真の意味での予防医療を実現するために

2023/10/12 10:40:00 | 糖質制限 | コメント:3件

私は病院の勤務医として働いていた頃、

自分のやっている診療はまるで「モグラ叩き」のようだ、と思っていた時期がありました。

私の医師としての専門が脳神経内科だったこともあって、一時期は脳卒中(脳梗塞+脳出血)で救急搬送される患者さんを、日々診療し続けていました。

来る日も来る日も救急車で運ばれる患者さんを診ては、脳卒中ガイドラインという標準的な治療指針に基づく定型的な治療計画を立てては治療し、

残る後遺症を最小化するためにリハビリ病院へ転院させ、そうしている間にも次々と新しい脳卒中患者さんを受け入れてまた同じように対応し続ける日々……

しばらくは考える間もなく夢中で業務をこなしていましたが、ふとこの作業が自分の医師人生を通じてずっと繰り返されるのかと思うとゾッとする瞬間がありました。

その時、自分のやっていることはまるで終わりのないモグラ叩きをやり続けているかのように思えたのです。

勿論、その診療に意味がないとは思いません。ただそれだけではあまりにも希望がないようにも感じられました。

そこで自分のやっている診療スタイルを、そもそもこのような救急事態に陥る患者さんを減らす方向へと貢献することはできないかと考え始めてみたわけです。 いわゆる予防医療の発想になりますが、その目的のためにまず手っ取り早く思いつくのは健診業務だと思います。

現代医学の中では早期発見・早期治療は予防医療の中で金科玉条の如く、スローガンのように叫ばれ続けています。

きっとそれ自体は悪い方針ではないと思います。ただ一般的な健診というものが全国に普及してもう何十年経つでしょうか、普及の割に一向に患者数が減っていかない実情を考えた時に、

何かそのための方法論自体が根本的に間違っている可能性に気づき始めました。

きっかけとなったのはご存知「糖質制限食」です。

「糖質制限食」そのものについては過去に何度も書いてきましたので、詳細は割愛しますが、

ここではこの「糖質制限食」というものが、従来の疾病予防のための健康食について常識とまるで異なるものだったと理解してもらえれば十分です。

ひょんなきっかけから私はその「糖質制限食」を実践することとなり、その劇的な改善効果を実感することになります。

正直食事を変えたくらいでこんなに変化が現れるとは思ってもいませんでした。

驚くことに、それは主に健診で対象としている生活習慣病全体を、一気に改善へと向かわせる効果であり、同時にメンタルも安定させることができるものでした。

この事実をまず自分の心と身体で文字通り身をもって経験した私は、

そこから糖質制限食について強烈に関心を惹かれて猛勉強し、この食事が理論的にも整合性がとれるものであるということに次第に確信を持つようになりました。

同時に従来医学での理論が意外と穴だらけだということにも気付かされることとなりました。そうなれば私のやるべきことはただ一つです。

この素晴らしい理論的にも実際的にも劇的な改善効果をもたらす糖質制限食を広めていくことです。

ところが非常におかしいことに、この私に劇的な改善効果をもたらした糖質制限食を、患者さんへどれだけ一生懸命伝えても、せいぜい1〜2割程度の人にしか実践してもらえません。

診察室で「わかりました」と答えられたとしても、次の診察の時には「先生、やっぱりあれは難しくてできませんでした」と軽くスルーされてしまう経験を星の数ほどしてきました。

一方で糖尿病の専門家からは理解者が出るどころか、むしろ総スカンを喰らう状況でした。

はじめはこの現実の意味がまったくわかりませんでした。手術のように一回やったら後戻りできないようなことをやれと言っているわけではないのです。

平たく言えば「とりあえず主食を抜いて、おかずを多めに食べよう」と言っているだけです。どこに難しさがあるのかについても私には全く理解できませんでした。

しかし時間が経つにつれて、だんだんわかってきたのは、そこに「常識の壁」というものがあるということです。

決して理屈のある話ではないのです。誰しも多かれ少なかれ言えることですが、とにかく今までやってきて安定していることを変えるのが嫌なのだということです。

そして専門家というのは、いわば従来の理論によって認められ続け、地位やプライドが高められてきた人なので、そこから離れるのを最も嫌う人達なのです。

そう考えれば、感染症専門家が誰一人としてワクチンの効果を疑わないのも、がんの専門家が誰一人として抗がん剤の効果を疑わないのも、合点のいく話です。


話を予防医療に戻します。「終わりのないモグラ叩きを止めるためにどうすべきか」、です。

ここまでの話を率直に受け止めれば、とりあえずみんなが糖質制限食を実践してくれれば、病気やメンタル不調の大部分は改善されると私は思っています。

厳密に言えば、体質の問題とか、食料供給の問題とか、急激にやりすぎると代謝が乱れる問題とか、細かいところで配慮すべき問題はいろいろありますが、一旦そこは脇においておくとして、

残念ながら糖質制限食を普及するには「常識の壁」がまず大きく立ちはだかっています。

その壁にはこう書かれているのです。「病気を予防するにはこまめに健康診断を受けて、病気を早期発見・早期治療を行うことが大切だ」と。

この台詞だけ聞けば、何も間違っていないように思えるかもしれませんが、

もしもこの方針を支えるための従来医学の理論が穴だらけだったとしたらどうでしょうか。

そもそも早期発見するのは誰なのかという話です。お医者さんではないでしょうか。

そう思ってよく見ると、早期発見するのではなく、「早期発見してもらう」という構造になってはいないでしょうか。

「発見してもらう」のであれば、そのための方法は従来医学のならわしに必然的に従うことになりますよね。

その従来医学のならわしが、糖質制限食とは真逆の方法を勧めてきたり、がんを目の前から消すために身体を削ることを勧めてきたり、まだ病気になってもいない人に得体のしれない異物を注入するよう求められたりすることであるならば、

