私が「がんは怖い」という認識を変えてきた流れ

2024/01/18 10:50:00 | がんに関すること | コメント:2件

普段病院に全く縁のない人と雑談をしていた際に、

不意に「もしも自分ががんだと診断されたらどう思うか」という話題に及びました。

その人は「(がんは)怖いって思うだろうね」と言っていました。

何気ない日常のワンシーンですが、ここに私はすごく恐ろしさを感じてしまうのです。

つまりこれは「がんという病気は怖い病気である」というイメージの普及がかなり広範囲に行き渡っているということを意味しています。

なぜその人は病院に一切関わっていないのに、「がんは怖い」と思っているのでしょうか。

テレビで「がんは生涯のうちに2人に1人がかかる病気」とか「早期発見・早期治療が大切!」などと言われているのを見たからかもしれません。

あるいは教育課程のどこかで、がんについて学ぶ場面があったのかもしれません。

あるいは家族や友人にがんにかかった人がいて、それがどれだけ大変な病気(というか治療)であるかを聞いていたのかもしれません。

いずれにしても、世の中は「がんは怖い」という言説に広く満たされています。 一方で私は「がんは自分自身の一部である」「がんは味方である」「がんは身体からのメッセージを伝えてくれている」などの言説を確信的に採用しています。

そんなことをうかつに言えば、ヤブ医者とか、デマを撒き散らすなとか、陰謀論者だとか、色々な人達(特に医療者)からレッテルを貼られてしまう傾向があります。

私はまだ医者で、基礎的な医学知識を持ち合わせていますので、まだ反論はできます(実際にその場で反論するかどうかは別として)が、

表面的に私と同じ意見を採用した非医療者が同じようなことを言ってしまえば、おそらくもっともらしいことを言われて論破されたり、言論の袋叩きにあってしまうかもしれません。

それなのに、これほどまでに「がんは怖い」という言説に満たされた世の中で、どうして私は「がんは自分自身だ」と思うことができているのでしょうか。


きっかけはいつもお話ししている「糖質制限食」です。

私の人生はここから大きく変わりました。「あれ?何だか医療の言っていることはおかしいぞ」ということに気づき始めたのです。

というのも、当初は糖尿病の画期的な治療法とか、効率的なダイエット法だというふれこみで学び、実践し始めた糖質制限食でしたが、

実際にやってみると、それだけに留まらず、精神面にも良い影響をもたらすことを自分の身体で体験することができました。

さらに学びを深めていくと、糖尿病や肥満だけではなく、高血圧も脂質異常も、あるいはアトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー性疾患も、逆流性食道炎も潰瘍性大腸炎も、

実に幅広い範囲で病気の状態を改善していく食事療法であることが、患者の実体験とともにどんどんわかってきました。

いずれも医学の教科書には一言も書かれていないことです。それどころか医療者側は専門家レベルで否定してくるのです。「糖質制限はすすめられない」と。

私からすると意味がわからないわけです。なんであんなにすごい糖質制限食をそんなに簡単に否定するのか。本当に専門家の人達は糖質制限食のことをわかっているのかと。

ともあれ、一つや二つの病気だけではなく、実に幅広い範囲で病気を改善していく事実から、糖質制限食が病気の根源的な部分にアプローチしているイメージをつかんでいくことができました。

その幅広い病気の中の一つにがんもあったわけです。そしてがんに至っては、ミトコンドリアが破損し、糖代謝しか使えない状態(ワールブルグ効果)であるという生理学的事実も、糖質制限の有効性を裏付けていました。

なぜがんにも糖質制限食が効くのかを考え始めた当初は、私も「がんは悪者」の前提に立って、「糖質ががんのエサになるから」という「糖質悪玉説」の視点でがんを捉えていました。

しかし一方で糖質はエネルギー源でもあり、たとえ口からの摂取をゼロにしても、身体が肝臓や腎臓、筋肉と連携して行う糖新生などの仕組みによって自分から産生するという仕組みが存在することを考えると、

必ずしも「糖質=悪玉」とは言い切れない事実もあることに考えが及ぶようになってきました。

この矛盾を解消するように、次第に私の考えは「主体性」に注目するようになります。

つまり病気は何か悪いものによって引き起こされており、患者はその被害者である、というようなイメージではなく、

病気とは自分の置かれている環境に身体が適応しようとしている結果の表現型であり、患者とはその適応の仕方が過剰になっている当事者である、というイメージに切り替わっていったのです。

がんで言えば、がん細胞という悪いものが遺伝子が傷つけられることでどこからともなく現れて、そこら中の糖質を食い潰しているというのではなく、

糖質の摂取が過剰になっていることで、自分の細胞がその糖質過剰の環境に何とか適応しようと遺伝子を改変し、過剰になっている糖を処理することができるような形へと変形しているという見方に変わったということです。

こう理解すれば、「糖=エネルギー源」「がん細胞=糖代謝過剰駆動状態」「糖質制限ががんの治療になる」ということが全て矛盾しないと思えたわけです。

そしてこの捉え方は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、逆流性食道炎、潰瘍性大腸炎、その他もろもろ、ほとんど全ての病気に当てはまるということもわかってきました。

ほぼ全ての病気は過剰適応か消耗疲弊の組み合わせで表現できるという発想の誕生です。表せないのは骨折や創傷などの外傷関係と、先天性疾患くらいです(それらさえ本質的にはこの枠組みで理解できない訳でも実はないのですが)。

ここまでわかれば、「がんは自分自身である」という発想に行き着くと思いますし、

手術、抗がん剤、放射線療法のように自分自身を傷つける治療アプローチには反対の立場を取るようになります。

悪いのはがんそのものではなくて、細胞をそこまで過剰適応にさせている環境の方なので、過剰適応を作る環境を見直すアプローチを優先すべきだ、つまり糖質制限食を実施すべきだという話になる訳です。

