強い薬の間欠的投与はより強い反動を引き起こす

2021/01/19 22:50:00 | ウイルス再考 | コメント:0件

前回のブログ記事で実は2つの疑問を先延ばしにしました。

一つは関節リウマチの早期の治療として使われている「DMARDs」という薬についての疑問です。

「DMARDs(Disease Modified Anti-Rheumatic-Drugs:疾患修飾性抗リウマチ薬)」とは、「関節リウマチの免疫異常を修飾することによって、関節リウマチの活動性をコントロールする薬剤」の意味です。

「DMARDs」には大きく免疫調整剤と免疫抑制剤の2種類があります。免疫調節薬(immunomodulaters)とは正常の免疫能には影響せずに異常な免疫機能を正常化する薬剤です。

具体的にはD-ペニシラミン、金製剤、サラゾスルファピリジン、ブシラミンなどの薬剤があります。これらの薬は確かにリウマチの活動性は抑えるものの、どのような作用機序で抑えるかについては実は明らかにはなっていないという謎の薬です。

ですがDMARDsについて取り上げたい疑問はそれではありません。もう一つの免疫抑制薬(immunosuppressants) とはすべての免疫機能を非特異的に抑制する薬剤のことなのですが、

その中に「メトトレキサート(MTX)」という薬がありますが、葉酸というビタミンの働きに拮抗して細胞の増殖を止める働きを持つ、抗がん剤としても用いられている免疫抑制薬です。

抗がん剤的に全細胞攻撃するので過活動状態のリンパ球も多分に漏れず攻撃されるので結果的に免疫も抑制されるわけですが、実はこのMTXの稀でない副作用として「間質性肺炎」があるのです。 私は以前のブログ記事で、関節リウマチのような自己免疫疾患の機序の一つの表現型として「間質性肺炎」があるという仮説を述べました。

つまり自己を他者として攻撃するような「リウマチ」の活動性が高まれば、肺の間質においても同じようなことが起こり「間質性肺炎」を発症しても不思議ではないというわけです。

それならば、なぜ「抗リウマチ薬」である「MTX」が「間質性肺炎」を高率で起こしうるのかというのが、前回先送りにした一つ目の疑問です。

もう一つの疑問は、サイトカインストーム治療薬である抗IL-6抗体に「間質性肺炎」を起こしうるのはなぜか、というものです。

私はアレルギーと自己免疫疾患とサイトカインストームとの連続性にも以前言及しましたので、この2つの疑問は本質的には同じ問題を取り上げているということに気づかれるのではないかと思います。

要するに突き詰めれば「なぜ抗リウマチ薬がリウマチ活動的な現象(副作用)をもたらすのか」という疑問です。


この疑問を解決する鍵は、これらの薬の投与方法にあります。

まず、実はMTXという薬は、高血圧やコレステロールの薬などのように、毎日飲むという用法の薬ではありません。

一般的にMTXは、1週間に1回だけ飲むように指示される薬です。

なぜ1週間に1回なのかという理由は、どこを調べても意外と説明されていませんが、毎日飲めば副作用が強く出てしまうためであろうことは想像に難くないでしょう。

ということは、MTXというのはそれくらい強い効能を示す薬であるということの傍証であり、実際に「間質性肺炎」以外にも、「口内炎」「嘔吐」「下痢」「肝機能障害」「脱毛」「血小板減少症」「感染症」など様々な副作用が稀でない頻度で起こります。

そのMTXの副作用を予防するために、前述のようにMTXの作用機序が葉酸をブロックすることであることから、葉酸を薬で補充しながら服用することも一般的です。

そんな風に副作用予防対策を行いながら、週に1回だけ強力な抗リウマチ効果を発揮させて、その後副作用が出ないかどうかを慎重に観察しながら使っていく、MTXというのはそういう薬です。

さて、そんな抗リウマチ薬「MTX」が、なぜリウマチ性現象の延長線上にあるはずの「間質性肺炎」を起こしうるのでしょうか。

これを理解するには、強力なシステム操作を一時的に加えた後に人体に起こる現象を想像してみるとよいです。

例えばとある高血圧の患者さんが、いつも飲んでいる降圧薬を飲み忘れて、降圧剤を飲んでいない状態で血圧を測ったらとても高くなっていたので慌てて薬を飲み直したり、あるいはなくなった薬を早めに出してもらおうと病院に駆け込むという出来事が時々観察されます。

