Post

        

「20代男性コロナで自宅療養中に死亡」というニュースから得られる教訓

category - 医療ニュース
2021/ 05/ 13
                 
ネットニュースを見ておりましたら、気になるニュースが飛び込んできたので急遽取り扱ってみようと思います。

感染の20代男性死亡 入院できず
#Yahooニュース
2021/5/12(水) 18:24配信


まずは亡くなられた20代男性の方のご冥福をお祈り申し上げます。

このニュース、普通に考えれば「若い人でもコロナで死亡することがある」と、

あるいは「コロナはただの風邪なんて主張するものは自戒せよ」とか「医療崩壊が引き起こした悲劇だ」などという感想を持ちやすく、

コロナへの不安や恐怖があおられたり、医療体制に対する不信感が増したりするきっかけになるように思えるわけですが、

「病気とは自分自身の表現型である」ということを基本におく主体的医療の観点でみれば、また別の見え方が出てきます。

必要以上に恐怖を煽られる前に、今回は私の目線でみたこのニュースへの感想をシェアしておきたいと思います。
            

(以下、ニュースより引用)

京都市は12日、市内在住の20代男性が、新型コロナウイルス感染症の肺炎とみられる症状で自宅で死亡したと発表した。

男性に基礎疾患はなかったという。男性は飲食業で1人暮らし。陽性確認後に入院を希望したが、入院できないまま自宅療養中だった。

(中略)

市によると、男性は4月29日に発熱やせき、たんの症状が出て、5月2日にPCR検査で陽性と確認

府内のコロナ患者の入院調整を担う「入院医療コントロールセンター」に入院希望を伝えていた。

自宅療養中は、保健所の医師や保健師が毎日、電話で健康観察を行い、4日は「全身の倦怠(けんたい)感は改善している」と答えたという。

 しかし、5日には電話に応答せず、5日深夜に男性の知人から119番があり、京都市消防局と京都府警が男性の自宅を訪れたところ、翌6日に男性の死亡を確認したという。

(後略。引用、ここまで)



このニュースをもとに「若者でもコロナで死亡することがある。若者だからといって決して油断はしてはならない」というのは簡単ですが、

そのような考えを持つ前にまず考えてほしいことがあります。

それは「全体の中での発生率」です。このケースが全体の中でどのくらいの割合で起こっているかということです。

統計局の人口統計によりますと、2021年4月時点での概算値ですが、20歳〜29歳までの日本の総人口は1238万人いるとされています。

コロナが問題になって1年以上が経ちましたが、1000万人に1人の20歳代の死亡ケースが現れたからといって、若者全体に警鐘を鳴らすのはどうなのでしょうか。

またコロナワクチンで20名の方が死亡したというニュースを持って、同様の警鐘が鳴らされているでしょうか。

まずこれらの比較から、「レアケースに対して私達が抱く印象は価値観によって大きく左右される」という事実を導くことができるでしょう。

本当に気をつけた方がいいかどうかは別として、ともかくニュースの受け止め方によって私達の心は大きく揺さぶられるのは間違いないということですね。

そしてニュースをどう受け止めるかに関しては、自分の中での価値観が大きく影響しており、その価値観をあまり持っていない方は世の中の常識とされる価値観に大きく左右されるということも言えると思います。


次に、「レアケースを引き起こす本質的要因」について、です。

このニュースをみて「頻度は低くても、こういうことが起こりうるのだから、コロナウイルスを甘くみてはいけない」という論調もネット上には見受けられます。

しかしコロナウイルスによってこの状態が引き起こされたと考える「ウイルス病因論」の立場に立つと、この事象は非常に不自然です。なぜコロナウイルスは日本全国に散らばっているのに、他の1199万9999人いる20代の人を死亡に至らしめることができないのでしょうか。

新型コロナウイルスが日本中に蔓延しているとされているこの状況の中で、圧倒的多数の20代が健康のままという事実は、ウイルス自体に病因を求めるのではなく、宿主側に要因があると考える方が自然だと思います。

そうなると、「なぜこの20代男性にだけ新型コロナウイルス感染で死亡に至るような出来事が起こったのか」と考えていくのが妥当だと思います。


そこで次に考えるのは、「情報の限定性からくる誤解」についてです。

たとえば「20代男性」という表現をみてください。

20歳なのかもしれないし、29歳なのかもしれません。

また「基礎疾患はなかった」と書かれていますが、20代で健康診断を受けていない人はざらにいます。

そもそも基礎疾患が把握されていなかった可能性も否定できません。

それからどういう性格傾向であったのかもわかりません。どんな生活を送り、どれほど忙しく、どんな食事であったのかも全くわかりません。

しかし私達が「20代男性」と聞いて抱く一般的なイメージはどんなものでしょうか。

おそらく健康的で活動的な男性をイメージするのではないでしょうか。でもそれは読み手の勝手な想像でしかありません。

勝手な想像でしかないんだけれど、その価値観でこのニュースを読むと、「若くて健康な男性がコロナ感染で死亡した」というイメージがどうしても出てくると思います。

ここに限定された情報による誤解の怖さがあります。そうしたニュースの怖さは過去ブログ記事でも取り扱ったことがありました

基本的に情報が足りない状態は気持ち悪いので、私達は頭の中にある常識で不足部分を補ってしまう無意識の傾向があると思うわけですが、そこに情報が足りないニュースや報道をみた時の怖さがあります。

