だんだん病気が増えていく理由
2014/02/20 00:01:00 |
素朴な疑問 |
コメント:10件
糖質制限を知る前と後では同じ景色が違って見える事があります。
先日BSの「鳥越俊太郎 医療の現場」という番組で腰痛の特集が組まれていました。
その中で「大腿骨骨折の患者数が年々増え続けている。1987年からの20年間で患者数が2.8倍も増えている.その原因に骨粗鬆症があり、骨粗鬆症の原因は加齢、カルシウムやビタミンD不足、女性ホルモンの低下である」といったデータが右肩上がりに患者数が増えていく棒グラフとともに示されていました。
こういう右肩上がりの棒グラフはいろいろな場面でよく見ますが、
その都度「高齢化」という言葉でその理由が説明されます。
しかしはたして本当にそれだけでしょうか?
よくよく考えてみると、高齢化だけでは説明できない事がある事に気がつくのです。 まず日本の人口が実際どれくらいの速度で高齢化しているのかを確認します。

「平成25年版高齢社会白書」によりますと,1985年の時点で65歳以上の高齢者は1247万人で,総人口に占める65歳以上人口の割合は10.3%でした.
それが,2010年になると65歳以上の高齢者は2924万人で,総人口に占める65歳以上人口の割合は23.0%まで増えています.
これを冒頭の大腿骨頸部骨折患者の増え方と比べてみます.
高齢人口は1985年から2010年の25年間で2924万/1247万=2.35倍に増えていることになります.
大腿骨頸部骨折の患者数はこれよりも5年短い期間(1987年~2007年)にも関わらず,2.8倍に増えているわけです.
勿論大腿骨頸部骨折を起こす人が全員65歳以上とは限りませんが,若い人で大腿骨頸部骨折を起こす人はごく稀なので.
単純に考えれば,高齢化の割合以上に大腿骨頸部骨折患者数が増えているということになります.
そのプラスαの要因がビタミンDやカルシウムの不足,女性ホルモンの低下だけで,はたして全て説明可能でしょうか?
次に認知症について見てみます.
厚生労働省による将来推計では2010年の65歳以上の高齢者に占める認知症患者数は200万人と見込まれていましたが,
実際の調査では2012年現在で462万人の認知症患者がいることが判明しています.推計をはるかに上回る速度で認知症患者が増え続けています.
これを見ても単なる高齢化だけでは説明しきれない何かが起こっていることが容易に想像できると思います.
そしてもう一つ,多発性硬化症という病気があります.
多発性硬化症というのは脳,脊髄などの神経の中枢部分に脱髄という現象が起こって神経が障害される,いわゆる難病です.
この病気の原因は,遺伝,自己免疫,ウイルス感染など様々な説が言われていますが,はっきりとした事はわかっていません.
先日,この病気の治療薬に関する勉強会があったのですが,
その中で,この多発性硬化症に関しても右肩上がりで患者数が増えていっている事が示されていました.
この病気を発症しやすい年齢(好発年齢)は15~50歳と言われていますので,この場合高齢化は全く無関係です.
それなのにこの原因不明の病気の患者数が年々増え続けるのはどういうわけでしょうか.
これだけでははっきりとした事はわかりませんが,
一つだけ言えるのはこうしたさまざまな疾患が一様に増加していく状況をみていると,
「高齢化」というだけでは決して説明しきれない何かがあるという事です.
