子宮頸がんワクチンの副反応はなぜ1年以上経ってから起こるのか

2021/10/21 18:30:00 | ワクチン熟考 | コメント:0件

前回は「ウイルス性疾患がウイルス感染が原因ではなく、ウイルスという物質への宿主の認識のしかたが歪むことでもたらされる」というお話をしました。今回はその話をもう少し深めていきます。

コロナワクチン推進派の人達から聞かれる副反応に関する説明に次のようなものがあります。

ワクチンの副反応は遅くとも6-8週以内に起こる。そして今回のmRNAワクチンの成分や生成されるタンパク質は2週間以内で分解され、長期の副反応は極めて考えにくい

この考え方は「病原体病因論」に則ったものだと思います。病気というものが起こっているのであれば、そこには必ず病原体が存在しているはずだというものです。

しかしその考え方にはすでに大きな矛盾が生まれています。例えばコロナ感染後、数ヶ月経過経過しておりしかもコロナの陰性が確認されているにも関わらず種々の症状をきたす「コロナ後遺症(LONG COVID)」と呼ばれる状態はまさにそうですね。

それさえ「病原体病因論」の立場に立てば、ウイルスが何らかの未解明の仕組みを通じてそこに病原体が存在しなくても病気を引き起こしているというストーリーを考えるかもしれません。

しかし、そう考えると必然的にワクチン接種でも同様に、そこにワクチン成分が存在しなくても病気は引き起こされうるということになってしまいます。

ましてやワクチンは長期的な感染予防効果を期待する薬であり、実際にワクチン成分が消えた後であっても抗体価上昇という現象は少なくとも半年以上は維持されているということは明らかです。なぜこの歪みによって害がもたらされることはないと言い切れるのでしょうか。

この矛盾は「病原体病因論」から「宿主病因論」へと転換することで一気に解消されます。「病原体がそこに存在するかどうか」ではなく、「宿主(生物)が外界をどのように認識するか」によって病気は生まれるのです。 そしてそう考えると、この話はコロナワクチンの話に留まらないという全貌が見えてきます。

ヒトパピローマウイルスの感染が原因とされる子宮頸癌を予防する「ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン)」、通称「子宮頸癌ワクチン」は主な接種対象が若い世代の女性でしたが、

稀ながら一部の女性に重大な後遺症をもたらしたことが大きな社会問題になりました。

それ故、それまで積極的な接種が勧奨されていた「子宮頸癌ワクチン」は2013年6月に一連の騒動を受けて積極的な接種勧奨が差し控えられることになりました。

しかしその後の調査で国は「子宮頸癌ワクチン接種と一部の若年女性に生じた原因不明の症状との因果関係はない」という判断を下し、なんとここに来て再び積極的接種を勧奨し直そうという動きが出てきています。

国は子宮頸癌ワクチン後に発生する重度の有害事象の原因は、「機能性身体症状」だと説明しています。

「機能性身体症状」とはわかりにくい言葉ですが、要するに「色々調べても身体に構造的な異常が認められず、心の問題によって生み出される身体の様々な症状」という意味です。

実はこれはある意味で正しいと私は思っています。「ストレスは万病の元」だと考えているからです。ただ、この言葉を「本当は症状がないのに、偽ってそういう症状があるように見せかけている状態」、いわゆる「詐病」だと誤解されることがありますが、それとは明確に区別する必要があります。患者さんにとってそれは実在する症状なのです。

ただ、だからと言って精神的ストレスだけが原因だと考えるのは無理があります

そう考えることにひとつの根拠を与える文献を見ましたので、ちょっと紹介してみたいと思います。


脳神経内科,95(2):182-187,2021
特集Ⅰ 自律神経障害と自己抗体
子宮頸がんワクチン接種後副反応と自律神経受容体抗体
日根野 晃代(信州大学医学部附属病院難病診療センター)


(p182-184より引用)

(前略)

