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間質性肺炎は内側からしか起こせない
肺炎には大きく「肺胞性肺炎」と「間質性肺炎」とがあります。
肺の組織は「肺胞」と呼ばれる肺の中に無数に存在する袋状の細胞群と、「間質」と呼ばれる肺胞と肺胞の間を埋め合わせる細胞群とに分かれ、
「肺胞」を中心に起こす肺炎を「肺胞性肺炎」、「間質」を中心に起こす肺炎を「間質性肺炎」と呼んでいます。
「間質性肺炎」が新型コロナウイルス性肺炎の大きな特徴のように扱われている節がありますが、
実は他のウイルスによって引き起こされる肺炎、例えばインフルエンザウイルス肺炎、RSウイルス肺炎、サイトメガロウイルス肺炎など、すべて「間質性肺炎」の病像を呈しています。
「肺胞性肺炎」を起こすのは、主に細菌や真菌といった病原体になります。
病原体が入ってきて、口からのど、気道を通って肺の奥へと進んでいき、最終的に病原体が行き着く終着点が「肺胞」という舞台です。「間質」はその奥で裏打ちされた細胞です。
もしも外からやってきた病原体が「間質」を炎症の場とするためには、必ず肺胞を通り過ぎる必要があります。それが故に細菌や真菌が起こす肺炎は「肺胞性肺炎」が主体となるわけで、極めて自然な流れと思います。
ところがウイルスという病原体だけは、細菌や真菌と同じように外からやってくるにも関わらず、まるで「肺胞」がなかったかのようにすり抜けて、その奥にある「間質」を主座として炎症を引き起こすという離れ業を引き起こします。
これは一体どういうことなのでしょうか。
これこそが私が「ウイルス感染症とは自己身体反応のオーバーヒート」だと考える一つの大きな根拠なのです。
「間質」に炎症を起こそうと思ったら、内側から自分で反応を起こすしかない、ということはそれを駆動させる「ウイルス」には「自己」的な要素が存在しているということです。
「特発性間質性肺炎」という原因不明で「間質性肺炎」が起こる病気がありますが、ひょっとしたらこれらも認識されていないだけで、何かしらのウイルスによって引き起こされているという考えもあるかもしれませんが、
一つ確実に言えることは「特発性間質性肺炎」の治療に「ステロイド」が用いられています。
これはこの「特発性間質性肺炎」の病態を持つ人は「ステロイド」が足りなくなっている、すなわち「炎症を抑えるストレスホルモンが枯渇して病態が抑えきれなくなっている」ということを意味しています。
なぜストレスホルモンが枯渇しているかと考えれば、ストレスホルモン分泌を刺激するストレスイベントが過剰に起こり、あるいは慢性的に起こり続けてホルモン産生細胞が疲弊しているためだと考えれば、
ウイルスが引き起こす「間質性肺炎」の病態に「ストレス」が密接に関わっているということが言えるはずです。
いずれにしても、ウイルスによって駆動されようと、ストレスが引き金で起ころうと、起こっている本質的な現象は「自己反応のオーバーヒート」なわけですから、
これは原因を問わず、「自分自身のシステムが乱れている」ということを示している現象だという意味で、
外敵な生物によって自分を攻撃されている状況とは質の違う現象だということが理解することができると思います。
ところが感染症学の専門家に促されるように世間の大方のウイルスに対する見方は、
「ウイルスは人類の敵」「人類を滅ぼそうとするウイルスとの戦いに人類はなんとしても勝利しなければならない」といったものではないかと思います。
様々なウイルスに対する情報は、ウイルスが外敵ではなく自分自身であるという考えに行き着くヒントを与えてくれていると思います。
やらなければならないのはウイルスを一生懸命避けることではなく、自分自身のシステムを整えることだということに、
私達は気づき、自分自身を整えるために具体的に行動していく必要があるのではないかと思います。
たがしゅう
コメント
2型肺胞上皮細胞について
下記の沢山の電子顕微鏡画像と模式図を見れば、同細胞が肺胞腔に直接露出して空気層面に接しているはずです。
表面張力を減ずるサーファクタントを肺胞腔面に分泌して肺胞の拡張を手助けしているのですから、開口していて当然ですが。2型が5%で、95%が1型=ガス交換細胞の実体=という意味はそういうことではないかと。
https://www.bing.com/images/search?q=2%e5%9e%8b%e8%82%ba%e8%83%9e&form=HDRSC2&first=1&tsc=ImageBasicHover
で、
「内側から自分で反応を起こすしかない」
との言及は訂正の必要があるかも。
何れにせよ、ウイルス性間質性肺炎の実態は、2型肺胞へのウイルス感染→免疫系の同感染細胞への攻撃の様相そのものでなのでしょうね。
無症状・不顕性感染者の中で一定の割合の人が(DPの患者を調べた自衛隊病院の報告にありました)、CT画像診断で「すりガラス様」の症候を呈していたとされており、そうなると彼らは「有症候かつ無症状」となるのでしょうし、感染性のあるウイルス粒子を排出する可能性はありますね。
ウイルス性炎症が、サイトカインストーム以前の初期から、あるいは「炎症」自体が宿主側の免疫系の反応であるとの先生のお考えには大いに同意。
1908年にアレルギー概念と用語を提唱し、「症状は抗体と病原微生物(抗原)の相互作用に由来する」と主張したピルケは間違っていなかったのですね。
2021-01-08 15:50 geturin URL 編集
Re: 2型肺胞上皮細胞について
コメント頂き有難うございます。
「上皮」と「間質」が対立する概念なので、「2型肺胞上皮細胞」は厳密には「上皮」に相当すると思います。
御指摘のメカニズムによって始まる肺炎であれば、それは「間質性肺炎」ではなく、「肺胞性肺炎」になるはずです。
確かに「間質性肺炎」において2型肺胞上皮細胞が分泌する肺サーファクタントの欠乏が問題になりますが、
「間質性肺炎」における炎症の主座は「間質」であって、その炎症が2型肺胞上皮細胞にも波及することによってもたらされている病態だと思われます。問題はなぜウイルスと直接接していない「間質」の方が炎症の主座になっているのかというところです。同じような微生物によって引き起こされる細菌性肺炎は「肺胞性肺炎」を呈するにも関わらず、です。
「有症候(CTで肺炎増あり)なのに無症状」については過去に当ブログでも考察致しましたが、
一見、原理的に起こり難いと思えるこの現象は、自覚症状の検出能のオーバーヒートによってもたらされているのではないかというのが私の見解です。そんな生命維持の仕組みに反するような現象は不安/恐怖情報に伴う高次脳機能の暴走によってしか起こりえないのではないかと考えております。
2020年4月30日(木)の本ブログ記事
「自覚症状がないのに他覚所見がある理由」
https://tagashuu.jp/blog-entry-1753.html
もご参照ください。
アレルギーにしても、自己免疫疾患にしても、何もきっかけなく自己炎症システムが暴走することはまずありえません。見えるかどうかは別として必ず最初は何らかの抗原との接触があるはずです。そこから先本来の目的を逸脱して自己が起こした炎症が消長を繰り返しながら、遷延し続けてしまうという点で、アレルギーも、自己免疫疾患も、ウイルス感染症も「自己システム暴走症候群」として包含できる疾患概念なのかもしれません。
2021-01-08 16:49 たがしゅう URL 編集