すべてを説明しきれないにしても,
これらの疾患の増加の背景に全年代に共通する食生活の問題、
即ち糖質の関与があるように私には思えてなりません。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
はじめまして。
もしかしたら、たがしゅう先生はご存知かもしれませんが、糖質制限食によく似た【回転式食事法】という食事療法を取り入れている治療家の先生がいらっしゃいます。
その先生は、全ての病気の根源は、糖にある。とおっしゃっています。
糖の影響は、親から子に受け継がれ、現在、糖化現象はどんどんひどくなっているそうです。
アレルギーや虚弱体質な子供が増えているのも、やっぱり糖が原因なんだそうです。
ご参考になれば、幸いです。
http://www.kaiten.jp/syokuji/syokuji.html
No title
骨粗しょう症
素人考えですが、骨粗しょう症には骨の糖化も原因であるのではないでしょうか。素人イメージで、砂糖を多く使って作ったクッキーがパリンと割れやすいような。
以前に、宇宙飛行士はどんなにたくさんカルシウムをとっても無重量で骨に加重刺激がかからなかと骨粗しょう症になると聞いたことがあります。カルシウムが足りていれば骨は大丈夫とは言えないようです。
私は化粧品会社でAGEを測ってもらいます。昨年10月には+16歳(標準値の悪いほう)だったのが、この2月には-2歳(標準値のよいほう)になりました。糖質制限の効果かまゆつばなのかは分かりませんが。結果がよくて悪い気はしないです。
Re: はじめまして。
貴重な情報を頂き有難うございます。
> 全ての病気の根源は、糖にある。
> アレルギーや虚弱体質な子供が増えているのも、やっぱり糖が原因なんだそうです。
同意見です。
わけもわからず増えてきている病気こそ糖質の関与を疑うべきだと私は思います。
Re: No title
貴重な御意見を頂き有難うございます。
Re: 骨粗しょう症
コメント頂き有難うございます。
「カルシウムやビタミンDの不足では、この年々増えていく患者数を説明するのは無理がないだろうか?」
糖質の観点がないとこの疑問に気がつくことすらないと思います。
AGE測定での若返り結果、さすがエリスさんですね。
骨粗鬆症
糖質過剰に加えて蛋白摂取不足も原因の一つということはないでしょうか。
標準的な食事概算
朝:パン 蛋白10-15
昼:うどん 蛋白10-15
夕:定食 蛋白20-25 計<55
特に高齢女性は食事摂取量が少なく更に摂取蛋白が少ない印象です。
CKDの蛋白制限食でも1.0g/標準体重kg/日程度ですので
多くの高齢者が蛋白質摂取不足なのではないかと疑っています。
現在の標準的な食事は糖過剰+蛋白不足で、
種々の問題はどちらかあるいは両方の影響という仮説を考えています。
Re: 骨粗鬆症
コメント頂き有難うございます。
> 骨といえども基本構造は蛋白質なので、
> 糖質過剰に加えて蛋白摂取不足も原因の一つということはないでしょうか。
御指摘の通りだと思います。
現代型食生活において糖質過剰と蛋白質摂取不足は表裏一体ですね。
私は糖質制限とともに脂質・蛋白質の積極的摂取を勧めますが、その際「肉食は長生きの秘訣なんですよ」というフレーズが好きでよく使っています。
Re: 骨粗鬆症
ALPHA CLUB 2012年1月号pp1
あるふぁ随筆「健康で輝いて生きるコツ」
日野原 重明
…そこで健康で輝いて生きるコツを紹介しようと思います。
大切なのは食事、睡眠、運動、脳の活性化です。
① 食事としては、毎日1300kcalに制限する。内容は、たん白質60歳代の人並みにとる。
朝はオリーブオイル15ccをアップルジュースに混ぜて飲む。牛乳カップ1杯に大豆から採ったレシチンを茶さじ3杯混ぜて飲む。それにバナナ1本。あとは砂糖なしのコーヒーを1杯。昼食は牛乳1杯、クツキーを3枚のみ。
夕食は800kcalとする。脂肪のない牛肉ステーキ90gを週2回、魚を週5回、緑黄色野菜を大皿1杯、特に長寿のビタミンBといわれるブロツコリーを3個とる。これにオリーブオイルのドレッシングをかける。ご飯、または糖質は制限し、ご飯は3分の1杯に止める。食後の果物はカロリーの低い物をとる。
Re: Re: 骨粗鬆症
コメント頂き有難うございます.
実際に結果を出しておられる日野原先生の生き方,大変参考になります.
糖質制限の理論を元にさらに洗練させていくことも期待できそうです.
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