そして、もしもそれらの治療方針が根本的に間違っているのだとすれば、

それは結果として「予防医療」の衣を借りた、病気生産活動となってしまってはないでしょうか。もちろん意図しないところで、です。

そう考えれば、健診が普及していても病気が減っていかないのも無理もありませんし、

このまま続けていてもモグラ叩きが終わる日は来ないということも見通せてしまいます。

では、本当の意味での予防活動にするためには、どこをどう変えていけばいいのでしょうか。


ポイントは大きく2つあるのかなと思っています。

一つは「安心して常識を疑うことができる環境を作ること」

もう一つは「早期発見してもらうのではなく、自分で早期発見すること」です。

私は健診は使い方次第だと思っています。

私が推奨する主体的医療では自分で自分の体調を観察することを基本においているのですが、

誰もが体調をきちんと観察できるとは限りませんし、それこそ体調の悪い時には体調をみる目もおろそかになるというジレンマもあります。

なので自分の体調を見る力を補強するという意味合いで、健診を利用し、その結果を広く自分の体調として受け止めて、

その上で今自分がどのような状態にあるのかについて考察し、具体的にどうすべきかという行動へとつなげていく、

つまり自分が「早期発見する」ために健診を利用すれば、これは真の予防医療へとつながっていくはずです。

しかしそこで自分の頭で考えていくための情報が世の中には圧倒的に足りません。というか常識的な情報によって潰されているようなところがあります。

がんの標準医療に対して根本的な疑問を何十年にもわたって投げかけ続けた故・近藤誠先生の理論は、

私から見ればかなり妥当性のある、一考の余地のある話でした。しかし「がんは早期発見・早期治療」という常識が、

より正確に言えば「がんは健診で医者に早期に発見してもらい、従来医学の論理に従って早期にがんの標準治療(手術、抗がん剤、放射線)を受けるべき」という医療界における常識が、

近藤先生の話に「トンデモ理論」というレッテルを貼り続け、せっかく何十年にも渡って投じられ続けてきた石を無視し続ける結果となりました。

でも近藤先生の理論に賛同し、放置という選択をとっている人達も少数派ながらきっといると思いますが、そうした人達は今の世の中で常識的な価値観からの批判を受け続けてしまうことになるのです。

そうなると中途半端な納得だと、批判を受け続けることによって従来医学の考えに再誘導されてしまうかもしれませんし、

強い意志をもって自分の決断を変えないでいようとしても、その批判的な声にずっと耐え続け投げればならない苦しい道になってしまう可能性があります。

もちろん従来医学からの常識的な提案が常に間違っているわけではありませんが、

せっかく自分の頭で考えて下した決断が、従来医学からの常識的価値観に伴う圧力によって一方的に潰されてしまうのはどうかと思うわけです。

そう考えると、真の予防医療を実現していくためには、

患者自身の主体性が極めて重要になってくる
と思うわけです。

残念ながら、従来医学の仕組みに従っているだけで予防医療が行われるようには現実はできていないからです。

であれば、まずは病気を整えるには自分が立ち上がるということ、

その上で従来医学の常識を見直す視点をもってみることです。

でも一人で従来医学の常識を疑い続けるのは大変だと思いますし、

周りの人達や病院の医者から自分の疑いに対して批判的な言葉を投げかけられ続ければ辛いかもしれません。

それに世の中には様々な意見があるので、何を信じたらいいのかわからなくなることもあると思います。

しかしわからなくなった時には主導権は自分にあるのだということを思い出すこと、

うまくいっているかどうかは常に自分の身体が教えてくれるという構造があることに気づくこと、

その上で試行錯誤の上で自分にとって一番良い方法を探し続けることができるということ、

そういう患者さんの決断が応援されるように

少しずつでも世の中の空気を変えていくことが

大切なのではないかと私は考える次第です。



たがしゅう
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コメント

拝読しました

2023/10/12(木) 19:22:58 | URL | 後藤 #-
こんにちは。

私は時間つぶしの為にたまたま入った書店でたまたま手に取ってなんとなく気になった「炭水化物が人類を滅ぼす」と言う書籍を購入し、読後糖質制限を始めました。その後ネットでひょんなことからたがしゅう先生のブログに辿り着き、以来先生のブログの読者となっております。
糖質制限の実践により、体調もよくなりましたが、たがしゅう先生のブログがその裏付けとなってくれて、自分のしていることへの自信を深めることが出来ました。更にたがしゅう先生の物事に対するアプローチの仕方に大いに影響を受け、本当に感謝しています。
これは何も医療の話だけではなく、生きる上で直面するあらゆることにそうした姿勢を持てることで自分自身大いに役立っています。
今後も当ブログで勉強させていただきます。よろしくお願いします。

管理人のみ閲覧できます

2023/10/12(木) 20:55:24 | | #
このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 拝読しました

2023/10/13(金) 08:00:12 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
後藤 さん

 コメント頂き有難うございます。
 励みになります。

 私も考えるきっかけは医療への違和感でしたが、
 今は多分野に思考が拡がり、教育、歴史、政治、社会、ひいては人生そのものへとつながっていく感を覚えています。
 そのことが伝わっているようで嬉しい限りです。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

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