「自分で決めた」のではなく「従っている」
2020/07/04 06:30:00 |
読者の方からの御投稿 |
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「正義」について考えた先の記事に対して、読者の方から次のようなコメントを頂きました。
自粛とは「自分から進んで、行いや態度を改めて、つつしむこと。」
自ら進んでやっている事なのにストレスを感じる…という所が「自ら選んでいない、考えていない」という事なんではないですかね…
非常事態宣言の最中「バイクで走り回って事故したら医療機関に負担をかける」という理論の自粛警察が多数…
これが、普通の状況だったら事故しても救急車来てくれるから、大丈夫!ってあなたは思って走っているんですか?と聞きたかったです
これは非常に重要な指摘だと私は思います。
日々「主体的医療」の重要性を伝え続けていますが、自分の頭で考えて決断することに基本的にストレスは少ないはずなのです。
世の中には「自分の頭で考えているようでいて、誰かの意見やいつの間にかできた価値観に従って行動させられている」と思えることがたくさんはびこっていると思います。
以前とある人から「病院に薬をもらいに来る人も薬がほしいと思って来ているわけだから、主体的なのではないか?」という指摘を受けた事がありました
この主体性も自分で決めているようでいて、実は「誰かの決断に従っているだけ」だと、
要するに本質的には「自分で決めていない」のではないかと思えるのです。
なぜならば本当に自分で決めたことであれば、どんな結果になろうとも受け入れられるはずですし、
仮に受け入れられない予想外の結果に至ったとしても、その時点で自分の考えを見直して、行動を見直そうとするはずです。
ところが私が医療の中で薬をもらい続けている多くの患者さんと接する中、
「今まで薬を飲むということを正しいと思って続けてきたけれど、やってみて考えが間違っていたことに気づいたので、もう薬を飲むのを止めにします」と自ら主体的に軌道修正された方はただの1人もいません。
それどころか薬を飲むという選択の妥当性を一切疑うことなく、自分の体調不良の原因を年のせいだとか、運動や睡眠不足のせいだと別の原因に置き換えて解釈しようとしている方がほとんどです。
もし「薬を飲む」という選択肢を主体的に選んでいる、勿論それは「いい」と思うからこそそうするわけですが、
本当にそうしているのであれば、自分の体調が悪くなるという意に反した事態に遭遇した時点で、自分の判断に誤りがなかったかを見直すはずです。
主体的な判断を繰り返す生き方でかかるストレスが最小化する、というのはそういう理屈です。
要するにその時点で考えうる選択肢の中でストレスが最小となる選択肢を様々な情報のみならず、自分の実体験を込みで考えていくので、
選択肢を選んだ時点でストレスは少ないですし、仮に体調が悪化しストレスが高まって「これは違う」と思えばその時点で再び体調がよくなると考えうる選択肢へ軌道修正し再びストレスが少なくなる道へ進むことができ、
これの繰り返しで常にストレスの少ない方向、言い換えれば「自分の思う人生の方向」へと進むことができるからです。
だから自分のとった選択肢は常に軌道修正する余地があると考えて行動する人が真の意味で主体的なのであろうと私は考えています。
冒頭の読者の方のコメントにある、「自ら進んでやっているはずのことにストレスを感じ続けるということは自らが決めていない」というのは、まさに偽りの「主体性」を示しているのであろうと思います。
これは以前記事にした「主体性と自主性の違い」にも通じる話です。
自分の行きたい方向に進む原動力となるのが「主体性」、世の中のしきたりや常識的価値観でよいとされることを自分から率先して行う原動力となるのが「自主性」です。
自粛要請に従う多くの人は、「主体的」ではなく、「自主的」にその指示に従ったのであろうと、
「国がそういうから」「専門家会議がそのように言うから」「周りから白い目で見られたくないから」などの理由で自分で考えて決めたというよりは大きなものに従う形で決めたのであろうと、
だからこそ自分で決めたはずの行動にストレスを感じてしまうのであろうと、本当に自分で決めたことなのであれば、ストレスを感じ続けると自覚した時点で自粛を解除すればいいはずなのに。
「バイクで走り回って事故したら医療機関に負担をかける」という理由での自粛についても、本気で自分がそう考えてそう決断したのならそれでよいはずです。
それなのにその考えを誰かに強要しようという動きは、「皆、大きなものに従っているのだから、あなたも秩序を乱さないように大きなものに従いなさい」ということであり、
要するにその人自身、自分で決めたのではなく、「何か大きなものに従う形の決断」をしたということの証明であり、
ひいてはそれが「主体的な決断」ではなく、「自主的な決断」となってしまっているということなのだと思います。
言い換えれば、自分で決めていないからこそ、誰かにその理念を強要するという行動が生まれてしまうのかもしれません。
自粛警察、ネット上の誹謗中傷、なくならない戦争・・・
こういう現実を突きつけられるにつれて、いかに多くの人が主体的に生きられていないかということを感じさせられます。
秩序を守る「正義」が不要と考えるわけではありません。誰でも人を好きに殺してよいという行きすぎた自由を主張するつもりも毛頭ありません。
ただし秩序を守るためのルール作りは常に最大多数の幸福のために設けられるべきだし、
それによって最大多数の秩序が守られている中で、各個の主体的な決断が尊重される世界であるべきだと私は考えます。
今回のコロナ騒動では、自分の人生の決断は自分で責任をとるという基本方針に対して、
自分の決断が他人に不可逆的な悪影響を及ぼすこともあるという点で基本方針を揺るがす問題が投げかけられたように感じていました。
しかしそのような他人への影響も含めて自然を基本においた秩序のもと、多くの選択が許容されうる世界になるべきだと、
そしてその枠組みの中で自分の主体的な選択にそれぞれが責任を持って自分の進みたい道へと歩んでいける人生が尊重される世界を目指すべきだと私は考える次第です。
だから私が具体的にできることとして、
私は私の決断で起こった全ての現象を他人のせいにしません。
誰かと接触したことでウイルス感染症にかかったとしても、たとえ集団感染が起こった場所と自分が関わっていたとしても、
自分がウイルス感染症に罹患したことは、自分のシステムのメンテナンス不足だと考えて他人のせいにしません。
私が誰かにウイルスを感染させることを許容できない誰かはおそらくいることでしょうけれど、
そう思われたとしても私自身にはどうすることもできないし、
だからといってそう思われないために自分の頭で考えた結果有益と思えない「新しい生活様式」に従うことはしたくありません。
私ができるのは自分の頭で一生懸命決断したことを愚直にやり続けることだけだと思います。
本当に自分で「主体的」に決断したことをやり続けるだけだと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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