ワクチンで頼みの医学論文では結論が出せない
2021/12/13 23:50:00 |
ワクチン熟考 |
コメント:2件
ワクチンというのは通常の薬が病人に対して使用するのに対して、
健康な人に使用する薬なので、「何も変化がないこと」がワクチンの期待する効果ということになります。
しかしながら、本当は「何も変化がない」という判断をすることは難しいものです。なぜならば「何も変化がない」というのはいつからいつまでの話なのかがまずわかりにくいですし、
本当はワクチンを打っても打たなくても「何も変化がなかった」かもしれないですし、
もっと言えば、「何も変化がない」と思っていながら、思わぬところで別の身体の歪みをきたしていることもあるかもしれませんし、
そんなこともあって、本来ワクチンを打って「何も変化がない」という期待通りの変化が本当に得られているのかどうかを判断するのは極めて難しいことのはずです。
それなのに現代に至るまでに「ワクチンは明確に有効である」と私達へ認識させるに至らしめたのは医学研究(統計学)による検証の存在が大きかったと思います。 「子宮頸がん(予防)ワクチン(=HPVワクチン)」もその有効性が医学研究によって強力に下支えされているワクチンのひとつです。
先日来紹介している「こびナビ」副代表の木下喬弘ドクターの著書には次のようなことが書かれていました。
(p80-81より引用)
(前略)
これまでのほとんどの研究では、HPVワクチンが子宮頸部のHPV感染を防いだり、前がん病変の発生を防いだりする効果を調べていました。
これは、10代前半でワクチンを打ってから、30代や40代で発症するがんを防ぐ効果を確認するには、それなりに時間がかかるからです。
前がん病変を防ぐ効果は非常に高く、16型や18型などのハイリスクHPVに感染していない状態で接種すると、これらの型による前がん病変をなんと約99%防ぐという研究結果が出ています。
これに加えて、2020年にはスウェーデンから、4価のHPVワクチンが30歳までにかかる子宮頸がんのリスクを約63%減少させるという研究結果が報告されました。
特に17歳までに接種すると、子宮頸がんのリスクを約88%低下させることもわかり、性交渉を始めるまえに接種することの重要性が確認されてきています。
(引用、ここまで)
短い引用ですが、ここで私が感じるポイントは大きく2つです。
一つは「これまでの研究では、HPVワクチンが子宮頸がんを予防する効果が直接証明されたわけではなかった」ということ、もう一つは「前がん病変を防ぐ効果が約99%もあるのに、なぜ実際には子宮頸がんを予防する効果が63〜88%止まりなのか」ということです。
「HPVワクチン」にまつわってはもうその子宮頸がん予防効果が科学的に確実といったスタンスで推奨されているというのに、その実肝心の子宮頸がんの予防効果はごく最近まで検証されていなかったというのだから、まずその歪みに驚きます。
それでも「前がん病変の予防効果が99%」だと言われれば、そのように確実に効果があると思っても不思議ではないかもしれません。しかしちょっと待って下さい。
コロナワクチンの時も「ワクチン有効率95%」という絶大な効果を示す医学研究結果が、私達をワクチン接種という行動に大きく動かしました。しかしながら実際にはその数字ほどの効果が実感されることなくワクチン接種後もほとんどすべての国で感染拡大は続きました。
というのもこの数字の意味は、「95%の確率でウイルス感染を予防する」という意味ではなく、約2ヵ月の期間、約20000人のワクチン接種群と約20000人のワクチン非接種群を比べ、前者での発症者が8人、後者での発症者が162人、すなわち、何もしなければ162人が発症していたのを8人の発症に抑えたということで、1-8/162≒0.95で「ワクチン有効率95%」という数字が算出されていました。
肌感覚に合う表現をすれば、「ワクチン有効率94-95%の意味は、ワクチンを打てばコロナ発症率が162/20000=0.81%のところを8/20000=0.04%に下げることができる」というのを「ワクチン有効率95%」という数字の実質的な意味です。
それならば「ワクチンを打っていなくても、99.19%の確率でコロナにかからない」という意味にもなるわけですし、ワクチンを打って「何も変化がない」場合、それがワクチンのおかげなのかどうかまずわからないということになるでしょう。しかもそれは2ヵ月間という短い間の効果しか保証できていません。
木下ドクターの紹介された子宮頸がんワクチンの前がん病変予防の「ワクチン有効率99%」という数字も、額面通りにすごい予防効果のワクチンだと受け取るのではなく、少なくともそうした数字のトリック的なことがないのかということは考えた方がよさそうです。
そう思ってこの文章に引用されていた文献を当たってみたところ、この数字は少なくとも26件の大規模臨床試験で73,428人もの人を対象とし、中で1.3~8年の追跡期間を行った10件の臨床試験で確認したものだということでした。
複数の大規模臨床試験をミックスさせて結論を導く、いわゆるメタアナリシスと呼ばれる研究手法です。医学研究の中では最もエビデンスレベルの高い手法だと評されています。
これであればHPVワクチンの高い予防効果が証明されたも同然だと思われるかもしれませんが、原著をよく見てみると、「ワクチン有効率99%」という数字が算出されたのは、ごく一部の条件下のみでの話でした。