血圧の薬を毎日飲んでいる分にはいいのですが、急に飲むのを止めるとその反動で血圧がいつも以上に急上昇するということが起こったりするのです。

このようにいつも飲んでいる薬が急に止まると、反動のように抑えたはずのシステムがぶり返すというリバウンド現象が人体においては起こります。

同じことは長年飲み続けていた睡眠薬を急に飲み忘れた時にも起こったりします。これには反跳性不眠と呼んだりしますが、このような状況に遭遇すると患者さんは「あぁ、やっぱり睡眠薬を飲んでいないとダメなんだ」などと解釈してしまうので実に厄介な現象なのですが、

実際には睡眠薬を飲み続けることによって、自力の入眠システムが抑圧され続け、その抑圧が薬の飲み忘れによって外れた瞬間に薬を飲む前以上の不眠状態が反動で襲ってくると、すなわち薬のせいで引き起こされた強い不眠だということなので、「薬を飲まないといけない」という解釈につながってしまうことは問題がよりこじれてしまうことになってしまっています。

この現象は次のように捉えることもできます。例えば血圧の薬にとって昇圧システムが無理矢理抑えられているとします。

そうするとその抑制を受けている人体はそのシステムの強制的変更に何とか適応しようとして、自らの昇圧システムの程度を強めようとします。言ってみれば自分の身体に無理をさせる方向に働きます。

これははたからみると血圧の薬が効きにくくなった状態、ともすれば「薬剤抵抗性高血圧」だとか「血圧の薬に耐性が形成された」などと評価されうる状態ですが、

人体の側からすれば急に外部から加えられた人為的なシステム変更に対して何とか適応しようと頑張っているサインで、言わば「過剰適応」とでも言える状態です。人体がよかれと思ってやっている反応であり、見方を変えればそれだけ頑張ってシステムを稼働させている強い原動力があるということの裏返しでもあります。

90歳を超えるような高齢者でたまに、それまでずっと飲んでいた血圧の薬が老衰も近づいて飲めなくなってきて、飲まないけれど血圧が非常に下がってしまっているのでそのまま飲まないことを許容するといった場面に遭遇することがあります
これはシステムを稼働させている原動力がもう非常に弱ってしまっている状態で「消耗疲弊」と言える状態です。

ともあれ強い作用を一時的に加えて止めるということを行えば、生きる原動力が十分に残っている人の中ではその反動としてぶり返す現象が起こるということが人体に対しては必然的に起こるということです。


ここまで説明したところで、抗リウマチ薬「MTX」がなぜリウマチ性の副作用をきたすかという疑問に戻れば謎が解けるのではないでしょうか。

そう、強力な抗リウマチ効果を一時的にもたらすことによって、人体はその反動としてリウマチ性の現象を強く引き起こした結果、「間質性肺炎」が起こっているのではないかという考えが成立するのです。

その目でおなじく「間質性肺炎」を高率に起こす抗リウマチ薬、「抗IL-6抗体」の投与方法を確認してみると、

なんと4週間に1回だけ投与する薬であると書かれています。それくらい間をあけないと副作用が強すぎて耐えられないという、そんな薬です。

しかも、今重症コロナの治療として使われようとしている抗IL-6抗体「トシリスマブ」に関して言えば、「サイトカイン放出症候群」に対してこの薬を使用した臨床試験において「サイトカイン放出症候群の副作用があった(78.6%)ということが添付文書をよく読むと明記されています。

「サイトカインストーム」の治療に使おうとしている「トシリスマブ」が「サイトカイン放出症候群」を起こしうるとは一体どういうことか、今回の話を踏まえればよく理解できるのではないでしょうか。

この構造を知らなければ、「トシリスマブ」を投与した患者さんの「サイトカインストーム」が抑えきれなかった時、それはおそらく「残念ながらこの患者さんにはトシリスマブは効かなかった・・・」と評価され、誰もそれを疑わないことになるだろうと思いますが、

もしかしたら、トシリスマブで強力にサイトカインストームを抑えた結果、反動としてより強力なサイトカインストームへとつながってしまう可能性も否定できないのです。

勿論、そこまでひどくなったサイトカインストームに対して一縷の望みをかけてこうした薬の強力な抑制効果にかけてみるという選択肢はあるとは思います。そして実際に運良く反動も起こらずに済んで、死を回避することができたという人もいることでしょう。

しかし反動が起こらなかったということは逆に言えば、それだけ生命力が衰えているということの裏返しでもあるわけです。


私はむやみやたらにこれらの薬を使うなと言いたいわけではありません。

私達が病気の治療に望みをかけているこれらの薬の本質はそういうところにあるということを知ってもらいたいのです。

その上で私達が本当に目指すべき病気の治療の方向性はどちらにあるのかということを、

一人ひとりに真剣になって考えてもらいたいのです。


たがしゅう
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