本当は有害な標準治療が過大評価され続けてしまう仕組み

2022/10/19 14:45:00 | がんに関すること | コメント:0件

以前当ブログで検証した「上に凸のグラフの比較は事実と逆の結果を表しているかもしれない」という話を踏まえて、

世の中のがん医療の正当性を訴える医学論文を一つひとつ見ていくと、現代のがん医療がいかに事実とは異なるデータを基にして展開されているかということに気づいてしまいます。

コロナ禍でも、専門家の非常に著しい医学論文絶対主義の危うさが露呈する形となりましたが、

実はコロナ前からもずっと医学の専門家達は医学論文絶対主義だったということが、現在のがん医療を観察していれば私にはよくわかります。

気づいた以上は私にはそれを世の中に伝えていく役割があると思っています。

陰謀論だとか、トンデモだとかのレッテルを貼られたり、あるいは強い批判を浴びかねない話題ではあるけれど、

あるいはすでに標準治療を受けている人、標準治療の効果を信じて疑わない人にとっては辛い話になってしまうかもしれないけれど、

これを伝えることでがんへの向き合い方がよりありのままの形へ変わってくれる人が一人でも増えることを願って、私が気づいた問題点を伝え続けていこうと思います。 先日、がん医療の専門家の講演動画を観ていたら、次のような医学論文が紹介されていました。

「標準治療を受けている人と標準治療に補完代替医療を加えている人を比べると、補完代替医療を加えている人の方が死亡率が高い」JAMA Oncol. 2018;4:1375-1381

補完代替医療というのは標準治療以外の治療法の総称で、具体的には中国医学(中薬療法、鍼灸、指圧、気功)、インド医学、免疫療法(リンパ球療法など)、薬効食品・健康食品(抗酸化食品群、免疫賦活食品、各種予防・補助食品など)、ハーブ療法、アロマセラピー、ビタミン療法、食事療法、精神・心理療法、温泉療法、酸素療法、等のさまざまな治療が含まれています。

この論文によればそうした補完代替医療を行っていると死亡率が高くなるというのです。だから素直に標準治療だけを受けるのが一番いいというわけです。

ですが、がんの標準治療が本質的に臓器欠損と全細胞攻撃である以上、この結論を容易に信じるわけにはいきません。

そう思ってこの論文で示されていた生存曲線を見ると次のようになっていました。



(画像はJAMA Oncol. 2018;4:1375-1381より引用、言語はDeepLにより日本語へ翻訳)

青いグラフが標準治療だけを行なった治療群です。オレンジ色のグラフが標準治療に加えて補完代替医療を行なった治療群です。

ご覧いただけますでしょうか。両群ともに緩やかに上に凸の様相を呈しています。

生存曲線は集団の数が多くなればなるほど下に凸になるのが基本です。それが上に凸になるということは、グラフの最初の時期は死亡者が極端に少なくて、グラフの後半にかけて死亡者が集団として急増するという不自然さがあるということを意味しています

しかもこの論文で対象となっている集団は乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がんの4つのがんのステージⅣと診断された患者達です。

一般的にステージⅣのこれら4つのがんの5年生存率は20〜40%程度だとしている報告がほとんどです。しかしこの論文では7年間観察されている中で5年生存率が両群ともにその数値をはるかに上回っています。


※読者の方からのご指摘で上記の文章は誤りであったことが判明致しました。関連した箇所と合わせて、以下の文へ訂正させて頂きます。

この論文で対象となっている集団は乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がんの4つのがんの患者で、以下の条件に相当する患者は除外しているとのことでした(診断時に転移性疾患を有する患者、診断時の関連年(2009年以前は第6版、2009年以降は第7版)のアメリカ癌合同委員会に基づくステージIVの患者、緩和目的の先行治療を受けた患者、治療状況・臨床・人口統計学的特性が不明な患者)。

具体的には目測にはなりますが、青いグラフの標準治療群の60ヶ月(5年)時点での生存率を見ると85%程度、オレンジ色のグラフの標準治療+補完代替医療群の同じ時点を見ると80%程度を指しているように見えます。

