糖質制限批判論文に通底する本質的な問題点

2022/09/14 16:00:00 | 糖質制限 | コメント:1件

それでは、本題となる糖質制限批判論文の問題点について説明していこうと思います。

これを考えるにあたって、まず私が今まで出会って細部を確認することができた糖質制限批判論文の内容と、それに対して私が指摘した問題点を列挙することから始めてみたいと思います。

各論文の問題点を一つひとつ確認していきながら、これらに通底する本質的な問題に迫る帰納法的アプローチです。

正直、大変な作業ではありますが、頑張ってみようと思います。

なお列挙する内容はボリュームの都合上、要点だけを記載していますので、細部が気になる方は是非原著論文の方をあたってみて頂ければ幸いです。

【糖質制限批判論文】
Fung, et al. Ann Intern Med. 2010 Sep 7;153(5):289-98
ハーバード公衆衛生大学院による女性26年間、男性20年間の約13万人の追跡調査研究。
・低炭水化物食は全死因死亡率が23%増加し、心臓疾患の死亡リスクが14%増加、がん死亡リスクは28%増加した。


→(たがしゅうの評価)
炭水化物摂取比率40%前後の集団のデータ。観察研究なので主体的に糖質を制限しようとした人達ではなく、いつも通りの食事をしていたらたまたま糖質摂取が40%程度であったという人達。実は死亡者数でみると高炭水化物群(D1)の方が低炭水化物群(D10)よりも人数多い又はほぼ変わりなしにも関わらず、年齢とエネルギー量で調整するとオッズ比は逆転し、死亡率は低炭水化物群(D10)で高くなるという逆転現象を生じている。
(問題点)
・統計処理によって高炭水化物食者のリスクが過小評価されている可能性あり
・その逆転評価の原因として、エネルギー量調整により低炭水化物+エネルギー不足者のリスクが過大評価された可能性あり(ささいな差が大きく見えている?)。



Lagiou, et al. J Intern Med. 2007 Apr;261(4):366-74
Lagiou, et al. BMJ 2012 Jun 26;344:e4026
30〜49歳のスウェーデン人女性42,237人の12年間追跡調査
・低炭水化物食は全死因死亡率が6%増加し、心臓疾患の死亡リスクが13%増加した。
・その後、平均15.7年間追跡調査でも心血管疾患のリスク増加


→(たがしゅうの評価)
これも観察研究で2つとも同じ著者の論文。糖質制限を行うよう特に指導を行ったわけではなく、自然集団の食事の中で比較的炭水化物が少ない(かつタンパク質が多い)集団と比較的炭水化物が多い(かつタンパク質が少ない)集団とが比較されている。その結果、死亡率が高いとされた比較的炭水化物が少ない集団の総エネルギー摂取量は1000〜1200 kcal程度(しかもこれは論文中には直接記載されておらず、論文のデータを元に自分で計算してこないと出てこない数値。LCHPスコアという独自の評価項目と各種疾患死亡率との関係だけが述べられている)。そして同集団の炭水化物摂取比率が50%程度(炭水化物量にして123-154g程度)。
 つまり、本論文で評価された低炭水化物食集団は、一般的に糖質制限食と言えるレベルではなく、「自然集団の中では炭水化物量が少なく、しかも総エネルギー量摂取も少ない集団」である。しかもこの論文は食事栄養調査がなされたのは約15年間のフォローアップ期間中でたった1回でしかも自己記入式のアンケートの結果のみで、そもそも信頼していいのかどうかも怪しい条件となっている。
(問題点)
・比較的糖質摂取量が少なく総エネルギー量も少ない自然集団の結果でしかないのに(というか全然糖質制限になっていないのに)、普遍的に糖質制限食に当てはまる結果であるかのように表現されてしまっている。
・調査の精度が乏しく、独自のスコアを持ち出すなどもされており、恣意性が入る余地が極めて大きい



Sjögren, et al. Am J Clin Nutr. 2010 Oct;92(4):967-74.
平均年齢71歳のスウェーデン人男性924人の約10年追跡調査
・糖質制限食は全死因死亡率が19%増加し、心血管死亡率を44%増加させた。
・伝統的な地中海食は死亡率を低下させた。


