ワクチンのトラブルを生み出す陰の要因

2020/06/18 10:35:00 | ワクチン熟考 | コメント:2件

新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの開発が切望される世論の中で、

ひとつ安全性の面で懸念されていることとして、ADE(Antibody-dependent enhancement:抗体依存性感染増強)と呼ばれる現象があります。

これは2014年に蚊を媒介して感染するとされているデング熱というウイルス感染症が流行した際に、そのデング熱に対するワクチンが開発された際にクローズアップされたワクチンに関する有害事象です。

ADEというのは、本来は細菌やウイルスなどの病原体を認識して攻撃するはずの抗体が、なぜだかその病原体をやっつけるのに十分な活性を発揮することができず、やっつけきれないまま抗体を貪食するマクロファージなどの抗原提示細胞を介して病原体が細胞内に入り込み、

かえって病原体に安住の地を与え、病原体が安定して増殖し続けることができる環境ができあがり、結果的に宿主の感染症の重症化がもたらされてしまうという現象のことを言います。

デング熱ワクチンを打った後にデング熱に感染した人が著しい重症化をきたす現象があったということから、このメカニズムが注目されるようになり、新型コロナウイルス感染症のワクチンでもこのADEが起こらないとも限らないと心配されているのです。 なにせこのADE、なぜそのような現象が起こるのかということは実はまだ解明されていません。

私の仮説のようにワクチンで産生された抗体が自然感染に比べて不十分な抗体産生が起こるというのが常態だとすれば、

すべてのワクチンにはADEを起こす可能性が潜在するということになってしまいますが、現実には流石にワクチンを打った人が重症化するという現象は頻繁には観察されていません。

ワクチンにはADEを起こす潜在性があるものの、すべてをワクチンのせいだとするのは言い過ぎであるように思います。

一方で、ADEの逆とも言えるような作用にADCC(Antibody-dependent cell cytotoxicity;抗体依存性細胞傷害活性)と呼ばれる現象もあります。

これはADEとは逆にごく微量な抗体であるにも関わらず、病原体に抗体がくっつくとマクロファージなどの抗原提示細胞を呼び寄せて直ちに病原体を殺傷する現象のことを指します。

同じ抗体による効果でも、ADEが弱い抗体活性のせいでウイルスの増殖を抑えきれず逆に増殖を増やす場を与える効果であるのに対し、ADCCは強い抗体活性のおかげでウイルスの増殖を効果的に抑える効果、という真逆の現象が存在するということになります。

ただこのADCC活性も高ければ高いほどよいという単純なものでもなく、高すぎれば高すぎるでその働きが暴走すると、Ⅱ型アレルギーと呼ばれる細胞傷害型のアレルギー反応や遅延型のアレルギー反応へとつながることも指摘されています。


さて、何がどういう風に関わって、ADEになったり、ADCCになったりするのが決まるのかという要因がわからないということが気持ちが悪いわけですが、

そのメカニズムの一端を解明している論文がありましたので、紹介しておきたいと思います。

Sun P, et al. NK Cells Activated Through Antibody-Dependent Cell Cytotoxicity and Armed With Degranulation/IFN-γ Production Suppress Antibody-dependent Enhancement of Dengue Viral Infection. Sci Rep. 2019. PMID: 30710094

(概要)

抗体(Ab)依存性増強(ADE)は、二次デングウイルス(DENV)感染時に疾患重症度が増加するメカニズムであると仮説されています。本研究では、ADEに対抗するAb依存性細胞毒性(ADCC)について検討しています。我々のシステムでは、末梢血単核球(PBMC)にDENVとDENV免疫血清を添加し、ADEとNK細胞活性化を同時にモニターした。ADEは単球で検出され、NK細胞の同時活性化が観察された。活性化したNK細胞はIFN-γとCD107aを発現していた。IFN-γは24時間(24時間)に検出され、その後急速に減少した;CD107a発現は48時間でピークを迎え、7日以上持続した。NK細胞の最適な活性化には、ADEの影響を受けた単球や可溶性因子と一緒に強化血清の存在が必要であり、NK細胞の活性化を強力に促進することができる、同じADE血清中に対抗性のあるADCC Absが共存していることを示唆しています。ADEに対するNK細胞の機能は、枯渇アッセイを用いて実証された。NK細胞枯渇PBMCは全PBMCと比較してADEが増加していた。逆に、活性化したNK細胞をNK-depleted-PBMCsに戻したり、精製単球に添加するとADEが減少した。また、IFN-γの発現をブロックすると、ADEが増加した。この研究は、ADE条件下では、NK細胞がADCC Absによって活性化され、ADEの大きさを制御できることを示唆している。