この時点で両群ともにこのグラフの信憑性がかなり怪しくなってきますが、もう少し細かく見て見るとさらにこの論文の怪しさがわかってきます。

なぜこのような実際とあまりにも乖離した数値になるかについては、一つの大きな可能性として打ち切り例の存在があります。

打ち切り例というのは論文の研究期間中に何らかの原因で追えなくなったケースのことです。カプランマイアー法という生存曲線の書き方において打ち切り例は、その理由の如何に関わらず、グラフ上はとりあえず生存しているものとして扱うというルールになっています。

ただその打ち切りが判明した時点で生存曲線には俗に「ヒゲ」と呼ばれる小さな縦線を入れることがルールとなっています。

ところがご覧のように今回の論文のグラフでは一切の「ヒゲ」が書かれていません。その代わりにグラフの下側にリスク数と書かれている部分があると思います。

このリスク数、別名を「リスク集合」と言いますが、これはその時点においてまだ追跡中の対象者の数、言い換えれば全登録者から死亡例と打ち切り例を除いた人の数を表しています。

実は最近の論文ではこのリスク集合を表示することで、「ヒゲ」を書かなくてもいいというルールになってきているということです。

このリスク集合の数字を見てみますと、標準治療だけを受けた治療群の対象者数は1022名、標準治療と補完代替医療を受けた群の対象者数が256名いるということがわかります。比率にして4:1なわけですが、通常は同数で比較するのに、なぜ4:1の数になっているのか、この論文を読んでも書かれていませんでした。

ともあれ、なぜかそのように差がある集団数で7年間経過を追い続けることによって、途中の打ち切り例も含みながら確実に生存していると言い切れる人の数が減ってきているということがリスク集合の数値で表されています。

次に以下の図をご覧下さい。



(画像はJAMA Oncol. 2018;4:1375-1381より引用、言語はDeepLにより日本語へ翻訳)

前出の図に私が線を書き加えていますが、例えばこの場合は48カ月後(4年後)の時点での標準治療群の青いラインが示す生存率が90%となっていることがわかると思います。

ところがこの90%という数字は打ち切り例も生存と扱われた上での数値です。実際にはこの90%を構成する集団には生存例ではなく、打ち切り例も混ざっている可能性があります。

そして問題なのは打ち切り例は追跡不能で生死が不明な人だけではなく、他病死、すなわち調べたい病気(今回の場合はがん)とは別の病気で亡くなっている人も打ち切り例とカウントされてしまうため、

「生存率90%」と言いながら、実際にはその90%の中に他病死で亡くなって打ち切り例とされた人達も混ざっている可能性があるということです。

そこでその打ち切り例も除外された数値である「リスク集合」が大事になってきます。48ヶ月時点でのリスク集合がどうなっているかというと、518名と書かれています。

標準治療群の母集団は1022名でしたから、4年後の時点で打ち切り例を除いて確実に生存しているといえる人の割合は518/1022名=50.6%となります。

「生存率90%」とは随分印象の異なる数値です。言い換えれば90%のうち約40%は打ち切り例を示しているということになります。

そして追跡期間が間もない頃に打ち切りとなるのは、理屈で考えて追跡調査不能になった人よりも他病死の可能性が高いはずです。ということは生存曲線が表す生存率とリスク集合で表現される生存率の乖離は、追跡期間の前半であればあるほど実際には他病死の人を多分に含んでいるということ、言い換えれば生存率が水増しされている可能性が高くなるということになります。

それを踏まえて標準治療群の青いラインとリスク集合での生存率差を見てみますと、12ヶ月後(1年後)の時点ではライン上は98%、リスク集合で見ると94%(=958/1022)、同様に24ヶ月後(2年後)はライン上は96%、リスク集合では82%(=838/1022)、36ヶ月後(3年後)はライン上は92%、リスク集合では68%(=691/1022)となっています。

時間が経つにつれて、ライン上とリスク集合との間の生存率差が開いてきていることがわかりますし、前半であればあるほどこの差は本当は他病死なのに生存だと扱われている人達の割合を示しているということになります。