詳細が足りない情報をみた時に、ニュートラルに受け止めるために大事なことは、「わからないことはわからない」と認める保留力だと思います。何かしらのジャッジを下さずにただ見つめるだけのスタンスがとても重要です。


最後に、このニュースにおける不確かな部分が確認されたと仮定して、

もしも「若くて健康な男性がコロナ感染で死亡した」という解釈が適切であった場合のこのニュースの私の受け止め方を紹介したいと思います。

一言で言えば、「不安・恐怖に伴う精神的ストレスは時として死亡につながるほどのシステムの暴走をもたらしうる」ということです。

前述のように、全体的に見てこの状況は宿主側の要因によって引き起こされたと考えるのが妥当です。

しかしながら本当に基礎疾患がなかったのだとすれば、このような急変をいたす状況が急性的に生み出されたということになります。

世の中は連日繰り返されるコロナ報道の影響で昨年よりだいぶ弱まったとは言え自粛ムードです。

何か身体の負荷になるような急激な行動変容を本人が行ったとは考えにくいので、そんな中で急性の変化をもたらしうる要因と言えば精神的ストレス以外には考えにくいです。

というのも精神的ストレスが急性増悪の原因だと考えると合致する経過もあります。

4月29日に発症した発熱や咳・痰などの風邪症状で、5月2日にPCR陽性を根拠にコロナだと診断されたという経過であるわけですが、

ここでもしこの20代男性がコロナと診断されたことに対して非常に強い恐怖心を感じていたとします。入院を強く希望したけれど病床逼迫の関係で自宅待機を指示されたとします。

ここに本人を著しい恐怖感をもし感じていたとすれば、身体の中ではコルチゾールを中心とした著しいストレスホルモン分泌が引き起こされることになります。

コルチゾールには強力な抗炎症作用がありますので、これが大量に分泌されることで一時的に症状が和らぐ可能性があります。

ところが何らかの原因でこの20代男性にストレスホルモンを分泌させる予備能がなかったとすればどうでしょうか。

一気にストレスホルモンが枯渇し、自身の異物除去システムが引き起こした炎症反応を収束させることができなくなり、

自分の異物除去システムの暴走状態、いわゆる「サイトカインストーム」が発生してしまうことになります。

そして、若くて認知能力に問題もない男性が、自分から異変を伝える電話連絡をする暇もなく死亡に至ったという事実から、この経過が「急死」だった可能性が高いわけですが、

サイトカインストーム状態における急死要因としては脳血管が詰まったか破れたか、あるいは心室細動で急激な心停止を起こしたかなど原因は絞られてくると思います。若い人の急死原因として「急性心筋炎」と診断されるケースも多いです。

そうなってくると、急激な精神的ストレスがストレスホルモン枯渇状態を経てサイトカインストームを起こし、ここまで重篤な結果を引き起こす潜在能力を持っている、ということを意味することになってきます。

なお「異物との相性によっては、輸血後GVHDのように死亡につながるような異物除去システムの暴走がいきなり引き起こされる可能性もあり、その意味で宿主要因の如何に関わらずやはりウイルスとの接触は避けるべき」という意見もあるかもしれませんが、

このニュースの20代男性が起こした新型コロナウイルスに対する異物除去反応が、輸血後GVHD並みに激しい反応ではじまったとは私は考えにくいです。もしそうであれば4月29日の時点でこの男性は亡くなっていたはずです。

それに輸血後GVHDのような激烈な異物除去反応を起こすためには、血液との直接接触が大前提です。それをなくして輸血後GVHDのような激烈な異物除去反応で死亡に至った例は報告がないと思います


通常は風邪のような一般的な異物除去反応システムの過剰駆動からスタートしているけれど、その後の増悪因子(急激な精神的ストレスなど)によって輸血後GVHD並の激しい炎症反応へと次第に変化していくという流れなので、

コロナウイルスとの接触自体が決め手なのではなく、あくまでもその後の宿主の応答システムの如何が死ぬほど悪化するかどうかの直接的な決め手だと言えます。

確率論でも何でもないと思います。コロナで重症化する人には重症化するだけの必然的な要因が内在しているのです。


「ウイルス病因論」でこのニュースを捉えれば、とにかく稀ではあるが起こりうるこの不幸な転帰を避けるために「ウイルス感染」を避けるしかないという思考停止状態からはどうやっても逃れられないわけですが、

「宿主病因論」でこのニュースを捉えれば、私達がこのニュースを教訓に得ることができる対策はたくさんあると思います。

まずはコロナウイルス自体が恐怖ではない」という考え方を知り、不必要に不安・恐怖が煽られない素地を整えておくこと、

それから不意に風邪症状という形で異物除去システムが駆動されすぎてしまった際には、

ストレスホルモン系が最適な環境で働けるように、「寝る・食べない・温める」を基本に心身ともに真の意味での療養を心がけるということ、

あるいは、何らかの原因で自力でストレスホルモン系を整えることができない場合は、オンライン診療を利用してストレスホルモン(ステロイド)の薬を郵送してもらう対応をとること、もしくはいざとなればそういう方法があると心に留めておくこと(そう思っておくこと自体がストレス反応の緩和につながります)です。

このニュースをそのように受け止めることは、

医療崩壊を嘆いたり、国や医師会を批判したり、これからもせっせとウイルスを避け続けたりすることよりもずっと、

よほど多くの人をコロナから守ることにつながると私は信じています。


たがしゅう
関連記事

            
                                  

コメント

非公開コメント