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「致死率90%」という数字が算出される理由

category - ウイルス再考
2021/ 03/ 05
                 
それにしてもコロナはなんでちょっと遺伝子が変わったくらいで病原性が大きく変わるのでしょうか。そんなことで本当に病原性は変わるのでしょうか?

そもそもウイルスの病原性が何によって決まるのかについては、以前当ブログで考察したこともあります

その時に参照した資料によればインフルエンザの場合、ウイルスの遺伝子変異によってアミノ酸の種類が変わることによって、局所だけに存在するタンパク質分解酵素で影響を受けるパターンと、全身の細胞に普遍的に存在するタンパク質分解酵素で影響を受けるパターンとで差が生まれるからだという理論がまことしやかに書かれていました。

しかしその理屈でいけば、ある年に流行したインフルエンザは皆が軽症になったり、皆が重症になったりという状態になっていなければなりませんが、実際にはどの年でもインフルエンザは軽症の人がほとんどで稀に重症がいるという多様性のある疫学的パターンをとっていると思います。

なのでウイルス側のアミノ酸配列によって局所の細胞のみに対する親和性が生まれるか、全身の細胞に対する親和性が生まれるかの差は起こりうるとは思いますが、

そのウイルス感染によって生じた「異常な自己」が「非自己」として速やかに排除されるか、あるいは「自己」の一部と認識され異常な反応だけがそのまま駆動され続けてしまうのかは宿主の免疫システムの状態次第だと思うのです。

宿主の免疫システムの状態がどうであろうと宿主が死に追いやられてしまう状態があるのだとすればそれは、「非自己」と判断される「抗原」が血液中に大量または持続的に入れられてしまう「臓器移植」のような状態でしか起こりえないと、

逆に言えば、血液との接触を介さない飛沫や糞便が接触するくらいの自然界で頻繁に起こっているであろう「非自己」遭遇イベントでは、血液を介する「臓器移植」のように濃厚な「非自己」遭遇イベントによってはじめて生じるような強制的重症化現象は起こりえないのではないかというのが私の考えです。

しかしそうなると致死率90%のウイルス感染症、「エボラ出血熱」についてはどうなのだと、いう話になってきます。
            

あれは別に血液を介した接触でなくとも、90%の致死率を誇っているではないかと。

ただその致死率90%という数値自体が信頼できない可能性があるという問題も以前ブログ記事にしました。

同じコロナウイルス感染症であるSARS(SARS-CoVによる感染症)では致死率15%という数値が出ている一方で、それとほぼ同じようなウイルス学的特徴を持つはずのCOVID-19(SARS-CoV-2による感染症)での致死率が平均的に1%程度(50歳以下で0.06%、60歳以上で5.7%)となっていることからも「致死率」という数字の不安定さを伺うことができます。

なぜならば、SARSの致死率の分母は重症患者のみで、COVID-19の致死率の分母は不顕性感染者を含めて広く新型コロナウイルス感染症と診断された多くの患者(?)という状況の違いがあるからです。

SARS-CoVとSARS-CoV-2のウイルス遺伝子配列は似ています。似ているからこそ「パート2」のような名前がつけられているわけですが、

そう考えると、これらの病原性(致死率)の違いは遺伝子配列の違いでもたらされたというよりも、どこまでの候補患者を調査したかによってもたらされた見かけ上の違いと考える方が妥当なのではないかと私には思えるのです。

・・・とは言えエボラ出血熱の場合はもともとが90%の致死率で、その数値が少々変動するにしても血液を介さない感染で死ぬほど重症化する出来事が起こるということは本当なのだろうかという疑問はどうしても残ります。

なにせエボラ出血熱は1類感染症で、私は医師として一度も診たことがない病気です。またおそらくほとんどの医師がそうでしょう。

だから事実重視型思考の私のお得意の「臨床現場で観察される事実と照合する」という手が全く使えません。

なので信頼できる情報源がないだろうかと思っていたところに、いつも読んでいる実験医学という雑誌に次のような特集が組まれていました。



実験医学増刊 Vol.39 No.2 パンデミック時代の感染症研究〜病原体の病原性、多様性、生活環から新型コロナウイルスを取り巻く社会の動きまで 単行本 – 2021/1/23
嘉糠 洋陸


