ワクチンの副反応の本質とは

2022/04/17 09:30:00 | ワクチン熟考 | コメント:6件

先日はコロナワクチンの心筋炎発症リスクについて論じたLancetの論文について私見を述べたわけですが、

そこで明らかになったのはコロナワクチン以上に天然痘ワクチン(種痘)の心筋炎発症リスクが大きいという事実ではないかと思います。

しかしよく考えてみて下さい。同じ「ワクチン」という名前でありながら、両者は全く別の効き方をしています。

コロナワクチンは「遺伝子ワクチン」というカテゴリーの薬で、病原体そのものではなく、「病原体の一部を作らせる遺伝子」を入れています。

天然痘ワクチンの方はと言えば、昔ながらのやり方で弱毒化させているとは言え「病原体そのもの」を使っています。

両者は「病原体でないもの(コロナワクチン)」と「病原体そのもの(天然痘ワクチン)」という意味で明確な違いがあるわけですが、かたや両者は心筋炎という事象を惹起する共通の潜在性を持っています。

私たちは各種情報によって「心筋炎はコロナワクチン特有の副反応」と思わされている人も多いかもしれませんが、全くメカニズムの異なる天然痘ワクチンでも起こっているということは、それが偶然でないとしたら心筋炎はコロナワクチン特有の要素で引き起こされているわけではない可能性が出てきます。

また同様に天然痘の特有の毒性によって心筋炎が引き起こされているわけでもないという可能性も出てきます。

一方で全てのワクチンで心筋炎のリスクが高いわけではありません。例えばインフルエンザワクチンなどは不活化ワクチンが何十年も使われてきたわけですが、心筋炎の報告はほとんどありません。

はたしてワクチン接種後に心筋炎のリスクを高めているコロナワクチンと天然痘ワクチンに共通する要素とは何なのでしょうか。 この疑問について考える際に、関連がありそうな情報が1つあります。

それはコロナワクチン接種後に帯状疱疹が増加してきてるのではないかという話です。

2022年4月7日にネットに上がったニュースで、近畿大学医学部 皮膚科学教室の大塚篤司主任教授は”コロナ禍で「帯状疱疹」急増”と題した記事の中で、「きっちりと、科学的に証明されているわけではないが、コロナワクチンを打った患者さんの10%くらいが、帯状疱疹のヘルペスウイルスが再活性化するんじゃないか」という見解を述べておられます(2022年4月17日時点でこのニュースはなぜか削除されています。なぜでしょうか。)

もし帯状疱疹の発症にコロナワクチンの関与があるのだとすれば、コロナワクチンは心筋炎も起こすし、帯状疱疹も増加させるという多様な副反応をもたらすワクチンだという可能性が見えてきます。

ところで帯状疱疹という病気は「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」というヘルペスウイルスに属するウイルスが、普段は発症者の神経節というところに潜伏感染していて特に悪さをしていないのだけれど、何らかの原因で免疫が低下した場合(疲労、ストレス、ステロイド使用など)に再活性化して神経節に沿って皮疹を引き起こすとされています。

心筋炎とは随分起こっていることが違うように感じられるように感じます。またコロナワクチンが始まる前に帯状疱疹の増加を訴えていた皮膚科もあったようなので、コロナワクチンが原因というよりもコロナ禍のストレスが原因で免疫が低下し、帯状疱疹が増加したというストーリーの方が考えやすいかもしれません。

しかし、2022年4月に入って急速に帯状疱疹の増加が注目されるようになった経緯が気になり、コロナワクチンと帯状疱疹の関連について検討した医学論文がないかどうかを調べたところ、気になる情報がいくつか見つかりました。

一つは「コロナ患者の70%以上にリンパ球減少があり、その詳細はCD3及びCD4陽性のヘルパーTリンパ球、特に自己寛容(自分を攻撃しないようにさせる)に関わる制御性Tリンパ球の減少が顕著で、その傾向は重症例ほど強く認められた」という情報、

もう一つは「コロナワクチン接種後に用量依存的(量が多ければ多いほど傾向が顕著)に一過性のリンパ球減少が起こる」という情報です。

以前、糖質過剰やストレスでもリンパ球減少が起こることについても触れましたが、コロナ患者でもそういうことが起こっていて、コロナワクチンでもそのリンパ球減少が投与した薬の量が多ければ多いほど強く起こる傾向があるというのです。

そしてそのリンパ球減少がもたらす意味に「自己寛容の破綻」、すなわち自己免疫疾患化があるということです。

少し見えてきたように思います。要するに「異物が侵入して身体に強烈なストレスがかかると炎症が惹起された後にひとまずはリンパ球が増加して対応するけれども、その炎症やストレスが強すぎた場合にリンパ球が減少し、そのリンパ球減少が自己と他者の区別を難しくさせる、すなわち自己免疫疾患化させる」というストーリーがあるということです。

