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細菌感染症でも自己システムのオーバーヒートが起こっている

category - ウイルス再考
2021/ 02/ 04
                 
「細菌」は固有の細胞構造を持ち、自律的に細胞増殖を繰り返すことができ、

人間の免疫システムによって外敵と認識され攻撃されうる特徴を持つことから、人間にとって「非自己」的な存在である点は多くの人に賛同されるところではないかと思います。

しかし「細菌」はひとたび人体に接したら直ちに免疫システムによって排除されてしまうわけではありません。

常在菌と呼ばれる「細菌」がいることがその証明で、細菌は触れると即、免疫システムで排除されるわけではなく、一定の条件下では「非自己」なのに敵とみなされなくなる仕組みが存在しているようです。

そんな常在菌も傷や炎症が原因で血液の中に入り込む機会があると、たちまち人体の免疫システムによって攻撃される事態に発展されます。

血液の中は本来無菌状態なので、ここに「細菌」が入ってくることが異常事態です。「細菌(非自己)」と「免疫細胞(自己)」との戦いが始まります。

本来無菌の血液の中に細菌が入り込んで増殖し、免疫細胞によって攻撃対象として認識されて、全身に炎症を中心とした様々な変化がもたらされた状態のことを「SIRS(全身性炎症反応症候群:Systemic Inflammatory Response Syndrome)」と言います。
            

一方で、血液中に「細菌」がちょっとでも入ったら「SIRS」になるのかと言えば、そういうわけでもありません

血液中に「細菌」がいても「SIRS」になるとは限りませんし、「SIRS」であれば必ず血液中に「細菌」が証明されるとも限りません。

ただ多くの場合は、血液中に「細菌」が存在し、「SIRS」も存在している場合が多く、「SIRS」により身体の臓器に障害をきたすほど重症化した状態のことを「敗血症」と呼びます。

一方で血液中に「細菌」は証明されるけれど、「SIRS」も「臓器障害」もきたしていない状態のことを「菌血症」と呼んで「敗血症」とは区別されています。

「菌血症」の場合は、血液中に入った「細菌」の活動を「免疫細胞」がうまく抑えられている状態にあると考えることができます。

ところで「SIRS」ですが、状態としてはさんざん当ブログで扱ってきた「サイトカインストーム」と似ているところがあります。

なぜならばいずれも身体中で炎症が激しく起こっている状態であるからです。「SIRS」の場合は次の4つの条件のうち、2つ以上を満たすことで診断されることになっています。

1) 体温 <36°Cまたは>38°C
2) 脈拍数 90回 / min以上
3) 呼吸数 20回以上またはPaCO2<32torr
4) 白血球数 12000 / mm3 以上または4000 / mm3 以下
 または10%以上の未熟顆粒球


「サイトカインストーム」の状態でもこれらの要件は2つ以上必ず満たしますので、

「SIRS」と「サイトカインストーム」は酷似しているということが言えると思います。

さて「敗血症」での「SIRS」の場合、原因は「細菌が血中にいて、非自己と認識され、免疫細胞によって炎症性サイトカインが過剰に放出されること」が原因であるかのように思われるかもしれません。

一方「サイトカインストーム」は「自己であるはずの物質を非自己と誤認して、実在しない非自己に対して炎症性サイトカインが過剰に放出され続けること」であると私は考察してきました。一言で言えば「自己システムのオーバーヒート」であるわけです。

実は「敗血症」の治療において抗生物質によって「細菌」を死滅させれば、直ちに「SIRS」が治まるわけではありません。

つまり、「非自己」と認識された「細菌」がもう目の前から消えているにも関わらず、依然として「外敵」を攻撃する炎症反応が起こり続けている状態が残ったりすることは重症例ではしばしば起こります。

この時、「SIRS」「サイトカインストーム」を起こしているのは明らかに「細菌」ではありません。「外敵」だと認識することで駆動された自己の「免疫細胞」の暴走であるわけです。

細菌感染症に対して免疫力を低下させるステロイドが使われることがあるのはそのためです。ステロイドには暴走する免疫反応を収束させるように仕向ける働きがあるからです。

そして「細菌感染症」において「細菌」の排除後も自力で制御できない「SIRS」や「サイトカインストーム」が起こるということは、「細菌感染症」においてでさえ「自己システムのオーバーヒート」が起こっているということになります。

そうなると、「細菌感染症」も「ウイルス感染症」も本質的な病態は「自己システムのオーバーヒート」であって、

「自己システムのオーバーヒート」の原因は自己システムを駆動させる要因がかかり続けているか、自己システムを抑制するシステムが故障しているかの大きく2つの可能性が考えられ、ステロイドの枯渇は後者となるでしょう。

逆に言えば、自己システムを駆動させる要因が十分少なかったり、自己システムを抑制するステロイドなどのシステムが十分に働いている場合は、

自己システムを駆動させる要因の一つである「細菌」が排除されれば、「細菌感染症」が治癒するということになるのでしょう。

そして「細菌」を排除しても改善しない「SIRS」や「サイトカインストーム」には、ステロイドの枯渇などの自己システムの抑制が不十分な要因があるということにもなるでしょう。

さらに言えば、「敗血症」での「SIRS」にステロイドをカバーしても救えない患者もいますので、そうした人の中ではステロイドが反応するためのシステム自体が故障しているか、

もう一つは「細菌」以外に自己システムを駆動させる要因が加わり続けているという可能性も考えられます。

自己システムを駆動させる要因は「非自己」と認識される外的な抗原のみならず、不安や緊張によって誘導される交感神経過緊張状態も含まれています。

不安や緊張によって誘導される交感神経過緊張状態を抑制するには、副交感神経の働きを活性化する必要があります。

一方で人体で使わない機能は衰えていくという原理があります。普段、副交感神経を活性化させるリラックス状態を作れていないと過剰な交感神経過緊張状態になりやすくなります。

ましてや外的な抗原によって炎症が誘発された状態からリラックスさせるのは、よほど普段から副交感神経を使い慣れていないとなかなか厳しいものがあるでしょう。

「細菌感染症」において「細菌」除去後も「ステロイド」使用後も、「自己システムのオーバーヒート」が収束しない背景にはそういった事情があることが推察されます。


さて、このように考えていくと、「細菌感染症」と「ウイルス感染症」の差があいまいになってくるような感があります。

「細菌感染症」は「外的な抗原をきっかけに駆動された自己システムのオーバーヒート」で、外的な抗原がきっかけではあるものの、外的な抗原を駆除しても治まらないことがあると、

「ウイルス感染症」は「内的な抗原を外的と誤認して駆動された自己システムのオーバーヒート」で、原因となった内的抗原を駆除しようとしても駆除しきれず、やはり治まらないことがあると、

いずれも自己システムがきちんと機能していれば、それを世間では「免疫力が高い状態」と表現しますけれど、

「自己システムのオーバーヒート」は自己の中で収束し、自然に軽快していくという経過をたどります。

だとすれば、「細菌感染症」にしても、「ウイルス感染症」にしても、問題は「自己システムが乱されてもきちんと収束する状態にあるかどうか」に出て来ることになりますし、

そう考えると両者は本質的に同じ病態ということになってしまいます。

ややこしいことに「細菌」のように振る舞うウイルスもいると考察したばかりです。ますます境界線がぼやけてきます。

はたして「細菌感染症」と「ウイルス感染症」の本質的な違いはどこにあるのでしょうか

この考察、大事なところなので、もうしばらく続けてみたいと思います。


たがしゅう

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