具体的には「ハイリスクのHPVのウイルスDNAが検出されていない16歳〜25歳の女性に、HPVワクチンを打ったら」という条件下で「ワクチン有効率99%」という数値が算出されていました。
そのハイリスクのHPVとは何かと定義を確認したら「HPV16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59」の12種類のHPVの型を指すようです。
ところが、子宮頸がんの原因と目されている「HPV16, 18の二つの型のウイルスDNAが検出されていない16〜25歳の女性」に絞ると、「ワクチン有効率90-95%」にまず下がります。
また「24歳〜45歳の女性」に集団を変えると、「ワクチン有効率39〜84%」へとガクンと低下します。少し年齢がずれただけで随分印象が変わります。
だからこそ生殖可能年齢になる前にHPVワクチンを打つべきだという主張になるのだと思いますが、
例えば「ワクチン有効率99%」の一例で、前がん病変の一種とされている「HPV16,18型に関連する中等度異形成(CIN2+)」に対するハイリスクHPV感染のない16-25歳女性での予防効果を見たデータでは、
10000人のうち、前がん病変を示したのはワクチン接種群で164例、ワクチン非接種群で2例、1-2/164=0.987という計算で「ワクチン有効率99%」という数値が算出されています。
さきほどのコロナワクチンの時と同様、98.36%の人はHPVワクチンを打っていても前がん病変を生じないという解釈ができる数字だということになります。
コロナワクチンで実際の動向が「ワクチン有効率95%」だとは到底思えない感染者数の推移を示したことを踏まえますと、この「ワクチン有効率99%」もあまり額面通りに受け取らない方がよい可能性が見えてきます。
しかしコロナワクチンが効かない理由はデルタだのオミクロンだのといったウイルス変異が原因とされてきましたが、
HPV(ヒトパピローマウイルス)は変異の起こりにくいDNAウイルスです。少なくとも変異が理由でワクチンが効かないということは考えにくいでしょう。
そうすると次に気になるのは、前がん病変ではなく、実際に子宮頸がんをどのくらい減らしたかが気になるわけですが、
これについても木下ドクターが書かれた文章の引用文献を当たってみますと、2020年に出されたスウェーデンの文献が引っかかってきます。
スウェーデンでは2006年にHPVワクチンが承認されていて、2019年時点で13歳の女の子の86%が少なくとも1回のHPVワクチン接種を受け、2回以上受けている子も80%以上にのぼるようです。
そのスウェーデンにおいて約10年くらいの経過観察期間において浸潤性の子宮頸がんの発症率を約63%低下させたという研究結果が確かに書かれていました。
具体的には、ワクチンの接種群では100,000人あたりの子宮頸がん発症が47例、非接種群では100,000人あたりの子宮頸がん発症が94例という差から「ワクチン有効率63%」という数値が算出されているようでした。
そして17歳よりも前にワクチン接種した人で限れば、28歳までに子宮頸がんを発症した人は100,000人中4例だけでした。ここでも生殖可能年齢よりも前にHPVワクチンを接種しておく必要性が強調されているように思います。
承認から14年経過し、積極的にHPVワクチン接種を勧めてきたスウェーデン、さぞ子宮頸がんの数が抑えられているのだろうと現在子宮頸がんの患者数がどうなっているのだろうと確認してみると、
同じく2020年に発表された次の論文にはこのように書かれていました。
(以下、論文Acta Oncol. 2020 Aug;59(8):988-993.サマリーより引用)
We studied the cohorts of all 3,047,850 individual women living in Sweden in each year from 2002-2015.
(2002年から2015年の各年にスウェーデンに住む全3,047,850人の個人女性のコホートを調査した。)
(中略)
Among women adequately screened with normal results there was a strong incidence increase in 2014-2015 compared to previous years (Incidence rate ratio (IRR) = 1.59, 95%CI = 1.36-1.85), but no significant increase among unscreened women (IRR = 1.09, 95%CI = 0.94-1.27). There was no increase in incidence 0-2.5 years after a normal smear over the study period (IRR = 1.04, 95% CI = 0.88-1.24), but a strong increase 3-4 years after a normal smear since year 2009 (IRR = 1.52, 95% CI = 1.25-1.84).
