同調圧力から自由になるために
2023/02/09 10:50:00 |
保険診療への疑問 |
コメント:3件
前回と前々回で、保険診療を使わないという生き方の私が考えるメリットを紹介してきました。
ですが多くの人にとって保険診療を使わないという選択を賢明ではないと感じられるであろうことは容易に想像できます。
何せお金が余分にかかりますし、標準治療にもそれほど大きな問題を感じていない人がほとんどでしょうし、
しかも「痛み止め」や「睡眠薬」をはじめとして明らかに効果を実感できる薬もあるので、
その恩恵を受けるのに、自分がこれまで支払った保険料の関わるシステムを使わないということは損でしかないと感じても不思議ではないでしょう。
何より今まで保険診療に慣れ親しんできた文化・習慣としての側面があります。損することが目に見えているような選択をとってまで習慣を変えようというインセンティブは通常働かないでしょう。
それはまるで今安全地帯にいるにも関わらず、お金を払って冒険の旅に出かけましょうと言われているようなものです。
それが「冒険の旅」ならロマンがあってまだいいかもしれませんが、今私がいざなっている世界は「今の安全地帯と大して変わらないのにお金だけが余計にかかる世界」に見える人がほとんどであろうと思います。 ただそうやって漫然と保険診療を使い続けることは、保険診療の基盤をより盤石なものにします。
システムというのは、それを使う人がいるから成立するところがあると思います。詐欺はだます人だけでは成立しないという話に通じます。
でも保険診療の場合は、それを使う人が仮にゼロになったとしても、少なくとも現時点では国民皆保険制度で働く世代から保険料を徴収されることが法律で定められていますから、それだけでシステムが崩壊することはありません。
ただ利用者が多いか少ないかで、システムの成長度は変わります。成長と言えば聞こえがいいですが、行きすぎた成長は「暴走」に通じます。
今の保険診療というのは無批判に有価値だという評価が、もはや思考の介在する余地のない文化レベルで国民全体の無意識レベルで下されてしまっている状況です。
ビジネスに例えれば「保険診療」という会社のマークをつけていれば、それだけで無批判にサービスを利用できる顧客が非常にたくさん獲得できるような奇妙な状況です。
そんな奇妙な状況であれば、当然その「保険診療」という会社のサービスが適切に行われているかどうかを監視する目線が必要だと思いますが、残念ながらそのような視線は注がれません。あまりにも当たり前になりすぎて誰もここの信憑性を疑わないのです。まさにこれは文化です。
ところで無批判にほぼ全ての国民がそのサービスを利用してくれる巨大企業はその先どのように成長していくのでしょうか。
私はその先に待ち構えるものは決して素晴らしいものではないと思いますし、実際にその弊害が保険診療をめぐって実際に起こってしまっていると感じています。
それは一言で言えば、「科学の暴走」です。保険診療でやられていることこそが正しいという確信、無批判、そして周囲への強要です。
私は「保険診療」という会社には真っ当に成長してもらいたいと思っています。だからこそ批判も受け入れてほしいし、ほぼ全員が無批判に受け入れてしまっている今の状況を崩すために、保険診療を使わない選択肢を提案しているところがあります。
それは単なる気をてらった注目を集めたいがための発言では決してありません。
実際に保険診療を使わないことにメリットがあると感じるからこそ伝えている選択肢だと思ってほしいです。
ましてや自分の自由診療のクリニックに誘導しようという意図があるとだけは誤解してほしくありません。私は自分のクリニックに誘導したいから保険診療を使わない選択肢を提案しているわけではありません。
そうではなくて保険診療であろうと自由診療であろうと医療に関わらないに越したことはないので、むしろ医療と関わらないように支援したいと思っています。
それでも人生に困難はつきもので、思い通りに行かずに病気という形で自分がコントロールできない状態に陥ってしまうことは誰にでも起こりうると思っているわけですが、そういう時の駆け込み寺的な存在として医療にはいてほしいと。
その時に決して一つのやり方や価値観を押し付けるような医療であってはならないと、もしもそれが許される場があるとしたら、それは自分の意思を介在させることが難しい、命に関わる救命医療の現場だけであるべきだと。
基本的には複数の選択肢の中から自分にとって役に立つ医療はどこかを考えて探して切り開いていくような世界になるよう、その選択肢の一つとして私のクリニックも役に立てればというイメージで捉えています。
どの道、私一人の発想では多様な価値観でそれぞれが異なる全ての人達のニーズに応えることなど土台無理な話ですから。
もちろん、保険診療もそのような複数の選択肢のうちの一つとして理解し、
それを選ぶ人がいてもいいと思いますし、困った時には保険診療が提供する医療(西洋薬としての痛み止めや睡眠薬など)を受けながら自分にとって良い人生を生きていくという生き方もあっていいと思います。
ただ私には現状それは非常に困難な道に思えます。あなたは保険診療から提案される選択肢を疑い続けることができますか?