ここで、「帯状疱疹は自己免疫疾患でも何でもないでしょう」と思われるのが一般的な医療者の感覚だと思います。

しかし私は以前、「ウイルスとは自己と非自己の中間的な存在だ」という仮説を提唱しました。そして帯状疱疹を引き起こす「水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus;VZV)」はヘルペスウイルス属に属するウイルスで、このヘルペスウイルスの特徴は潜伏感染することです。

潜伏感染というのは言ってみれば、ウイルスの自己性が高まっている状態です。この状態にある時に自己を攻撃してしまう自己免疫疾患化した炎症が駆動すれば、当然自己的なウイルスたるVZVも攻撃されます。それが帯状疱疹として表面化して私達が認識しているということなのではないでしょうか。

ちなみに天然痘ワクチンが帯状疱疹を起こすのかどうかと言われたら、そもそものデータが古いこともあってかその証拠は見つけられませんでした。

ただ実は天然痘と「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」が引き起こす「水痘(水ぼうそう)」という病気は19世紀までは互いに区別されないほど似通った病気だったそうです。

また天然痘ワクチンは天然痘ウイルスそのものを用いる「生ワクチン」であったため、副反応として天然痘様の症状を引き起こしていたこともあったようです。

そうなると天然痘の生ワクチンによって天然痘と似通った「水痘」だけでなく、「帯状疱疹」が引き起こされていた可能性も理論上は十分あるのではないかと思います(まさか天然痘のせいだと思われずにスルーされていたかもしれませんが)

ただここは根拠に乏しいのでひとまずは脇に置いておきましょう。今回の考察によって導かれた重要点は以下だと思います。

ワクチンはすべからく「異物注入による異物除去反応の強制駆動」です。

それなのに、心筋炎が副反応として問題にされたワクチンはコロナワクチンと天然痘ワクチンだけです。

しかもコロナワクチンと天然痘ワクチンは全く違う物質ですが、強力な炎症が惹起されることによって自己免疫疾患化のプロセスが進む可能性が明らかにされました。

ということはコロナワクチンと天然痘ワクチンの共通点は強烈な炎症を惹起させる要素があるということなのではないかと思います。


確かにコロナ感染でも強力な炎症は惹起されるかもしれません。

しかし自然発症する場合、免疫が乱れる宿主側にも一定の責任(要因)はあると言えますが、

その強力な炎症をわざわざ人為的に引き起こすというのはいかがなものでしょうか。

明確なメリットがあればそれもやむなしかもしれませんが、少なくともコロナワクチンに関して世界の感染状況を見る限り、そのメリットを全く感じることはできません。

拙記事が皆様にとってコロナワクチンを考える時の一助になれば幸いです。


たがしゅう
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コメント

糖質制限+ビール=湿疹?

2022/04/19(火) 09:40:50 | URL | neko #-
秋頃からは4回目が推奨されるのでしょうか。私の91歳の母は3回目のワクチン済みで、私の言うことなど聞いてくれないので諦めてますが(あ、対話ですよね!)、ホームにいるので逆らえないようです。

ところで、糖質制限で新たな発見です。と言っても私の夫の超個人的な体験かもしれませんが。内容は「糖質制限とビールの組み合わせは赤い湿疹を発症させる!?」です。夫の場合、額の赤い湿疹です。

糖質制限前ービール、ワイン、ウィスキーなど好む。湿疹なし
5年ほど前から糖質制限を開始ー飲酒量変わらず。湿疹が出始める。その後、ウィスキーをやめ、ビールは糖質0ビールにする、飲酒は1日おきにするなど変化はあったが湿疹改善せず。
→ 湿疹は糖質制限のせい???
(数年前にたがしゅう先生、江部先生にも相談しましたがよくわからず)

先日、歯痛のため抗生物質を飲んだため飲酒を2週間ほどストップしたところ湿疹が治るが治療後にビール500mlを2本飲んだら翌朝さっそく湿疹が発症!飲酒をやめ、湿疹が治ってからワインで試してみたところ湿疹なし(まだ油断禁物ですが)。

ということはビールが犯人?ホップとか?
不思議な点は、糖質まみれの食生活をしていた時はビールをいくら飲んでも湿疹が出なかったことです。ということは、

糖質制限により体の毒素があぶり出されホップと結びつくことで額の湿疹として体の表面に現れた。。。ということでしょうか?

