カネミ油症から考える薬害の影響力と救済のされにくさ

2023/08/27 22:00:00 | 薬害について | コメント:0件

ここしばらく薬害のことについて考え続けています。

先日の薬害根絶デーでの様子を見ていて、薬害は根絶に近づくどころかむしろ拡大の一途、そしてこのままでは今後も薬害が根絶に向かうことはきっとないであろうという厳しい私見を記しました。

「いや、それは言い過ぎだ。一歩ずつ薬害の存在が認知され、被害者の救済に向け着実に事態は解決へ近づいている」と、そういう意見もきっと多くあるだろうと思います。

ただ薬害の存在が知られることと、それが救済されるかどうかはまた別の問題ですし、

広く認知されたからと言って救済されるとは限らないということを強く感じざるを得ないと、

そう思わせるニュースが、実は最近時を同じくして私の耳に入り、関心を強く惹かれました。

それは「カネミ油症の55年目の次世代調査」です。 「カネミ油症」とは、1968年に福岡県北九州市小倉北区(事件発生当時は小倉区)にあるカネミ倉庫株式会社が製造する食用油に「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」をはじめとするダイオキシン類と総称される化学物質が製造過程で誤って混入し、

その食用油を摂取した人々やその胎児に障害などが発生した、西日本一帯において食中毒事件のことです。

具体的にはその食用油摂取により、顔面などへの色素沈着や塩素挫瘡(クロロアクネ)など肌の異常、頭痛、手足のしびれ、肝機能障害などが発生したそうです。

なかでも、妊娠していた女性患者から全身が真っ黒の胎児が産まれ、2週間ほどで死亡するという出来事が発生したことは、社会に大きな衝撃を与え、学界でも国際会議で「YUSHO」と呼称され、世界的な関心を集めました。

そして事件の発生からまたたく間に日本全国でおよそ1万4000人の人に被害が広がったと言われ、1970年に被害者の会が製造会社と国を相手取り裁判を起こし、1977年10月5日に福岡民事第一審判決で被害者側が製造会社に対し勝訴する形で結審しました。

ただしこの事件について国の直接的な責任は明確には認められなかったようです。

PCBという化学物質は、電気も通さず、酸やアルカリに触れても変化しないため、変圧器や蛍光灯をはじめ、あらゆる製品に応用することのできる夢の化合物と称されていました。

しかし安全性が確かめられることなく、国内で6万トンが製造されましたが、結果的にカネミ油症事件を通してその毒性が知られるようになったという経緯でした。

そのため被害者は国にも責任があるとして公的救済を求めていますが、国はあくまでも「民間企業が起こした事件だ」とする立場を崩さず、製造会社の責任だけが公的に認められ、国は被害者の医療費や生活費の補償面であくまでも製造会社を支援するという立場となっています。

一方で国は九州大学皮膚科を中心に全国油症治療研究班を立ち上げ、年1回の検診で油症患者認定を行い、認定患者への診療を行っていく形で被害者を支えていく関わりを始めることになりました。

ところがこの油症認定患者診療においても問題があり、研究班が定めたカネミ油症の診断基準は、1968年の発足当初の時点ではカネミ油の摂食があることや家族発生があることなどの条件に加え、痤瘡や色素沈着などの皮膚症状を中心に上眼瞼浮腫、眼脂の増加、食欲不振、脱毛、四肢の脱力感やしびれなど、多彩な全身症状があるということ、という条件になっており、

この診断基準で油症外来を受診した106名のうち、認定を受けたのはわずか11人だけだったようです。

その後、血液中のPCBの濃度や、2004年からはPCBだけではなく、PCBが加熱処理によって変化したダイオキシン類(PCQ:ポリ塩化クアターフェニール、2.3.4.7.8-PeCDF:ペンタクロロジベンゾフラン)の血中濃度も診断基準に加えられるようになり、

今年で発生から55年経過していますが、これまでに「カネミ油症」だと認定された患者数は2023年度末時点で2370人にとどまっているとのことです。

さらに2021年からは次世代への影響の有無も調査対象へと含まれるようになり、認定患者のこどもや孫に当たる人達1200人ほどを対象に調査が行われ、その中から50名だけが「カネミ油症」だと認定されたとのことです。

ここまでの概要の確認には以下の書籍を参考にしました。非常に多角的にカネミ油症事件の経緯や問題点が書かれていました。



食品公害と被害者救済―カネミ油症事件の被害と政策過程 単行本 – 2015/2/1
宇田 和子 (著)