そこで同様の生存率差をオレンジ色の標準治療+補完代替医療群のラインでも確認してみましょう。12ヶ月後(1年後)の時点ではライン上は98%、リスク集合で見ると93%(=238/256)、24ヶ月後(2年後)はライン上は92%、リスク集合では80%(=205/256)、36ヶ月後(3年後)はライン上は87%、リスク集合では65%(=167/256)となっています。

ご覧のように標準治療群の青いラインと比べてリスク集合との生存率差が小さいということがわかります。もちろん時間が長くなればなるほど追跡調査不能例も増えてくるので、時間とともに差が開いてくる傾向はどちらもあって然るべきですが、

十分に人数の多い集団であれば追跡調査不能による打ち切り例が発生する頻度は両群で大きな差はないはずです(集団が4:1になっているのでほぼ同じとまでは言えないかもしれませんが)。

それなのに打ち切り例が標準治療群の方で多くなるということは、その打ち切り例は追跡調査不能例がメインではなく、他病死がメインになっている可能性が高いということになります。

もっと言えば、最後の84ヶ月後(7年後)の死亡率は青い標準治療群でライン上は83%と表示されていますが、リスク集合でみれば20.3%(=207/1022)となっています。

前述のように4つのがん(乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がん)の5年生存率が20〜40%程度であることが一般的であることを考えれば、20.3%という数値の方が7年生存率として妥当な数値であるように判断できること、同時に83%という数値は多分に打ち切り例を含んでいるということ、

そして生存率20.3%という数値が妥当だと仮定し、青いラインがオレンジのラインよりも前半における打ち切り例の割合が多いことを踏まえると、7年時点での標準治療群での生存率差分の62.7%(=83%-20.3%)の中には少なくとも標準治療+補完代替医療群の生存率差分に比べて、他病死による打ち切り例の割合が多いと考えられます。

つまり結論として、グラフとして上にある青いライン、標準治療群の方で打ち切り例を含めた死亡者数は、標準治療+補完代替医療群よりも多い可能性がある、ということになります。


ごちゃごちゃと述べてきましたが、考えてみればそういう結果になるのは理屈で考えれば明らかです。

補完代替医療のほとんどは、標準治療に比べると身体にかかる侵襲度は明らかに軽いものばかりです。

手術、抗がん剤、放射線治療は他のどの補完代替医療よりもきついダメージを確実に受ける治療です。

それなのに、補完代替医療を加えた群でより死にやすくなるという結論は理屈に合わないのです。せいぜい生存率は大して変わらないという結果であるべきです。

いや、変わらないというよりも、補完代替医療を行っている時間帯は、標準治療のようなきついダメージが加わらないと考えれば、むしろ生存率として高まる可能性さえあるような状況です。

そのような状況なのに、あまりにも理屈とも乖離するデータであったが故に、ここまで精査した結果、逆の結論が導かれるメカニズムがようやく明らかになったという話になります。

ちなみにこの医学論文の著者はVarian Medical Systems IncとRadOncQuestions LLCというがんの放射線治療システムを製造販売する企業や、21st Century Oncologyという医療機関に対する専門的な経営サポートを行う企業からの資金提供、さらにはジョンソン&ジョンソン、メドトロニック、ファイザーといった製薬会社からの資金提供も受けている、いわゆる利益相反の状態にあることも明記されています。


わざとこのような事実と異なるデータを出しているとまでは思えません。

しかし、「結論はこうであるに違いない」という固定的な価値観を持って解析すると逆のデータを導けてしまうメソッドが使われ続けてしまっていることが、事実と異なるがん医療の姿を「科学的」の皮を被りながら演出し続けることに成功してしまっているのではないかと私には思えてなりません。

これは人体に大きな害をもたらす標準治療が過大評価を受け続けているという点で決して見過ごすことはできない問題です。しかも極めて妥当性は高い推論だと思っています。

もしも明らかな間違いがあれば訂正しますので指摘して頂きたいです。

逆に間違いが指摘できないのであれば、一人でも多くの人にこの問題、標準治療が医学論文上で過大評価され続けているという問題について真剣に考えてもらいたいです。


たがしゅう
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