実体験に科学のメスを

2014/03/18 00:01:00 | 読者の方からの御投稿 | コメント:0件

やまたつ さんより「辟穀(へきこく)」について次のように教えて頂きました。

 漢方に興味をお持ちということなので、「辟穀」を紹介させていただきます。ご存じでしたら、失礼をお許し下さい。

 「辟穀」は名前の通り、穀物を避ける食事法のことで、道教の神仙術に由来する中国古代医学の食事療法です。仙人が霞を食べていたという伝説から、断食の一種として伝えられることもありますがそれは間違いと思います。

「辟穀」を現代版に直すと「スーパー糖質制限」になるので、しばしば指摘される「糖質制限には長期の観察データが存在しない」という指摘に対し、有効な反論になると考えています。

医学論文ではありませんが下記をご参照下さい
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/66829

 この文献を読んでいて、面白かったのは、定住して、穀物生産を開始し、穀物を摂取することで体調不良になる事実を中国人は既に経験していたこと。
 辟穀を実施すると、最初は糖質依存の反動が出て、体がだるくなる等の症状を経て、次第に体調が良くなるというという箇所が糖質制限による体調変化と全く同じであること。

 では、なぜそんなに効果がある療法が、現代に引き継がれなかったのか。やはり定住して戸籍を作り、土地台帳を元に、穀物生産を行うことが、国家経営において必須であったからと思います。
 現代でも糖質制限の主張が「コメは日本の主食」という命題といかに衝突しないかについて気を配る必要がある点と少し似ています。

 薬膳や漢方の文献を読んでも、米については、身体に害は無いという記述「補中益気」、「健脾和胃」等々です。個人の体質や生活環境により、米が毒にも薬にもなる存在であることについて、糖質制限の考え方が普及して、多くの人の常識になればと思います。
「辟穀」=「穀物を避ける」、まさに「糖質制限」と同様の意味ですね。

断食にしても辟穀にしても、昔から食事療法の有用性は認識されていたということでしょう。

ただし、そこに科学がないために評価は実体験頼りになります。



穀物の、ひいては糖質の実体験から得られる効果としては確かに良い事があります。

「元気が出る」「幸せな気持ちになる」などがその代表的なものです。

例えば、砂糖も漢方的には「安神作用(気持ちを落ち着かせる作用)」があり良しとされています。

ところが糖質制限の科学的な理論を学べば、それが付け焼き刃的な効果しかなく、それどころか徐々に身体をむしばんでいくものだとわかります。

漢方の作り上げてきた歴史は大切ですが、全てを鵜呑みにせず、科学的に再検証する姿勢も重要です。



糖質摂取による効果は今ならこう分析できます。

・三大栄養素のうち、直接血糖値を上昇させるのは糖質のみである。
・糖質摂取によって血糖値が上昇すると、ドーパミン、セロトニンといった神経伝達物質が放出される。
・ドーパミン、セロトニンの放出がヒトの脳に快楽を与え、これが中毒性を形成する。
・糖質摂取によって作られた快楽は、その中毒性により次の糖質を糖質を求め、そのサイクルが繰り返される
・糖質の摂取が繰り返されることで耐性が形成され、糖質の摂取が一定の値以上に達しない場合快楽が得られなくなる。
・従って糖質摂取は短期的には「快楽」をもたらすが、長期的に見ると「糖質がないと快楽が得られない苦痛」をもたらす。
・これは麻薬によって起こる現象と同様のものである。

・糖質摂取によって血糖値が上昇すると、筋肉によってインスリン非依存的にブドウ糖が取り込まれエネルギーとして消費される。
・糖質はブドウ糖に変わることで短期的には筋肉を動かすエネルギー源となる。
・一方糖質を外部から摂らなくても、人体には脂質、蛋白質を利用してブドウ糖を合成することができる。
・筋肉は安静時にはケトン体を、運動時にはブドウ糖の方を優先的に使用する。
・しかしブドウ糖がなくとも筋肉はケトン体をエネルギーとして利用することができる。
・従って糖質摂取しなくても脂質・蛋白質を摂取していれば筋肉に安定的にエネルギー源を得る事ができる。


このように実体験に科学的な考察が加わることで、

実体験の理解がより一層深まっていくと思います。


たがしゅう
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