くだらない話、失礼しました。要は飲まなきゃいいのですが、一切アルコールを飲めないぐらいなら赤い湿疹ぐらいいいそうです。若い女の子だったら違う選択をしそうですが、おじさんですからね。今後ワインで何か変化があったらまたご報告します。


Re: 糖質制限+ビール=湿疹?

2022/04/22(金) 18:07:07 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
neko さん

 コメント頂き有難うございます。

> 糖質制限前ービール、ワイン、ウィスキーなど好む。湿疹なし
> 5年ほど前から糖質制限を開始ー飲酒量変わらず。湿疹が出始める。その後、ウィスキーをやめ、ビールは糖質0ビールにする、飲酒は1日おきにするなど変化はあったが湿疹改善せず。
> → 湿疹は糖質制限のせい???
> 糖質制限により体の毒素があぶり出されホップと結びつくことで額の湿疹として体の表面に現れた。。。ということでしょうか?


 湿疹は「皮膚の炎症」ですので、何らかの異物を除去しようと反応しているか、解毒のプロセスを反映しているかという辺りを想像します。
 一過性であれば糖質代謝から脂質代謝に急激に切り替わったことによって起こる色素性痒疹の可能性もあるかと思いましたが、5年も続いているということはその可能性は低いでしょうね。逆に5年も持続していてそれでも糖質制限を継続できているということは湿疹の程度としては軽度ということでしょうか。
 何らかの原因で脂質代謝に適応できていない可能性を考えますが、何が原因になっているのかまでは申し訳ないですがわかりません。この場で言えることとしてはその辺りかなと考えます。

2022/04/23(土) 08:15:25 | URL | neko #-
お返事ありがとうございました。痒みや痛みはなく単に外見のみの問題なので(中で何かが起こっているのでしょうが)、あまり問題ではないのですが。ただ、糖質制限+ビールという組み合わせの場合のみ反応するというのが面白いなと思いました。今のところ白ワインでは反応がないようなので本人は喜んでます。
糖質制限といえば私のお腹もペッタンコにはなりません(一時は栄養不足の時期さえありました)。先生も体重減らないとおっしゃってましたが、健康であるのが主目的とはいえ外見的にももっと効果があればよりベターなのに。。。と思うのは贅沢でしょうか、笑。

Re: タイトルなし

2022/04/23(土) 08:49:55 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
neko さん

 御返事頂き有難うございます。

 確かに人種や性別などと違って体重であれば、自分の努力で変えられそうな気がしますので、
 糖質制限で減らしきれない体重は、自分の努力不足ではないかと、もっとやり方次第で体重を減らせるのではないかと、そんな風に考えて私も色々自分なりに努力してきた時代がありました。

 でも今は体重も、人種や性別のような側面があると考えるようになりました。
 より正確に言うならば「脂肪細胞の分裂のしやすさ」という先天的な資質です。
 私は他の人達より糖質摂取後のインスリン分泌で脂肪細胞が分裂する能力が高かっただけで、一度増えた脂肪細胞はそう簡単に減数分裂しないのだと、ただそれだけの話なのだと私は今考えています。そうだとわかれば、あとは自分の持つ資質を自分がどう受け止めるかの問題です。

 2019年6月2日(日)の本ブログ記事 
 「『糖質制限でやせ切らない』について 後編」
 https://tagashuu.jp/blog-entry-1609.html
 もご参照下さい。

2022/04/25(月) 21:11:13 | URL | neko #-
「『糖質制限でやせ切らない』について 後編」のご紹介ありがとうございます。非常に興味深い内容でした。BMIで一律に健康状態を判断することはできないのですね。本来はその人の人生全体における現状が大事なのであって、現時点だけを切り取っても「その人にとっての最善、健康な状態」の判断はできないということでしょうか。
でも先生もおっしゃっているように脂肪を効率的に蓄えられる体質は生物にとって望ましいことですし、そう考えると感謝の気持ちも湧いてきます。

Re: タイトルなし

2022/04/27(水) 12:08:47 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
neko さん

 丁寧なコメント返しを頂き有難うございます。

> 本来はその人の人生全体における現状が大事なのであって、現時点だけを切り取っても「その人にとっての最善、健康な状態」の判断はできない

 大事な視点と思いました。
 例えば今何らかの理由で急に社会が飢饉に陥った時には、脂肪を蓄えやすい人は生存上有利に働くというのはよく言われるところですし、
 そこまで極端ではないにしても、時間とともに自分の価値観や社会の価値観は変化していくということは実感できるところではないかと思います。今「良い」とか「悪い」という判断をしている背景には、そこに何かしらの「価値観」があるという構造がわかれば、その「価値観」と自分がどう向き合うかという選択ができるかに気づくことができると私は思います。

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