2013年6月1日〜2018年3月31日までの期間に子宮頸がんワクチン接種後副反応を訴えて当院を受診し、血清を保存し同意の得られた患者55名(ワクチン初回接種年齢13.9±2.7歳,症状発現年齢14.7±2.8歳、血液採取年齢16.6±3.1歳)と、対照としてワクチン未接種で症状のない、同意の得られた女性57名(血液採取年齢18.8±2.7歳)の血清を対象とした。

その血清を用いて、抗α1/α2/β1/β2アドレナリン受容体抗体と抗ムスカリン(M1/2/3/4/5)受容体抗体、抗エンドセリン受容体A(ETAR)抗体、抗アンギオテンシンⅡ受容体1(AT1R)抗体をELISA法で測定し(CellTrend GmnH, Germanyに依頼)、抗体価と陽性率(cut off値は検査会社の基準値を参考)をワクチン接種群と非接種群、ワクチン接種群の各症状の有無で統計学的に解析した。

(中略)

ワクチン接種者55名の訴える症状は、倦怠感が69.1%と最も多く、次いで起立性調節障害や胃腸症状を呈する自律神経障害(67.3%)、四肢の疼痛(61.8%)であった。

抗体価は、抗α1/α2/β1/β2アドレナリン受容体抗体と抗ムスカリン(M1/2/3/4/5)受容体抗体、抗ETAR抗体において、ワクチン接種者群が未接種者群と比較し有意に高値だった。

陽性率は、抗α2/β1アドレナリン受容体抗体、抗M2/3/4/5受容体抗体で高かった。

ワクチン接種群内での各症状の有無における比較では、抗体価の明らかな差は認めなかった。

陽性率は、四肢の疼痛で抗α2アドレナリン受容体抗体が症状あり34例中29例(85.3%)、症状なし21例中12例(57.1%)、手足のふるえで抗α1アドレナリン受容体抗体が症状あり24例中16例(66.7%)、症状なし31例中12例(38.7%)と症状ありの例で高かった

また、抗β1、β2アドレナリン受容体抗体、抗M2, 3, 5受容体抗体では症状発現から血液採取までの期間が短いほど抗体価は高値である負の相関をとる傾向がみられた。

(引用、ここまで)



この引用文から多くの事実を確認することができ、そして仮説を導くことができます。

まず、もしも子宮頸がんワクチン接種後の重症副反応が精神的ストレスだけに起因するのだとすれば、その発症者は接種後の1年くらいで症状を発症するというパターンに偶然集中しているということになります。

何をどうストレス感じるかは人それぞれなので、もう少しばらついてもいいような気がしますし、もっと言えば精神的なストレスがかかりやすいのはどう考えても接種直後〜数週間の間でしょう。

それなのに、子宮頸がんワクチン接種後副反応の発症要因となる精神的ストレスが発症をもたらすのがたまたま一年後に集中するのは無理があり過ぎます。

国は子宮頸がん接種後の副反応の理由を「機能性身体障害」とする根拠として、子宮頸がん非接種で同様の症状がある人の頻度が、子宮頸がん接種後の人に起こる頻度と大差がないことを挙げているようですが、

子宮頸がん非接種の人は人生のどんな時期であってもその症状が出さえすれば該当者としてカウントされるのに対し、子宮頸がんワクチンの方は接種後の1年程度の期間に限定しても、そうやってかき集めた頻度と同等になるというのですから、

これはその時点で子宮頸がんワクチン接種後に「機能性身体障害」が引き起こされる頻度は高いと考えざるを得ませんし、

精神的ストレスのみならず、子宮頸がんワクチン接種という物理的(生物学的)ストレスが、1年後の症状発現に関わっていると考えた方がつじつまが合うように思えるのです。

ましてや子宮頸がんワクチンは1回打ちで終わりではなく、初回接種から1〜2ヶ月後に2回目接種が、初回接種から6ヶ月後に3回目接種が推奨されているワクチンです。1年後にこのワクチン接種に伴う身体変化のピークが訪れると考えても不思議ではありません。