この特集の中で「エボラウイルスに注目したウイルスの病原性」の解説記事がありましたので読んでみました。

実験医学増刊 Vol.39 No.2(増刊)2021
第一章 病原体を理解するプラットフォーム
1.ウイルスの病原性
髙田礼人


まずはこの記事の中で私が重要だと感じた部分をピックアップしてみたいと思います。

(以下、上記記事内より抜粋)

・エボラウイルス属のなかでは、Ebola virus(Zaire ebolavirus)が最も高く致死率はときに90%近くに達することがあるのに対し、Reston virus(Reston ebolavirus)はサルに対しては高い病原性を示すがヒトでは不顕性感染のみが報告されている。(中略)エボラおよびマールブルグウイルス以外のフィロウイルスのヒトやサルに対する病原性は不明である。

・エボラウイルスおよびマールブルグウイルスは少なくとも7つの構造タンパク質〔nucleoprotein(NP), polymerase cofactor(VP35), matrix protein(VP40), glycoprotein(GP), transcription activator(VP30), minor matrix protein(VP24), RNA-dependent RNA polymerase(L)〕を持つ。(中略)特にC-type lectinは、樹状細胞、マクロファージ、肝細胞および血管内皮細胞といったエボラウイルスの主要な標的細胞に発現しており病原性発現に深くかかわる因子だと考えられる(中略)エボラウイルスのVP35とVP24およびマールブルグウイルスのVP35とVP40には、インターフェロン応答阻害作用がある。

エボラウイルスがヒトに感染した時に起こる初期の臨床症状は、発熱、悪寒、倦怠、食欲不振、吐き気、下痢、筋肉痛等であり、他の熱性疾患(マラリアやインフルエンザ等)との区別は困難である。(中略)血液、粘液および嘔吐物などを介して粘膜や皮膚の傷口から体内に侵入したエボラウイルスの最初の標的細胞は、自然免疫応答を担う樹状細胞やマクロファージ等の抗原提示細胞である。(中略)感染中期〜後期にはウイルス血症となり、重症化した場合はウイルスは血液を介して全身に広がり各臓器の機能を破壊すると同時に、血小板減少、サイトカインストームおよび血管内皮細胞障害などによる出血傾向および多臓器不全となる。

エボラウイルスに感染しても必ずしも「出血熱」を引き起こすわけではないことから、「エボラ出血熱(Ebola hemorrhagic fever)」とよばれていたこの感染症は、最近「エボラウイルス病(Ebola virus disease)」とよばれるようになった

・1995年のコンゴ民主共和国および2013〜'16年の西アフリカでの(エボラ出血熱の)流行時に、複数の回復者のフォローアップ調査が実施され、目の粘膜あるいは精液中に最長9ヶ月間ウイルス遺伝子が残存していたことが示された。しかし、これらは感染性ウイルスの分離でなく、ウイルスRNA遺伝子のみの検出であるため、それらの回復者が感染性のウイルスを長期にわたって保持・排出しているとは断定できない

・一方でエボラ出血熱発症後に回復したイギリスの看護師が数ヵ月後に髄膜脳炎を発症し、髄液中に感染性ウイルスが検出されたという症例が報告された。これは、エボラウイルスが持続感染を成立させ、その後に再活性化したものと考えられる。しかしエボラウイルス感染動物モデルでは感染個体はほとんど100%死亡するため、持続感染を際限するのは困難である。そのため、エボラウイルスの持続感染に関する知見は限られており、今後の研究が求められる。

・重要なことは、ヒトから分離されたウイルスが、マウスやモルモットに馴化させる前でも、病気を起こすことなく体内である程度増殖でき、たった数個の遺伝子変異だけでこれらのげっ歯類動物に対する致死的な病原性を獲得することである。その変異は主に、宿主免疫応答阻害に関与するウイルスタンパク質(VP24等)に起こることから、致死的感染と不顕性感染の違いは、ごく限られたアミノ酸変異で決定されるウイルスの感染・増殖力と、宿主の免疫反応の絶妙なバランスによって制御されていると考えられる。

(抜粋、ここまで)



