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少数の「細菌」的なウイルスを生み出している構造

category - ウイルス再考
2021/ 01/ 30
                 
ウイルス感染症に対する考察を深めていくにつけ、「自己とは何か?」という問題について考えされられています。

私は基本的に「ウイルス感染症は自己システムのオーバーヒート」だという考えを持っていますが、

この文脈の中で私はウイルスを「自己」的な存在として解釈しています。

「ウイルス」が「自己」の一部として組み込まれ、その結果「自己」の免疫システムが過剰に働くようにシステムが過剰駆動してしまうのであれば、抑えるべきはウイルスという「他者」ではなく、過剰駆動させられた「自己」システムそのものなのであろうと考えています。

「自己」の過剰反応を無事収束させるように仕向ける困難克服作用を持つステロイドがウイルス感染症に有効であるという事実は、その考えを支持していると思います。

一方でステロイドを使うことでむしろ発症を助長してしまうウイルス感染症もあります。例えば帯状疱疹やサイトメガロウイルス肺炎などのヘルペスウイルス感染症、B型ウイルス肝炎などが挙げられます。

もしもすべてのウイルスが「自己」的な存在であるのだとしたら、「自己」の過剰反応を抑制するステロイドの使用によって悪化するというのは話が合いません。ウイルスの中には「他者」的な存在のものもあるということです。

ただ、こうした「他者」的なウイルスは同時に「自己」的な要素を持っていることにも気づかされます。なぜならばこれらのウイルスは潜伏感染(キャリア状態)となる性質を持っているからです。

潜伏感染できるということは、宿主が「自己」的に認識しているからこそできることです。一方でステロイドの使用によってその「自己」的な認識は「他者」的な認識に変わりうるという特徴でもあります。

そして同時に、これらのウイルスには数少ない抗ウイルス薬が開発されているものばかりです。これは偶然でしょうか。
            

……いえ、そんなはずはないでしょう。

①「潜伏感染できる」=「自己」として認識しうる
②「ステロイド使用で発症を誘発する」=宿主の免疫システム抑制で「自己」的な認識から「他者」的な認識に変わりうる
③「抗ウイルス薬が開発されている」=「他者」として認識することができる


おそらくこの3つの特徴は関連しています。そうでなければ①の特徴だけを持つウイルス、②の特徴だけを持つウイルスという風になっていないとおかしいわけですが、実際には①ができないウイルスは②も③もないという特徴を示しています。

3つの特徴を満たす場合においてのみウイルスは「他者」として攻撃することができるということを意味していると思います。

逆に言えば、これらの3つの特徴を満たさないウイルスは基本的に「自己」的な要素が強いということになると思います。


しかし「自己」的な要素が強いのであれば、他のウイルスも①の潜伏感染くらいはしてもよさそうなものですが、実際には他のウイルスの潜伏感染は確認されていません。

例えばインフルエンザを例にとると解熱後2日の時点では約85%の患者でウイルスは消失していると言われています。

ただそれがどのように証明されたのかということを調べてみますと、はっきりとしたデータを確認することはできませんでした。インフルエンザに関しては抗体が感染後速やかに消失すると言われていますので、そこから推測した情報である可能性もあります。

また終生免疫がつき抗体は数十年単位で維持されると言われている麻疹ウイルス、風疹ウイルス、おたふくかぜウイルス(ムンプスウイルス)に関してはどうかといいますと、こちらも私の調べる限りウイルスが完全に体内からなくなっているのかどうかについてはわかりませんでした。

「ウイルス感染症というものはウイルスによって起こされている。だから症状が消失しているのであれば、ウイルス自体も消失しているはずだ」という固定観念の下に、もしかしたら確かな確認が行われていないのかもしれません。

ひょっとしたらインフルエンザウイルスや麻疹・風疹・ムンプスウイルスも潜伏感染している(というよりも遺伝子が組み込まれてもはや自分の一部として機能している)ということを誰にも気づかれていない可能性もゼロではありませんが、

その辺りの真偽確認は私の情報検索能力ではこれ以上踏み込めませんので、ひとまずこの話題は保留にしておきましょう。


今回はここから「他者」として攻撃できるウイルス(ヘルペスウイルス、B型・C型肝炎ウイルス、HTLV-1・HIVなど)とそれ以外の「自己」的な要素が強いウイルスとの違いはどこから生まれるのかについて考察してみます。

言ってみれば「自己」と「他者」の違いを生み出すミクロのレベルでの本質についてです。

この問題を考えるきっかけとして「細菌」を引き合いに出してみます。「細菌」は誰がどう考えても「他者」ではないかと思います。

しかし「細菌」は「常在菌」という形で「自己」の一部として機能しているという見方もできないことはありません。

この場合の「自己」は、「細菌」も「人間」も含めた生物の総体としての「自己」という見方をしていることになります。

このように捉えた時に、「他者」であるはずの「細菌」がそこにいるだけで何も悪さをしていない、むしろ総体としての「自己」の秩序を保つために必要な存在であるという見方が出てきます。

