数値は真実を反映しない

2020/08/24 09:15:00 | ふと思った事 | コメント:0件

新型コロナウイルス感染症の第一波での死亡率は5.3%、対して第二波では0.5%という情報を耳にしました。

この数字を根拠に、世間ではウイルスが弱毒化したのではないかという説がまことしやかにささやかれています。

あるいは以前から言われているように、日本での新型コロナウイルス感染症による死亡者数は、欧米での死亡者数に比べて100分の1程度だという情報もありますが、

これを持って日本では何らかのファクターXが働いて死亡率をぐっと押さえ込んでいるという意見もよく聞かれます。

このように確かなデータ、動かしがたい数字を基に様々なことを議論すべきだという意見があります。

しかし、そもそも数値データ、もっと言えば疫学的な情報というのは本当に真実を反映していると言ってよいのでしょうか。 第一波と第二波の死亡率の違いにしても、無症状の感染者を積極的に検査対象に入れるか入れないかによってこれだけの数値の違いが出たと見ることもできるわけです。

もしもウイルスは弱毒化しておらず、ウイルスは全体としていつも通りというのが真実だとしたら、5.3%⇒0.5%に死亡率が下がったという数値情報は、ウイルスの弱毒化という誤解釈へとミスリーディングしていることになります。

同様に日本と欧米での100倍の死亡者数の差に関しても、もしもPCR検査実施の規模や死亡診断の文化の違いによって表面上の数値の差が生まれただけであって、

真実はウイルスはいつも通りであったとしたら、死亡者数の100倍の差は、日本人にはファクターXがあるに違いないという誤解釈へと誘導してしまっていることになるでしょう。


数値や疫学的情報というものは確からしい外観をしているけれど、現実の一部を一定の基準で切り取った一側面に過ぎないということを私達は認識しておく必要があります。

このことを認識し損ねていると、私達はどんどん間違った解釈を積み重ねていってしまい取り返しがつかなくなっていきます。

卑近な例を出しますが、今仮にある夫婦が家事の分担割合を二人の間でどうするか決めていくとします。

「家事は女性がやり、男は外に出て稼いでくるもの」という昔ながらの価値観をそのまま適応するとしたら、男性0割、女性10割ということになるでしょうか。

その数値情報だけを見ると、女性に圧倒的負担がかかっており、男性はもっと家事を分担すべきだという解釈が集まることは容易に想像されます。

しかしながら実際にはその夫婦において、夫が家事をしない方がうまく回るような実務上の、あるいは性格特性上の理由が存在しているかもしれません。その場合、その事実は数値には表れてきません。

あるいは家事は平等にすべきだという価値観の元に、男性5割、女性5割という割合で分担を決めたとしましょう。

その数値情報を内部の事情を知らない第3者が見れば、「あそこの夫婦はきちんと家事を分担して協力しあって感心だ」という意見が多く集まりそうな気がします。

ところが、もしかしたら5割と5割に分担することで、実際にやってみていくにつれて、互いにストレスがたまっていくということがわかってくるかもしれません。

その場合、5割と5割という数値情報は、「夫婦平等で家事が円滑に進む理想的な家庭」という真実とはかけ離れた誤解釈へと誘導してしまっていることになるでしょう。

なんでこのようなすれ違いが起こるかと言いますと、数値は人間の心を反映していないからです。

勿論、ここで私は夫婦の家事割合を何対何にすべきだという意見を言おうとしているわけではありません。おそらくその答えは夫婦によって千差万別であろうとさえ思います。

最も言いたいことは、「数値情報は必ずしも真実を反映していない」ということです。だから数値情報に絶対の信頼をおくことは危険だということです。

一方で数値情報を無視せよ、という話でもありませんが、数値情報はあくまでも一側面を表しているに過ぎないということを明確に自覚すべきです。

数値情報を読み解く場合には、その数値が導かれた背景についても想像力を巡らせる必要があります。

今回の一連のコロナ騒動はそのことを強烈に教えてくれているように私には思えます。

言い換えれば、数値情報はその社会の価値観を部分的に反映している、とさえ言えるかもしれません。

数値も重要かもしれませんが、数値よりもっと確かで動かしがたい情報は他にもあるはずです。そうした動かしがたい事実を元に議論していかないことには後に修正できなくなってしまいます。

・・・ですが残念ながら、すでに世界はその傾向を示してしまっているようです。

多くの人々は数値によって恐怖が呼び起こされていますし、有識者達も数値を元に理論を振りかざしています。

科学重視型思考の一旦には数値重視主義が大きな割合を占めているのかもしれません。


たがしゅう
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