抜粋した情報の量が多くなってしまいましたが、ここでの重要点を私なりにまとめてみますと次のようになります。

・エボラウイルス(フィロウイルス)の感染でも不顕性感染(感染しているけど症状が出ない)はある
・エボラウイルスは樹状細胞、マクロファージと親和性が高い
・エボラウイルスの病原性が高まる要因として構造タンパク質の一部がインターフェロン産生能などの宿主免疫応答システムを阻害することが示されているが、全容は明らかになっていない
・エボラウイルスの構造タンパク質の一部をコードするアミノ酸がごくわずかに変異するだけで、ある動物種への致死的な病原性を獲得することがある
・エボラウイルスに感染したら全員が全員重症化するわけではない。持続感染状態や潜伏感染からの再活性化といったケースも起こっている。
・エボラウイルスに感染した実験動物は種によっては無症状であったり、種によってはほとんど100%死亡したりする
・エボラウイルスの感染経路は、血液や粘液および嘔吐物などの、粘膜や皮膚の傷口への直接的な接触だと考えられている
・エボラウイルス感染症(エボラウイルス病)の初期症状はインフルエンザやマラリアなどの他の熱性疾患と区別がつかず、重症化例のメカニズムにはサイトカインストームが関わっていて、全員が全員「出血熱」となるわけではない


こうしてエッセンスをまとめてみると、エボラウイルス感染症の特徴は、新型コロナウイルス感染症の特徴にそっくりだという側面が見えてきます。

むしろ違うところを探す方が早いくらい全体像がそっくりです。

違うところはどこかと言いますと、ウイルスが細胞内に侵入する際の足がかりとする物質がまず違います。

新型コロナウイルスはACE2という酵素(受容体)を足がかりに細胞内に侵入することがよく知られていますが、エボラウイルスの場合は記事によれば「C型レクチン」というものを足がかりにしている要素が多いようです。

「C型レクチン」とは何かと言いますと、「カルシウムに依存して糖鎖に結合するタンパク質」と説明されているもので、血管内皮細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、血小板などの表面に発現している頻度が多いそうです。

ところがこのC型レクチン、実は新型コロナウイルスが感染する際の足がかりにもなっているという情報もあります。

そうなってくるとますますエボラウイルスと新型コロナウイルスの差はなくなってきます。

あと違いと言えばやはりその致死率の高さと感染経路です。感染経路は新型コロナウイルスが飛沫感染、接触感染が主と言われているのに対して、エボラウイルスは体液の傷口への直接接触です。

・・・ここで疑問が生じます。「不顕性感染がありうるエボラウイルス感染症で、体液の傷口への直接接触以外の感染経路がないと言い切れるのであろうか」と。

ほとんど新型コロナウイルス感染症と同じ特徴を持っていて、しかもウイルスが用いる足がかり物質(受容体)までもが共通ということになれば、新型コロナウイルス感染症で問題になっている「無症状者からの飛沫感染」が起こっていても不思議ではないのではないかという話になってきます。

そこで、エボラウイルスでの無症状者からの感染の有無が調べられているかと言われたら、決してそんなことはないと思います。なぜならば「エボラ出血熱」というエボラウイルス感染症は「インフルエンザ様の症状が重症化して最終的に出血症状を呈する病気」という概念であるからです。

そもそも「無症状者でもエボラウイルス感染症かもしれない」という発想自体がありません。だから昨今の新型コロナウイルスへのPCR検査のように無症状者や濃厚接触者に対して行われるということ自体がないです。というかそんな検査が行われたのは新型コロナウイルス感染症が史上はじめてです。

となるとエボラウイルスの検査は誰に行われているかと言えば、「出血症状を呈する重症感染症患者」でしょう。その人でエボラウイルスのPCR検査を行うと陽性で、なおかつ病歴を振り返れば傷口への体液の直接接触がある人ばかりだったと、

だから「エボラウイルスの感染経路は体液の傷口への直接接触」なのだろうという事が、言わば後づけ説明的に考えられているのではないでしょうか。

そうなると新型コロナウイルス感染症でも、史上はじめて言われはじめた「無症状者の飛沫から感染している」という説も、史上はじめての無症状者への世界的大規模PCR検査ローラー作戦が行われたが故に、