(調査期間中、正常な塗抹標本から0~2.5年後の罹患率は増加しなかったが(IRR=1.04、95%CI=0.88~1.24)、2009年以降、正常な塗抹標本から3~4年後の罹患率が強く増加した(IRR=1.52、95%CI=1.25~1.84)。結論 調査期間中、正常な塗抹標本から0~2.5年後の発症率は増加しなかったが(IRR=1.04、95%CI=0.88~1.24)、2009年以降、正常な塗抹標本から3~4年後の発症率が強く増加した(IRR=1.52、95%CI=1.25~1.84)。)
(引用、ここまで)
要するに少なくとも2015年までのデータで、スウェーデンの子宮頸がん発症者は減るどころか増えているのです。
2006年に承認され2015年は約10年経過しているわけですから、HPVワクチンの効果はもうそろそろ出てきてしかるべきです。その時期にも関わらず子宮頸がんが減るのではなく、増えているというのは一体どう考えればいいのでしょうか。
ちなみにこの論文の中では「検査体制の不備」について言及されていましたが、検査がどうであろうと子宮頸がんの母数自体が下がっていれば、偽陽性だとしてもそれほど検出されないはずです。逆に増加するというのはやはりおかしい。
なぜ、スウェーデンではHPVワクチンが有効だというデータが出そろっているのに、子宮頸がんは増えているのでしょうか。
「HPVワクチンが有効というデータが真実を反映していない」という可能性と、「子宮頸がんが増えているというデータが真実を反映していない」という可能性、あるいはそのどちらもの可能性が考えられますが、
一つ参考になるのは、ワクチンというのは製薬会社にとって巨額の利益を生み出すが故に限りないほどに大きい利益相反が生まれうるということです。
そう思って、前者のHPVワクチンの子宮頸がん予防効果を示した2020年論文の研究者達の利益相反の記載を確認すると、スウェーデン戦略研究財団、スウェーデンがん協会、スウェーデン研究評議会、及び中国奨学金委員会の4団体から助成金を受け取っていることがわかります。
一方の後者の子宮頸がんが増加していることを示した2020年論文の研究者達の利益相反はどうかと見ますと、5人の著者のうち総責任者の方がHPVワクチンの製造業者(メルク)からHPVワクチンに関する研究のための助成金を受けたことがあるけれど、他の4名には利益相反はないと書かれていました。
またこの研究もスウェーデンがん協会からの支援を受けているとの記載もありました。
これだけでは何とも言えないし、それぞれの支援組織がどういうものなのかもわかりませんけれど、利益相反の強さで言えば前者の方が後者よりも大きい印象を持ちます。
ワクチンが効くという結果が出るのと、ワクチンが効かないという結果が出るのとでは、その後の活動に大きな影響が出てしまう組織は確かに存在すると思います。
これは、ワクチン関連論文を鵜呑みにしてはいけない要因のひとつになるのではないかと私は思います。
少なくとも、本当のところは医学論文だけで考えていてもわからないということだけは言えると思います。
では医学論文が当てにできなければ、私達はワクチンとどう向き合っていけばいいのでしょうか。
次回はそのことについて私の見解を語ろうと思います。
たがしゅう
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
勉強になります
コロナが始まってからはそういった「数字のトリック」ばかりで、どんなニュースを見ても疑ってかからないといけないので疲れます。先日もドイツで「陽性者は未接種者ばかり!」とニュースになっていましたが、ドイツ在住の方によるとどこに行くにも未接種者のみが検査をさせられるので「陽性者は未接種者ばかり」になるのは当たり前だそうです。大抵は子供騙しのトリックなのですが、隠された部分をその度に探したりするのは大変です。
ドイツの医師が書いた本で「計画された コロナパンデミック」(スチャリット・バクディ著)を読んでますが、そういった数字が政治でも多用されている実例がたくさん出てきます。
ちなみに、文中の「ワクチン有効率94-95%の意味は、ワクチンを打てばコロナ発症率が8/20000=0.04%のところを162/20000=0.81%に下げることができる」は逆ですよね?
Re: 勉強になります
コメント頂き有難うございます。
御指摘の通り、利益相反は決して無理できない情報の偏りを生む構造ですし、コロナ禍において数字のトリックは至るところで顕在化してきています。
逆に言えば、今までもそのような数字のトリックがあったにも関わらずほとんどの人が気づかなかった状況であったと言うこともできるでしょう。自分の頭で考える必要性が強く求められていると思います。
> ちなみに、文中の「ワクチン有効率94-95%の意味は、ワクチンを打てばコロナ発症率が8/20000=0.04%のところを162/20000=0.81%に下げることができる」は逆ですよね?
御指摘頂き有難うございます。間違っておりました。修正させて頂きます。
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