www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。



NK細胞と言えば、「自己」と「非自己」を見極め「非自己」を排除し「自己」の恒常性を保つ自然免疫システムの要となる細胞であるわけですが、

要するに、このNK細胞が活性化していればADCC優位の状況だし、NK細胞が枯渇していればADE優位の状況だということになると思います。

文中ではADCCの抗体があればNK細胞が活性化するという表現もなされていますが、ニワトリが先かタマゴが先かの問題のように、原因と結果が逆に解釈されている可能性は十分にあると思います。

つまりこういうことです。NK細胞に代表される「自己」「非自己」を区別する自然免疫システムがきちんと機能していれば、「非自己」を強力に排除するようにシステムは働きますし、

自然免疫システムがうまく機能していなければ、「自己」を間違って「非自己」と認識して攻撃してしまったり、「非自己」を間違って「自己」と解釈して招き入れたりというトラブルが起こりやすくなってしまうということだと考えれば整理できます。

逆に言えば、ADEという現象は仮にワクチンを打って不十分な抗体産生がなされたとしても、

自然免疫システムが十分に機能して、NK細胞の活性化に伴いADCCへ導く強い抗体産生へとつながる仕組みが駆動していれば、

ワクチン接種後であろうとADEのメカニズムが惹起されなくて済む、ということになるのではないかと思います。

ADEは弱い抗体が宿主との架け橋になって宿主細胞の中にウイルスを引き込むというような表現で説明されますが、

仮にそんな風にウイルスが抗体のせいで宿主細胞に忍び込んだとしても、自然免疫システムがきちんと機能していれば、その細胞はNK細胞によってきちんと「異常な自己(非自己)」と認識されてADEが起こらなくて済むという風に考えることができます。

もう一つ大事なことは、いくらワクチンの構造をしげしげと眺めていても、ADEやADCCの要因はつかめないということになります。だから原因不明なのではないでしょうか。

そしてADEかADCCかの運命の分かれ道に関わる自然免疫システムを整えるための基本は、

何度も繰り返し述べていますように、「糖質制限+ストレスマネジメント」です。


たがしゅう
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コメント

打った方が絶対良いというワクチンはありますか?

2020/06/19(金) 09:34:34 | URL | KAZ #AIlHpmOk
ここまで勉強して、ワクチンはやはりデメリットもあり、必ず打たなければならないというほどの物ではないという思いを強くしたのですが、逆に、
「このワクチンは打った方が良い」
という物はありますでしょうか?
ワクチン以外の方法では対処出来ない、あるいはワクチンを打つメリットがデメリットを大きく上回るような病気がありましたらお教え下さい。

Re: 打った方が絶対良いというワクチンはありますか?

2020/06/20(土) 00:09:13 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
KAZ さん

 御質問頂き有難うございます。

> 「このワクチンは打った方が良い」
> という物はありますでしょうか?
> ワクチン以外の方法では対処出来ない、あるいはワクチンを打つメリットがデメリットを大きく上回るような病気がありましたらお教え下さい。


 致死率100%と言われる狂犬病のワクチンは、危険地域に行く場合には受けておいてもよいかもしれません。
 いくらワクチンが自然感染に比べて不十分な免疫を作るものだとしても、自然感染の方が致死率100%であればワクチン使用のメリットの方が上回る気がするからです。

 ただ、ここまでワクチンを総見直しして来て、狂犬病だけ例外というのも少し不自然に感じています。
 例えば、致死率100%の分母は何なのか、本当に致死率100%なのか、それこそ知られざる不顕性感染者はいないのかなど、この辺りの結論はまだ検証の余地があるので、とりあえず暫定的な私のスタンスだとお考え頂ければ幸いです。

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