そして現代医療の視点と私の視点は前提が全く異なっているからこそ、意見が合わないのだという構造も理解できるようになります。

しばらくの間は、「なぜこれだけ良い方法が相手に伝わらないのだ」ともがいていた時代もありましたが(今ももがいているかもしれませんが)、

これもそもそもの前提が違うのだから、特に専門家とは意見が一致するはずがないと理解できましたし、

途中で、違ったままでも何とかやっていくという「対話」のアプローチと出会えたことも私の支えとなりました。


ただ、がんに関しては糖質制限だけで解決するほど甘くはありませんでした。

それを教えてくれたのは、何度かブログでも書いていますが、末期の肺がんとなり熱心に厳格な糖質制限食に取り組んでいた私の友人の存在が大きかったです。

彼の糖質制限食は少なくともはたから見る分には完璧でしたし、彼はまだ若かった。

通常の肺がんの経過からは考えられないくらい長い期間、良い状態を保つこともできていました。

けれど結局、糖質制限食だけで肺がんを抑え込むことはできず、残念ながら次の世界へと旅立ってしまいました。

そのことが糖質制限食は確かに大事だけれど、それだけにとらわれてはいけないというメッセージを私に伝えてくれていたように感じています。

思考を深めていく中で行き着いたのがストレスの存在でした。

そして「がんは怖い」という認識そのものが広く社会に普及していることそのものが、

多くの人にとって巨大なストレスとなってしまう社会構造となっていることに気づいた
のです。

これに気づいた時には愕然としました。是正すべき対象がとてつもなく大きなものだったわけですから。

近藤誠先生が人生をかけて広めようとした「がん放置療法」も、

元気なうちは納得して健診を安易に受けないなどの行動をとっているけれど、

いざ自分ががんになった時には怖くなって、それまで信じていた「がん放置療法」の理論を手放し、

結局は現代医療のがんの専門家達の言いなりになってしまう人もいる、という話も聞いたことがあります。

それこそ「がんは怖い」というイメージがいかに広く、

そして根深く根づいているかということを象徴的に表している現象であるように私には思えます。


さぁ、この「病気とは病原体(病因)のせいで起こる」という言説に満たされたこの世の中で、

そうではなくて「病気とは自分自身である」という考えを広め、

その考えのもとに病気を整えていく「主体的医療」をともに実践していく仲間を増やし、

世の中の歪みを是正していくにははたしてどうすればいいか、

大袈裟に思われるかもしれませんが、

私も自分の人生をかけて取り組み続けていこうと思います。


たがしゅう
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コメント

ウイルス性の癌

2024/01/18(木) 12:09:05 | URL | JN #-
コメント失礼いたします。

たとえ糖質制限をしていても、ウィルス性の癌、つまり肝ガン、子宮頸がん、胃がんなどは阻止する事はできませんね。

江部康二先生のブログでもその事は書かれていらっしゃいました。

ウィルスの癌をたがしゅう先生が宣告された場合、その後の対応はどうされるおつもりですか?お伺いしたいです。

やはり放置されますか?

話は変わりますがJNをはじめ、一癖も二癖ももある者たちがたがしゅう先生のブログにコメントをしているのを見るにつけ、たがしゅう先生のお困りのお顔がまぶたに浮かんできます。ごめんなさいです。スルーしてください。

Re: ウイルス性の癌

2024/01/18(木) 12:37:57 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
JN さん

 ご質問頂き有難うございます。
 お気遣いまで頂いて恐縮です。

> ウィルスの癌をたがしゅう先生が宣告された場合、その後の対応はどうされるおつもりですか?お伺いしたいです。
> やはり放置されますか?


 良い質問と思いました。そこは私と江部先生の見解が分かれるところだと思っています。

 まず誤解されてしまったかもしれませんが、私は記事の中で「がん放置療法」を紹介しましたが、がんに対して私は放置するわけではありません。もし私ががんになったら何かしらの自分を整える行動をとると思います。

 また私はウイルスを「自己」と「非自己」の中間体だと位置づけています。初期状態が「自己」性が高いか、「非自己」性が高いかの若干の違いはあれど、どのウイルスであってもそのスタンスは基本的に変わりません。

 そして相手を「自己」と認識すれば、共存したり遺伝子の一部に組み込まれたりします。それが教科書的には「潜伏感染」とか「キャリア」と認識される状態です。これを一般的には嫌な状態だと思うかもしれませんが、私は自分さえ落ちついていれば何も悪さをしない状態だと捉えます。

 肝炎ウイルスのキャリア状態とか、ヒトパピローマウイルスの感染状態はこれに相当します。だからもし私にこうした状態がわかれば、がんの時と同じように自分を整える行動を起こすと思います。

 ただ肝炎ウイルスに対しては、特にC型肝炎に対しては根治的な治療法が確立されていることになっている(個人的には疑いの余地は残していますが)ので、肝臓がんに関してはできるだけの自己調整をやってみても良くならなければ、もしかしたらその段階で抗ウイルス治療を検討してみるかもしれません。

 一方で私は男性ですが、ヒトパピローマウイルス感染は全く気にしません。共存すればいいと思っていまし、そもそもウイルスでさえなくて、たまたま入ってきた外在遺伝子くらいに思っています。

 2020年4月5日(日)の本ブログ記事
 「自分のできることを精一杯やって後は万物に身を委ねる境地」
 https://tagashuu.jp/blog-entry-1735.html

 2021年12月9日(木)の本ブログ記事
 「HPVはウイルスではなく「がん遺伝子」」
 https://tagashuu.jp/blog-entry-1980.html

 もご参照下さい。

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