→(たがしゅうの評価)
やはり観察研究。糖質制限食を行うよう指示されたわけではなく、自然集団の中での話。しかも本研究に関しては集団における総エネルギー量の記載、炭水化物摂取比率の記載、炭水化物摂取量の記載が一切ない。食事調査は平均10年間のフォローアップ期間中1回のみだが、7日間の食事記録で詳細におこなっているにも関わらず。HDI(Healthy Diet Indicator)、MDS( Mediterranean Diet Score)、CR(carbohydrate restricted)という独自のスコアが設定してあり、低炭水化物集団はCRスコア(2点〜20点)が16-20点の集団と定義している。唯一本文中に適切に調査された集団512名の平均炭水化物摂取比率は43 ± 3%で、7名のCRスコア20点の集団の炭水化物摂取比率は40±2%、タンパク質摂取比率が18±2%で、12名のCRスコア2点(高炭水化物摂取者)の炭水化物摂取比率が60±8%、タンパク質摂取比率が12±1%とだけ書かれている。総エネルギー摂取量は論文中のどこにも書かれていないので、低炭水化物食+総エネルギー不足だったのかどうかの判断は不可能。
(問題点)
・やはり自然集団の中の比較的低炭水化物食の人達について評価されているだけなので、糖質制限食全体の結論であるかのように扱われている。
・独自のスコア設定により正当な基本情報が閲覧できなくなっている。



Nilsson, et al. Eur J Clin Nutr. 2012 Jun;66(6):694-700.
スウェーデン北部のヴェステルボッテン県の男性37,639人、女性39,680人を対象とした追跡調査
・低炭水化物食は総死亡率と心血管死亡率の増加と相関する。


→(たがしゅうの評価)
※原著に当たれなかったため要約のみ読解。
またもや観察研究。LCHP(low-carbohydrate, high-protein)という独自のスコアを設定し、より低炭水化物食の集団とそうでない集団との死亡率を比較している。原著論文に当たれなかったので、総エネルギー量を確認できないが、炭水化物摂取比率38.6%〜61.0%の集団での調査。この論文に至っては論文の結論でも「我々の結果では、LCHPスコアと死亡率との関連を明確に示せなかった」と結ばれている。
(問題点)
・明確な結論が出ていない論文であっても結論の一部が切り取られて糖質制限批判に利用されている。


Trichopoulou, et al. Eur J Clin Nutr. 2007 May;61(5):575-81.
ギリシアの健康成人22,944人を対象とした追跡調査
・低炭水化物・高タンパク食の長期摂取は、総死亡率の上昇と関連。


→(たがしゅうの評価)
※原著に当たれなかったため要約のみ読解。
これまた観察研究。観察集団に対して蛋白質または炭水化物摂取量に応じた独自のスコアを設定し、10分位で低炭水化物・高タンパク集団を設定。食事栄養調査は自己記入式アンケートで実施されたが、平均追跡期間約5年の中で何回実施されたかは不明。評価の際にはエネルギー調整モデルが用いられているが、具体的に総エネルギー量がどれくらいであったかは論文の要約には記載なし。
(問題点)
・糖質制限食の介入結果ではなく、自然集団の中で比較的低炭水化物食の人について評価されている。
・食事栄養調査の信頼性が担保しきれていない。
・なぜか独自のスコアが設定されて評価されている。



JK Snell-Bergeon, et al. Diabetologia 2009 May;52(5):801-9.
米国9〜56歳の1型糖尿病患者571人と対照群696人を対象
・高脂肪・高タンパク食はアテローム性動脈硬化のマーカーの増加と関連し、炭水化物をきちんと食べている人は冠動脈石灰化のマーカーが低下した。


→(たがしゅうの解釈)
これは1型糖尿病集団と健康対照者集団に対して、ある一時点で実施した診察や検査の結果から、何が動脈硬化のマーカーである冠動脈石灰化(CAC)と関連しているかを推定する横断調査。時間経過による変化を見てないので、観察研究よりさらに信頼性が劣る。実際、1型糖尿病集団の平均炭水化物摂取比率は44-46%程度で、健康対照者集団の平均炭水化物摂取比率は47-48%程度とほとんど差がない。また1型糖尿病であれば、インスリン注射が必須でどの程度の量が使われているかは人によって結果は大きく変動しうるが、これについての記載は皆無。もっと言えば、主には脂肪の摂取量とCACとの関連を示そうとしている文脈で、炭水化物はおまけ程度に扱われているが、そのメインの脂肪摂取とCACとの関連でさえ、インスリン投与量との関連を受けている可能性が高いが、この点は全く示されることなく脂肪悪玉の結論が出されてしまっている。
(問題点)
・脂肪悪玉説が前提にあって、まるでそれを支持する結論が出るよう設計されているかのように不備のある研究デザインである。
・それでも最もらしい評価項目(CACなど)が記載されていることで、他の医学者から引用されて論文の不備には触れられることなく医学論文界で拡散されていってしまう。