腸内フローラという言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、腸内の常在菌のバランスが乱れることで「自己」の健康状態が乱れるということも近年よく言われてきています。

ちょうどこの構造が、「他者」として攻撃することができるけれど、一定の条件下では「潜伏感染」状態となり別に悪さをしないという点で、ヘルペスウイルス、B型・C型肝炎ウイルス、HTLV-1・HIVなどにも共通すると思うのです。

すなわち、ヘルペスウイルス、B型・C型肝炎ウイルス、HTLV-1・HIVは「細菌」的なウイルスであるということができるように思います。

では何が、「細菌」的なウイルスの「細菌」的な要素を生み出すのでしょうか。

「DNAウイルスであるかどうか」が重要なのではないかと考えた時もありましたが、単純にそうではないようです。なぜならばC型肝炎ウイルス、HTLV-1、HIVはRNAウイルスであるからです。

ただHTLV-1・HIVはいずれもRNAウイルスの中では特殊な存在です。逆転写酵素というRNAをDNAに変換する酵素を持っているからです。

そうすると、DNAウイルスでなくともDNA構造に関わる仕組みを持つウイルスが、「細菌」的なウイルスとして存在しうるのかという考えが出てきますが、それでもまだ矛盾が残ります。

なぜならばC型肝炎ウイルスは、一本鎖プラス鎖RNAウイルスというカテゴリーに入るからです。RNAウイルスであるC型肝炎ウイルスは潜伏感染もできるし、治療薬によって攻撃することも可能です。

しかし1本鎖のRNAで、プラス鎖という特徴に注目すると、実はプラス鎖というのはDNAが遺伝情報を複製する鋳型としての特徴を持っているのと同様に、プラス鎖もDNAと同様にRNAが増幅される際の鋳型としての特徴を持っています。

やはりDNAの特徴を持つことが「細菌」的な要素になるのかと思えてくるのですが、実は「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」のカテゴリーには今話題のコロナウイルスも入ってきます。

これを「コロナウイルスも潜伏感染しうるし、治療薬を開発しうるのでは」という判断の根拠にするのは早計です。同じカテゴリーにはデング熱ウイルス、コクサッキーウイルス、RSウイルス、ノロウイルスなど治療薬が開発されていないものがほとんどです。

この状況を踏まえれば「一本鎖プラス鎖RNAウイルスの中でC型肝炎ウイルスだけ潜伏したり、攻撃したりできうる特殊な理由が存在している」と考える方が妥当だと思います。

ただC型肝炎ウイルスの感染のメカニズムや治療薬の作用機序についてはかなり複雑なので、これについては別の機会になるべくかみ砕いて解説してみたいと思い、ここでもこの問題はひとまず保留にしておきたいと思います。

一方でもう一つ注目すべきなのは、B型肝炎ではステロイドなどで免疫を抑制した際の肝炎の再増悪はよく起こるけれど、C型肝炎では免疫抑制によって再増悪することは稀、すなわち②の条件が乏しいという特徴があることです。この辺りもC型肝炎ならではの特徴を考えるきっかけになるかもしれません。

さらに言えばB型肝炎とC型肝炎の治療薬にインターフェロンが使われているという点も考える際のポイントになりそうです。インターフェロンは「自己」から分泌される天然の抗ウイルス薬だと以前紹介しました。

これが治療薬になるということはそのウイルスは「自己」になるのでしょうか。「他者」になるのでしょうか。

最後にもう一つ、「一本鎖プラス鎖RNAウイルスは細菌(レビウイルス科)、真核生物微生物、植物、無脊椎動物、脊椎動物を含む、広範な宿主に感染する」という特徴がある点も興味深いです。

ここから一つ言えることは、「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」が様々な生物の共通構造を認識しているであろうということです。

そうなってくるとここに来て、完全なる「他者」と思えていた「細菌」に関しても「自己」的な要素がある可能性も見えてきます。

はたして、「自己」とは何なのか、「他者」とは何なのか、・・・ますますわけがわからなくなってきてしまったかもしれませんね。

・・・非常にもやもやする着地の記事になってしまいましたが、たまにはそういうことがあってもいいでしょう。

ひとまず今回は、世の中には「細菌」のように振る舞うウイルスが少数存在するが、それには遺伝子の基本的な共通構造が関わっていそうだという理解に留めておこうと思います。

次回はここからさらに「細菌感染症」と「ウイルス感染症」の本質的な違いについて考えてみたいと思います。


たがしゅう

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