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コルヒチンがなぜコロナに効くのか

category - 素朴な疑問
2021/ 06/ 04
                 
少し話題としては下火になった感がありますが、コロナの治療薬として一見ウイルスと関係ない薬が候補に挙がる話が時々出てきます。

イベルメクチンはその一例ですが、なぜ抗寄生虫薬(駆虫薬)であるイベルメクチンがウイルス感染症であるコロナに対して効くのかというメカニズムについて、

以前、自分なりに考察してみましたが、残念ながら納得のいく結論は得られませんでした。

最近、東京都医師会がまとめた資料によれば、イベルメクチンは様々なウイルス蛋白が、人間の細胞にある核内への運搬蛋白との結合を阻害する作用を持ち、それによって自然免疫が高まることをメカニズムの一端に挙げています。

ただ、この「様々な」ウイルスのタンパク質との結合を防ぐという辺り、イベルメクチンがやっていることはウイルス、寄生虫、人間に共通する何らかの構造に作用している可能性があがってくるようにも思えますし、

イベルメクチンの副作用に好酸球増多も挙げられています。寄生虫感染自体でも好酸球は増多しますが、

好酸球は好中球の働きが苦しい時の増援部隊」という私の考えに基づけば、好酸球増多をもたらすイベルメクチンは何らかの理由で好中球の働きに負荷をかけている可能性を考えることができます。

それは炎症を応援する側面もあるし、サイトカインストームを悪化させる側面もあるので、確かにウイルス感染症の早期に使えばメリットのありうる薬なのかもしれませんが、進行期に使えばかえって悪化させる可能性もあるように思います。従って私はイベルメクチンのコロナへの応用は慎重派です。

そうした考察の流れを受けて、今回はもう一つウイルスとは関係なさそうだけれど、なぜかコロナに効くのではないかとささやかれている別の薬を取り上げてみたいと思います。それは「コルヒチン」です。
            

コルヒチンは痛風の治療薬として有名な薬ですが、実は痛風治療の現場ではあまり登場しません。

なぜならば、痛風発作が起こった初期のタイミングで飲まないとあまり効かないし、何度も飲まないと効かないし、飲み過ぎると下痢になるという制約が結構あるからです。

一般的な痛風治療としては、NSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛薬(抗炎症薬)でひとまず痛みと炎症を抑えた後に、

改めて尿酸を下げる薬を下げて再発を防ぐというアプローチが痛風の治療ガイドラインでも勧められています。

ただこの尿酸値を下げることで痛風の発作を防ぐという考えは明確なエビデンスが示されていないということもあって、私自身はこの尿酸を下げる治療には否定的です。

むしろ尿酸にはその強力な抗酸化作用で痛風発作を抑制する方向に働いているとさえ思っています。痛風発作が起こるということはその強力な抗酸化作用を上回って上昇することで、皮肉なことに関節内に析出した尿酸自身によって炎症が引き起こされている状況だと考えています。

ただまぁ、その話は今回の本題ではないので、脇においておきましょう(私自身の痛風に対する治療方針に興味がおありの方は過去ブログ記事をご参照ください)。今回はそんな痛風に対する薬であるコルヒチンが、なぜコロナに効くのかという話です。


コルヒチンが痛風に効くメカニズムは次のように説明されています。

コルヒチンは細胞の中に入り込み,チューブリンという蛋白質と結合することで,それにより構成される微小管と呼ばれる構造を安定化し、そのことによって好中球の遊走能を強く抑制すると言われているのです。

ちなみに微小管というのは、細胞が分裂する時に重要な役割を果たしていると言われている細胞内構造ですが、ここではその微小管の働きを抑えることで好中球が炎症が起こっている場所で集まる働きが強く抑制されるという結果が重要です。

なぜ重要かと言いますと、コルヒチンは痛風発作に関わる尿酸の代謝とは全く関係ないところで痛風発作を抑えているということがわかるからです。

ちなみに、さきほどのイベルメクチンの話とも少しリンクしますね。イベルメクチンは好酸球増多という結果から推測して好中球の働きがブロックされているか、もしくは好中球の働きがキャパシティを超えて過剰になっている可能性が示唆されるからです。

以上を踏まえて、なぜコルヒチンがコロナに効くかという理由を考えれば、効いたとしても不思議ではない理由を見出すことができるのではないでしょうか。


ウイルス感染症においては一般的に、白血球の中で好中球を含む「顆粒球」よりも「リンパ球」の方が増加傾向になると言われています。

一方で細菌感染症の場合は「リンパ球」よりも「顆粒球」の割合が多くなる傾向があり、この理由として「顆粒球」は「細菌」のような大きな病原体に対処し、「リンパ球」は「ウイルス」のような小さな病原体に対処するためと説明されています。