Seidelmann, et al. Lancet Public Health 2018 Sep;3(9):e419-e428
米国45〜64歳の成人15,428人を対象年た約25年間の追跡調査
・低炭水化物食はより高い早期死亡リスクと関連していた。アテローム性動脈硬化リスクが20%増加した。


→(たがしゅうの評価)
くどいようだがやっぱりこれも観察研究。自然集団を25年間観察し炭水化物摂取比率で比較し死亡率がどうなるかが調査された。25年間で最初と6年後の2回しか食事栄養調査が行われていない。また半定量式という自己記入式アンケートだが、分量を思い出してもらいやすくするために食品サンプルの写真を使用する方法がとられていた。ただ、これによって算出された一日の平均摂取カロリーが1500-1600kcalと、アメリカ人にしては低すぎるため信頼性に乏しい。もし本当だとしても本研究のアメリカ人のBMIの高さを踏まえると糖質制限食+摂取エネルギー不足になっている可能性が高い。また評価されたのは5分位(Q1:炭水化物摂取比率37%、Q2:同44%、Q3:同49%、Q4:同53%、Q5:同61%)で表される5ポイントだけなのに、37%未満も61%以上も全て評価されたかのようなグラフが導かれている。さらに自身の結論の妥当性を補強するために過去の糖質と死亡率について調べた他の観察研究も紹介されているが、なぜか糖質制限批判論文ばかりがピックアップされている(他にも糖質制限が有効という結論の観察研究や介入研究がたくさんあるにも関わらず)。しかもそれらの糖質制限批判論文は上述の①②⑤⑥のみで、いずれも信憑性に問題があるもの。つまり糖質制限を批判する恣意性がこの時点でものすごく感じられる内容となっている。ちなみに補足資料では炭水化物摂取比率50-55%の集団と比較して、40-50%、30-40%、<30%と下がっていくにつれて生存率が下がっていくグラフが表示されているが、なぜか>55%の生存率の低下については触れられておらず、この点にも強い恣意性を感じる。
(問題点)
・20年以上の食事に関する長期調査において1回や2回の食事栄養調査だけで以後その食事がずっと続いているという前提で研究結果が出されていること(本来であれば2年ごとに確認するなどの慎重さが必要)。
・データとしては糖質制限を批判するに足る内容を示しているが、上述のように他の点で恣意性が強く感じられるデータの導き方となっている。しかもその問題は論文の要約には表現されていない(だから要約に書かれた結論だけを読む限り、あるいは結論を導くグラフだけを見る限り、絶対にそのおかしさに気づくことができないという点で非常にタチが悪い。このタチの悪い論文が医学界最高峰の雑誌に掲載されてしまっている。)



欧州心臓学会2018
Science Daily
Low carbohydrate diets are unsafe and should be avoided, study suggests
August 28, 2018
Source: European Society of Cardiology

1999〜2010年の国民健康栄養調査NHANESに参加した24,825人を対象に平均6.4年間の追跡調査
・低炭水化物食をしていた人は総死亡リスクが32%高区なり、さらに、死因別のリスクでは冠動脈性心疾患が51%、脳血管疾患が50%、癌が35%それぞれ増加した。なお、この結果は、高齢者、非肥満者の間で最も強かった。
・同研究チームは、447,506名を対象にした平均追跡15.6年間の7つの大規模前向きコホート研究をメタ分析で調査したところ、低炭水化物食は総死亡リスクが15%高く、冠動脈性心疾患のリスクが13%高く、がんは8%高かった。


→(たがしゅうの評価)
これはヨーロッパの学会が複数の糖質制限の観察研究を統括評価するメタ分析という手法でまとめて結論を表明しているが、ここでもメタ解析に活用された7つの論文のうち7つとも糖質制限を批判する内容のもので、うち4つが上記で紹介した問題のある糖質制限批判論文(①②⑤⑥)である。なぜ糖質制限に肯定的な観察研究や介入研究は一つも引用されていないのか。⑧と同様に結論に恣意性を帯びている
(問題点)
・メタ分析で選出する医学論文の傾向があまりにも一方的に偏っている。
・偏って集めた医学論文の解析で学会公式の声明を導いてしまっている。



