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冬風邪と夏風邪に共通する本質的な発症条件

category - ウイルス再考
2020/ 07/ 16
                 
異物(ウイルス)が自身のリンパ球を含む血液の場で遭遇することがウイルス感染症が重症化するための必要条件で、

さらにその異物が自身の自然免疫システムで処理しきれないほどの量押し寄せることがウイルス感染症が重症化するための十分条件である
とするならば、

よく言われていることではありますが、冬に風邪をはじめとしたウイルス感染症が流行しやすい理由は、やはり「乾燥」という現象が起こりやすいことに由来するのかもしれません。

「乾燥」するということは、感染細胞の表面を覆う汗や皮脂、粘液などの液状成分が存在しにくい条件であり、いわば「バリアを失っている状態」だということになると思います。

そうした状況下では、バリアがない分何らかの物理的刺激が加わった時に微細な裂傷を生じて、異物と血液の暴露が起こりやすい状況になるのではないでしょうか。
            

勿論、ほこりや粉塵のような無生物であれば、例え血液が流出するような裂傷があったところで、

血流の流れに押し流される形で、外に排出されるだけで、これがサイトカインストームへとつながるほどの遷延する異物除去反応へとつながることはないと思いますが、

相手が生物と無生物の間の存在であるウイルスとなれば、まるで「自己」的な存在かのようにスムーズに細胞内に侵入する仕組みを持っていますので、

バリアが失われた状況においては、その侵入が容易となるであろうことは想像に難くありません。

なので「乾燥」というイベントが起こりにくい季節では「風邪」などのウイルス感染症が発症しにくいということになりますが、

一方で「夏風邪」という言い方があるように、夏にウイルス感染症が起こることもあります。

ただし、夏の時期に感染症を起こす原因ウイルスは、冬の時期に感染症を起こす原因ウイルスと明らかに異なる傾向を認めています。

例えばインフルエンザは、夏の時期であればいくらかぜ症状を呈している患者に対していくら検査をしても引っかかってこないという感覚が臨床現場であります。

ということはインフルエンザは夏風邪の原因として少なくともメインではないだろうということになると思います。

では何が夏風邪の原因となっているのかと言いますと、すべてのウイルスに迅速検査キットがあるわけではないのであくまでも教科書的な知識になりますが、

アデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルスなどがよく挙げられています。

これらは「湿度の多い環境を好むウイルスである」と、だから夏に感染症を起こしやすいのだという説明がよくなされています。

しかし私はこのウイルスがまるで生き物のように適した生育環境があるかのように説明されていることに違和感を覚えます。

ウイルスは自らの意思を持っておらず、言ってみれば不完全な増殖性遺伝物質の断片に過ぎません。物理法則に従って移動し増殖するのみだと思います。

そういう意味で言えば、インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどと物理的な移動や拡散については同様の挙動を示すはずであり、夏にアデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルスが感染しやすいことには「湿度の多い環境を好む」ではない別の理由が存在していると考えられます。

やはり感染症を起こすためにはとにかく細胞内に侵入、少なくとも血液内に入り込み、リンパ球と遭遇する必要があるわけですので、

夏風邪を起こすウイルスは、バリアのある部位以外から侵入している可能性が考えられます。

そこで例えばアデノウイルスについて考えてみますと、アデノウイルスによって引き起こされる感染症には、「プール熱(咽頭結膜熱)」、「はやり目(流行性角結膜炎)」、「出血性膀胱炎」などがあります。

注目すべきは目に症状を起こしていたり、膀胱に症状を起こしていたりしている点です。

プール熱はその名の通り、プールで集団感染が起こることがあるこどもに多いアデノウイルス感染症です。目をこすったりしてできた微細な外傷がウイルスの侵入経路になる可能性はありましょう。

あるいは出血性膀胱炎はその名の通り出血を伴う膀胱炎ですが、これはウイルスが炎症をきたし出血を起こしたという解釈が一般的ですが、一方で出血を伴う尿路の微小外傷がもともとあってウイルスが侵入して感染症を起こしたという解釈もできると思います。

あるいはエンテロウイルス、「エンテロ」とは腸管の意味なので「お腹風邪(感染性胃腸炎)」を起こすウイルスとして知られています。

これも食べているものなり、便秘なりが影響して腸管に微小な外傷があればそこを起点にウイルスが侵入していく可能性があります。

コクサッキーウイルスは「ヘルパンギーナ」や「手足口病」というこれまたこどもに多い感染症を起こすことでよく知られています。

これらの主症状は発熱、口内炎で、「手足口病」はこれに加えて手足に水疱性の発疹が出現します。

これはウイルスが侵入する部位は口内の微小外傷と考えることも可能だと思います。こどもに多いのも口の中に外傷が出来やすい行動をしやすいからでしょうか。

一方で手足に症状が出るという様相から、ウイルスの直接感染部位に関係した症状ではなく、宿主の全身性の免疫反応が感染症の症状発現に関わっているという側面もここで確認することができます。

おそらくは口内の細胞と親和性のあるコクサッキーウイルスが感染し、その細胞のカテゴリーごと活性化して口内の細胞と共通構造を持つ全身の細胞が反応を起こすという仕組みになっているのでしょう。

その共通構造が解剖学的な構造(例:重層扁平上皮)を意味しているのか、生理学的な構造(例:神経配置)なのか、生化学的な構造(例:共通酵素にとってもたらされる化学反応)なのかはわかりませんが、

いずれにしてもウイルスそのものが直接移動して炎症反応を起こしているとは考えにくい症状の出方だと思います。

ちなみに夏だからといって、「乾燥」というイベントが起こりえないわけではありません。

例えば「脱水」が高じれば「乾燥」に近い状態になることはありますし、俗にクーラー病と言われるようなクーラーの風に当たりすぎて「乾燥」するケースもあります。

夏に稀に見られるインフルエンザは、そうした「バリア」が障害されにくい時期にもかかわらず、前述のような様々な要因が重なり気道に生じた微小外傷にうまく入り込んで、なおかつ宿主の自然免疫が落ちているという好条件(?)が重なってようやく感染症を引き起こすことができるのではないかと思います。

夏であろうともしもウイルスの直接伝播が感染症流行の要因なのであれば、そこにインフルエンザ患者がいれば容易に感染が拡大してしまいそうなものです。

しかし実際には夏に見るインフルエンザ患者は非常に散発的で、到底クラスターと呼べるような状況は観察されません。

ここに私はウイルス感染症というものの、「宿主側の要因」の強さを感じる次第です。

もう一つ思うことは、ウイルス感染症を予防するのに、「バリア」を整備する試みは大切だけれども、

そのバリアを完璧にするというのはほぼ不可能であろうということです。

なぜならば生きている限り、微小外傷は知らないうちに作られてしまうであろうからです。

うがいをしたり、水分を潤したりするのはとても表面的です。それをやっていても界面活性剤で皮膚のバリアが破壊されていれば意味ありませんし、

自律神経機能が低下し、発汗や粘液産生の機能が衰えていれば水分が増えたところでバリア機能は弱いままでしょう。

そうなってくるとの外的な接触を避ける努力はそこそこにして、

より大切なことは、ウイルスが入ってきたとしても速やかに排除できる自然免疫を大事にすることだと私は考える次第です。


たがしゅう

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