さて、この未解決の「カネミ油症」事件そのものにおいても考えなければならない問題は数多くありますが、

この事件を通じて私が特に強く関心を惹かれたのが次の3点です。

①これだけ因果関係が明確にされた病気でも55年経過して救済されているのはごく一部で国からはこれ以上救済しようという姿勢が感じられない
②化学的に非常に安定した物質を経口摂取した場合であっても吸収され、著しい全身症状をもたらす
③薬害が次世代に被害をもたらす実例が存在している


すべてコロナワクチン被害を考える上で参考にすることができる事実だと思います。

カネミ油症の原因はPCBを中心としたダイオキシン類であるということは裁判を通じて国も認めています。それでも全てを救済できていないし、科学的根拠の欠如などもっともらしいことを言って被害者の全面救済が達成できずにいます。

しかも55年も経過しています。一体いつになれば科学的根拠が蓄積するのかとも思いますし、ただの逃げ口上にも思えますし、そういう問題でもないように思います。55年も経過すれば、認定される前に一人の寿命が尽きてしまうことさえ視野に入ります。

これだけ因果関係が明確な公害でこの限定的な救済にとどまっているのです。いわんや、コロナワクチン被害をや、です。

ましてやコロナワクチンは、いやワクチン全般は、国は因果関係を認めようという態度がないのですから、国の被害者救済への道はかなり厳しいと考えざるを得ません。

そうなると国の被害者救済とは別の方向性で被害者を救う道を考えていく必要性が出てくるように私は思います。

それから私はコロナワクチンのかつてない副反応の多さの要因はポリエチレングリコールという安定した化学物質だと考えています。

ポリエチレングリコールは実は下剤としても応用されている物質なのですが、経口摂取しても化学的に安定なので腸管からは吸収されないからこそ浸透圧差で水を引き込み、便塊に水分を加えて排出しやすくする効果があると考えられています。

ポリエチレングリコールもPCB(ダイオキシン類)も同じ構造の重合体であるという点では共通しているので、PCBも経口摂取であれば容易に腸管から吸収されないのではないかと私は一瞬考えたわけですが、

カネミ油症の実態を考えれば、PCB(ダイオキシン類)の場合は経口摂取で腸管から吸収されていると考えるのが自然です。ただカネミ油症患者がどのくらいの量のPCB(ダイオキシン類)を、そしてどのくらいの頻度で経口摂取していたかはまちまちだと思いますので、

PCBが腸管から吸収されやすい物質なのかどうかについては一旦保留としておきますが、

とにかくPCBが腸管から吸収されて、体内でなかなか分解されずに残留し続けるということは事実だと考えて良さそうです。

そうなると同じ化学的に安定なポリエチレングリコールであっても、大量に経口摂取すれば腸管から吸収されて体内で分解されずに残留する可能性がありますし、

いわんや、非生理的な経路である筋肉注射で注入されたポリエチレングリコールをや、ということになります。

そして最後に体内に残留し続けるPCB(ダイオキシン類)が原因で、その影響が次世代に及びうるというのであれば、

ポリエチレングリコールで同じことが起こっても不思議ではないという理屈になります。

ただコロナワクチンの場合は、カネミ油と違って何度も何度も摂取しているわけではなく、

多い人でもせいぜい6回ですし、1回の注射液の中のポリエチレングリコールもごく微量なので同列には語れないでしょうけれど、

それでも注射という非生理的な経路から侵入しているので、分解のされにくさという観点で油断なりません。


公害と薬害は違うという意見もあるかもしれませんが、

私は本質的に共通している部分はあると思います。国が歪んだ科学で安全と認知した物質を過剰に喧伝し、トラブルが発生してもなるべく救済しないで済む方法を全力で模索するという共通点です。

そしてこの構造が資本主義によって強力に下支えされていて、もはや不可逆的な段階まで歪みきっているという状況だと考えれば、

この現実を直視した上で、私たちはどう考え、どう行動すべきかということを、

常識にとらわれない視点で検討していく必要があると思います。

そのための大きな方針として主体的医療の選択肢を私は提案することができるかもしれません。

薬害も公害も、被害者という受け止め方も、やはり「病原体病因論」に支配された価値観だと思っています。

ただその状況は「病原体病因論」と考えて仕方のない状況ですし、実際に病原体病因論で捉えた方が明らかに事実をうまく説明できる状況だとも思います。

けれどその状況でさえ、主体的医療は被害者の状況を改善させる潜在可能性を秘めていると私は考えていますが、

今はまだここでそれをうまく伝えるのは難しいと思っています。

少しずつ主体的医療では、この場合どう考えてどう行動していくかという具体的な方法を、

世の中に提示していければと思っています。


たがしゅう
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