ただこの傾向は必ずしも絶対的なものではなく、あくまでもその傾向があるというレベルの話です。ただウイルス感染症で「リンパ球」の方が優位になるという現象が、仮に好中球の働きが過活動になってしまった結果、「リンパ球」側の負担が相対的に増えているせいだと考えればどうでしょうか

好中球の働きを抑えるメカニズムを持つ、あるいはその可能性を持つコルヒチンやイベルメクチンがコロナというウイルス感染症にも効くことに一定の説明がついてくるように思います。

と同時にウイルス感染症とはやはり宿主のシステムが乱れた状態であり、好中球の機能が低下した結果、第二部隊の好酸球が増加してくるというアレルギー性疾患との共通性についても矛盾はなくなります。

言い換えれば、好中球機能が何らかの形でオーバーヒートし、その結果リンパ球優位の活動になるのが「ウイルス感染症」、好酸球優位の活動になるのが「アレルギー性疾患」というまとめ方もできるかもしれません。

それではどんな時に好中球機能がオーバーヒートするのでしょうか?

それは好中球がどんな時に活動するのかということを考えれば見えてきます。

好中球が活動するのは、一言で言えば「異物を除去したい時」です。

好中球は身体が異物を認識すると異物のある場所へと動員され、異物を貪食し細胞内の酵素で消化するという仕事を行います。

ただし、もう一つ異物がないのに好中球が動員される場合もあります。それは「身体にストレスがかかった時」だと思います。

つまり明確な異物はないのだけれど身体に何らかのストレスがかかり続けると、まるで異物があるかのように好中球の活動は大きく刺激されるということになるでしょう。

ただ以前の考察で、そのようにストレスがかかり続けることで異物を除去するための免疫システムが乱れ、「アレルギー性疾患」→「自己免疫疾患」→「サイトカインストーム」の順で病状が悪化するという仮説を示しましたが、

「アレルギー性疾患」「自己免疫疾患」「サイトカインストーム」に共通してステロイドが効くという事実から、

明らかな異物がある時の好中球動員と、ステロイドによる好中球動員は質が違うという可能性が見えてきます。

ステロイドの作用を詳しくみる回で考察しましたように、ステロイドが好中球(顆粒球)に対して行っていることは、

好中球の数を積極的に増やそうとすることではなく、むしろ好中球の動きを止める方向に働きかけることで、動かなくなった好中球の多くが血液上に存在することで見かけ上好中球が増えるようになった状態だとみることができます。

おそらくは異物がある時の好中球動員の方が正当な形で好中球が動員されているはずです。そこに明確な異物があり対処すべく好中球の数を増やす必要がありますから。

つまり異物がある時の白血球の動員のされ方と、ストレスがかかった時の白血球の動員のされ方(見かけ上の動員。実質的には機能停止)が合わさった結果として白血球が好中球優位になるかどうかが決まってくると言えるのかもしれません。

ウイルス感染症において好中球優位になるか、リンパ球優位になるかがそこまで明確に決まらない理由はそんなところにもあるのかもしれません。

逆に言えば、好中球が異物に対して正当に動員されている分には、リンパ球増多も好酸球増多も起こってこないということも言えそうです。


・・・今回も私の中では重要な仮説にたどりついたのですが、

いささかわかりにくい話だったかもしれません。最後に話をまとめてみます。

痛風発作にも使われるコルヒチンがコロナにも効くとされる理由は、

好中球という異物除去のために働くシステムを抑える働きに由来しており、

このことから痛風発作もコロナも自身のシステムがオーバーヒートしていることが示唆されます。

そしてコルヒチンの効き方は、ステロイド(ストレスホルモン)の効き方にもつながる部分があり、

痛風発作もコロナも慢性持続性ストレスの結果として身体がオーバーヒートしてしまった状態だという姿が見えてきました。

ただコルヒチンもステロイドも使う量が多すぎれば、異物を適切に除去できない状況に陥ってしまうし、

使う量が少なすぎれば、異物を過剰に除去してしまうアレルギー、自己免疫疾患、サイトカインストームの流れに進んでしまいます。

その点において、コルヒチンもステロイドも使うタイミングと量を見極めて使わないと逆効果になりえる薬だということになると思います



たがしゅう

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