しかしそこも「病原体病因説」に基づいて、「ワクチンの成分が残っていない6〜8週以降にワクチンの副反応が起こるわけがない」という姿勢で物事を見ていると、これを「精神的なストレスのせい」と考えるしかなくなってしまうわけですが、

それを「宿主病因説」の立場で捉え直し、さらに今回の文献を見れば、ワクチンの成分がないのに重症の症状が起こる理由の一端を見ることができます。

要するに「ワクチン接種による異物除去システムの強制駆動によってシステムがオーバーヒートして自己と非自己の認識を誤るようになり、本来は攻撃すべきでない自己成分を攻撃してしまうようになる」という理由が考えられると思うのです。

以前、システムのオーバーヒートが持続し続けることで、アレルギー性疾患→自己免疫疾患→サイトカインストームと病状が進展していく仮説を示しましたが、

最初の異物除去システムの駆動のきっかけがワクチンで、その後システムを駆動し続けるものは本人の不安・恐怖、あるいはワクチン及びそれに伴う身体反応への負の感情の場合もあるでしょうし、

あるいは私が終炎システムと呼ぶコルチゾールを中心とした抗ストレスシステムが全力を出せない何らかの要因がそれまでにあることによっても病状が進展してしまうこともあるでしょう。

そのような持続する病状進展が起こっているにも関わらず、その証拠を客観的に捉えることができなければ、それは「機能性身体障害」とみなされても不思議ではないわけですが、

実際にはそうした人達の一部では、アドレナリンやムスカリンなど自律神経を働かせるのに必要な神経伝達物質が作用するための受け皿となる「自律神経受容体」という自己分子を攻撃する自己抗体が産生されており、

状態の自己免疫疾患化が子宮頸がんワクチン後の長期的な副反応の原因となっていることが考えられるわけです。

その結果として観察されるようになったのが、文献で紹介している「抗アドレナリン受容体抗体」「抗ムスカリン受容体抗体」「抗エンドセリン受容体A」などだと思います。


そう考えれば子宮頸がんワクチン後遺症の方々の症状に自律神経の異常が示唆されることも説明がつくと思いますし、

逆にワクチンの成分が自律神経に支障をきたすと考えてしまうと突拍子もない話となり、長期的な副反応を起こすという説明にも無理が出てきてしまいます。

一方でもう一つ気付くのは、「自己抗体があることイコール自己免疫疾患ではない」ということです。

なぜならばワクチン未接種の人にも自律神経受容体抗体はある程度存在しているからです。

おそらくウイルスと同様にそこに存在するだけで害になるようなものではないのでしょう。一方で未接種者での自律神経受容体抗体を持つ人の割合が少ないことを考えますと、

過去にシステムのオーバーヒートがあり、自律神経受容体を誤って攻撃対象として認識してしまったことがあるけれど、

その後抗ストレスシステムが整ったために、そのオーバーヒートは収まり、その名残として自律神経受容体抗体が残存しているというストーリーも考えられます。

さらに言えば、子宮頸がんワクチン接種後の重度副反応のすべてが自律神経受容体のせいではないであろうことも、

有症状者の抗体陽性率が100%でないことからもわかります。T細胞の過剰活性化もきっと関わっていることでしょう。

おそらく誰にどんな自己抗体ができるのかについては遺伝的な背景因子の関わりやその時におかれた環境因子によってバリエーションがあるのでしょう。

いずれにしてもワクチン接種後の長期的な副反応の本質は、システムのオーバーヒートが起こり続けていることだと考えれば矛盾なく説明できるのではないかと思います。

それが「宿主病因論」に基づくワクチン接種後の長期的な副反応への説明というわけですが、

そうだとしたら「副反応はただの稀な機能性身体障害だから」という理由でワクチンの積極的接種を再開すべきではありません。

再開されてしまえばきっと悲劇は繰り返されてしまう可能性が極めて高いと私は思います。

少なくともワクチンというものは明確にリスクが存在する医療行為なので、

全員に強制されるべき類のものでは決してないと私は思います。


たがしゅう
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