Noto, H, et al. PLoS One. 2013;8(1):e55030.
低炭水化物食についての492の観察研究のうち、9つを取り出してメタ分析を実施。
・うち低炭水化物スコアを使用して評価した4つの観察研究 272,216 人のうち、15,981 (5.9%) の全死因死亡例が報告。
・メタ解析の結果、低炭水化物食は全死因死亡率の有意に高いリスクと関連していた


→(たがしゅうの評価)
糖質制限食というか自然集団において比較的低炭水化物食な人達について調べた観察研究の結果をまとめようとしたメタ解析論文。選出基準はMEDLINE, EMBASE, ISI Web of Science, Cochrane Library, ClinicalTrials.gov などの医学論文検索エンジンで「低炭水化物食」「死亡率」「生存率」「心血管疾患」と入力して引っかかるかどうか。
最終的に選ばれた9つの論文のうち、6つが上述の信憑性の乏しい糖質制限批判論文(①②③④⑤⑥)となっている。
ちなみに候補論文は492論文あったが、なぜ他の483論文がメタ解析に採用されなかったかは要約を読んで調査目的に叶わなかったからとだけ書かれているが、詳細理由は不明。
(問題点)
・論文の選出基準は不明確でかつ結果が糖質制限批判論文に偏っている(糖質制限肯定論文もあるにも関わらず)ため、結論の導き方が不公平



以上、10パターンの糖質制限批判論文を取り上げました。
主に観察研究というタイプの医学論文ばかりですが、糖質制限の批判の際に挙げられる時に非常に頻度が多いので取り上げているところはあります。

他にも違うパターンの糖質批判論文もあるにはあるのですが、長くなってしまうのでひとまずここで総括しておきましょう。


大規模な研究で「糖質制限は危険だ」という結論を導いているものは、

必ずといっていいほど観察研究、もしくはそのような観察研究ばかりを集めて総括した研究となっていることがわかります。

つまり「糖質制限食はこういう食事療法です」と指導されてその食事療法の効果が検討されたわけではなく、

普通に生きていて比較的炭水化物(糖質)の摂取量が少なめだった人達をピックアップしてそのリスクが評価されているというわけです。

「(自然だろうと指導していようと)結果的に糖質制限状態を評価しているのであれば別にいいではないか」と思われるかもしれませんが、それは違うと私は思います。

なぜならばこれだけ糖質ばかりが身の回りにあふれている状況で、自然に糖質の摂取量が少なくなった集団と意図的に糖質の摂取量を減らした集団とでは明らかに食事パターンが異なると考えられるからです。

さらに全ての論文で確認できたわけではないものの、ほとんどの糖質制限批判の観察研究では低炭水化物食の集団が総エネルギー摂取不足の傾向が示されています。

加えて総エネルギー摂取量のわからない研究であっても、集団を炭水化物の摂取量などで10分割する独自のスコアが設定されて、エネルギー調整という作業を必ずと言っていいほど行なっています。

これはどういうことかと想像してみますと、「自然に低炭水化物になる集団は十分なエネルギーが確保できずに炭水化物摂取比率40%前後となっている人が多く、それなのに同じエネルギーを摂取したと仮定してデータが修正評価されている可能性がある」ということです。

私は論文を振り返っていて、なぜ純粋に総エネルギー摂取量と栄養素の摂取割合(PFCバランス)で評価せずに、わざわざLCHPスコアとか、D1〜D10スコアなどの分割用スコアを設定して結論を出すのかが最初はよくわかりませんでした。

1つや2つの論文だけがそうしているのならまだしも、大規模な観察研究が軒並みそのようにしているわけですから、これには何か意味があるはずと思いました。

そこで気づいたのは「まともに総エネルギーとPFCバランスで評価したら、エネルギー摂取量の低い人が死亡率が高いという結論が出てしまう」のではないかということです。

もっと言えば、研究者は「糖質制限は危険である」という仮説を立てた段階で、そのような結果が出ることを期待しています。

しかし普通に評価すると、「総エネルギー摂取量が少ない人が死亡率が高い」という結果が出てしまうと。でもそれは期待している結果ではないから、なんとか「糖質制限が危険である」と示すデータが出ないかと悪戦苦闘した結果、

