時の平均寿命が60歳くらいで、麻疹にかかる平均年齢が5歳くらいだとして、

「60/5=12」で、その12に1を足して、「13」という数字がR0だって言っているってことですよね。どういう理屈ですか、全く理解不能です。

1912年-1979年という非常に長い期間を扱えているのも、それぞれの年代の平均年齢と麻疹感染の平均年齢から単純計算しただけなのでしょうか

あまりにも納得がいかないので、この論文の原著を当たってみることにしました。

RM Anderson, et al. Directly transmitted infections diseases: control by vaccination. Science. 1982 Feb 26;215(4536):1053-60. doi: 10.1126/science.7063839.

問題の「R0=1+L/A」の式についての箇所を読むとこう書かれています。

(以下、上記論文より一部引用)

Dietz(18, 19)は、Roが関係式から推定できることを示した

「R0=1+L/A」(式9)

ここで、Lは人間の平均寿命(L = l/μ)、Aは個体が感染を獲得する平均年齢である[A = 1/λ、ここでλは触媒モデル(26)での「感染力」である; 式1〜4の具体的なケースの場合、λ=βγ]。Dietzによる式9の導出は、すべての速度パラメーター(r、y、uなど)が宿主の年齢に依存しない定数であると仮定している。Roのより一般的な式が導出され、以下で議論されるが、速度過程が年齢に依存する場合でも、式9は通常有用な近似式であることがわかる。

感染時の平均年齢Aは、各年齢層における感染経験者の割合(血清学的に陽性の割合)を示すデータから求めることができる(25)。

(引用、ここまで)



…これ以上、踏み込むと袋小路に入りそうなので、一旦ここまでにしますが、納得できますか?

まるで寿命は麻疹によってのみ規定されるかのような前提です。そんな前提で計算したら、麻疹の影響力は強く表現されてしまうでしょう。

平均寿命を計算する母集団と、麻疹感染平均年齢を計算する母集団だってことなるでしょう。

当時は麻疹は誰もがかかる感染症だったとされていたことを考慮するにしても、あまりにも様々な要素を無視しすぎの計算式です。

この計算で12〜18という数字が出たから、「麻疹は感染力は強い」って言われたらたまったものではありません。

しかし実際にはこの「R0=12〜18」という数字のイメージが一人歩きをしてしまっているように思います。

他の研究もしっかり読み込んでみなければわかりませんが、どの研究でもまず論文の導入部分(Introdction)で「R0=12〜18」の話が必ずと言っていいほど出てきます。

その前提で研究していたら、「麻疹は感染力が強い」という発想でしかものを考えることができないでしょう。研究結果も影響されてしかるべきです。

私の実感としても「麻疹は感染力が強い」という考えは医療者の間で常識レベルで普及しています。

しかし実際には当時の麻疹は麻疹ウイルスの感染力が強いから広がっていたのではなくて、

栄養状態・衛生環境が悪い中で特にこどもに発生しやすい宿主の症状出現パターンを見ていただけで、

時代とともに栄養状態・衛生環境が改善されていき、麻疹ウイルスや麻疹ワクチンとは無関係にそのようなパターンが減ってきたのかもしれません。

つまり「麻疹は感染力が強い」ではない可能性があるということです。

「麻疹は感染力が強い」という色眼鏡で世界を見ていた研究者の思い込みによって算出された根拠の乏しい数字を、

私たちは盲目的に信じ込んでしまっていたのかもしれません。

間違った前提を盲信し、限られた選択肢の中だけで考えるという意味で、小林製薬の紅麹問題と構造は同じだと私は思います。

「麻疹は感染力が強い」「麻疹ワクチンは極めて有効」という前提に立つと、

矛盾する事実はすでに数多く観察されてきています。

抵抗は強いかもしれませんが、ここの常識も疑ってみませんか。

あえて言えば、今は医学を抜本的に整える絶好のチャンスかもしれません。


たがしゅう
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コメント

面白い

2024/03/30(土) 20:34:09 | URL | 早坂 #aIcUnOeo
毎回先生の思考は楽しい。

いつも楽しく読ませてもらっています。「へーなるほど〜」と頻繁にでてきます。

麻疹の感染力云々を疑うのはプロであればあるほど、「常識」が邪魔をするのかもしれませんね。

これから楽しみに読ませてもらいます。応援してますね!

Re: 面白い

2024/03/31(日) 08:34:30 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
早坂 さん

 コメント頂き有難うございます。
 励みになります。

 糖質制限でも、湿潤療法でも、がん放置でも、コロナ騒動でも、
 頑なに常識を守ろうとするのは、いつも「専門家」です。
 そして「専門家」を盲信する人々に世の中は突き動かされる構造となっていると感じます。

 ただ「常識」を疑うのではなく、「常識」を疑うための事実や論理が重要なので、
 伝え方を考えるのにいつも苦労しますが、応援のコメントを頂けると頑張れます。
 今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

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