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矛盾する事実に直面したら前提を疑う

category - 素朴な疑問
2020/ 06/ 15
                 
以前、BCGワクチンの接種の有無と、新型コロナウイルス感染症の重症化率の少なさに強い相関関係があると、

それ故にBCGワクチン(特に日本株)が新型コロナウイルス感染症の重症化予防に有益なのではないかという情報が世界を駆け巡りました。

BCGの日本株を積極的に接種している国で明らかに新型コロナウイルスの重症化率が少なく、

BCGを導入していない、もしくは導入していたけれど途中で積極的接種をやめた国で新型コロナウイルス感染症の重症化率が高い国が多いという疫学データから、この仮説を支持する人達は多かったと思います。

それに対して私は、「季節性インフルエンザで同様の疫学的特徴が見られていない」「BCGワクチンの積極的接種をやめたオーストラリアでも重症化率は非常に低い」「重症化率の低い国は検査の実施率も低い傾向がある」という主に3つの理由でこの仮説を支持しませんでした
            

これらの主張は、それを吹き飛ばすほど強い相関関係が厳然として存在する前では風前の灯火であって、

たまたまそれは例外的な要因があっただけなのであろうと一蹴することもできます。勿論、まだ把握できていない例外的な要因が本当に存在する可能性はあると思います。

ただ私は基本的に、ある仮説に矛盾する事実に遭遇した時には、やはりその仮説は見直さなければならないと考えています。

相関関係はどれだけ強かろうとも、因果関係には至らないのです。


例えば、糖質を摂取すれば、血糖値が上昇するという現象があります。これは因果関係です。

「糖質摂取」⇒「血糖値上昇」という流れは多かれ少なかれすべての人に起こる現象です。勿論、筋肉で消費したり、脂肪に蓄積したりすれば、見かけ上血糖値は上昇しないという事実は今横においておきましょう。ミクロレベルで言えば、皆血糖値上昇というイベントは起こっています。

決して、「糖質摂取」⇒「血糖値低下」という流れにはならないはずです。ここでも「糖質摂取」の「血糖値上昇」が起こった後にインスリン分泌過剰や分泌遅延のせいで後から起こる「機能性低血糖症」の病態のことは横においておきましょう。「血糖値上昇」というイベントを介さずにいきなり「血糖値低下」ということにはならないはずです。

つまり、ただの一つの例外もなく、「糖質摂取」⇒「血糖値上昇」という現象が確認されてこそ、この関係には「因果関係」があると言えます。

一方で、これはあくまでもたとえ話ですが、週刊誌の購読数が多い地域で糖尿病の患者数が増加しているという現象があったとします。

いろいろ調べてみると、確かに全国で週刊誌の購読数が多いところほど、糖尿病の患者数が増加しているという疫学的な特徴が観察されているとします。

しかもよくよくみると、A週刊誌やB週刊誌では大して糖尿病の患者数は増えていないけれど、C週刊誌を読んでいる人が多い地域で著しく糖尿病の患者数が多いとします。

このような状況の時、「C週刊誌を読む」と「糖尿病の罹患率」には強い相関関係がある、と表現することができます。

その理由を専門家は、C週刊誌の情報には糖質を食べたくなるように誘導される魅力的な内容の記事が圧倒的に多く、糖尿病患者の増加に大きく寄与しているという仮説を述べたりもして、まさにこの仮説が全く正しいと思えてしまう状況です。

ところがこの「相関関係」というのは、あくまでも独立した二つの現象がたまたま関連するような傾向を示しているということに過ぎず、

二つの現象が原因と結果の関係になる「因果関係」であるかどうかはわからず、それどころか、ただの一つでもこの仮説に矛盾する現象が観察されれば「因果関係」となる可能性は消えてしまうのです。