集団を炭水化物の摂取量で10等分し、エネルギー摂取量も均等になるよう調整した結果、「糖質制限が危険である」というデータを導くことができたという流れなのではないかと思います。

でももし低炭水化物食の集団の総エネルギー量が少なければ、食べていないものは食べていないのだから、どんな調整をしようが総エネルギー摂取量が均等になるわけはありません。

しかしここで総エネルギー摂取量のデータを不明瞭にした状態で、独自のスコアで表現してエネルギー調整を行うという統計的な処理を加えると、

総エネルギー摂取量が少ないはずの低炭水化物食のデータが過大評価されてしまう、つまり実際の危険性よりも大きな危険性として表現されてしまう可能性が出てきます。

もちろん、研究者はこれを意図的にやっているわけではないと思います。むしろ公平性を期すつもりでエネルギー調整を行なっているかもしれません。

しかしそもそも研究者が一才の介入を行なっていない観察研究でそのようなエネルギー調整を行なってしまうと、ありのままのデータではなくなってしまう恐れがあるのです。

もちろん、たまたま総エネルギー摂取量が中炭水化物食集団や高炭水化物食集団と同じだという低炭水化物食集団が偶然にも十分な数いれば観察研究であっても、総エネルギー摂取量を調整して比較することもできるわけですが、

そもそも総エネルギー摂取量が集団ごとに全然違うようであれば、エネルギー調整というプロセス自体が事実から離れさせる作業になってしまうことになります。

ところが「糖質制限は危険である」という結論を出したい研究者は、その不自然さに気づかずに自分の想定と合ったその結論を容易に受け入れてしまうのかもしれません。

そしてそのような低炭水化物食の危険性が過大評価された医学論文を、「エビデンスレベルが高い」と評価してこうした医学論文だけを集めてメタ解析を実施し、公式見解を作ってしまうと、最初の歪みがどんどん増幅されていく形になってもしまうわけです。

ちなみに研究者が医学論文のデータを捏造して結論を歪曲して発表しているという可能性はここでは考えていません。勿論その可能性もゼロではないものの、それを認めると何でもありになってしまいます。

あくまでも意図的な操作はないと仮定した状態で、なぜ糖質制限批判論文が量産されてしまうのかについて考えてみたいのです。

あと自然に低炭水化物食になった集団だと、炭水化物摂取比率は40%前後であり、これはいわゆる緩やかな糖質制限に近いレベルです。

緩やかな糖質制限食だと血糖値の上昇や高インスリン血症が回避しきれず、その状態で高脂質・高タンパク食になることで脂質蓄積、糖タンパク化促進でむしろ高炭水化物食よりも健康を害する可能性も否定できないかもしれません。

ただその場合は、総エネルギー摂取の不明瞭化や、独自のスコア設定という小細工を行う必要なく、「糖質制限は危険である」という結論を導けるはずなので、どちらかと言えば可能性は低いような気はします。


ここまで考察したところで、最後に問題の本質は何か、改めてまとめてみたいと思います。

・世の中には「糖質(炭水化物)主体の食生活が常識(健康的)だという価値観が根付いている
・その価値観を強固に持つ人は「糖質制限は危険である」という感覚を疑いなく信じやすい
・「糖質制限は危険である」という感覚を持つ研究者は、その視点で研究計画を立て、その視点で研究結果を評価する
・偏った視点で研究結果を眺めていると、研究方法の不備や不公平、過大評価などがあっても気づきにくい
・偏った視点で作成された医学論文では、要約には「糖質制限は危険である」という結論がまことしやかに表現されるが、方法論を詳しく読み解くと不備があるという状況が作られる
・医学論文が引用される際にはその要約が主として採用されるため、結果として引用されればされるほど要約の偏った結論が肥大化していくことになる
・偏った視点で導かれた結論が、「科学的な」結論として科学を信奉する人達を中心に支持されることになる。本当はそれが「科学的な」結論ではなく、統計学的に偏って導かれた「偏見的な」結論であるにも関わらず。


医学研究は科学に則った手法で行われ、正しく実施された研究の信頼性は高いと考えられています。

しかし実際にはその手法以前の問題として、研究者の価値観自体が偏ってしまっていた場合、

科学的な手法に則りながら、誤った(歪んだ)結論を導いてしまうことになるのだということを、私達は肝に銘じておく必要があると思います。

だから医学論文だけを論拠にしている人は危ういのです。


たがしゅう
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2022/09/14(水) 21:35:12 | | #
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