先ほども述べた「科学の暴走」が最も如実に現れたのがコロナ禍での感染対策だったと思いますが、
例えばワクチンただ一つだけ疑うのでさえも多くの人にとって大変に困難なことだったことは、全国民の8割以上がコロナワクチンを2回以上接種したという事実が物語っていると思いますし、
マスクは今でも保険医療機関に行けば、誰もがマスクを装着した状態で医療を提供されるわけですし、
その状況でマスクを疑うことができるのかと言われたら、それは日頃からかなり強靭に思考力を鍛えている人でもない限り不可能でしょうし、
鍛えている人であっても、ちょっとやそっと考えていたくらいではたちまちその思考は吹き飛んでしまうような強力な同調圧力(あるいは強引に立ち向かっても衝突を生み出して行きにくくなる状況)の中で、それでも自分らしく生きられる人がはたしてどれくらいいるだろうかと私には思えます。
まずこうした同調圧力から逃れるには、金銭的なインセンティブを手放すことです。いわゆる「サンクコスト」というやつです。一見大損したように思えますが、お金に縛られない自由な環境が確保できます。
ただそれだけではまだ安泰ではなくて、その後どの道を選べばいいのか悩むという点で困難は続きますが、ここで自分の頭で考える思考力が活きてきます。
つまり保険診療を使わないことと、自分の頭で考えることはセットだということです。おそらく単に「保険診療を使わない」という形式だけ真似しても、その人が自分で考える習慣を持たない人であれば、きっとその人にとって不幸でしかない選択になってしまうでしょう。
なぜならば病気になったときに「なぜそんなわけのわからない医者の言うことを信じたのか」と周りから責められるでしょうし、本人も「保険診療を使っていればこうはならなかったはず」と後悔するでしょうし、
その後自分の身に起こるあらゆる出来事を「保険診療を使ってさえいれば」という文脈で捉え続けるというストーリーが容易に想定できます。
そしてそのストーリーに苦しめられる人達を今もなお量産し続けている保険診療の暴走性が如実に現れているのが「がん医療」の分野だと私は考えています。
ただしがん医療だけが問題と考えているのではなく、私が見据えているのはもっと医療全体の問題です。その問題が突出して見えやすくなっているのが、がん医療だと思っています。
そう言えば、故・近藤誠先生は近年「がん患者よ、近藤誠を疑え」という本も出版されていました。
がん患者よ、近藤誠を疑え 単行本(ソフトカバー) – 2016/3/30
近藤 誠 (著)
きっと近藤先生もがんを放置するだけではダメだということを伝えたかったのだろうと想像します。
次回はがん医療という文脈の中で、保険診療を使わないという選択肢が持つ意味を、
そしてその価値と必要とされる覚悟について語って見ようと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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この不思議な現象はなぜ?
この記事→https://adtest.localab.net/teriyaki_mset/?fbclid=IwAR09aJZZcoLdkXGuugosppZPuBqA9mn5yQ1bBxSgzPZ_uJdOQ01PVCV4RFE
マクドナルドの照り焼きチキンバーガーを食べて血糖値を測ったら、ほとんど上がらなかった・・・という内容です。
パンやご飯も、卵と一緒に食べると、血糖値の上昇を抑えるらしいですが、照り焼きチキンバーガーというのはビックリ。
先生は、どう思われますか?
Re: この不思議な現象はなぜ?
コメント頂き有難うございます。
また考える機会を与えて頂き感謝申し上げます。
あくまでも私の推測に過ぎないという前提で意見を述べさせて頂きます。
まず実験者の方は糖尿病があるわけではないのだろうなと思います。
またブログのプロフィール欄に「高度脂肪肝と診断され、お餅のようなおなかに」と書かれておられましたので、おそらくインスリン分泌能力が高い方でいらっしゃるのだとも推察します。平たく言えば結構な量の糖質を摂取したとしても血糖値の上昇が起こりにくい代わりに太りやすいタイプです(余談ですが私もそのタイプです)。
一方でこの実験で血糖値の上昇があまりなかったという「てりやきマックバーガー」とそれなりに血糖値の上昇があったという「ダブルチーズバーガー」の糖質量をマクドナルドの公式サイトから調べてみると、前者の糖質が35.4g(=炭水化物37.4g-食物繊維2.0g)、後者の糖質が29.7g(=炭水化物31.4g-食物繊維1.7g)ということなので、実験結果は糖質量に比例していないことになります。
またポテトMもセットで食べているということなので、この実験結果はてりやきマックバーガーの何らかの添加物が血糖値の吸収を遅らせたというような考察は行いにくいと思います。少なくともてりやきバーガー単独の影響ではなさそうです。
そうなると理由を考えるために重要な情報は、その実験を行う前にどのような食事と運動状況であったかです。
おそらくですが、てりやきマックバーガーを食べた時もダブルチーズバーガーを食べた時も、もしも同時にインスリンの量も測定していたらかなりの量が分泌されているであろうと推察されます。ただし、後者の方ではインスリンが何らかの原因で不十分な分泌状況になっている可能性が高いです。その要因として考えられる可能性の一つが、「その前に何を食べていたのか」です。
仮にですが、ダブルチーズバーガーの実験前の食事(または間食)でも結構な量の糖質量の食事を摂取していた場合、ダブルチーズバーガーの摂食時にはインスリンの分泌量が一時的に不十分になる可能性があります。またてりやきバーガーの実験前にはそれほど糖質負荷のかかる食事はたまたましていなかったということであれば、持ち前のインスリン分泌脳の高さでかなりの糖質摂取に対しても血糖値を上げずに済んだという可能性があるでしょう。そして2回目、3回目のてりやきマックバーガー実験でも再検証しようと慎重になっていれば、その前に暴飲暴食をしないようにしようという心理が働きやすくなるかもしれません。あくまでも仮説の一つですが。
もう一つはその前の運動状況ですね。上記と同様に、例えばダブルチーズバーガー摂食前にはあまり運動していなくて、てりやきマックバーガーの摂食前にはたまたま運動をしていたという状況であれば同様の逆転現象が起こりうると思います。筋肉がインスリン非依存的に血糖を消費してくれるからです。
血糖値だけを測っているとわからないこと、場合によってはミスリーディングされてしまうことがあると私は思います。
2017年7月15日(土)のたがしゅうブログ記事
「血糖値に人生を支配されない」
https://tagashuu.jp/blog-entry-1029.html
もご参照下さい。
まさに血糖値に人生を支配されていました。
有難うございます。
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