Post
ワクチンによる自然免疫の賦活では説明できない
BCGワクチンが自然免疫を賦活するかと言われたら、確かに賦活するだろうと思います。
ただそれはBCGワクチンに特有の特徴ではありません。BCGワクチンに限らず何か異物や病原体が入り込めば必ず自然免疫システムが発動します。
なぜならば自然免疫は非特異的な免疫反応、すなわち異物や病原体の細かい所に関わらず作動する免疫反応であるからです。
そしてもしもBCGワクチンが、特に日本株が自然免疫を賦活して、新型コロナウイルスの感染率を抑え、私達の健康にとって有益な効果をもたらしているのだというのであれば、
その恩恵は他の異物や病原体に対してももたらされていなければ、話が合わないのです。
BCGワクチンが偶然コロナウイルスへの抵抗力を高めたという見方になると、それは自然免疫ではなく獲得免疫の賦活がもたらされたという話になります。
BCGワクチンは結核菌を弱毒化して作られたものですから、コロナウイルスとは似てもにつかないものです。
もしかしたら結核菌とコロナウイルスに共通する抗原(タンパク質)がミクロで存在している可能性はゼロではありませんが、新型コロナウイルスに対する抗体産生はそれほど多くないことから、共通抗原に対する抗体が産生できている可能性は低いでしょう。
唯一両者で似ている点があるとすれば結核菌は細胞内寄生菌なので、細胞の中に巧妙に入り込むことができるという点はあるでしょう。
そのため細胞性免疫と呼ばれる病原体が細胞内に入り込んだ際に駆動される免疫システムが動かされるということはあると思います。BCGワクチンがこのシステムを動かしてコロナウイルスを撃退したのでしょうか。
しかし細胞性免疫はコロナウイルスだけをやっつけるわけではありません。インフルエンザウイルスも、ノロウイルスも、コクサッキーウイルスも、アデノウイルスも...
ウイルス全般に対して細胞性免疫は働くわけですから、もしBCGワクチンが細胞性免疫を賦活したというのなら、他のウイルス感染症も新型コロナウイルス感染症と同じような疫学的特徴をとっていないとつじつまが合いません。
しかし今回の新型コロナウイルス感染症のように日本、中国、韓国などの東アジア地域で感染者数が圧倒的に低く、欧米諸国では圧倒的に多いというような疫学的特徴があるという話は他のウイルス感染症でこれまで出てきたことがありません。
そんな疫学的特徴は新型コロナウイルス感染症だけの特徴と言ってもいいくらい、今回初めて言われはじめたことなのです。
そのような現象の理由を非特異的な免疫反応である自然免疫の賦活で説明するのは非常に無理がある話だと私は思います。
それでは何がこの特異な疫学的特徴をもたらしたのか、少なくとも新型コロナウイルスに対してのみ影響を与える要素だと思います。
私はその要素をインフォデミック(情報の感染拡大)だと考えています。
過去にこれだけ単なる一つのウイルスに対する情報が出回り、それにまつわる情報によって不安や恐怖が世界中にあおられた状況はかつてないことであって、今回唯一の要素と言えると思います。
この不安/恐怖情報によって、私達は大なり小なり不安や恐怖があおられ続けた(今もまだあおられ続けている)と思いますが、
その影響は国の価値観や国民性によって受け止め方が変わってくるものです。
以前述べたように東アジアでの死亡率が欧米諸国での死亡率の100分の1という現象自体、真実を反映していない可能性があります。
恐怖にあおられた国は新型コロナウイルス感染症の死亡者数をこの上なく多く計上し、
不安をあおられながらも慎重に計上していくスタンスの国はそこまで多く計上していないのかもしれず、その差が100分の1という疫学的特徴を生んでいる可能性は十分にあります。
ご存知のように新型コロナウイルスのPCR検査は無症状の人でも陽性になりうる検査です。ということは、PCR検査をどれだけたくさん行ったかと、その国の医師が死因をどのように評価するかによって死因はいくらでも変動しうるということです。
勿論、すべての国の医師がほぼ正確に死因を確定している可能性もゼロではありませんが、私は自身の医師としての経験上、他の明確な死因であればまだしも、死因「新型コロナウイルス感染症」はかなり不正確になるリスクをはらんでいるものだと理解しています。
見かけのデータや見かけの数字に惑わされず、もっと本質的な人間の動きを捉えようとすれば、
この一連の騒動は何でもない現象を非常に偏って見つめてしまっている状況であるということがわかるのではないかと私は考えています。
たがしゅう
コメント
種痘の歴史
【種痘の歴史】
1947年と48年の強力痘苗による日本国内の犠牲者は約600人と推計され、この2年間の天然痘患者数(47年274人、48年31人)を上回った。
1948年:英国で種痘を強制→勧奨接種に変更
1955年:日本国内野生株による、最後の天然痘症例
1970年:北海道小樽市の種痘後遺症被害者が、国を相手取って損害賠償の訴訟を起こす
1971年:英国で種痘の定期接種を廃止
1973年:バングラデッシュからの帰国者が天然痘を発症。都内2000名に予防接種実施
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=107104816X00919730404¤t=8
1974年:インドからの帰国者が天然痘を発症。町田市民に予防接種実施
https://imagelink.kyodonews.jp/web-Sales/web/08_detail.html?id=4451689
1975年:英国からディック教授が来日し法廷で証言
「種痘は天然痘を予防する非常に有力な手段ではありすが、唯一絶対のものというこどではありません。英国において天然痘侵入を防ぐために有効な検疫体制をとり、万一侵入の場合も疫学的コントロールを用いれば流行は最小限に食い止められるのです。疫学的コントロ―ルは患者を隔離し、患者への接触者に種痘をし、一定期間監視することです。このようにして天然痘は流行せずに終ります」
「インドやパキスタンは英国の元植民地で交通は激しいのですが、それでも英国の政策は実行されております。またWHOの報告によれば、天然痘常在国は現在わずか4国であり、それも急激にWHOの天然痘根絶計画が成功しつつあり、患者数は激減し、天然痘はここ2~3年のうちに消滅することが予想されています。強制種痘の続行は時代遅れであり、無意味です」
1976年:種痘の定期接種が終了
出典「私憤から公債ヘ」吉原賢二(1975岩波新書)
◇
ディック教授の証言は非常に印象深く、45年たった今も新鮮で、COVID-19 にも当てはまりそうです
2020-08-23 20:30 中嶋一雄 URL 編集
Re: 種痘の歴史
情報を頂き有難うございます。
ワクチンによって撲滅されたウイルス感染症が天然痘のみという点に私は強烈な違和感を感じています。
確かに御提示の歴史を踏まえれば、種痘が有効であったとしか考えられない経過です。
しかし種痘や天然痘ウイルスにまつわる話にはどうも納得いかないところがございます。セミナーではその点について触れ、参加者の皆様と一緒に考えてみたいと思っています。
2020-08-23 22:06 たがしゅう URL 編集