「これはもう無症状者の飛沫からウイルスが感染したとしか考えられない」という後付け説明的な発想で、この仮説が導かれたと考えるのが妥当ではないでしょうか。

これは「ウイルスが伝染して病気が引き起こされている」という前提に立っているから、そのような仮説を立てるしか現実を説明できなくなってしまうのだろうと思いますが、

「自己」と「非自己」を選別する免疫システムの故障を背景に、「非自己」抗原との接触を契機として自己システムがオーバーヒートしてしまった状態だという風に、

見る視点の前提を「ウイルス病因論」から「自己システム故障論」に切り替えれば、

無症状感染者が世界中にあふれているという現実は、「非自己」抗原との接触は必ずしも無症状病原体保有者からもたらされたものだとは限らず、もともと自身にあった常在コロナウイルスもしくは類似の抗原を過剰に「非自己」だと認識してしまうようにシステムが故障したことが原因だと考えることは十分可能であるわけです。

そのように、「ウイルス病因論」が前提で後付け的に仮説が組み立てられているというのが正しいのだとすれば、

「なぜエボラ出血熱(エボラウイルス病)が致死率90%という高さを誇るのか」、また「なぜエボラウイルス感染実験動物ではほぼ100%の死亡率となるのか」という理由が説明できるように思います。

それは、「体液と血液の濃厚接触状態となった対象者の中でしか致死率を算出していないから」だと私は思います。

傷口と体液が接触すれば、ウイルス抗原が直接的に樹状細胞やマクロファージなどの免疫担当細胞と接触することができますし、

それはあたかも「プチ臓器移植」とでも言うべき真の意味での濃厚接触です。臓器移植でわずかな「非自己」性であっても拒絶反応が強烈に起こってしまうのと同様に、

ウイルス抗原と血液中の細胞が直接接触すれば、激烈な「非自己」除去反応が起こったとしても不思議ではないわけです。

エボラウイルスを実験動物に感染させる手法も、いくつか論文を読むと例えば腹腔内投与という方法がとられています。

当然腹腔内にアプローチするために切開による出血を伴うわけで、これはウイルスという「非自己」抗原と動物の体液との接触が起こりえる行為です。

もっと言えば、種によってウイルスを直接的に感染させても重症化しない動物種がありうるということは、

その動物種にとってエボラウイルスの「抗原」は「非自己」ではなく、「自己」だと認識されているからだと考えれば説明可能です。

臓器移植の視点で言うならば、拒絶反応に関わるABO型やRh型などの主要な血液型抗原がたまたま一致していたような状況であろうと思います。

だから「非自己」抗原と濃厚に血液接触した人や動物を対象(分母)にして致死率を算出したら、「非自己」と認識してしまう動物種にとっては致死率が臓器移植の拒絶反応なみに高くなってしまうことは十分に起こりえるであろうと思うのです。

さらに言えば、「ウイルスの構造タンパク質の一部がインターフェロン産生能の阻害していることが重症化の要因」ということが記事に書かれているわけですが、

それはちょっと考えにくいと思います。なぜならばウイルス感染症の重症化病態はインターフェロンをはじめとしたサイトカインが出まくりの状態であるからです。

これもまた「ウイルス病因論」という立場に立って、エボラウイルスの病原性について考えているが故の矛盾であろうと思います。

確かにインターフェロンにはウイルス感染細胞のような「非自己」を、免疫担当細胞の働きを活性化させることで排除するように導く働きがありますが、

そうした免疫システムがオーバーヒートしてしまった状態こそがウイルス感染症であり、そこにもはやウイルスの関与はほとんどなく、ウイルスは最初の着火剤となっただけの存在です。

重症化したらウイルス血症となり・・・」ということも書かれていますが、誰も重症ウイルス感染症の患者からウイルスの塊を検出したことはありません。

重症ウイルス感染症の患者の中で行っている現象は少なくともウイルスの塊が無制限に増え続けていることではなく、

自分の身体の中にウイルスの断片の遺伝子が組み込まれ、それによる「異常な自己」細胞を判別するシステムが正しく機能せずにシステムがオーバーヒートしてしまった状態のことを指すのだと、

そう考えれば、このエボラウイルスで観察される現象のすべてに大いに説明がつけられるように思います。

「致死率90%」というこの数字はおおいに疑われるべきものであるということが、

新型コロナウイルスの一連の騒動によって明らかにされたように私には感じられます。


たがしゅう
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