例えば、よくよく辺りを見回してみると、C週刊誌を読んでいない地域でも糖尿病の患者数がめちゃくちゃ多い地域があったり、

そもそも糖尿病患者の少ない地域では、週刊誌を置いていないところが多かったりすると、

「C週刊誌を読む」⇒「糖尿病の罹患率が上がる」という仮説に矛盾する事実があることに気づきます。

そうするとC週刊誌の有無と関係のないところで、糖尿病患者の罹患率を左右する別の要因があるという可能性に気づくことができるのではないでしょうか。

この場合は例えば、そうですね、その地域における主食に対する教育体制の違いとか、そういう別要因です。

「C週刊誌の購読」を「BCGワクチンの日本株接種」、「糖尿病の罹患率が上がる」という現象を「新型コロナウイルス感染症の重症化率が下がる」に置き換えれば、同じことが全く当てはまります。

矛盾する事実に遭遇した場合に、「それは単なる例外だ」と片付けるよりも、その前提となる事実を疑ってみて、さらにその例外と思える現象さえも成立させる新たな前提を考え直してみることが大事だと思います。

BCGワクチンの場合で言えば、「そもそもワクチンってそんな完璧な効果があるものなのか?」という疑問であったり、

新型コロナウイルス感染症とはどのような病気なのか?」という疑問であったりを深掘りする作業が重要となってきます。

私の場合、それを考える上で重要であったのが、「小児における新型コロナウイルス感染症の分布の違い」や、

日本の重症化率が異常に少ないのではなく、欧米諸国の重症化率が異常に高いという視点」であったりしました。

この疑問の解決へ取り組む過程の中で、ウイルス感染症の罹患しやすさとウイルスと宿主の「自己」適合分子の相同性の問題、恐怖が個人や社会全体にもたらす悪影響の問題に注目することができ、

次第にワクチンそのものの効果への疑問へとつながってきています。

そして疑問を雑ではなく丁寧に解消していけばいくほど、様々な矛盾が入る余地が少なくなり、

より自信を持って自分の考えを多くの人に伝えていけるようになっていきます。たとえそれがどれだけ常識的価値観と離れていようとも、です。

矛盾する事実にしばしば遭遇するということは、世の中の常識的価値観は結構間違っていることも多いということの現れだと思います。

矛盾する事実に出会った時に、それはよくわからないけれど例外的な何かのせいなのだろうと片付けることは確かに楽ですが、

言い換えればそれは常識を見直すチャンスを見過ごしているということでもあります。

私は医師として、自分の勧めた医療行為のせいで患者が重大な被害を被ってしまうことが一番よくないことだと思っています。

しかしどんな医療行為にもリスクはつきものです。そのゼロリスクを求めていたら医療を提供することなどできません。

だからこそ私は医療の主導権を医師側ではなく、患者が持つべき「主体的医療」を推進しているわけで、

私が医師としてできることは、医師の立場である自分の頭で一生懸命納得できるところまで考えた結果を患者さんにお伝えして、

その上で後は患者さんの判断に委ねるということだけだと思っています。

しかしそのアドバイスが自分の中の誤った常識的価値観に基づくもので、矛盾を放置してしまったが故に、その勧めた医療行為を患者さんが実施してしまい、

もしかして患者さんに自分が想定しなかった医原性のトラブルを引き起こしてしまった場合には、

私がその医療行為について検証しきれなかった責任もあるのではないかと思っています。

だからそうならないように私は矛盾を放置しません。矛盾を説明できなければせめて態度を保留にします。

そうして患者さんが決断する為の支えになることができればよいと思っています。


たがしゅう

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ポリオ生ワクチンも注目!
COVID-19に対しては、BCGだけでなくポリオ生ワクチンも注目されている


Can existing live vaccines prevent COVID-19?

https://science.sciencemag.org/content/368/6496/1187
Re: ポリオ生ワクチンも注目!
中嶋一雄 先生

 情報を頂き有難うございます。

 私の記憶ではポリオ生ワクチンは病原性が残り一部の患者で麻痺をきたす事例が続出したため、
 途中から不活化ワクチンに切り替えられた経緯であったと思いますが、その問題はどう捉えられているのでしょうね。

 そこに言及がないのだとすれば、一面的な情報であることに十分注意する必要があると私は思います。