こどもなら軽症なのに大人だと重症となる理由

2020/06/02 15:00:01 | ウイルス再考 | コメント:0件

前回、全く別のウイルス感染症に思える麻疹と新型コロナウイルス感染症の本質的な共通点について記事にしましたが、

この「麻疹(はしか)」には、「一度かかったら二度とかからない」という終生免疫の特徴に加えて、もう一つ非常に特徴的に言われていることがあります。

それは「大人になってから感染したら重症化しやすい」ということです。

そして奇しくもこの特徴を持つ他のウイルス感染症は、「麻疹」と同様、「終生免疫」がつくとされている「風疹(3日ばしか)」「水痘(みずぼうそう)」「流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)」が挙げられます。

当たり前のように言われているこの特徴ですが、よくよく考えてみると不思議な特徴です。

普通は乳幼児の方が免疫力が低く、成人の方が免疫力が高いと認識されていることの方が多いと考えられるからです。 なぜ免疫力が高いであろうはずの成人の方が、同じウイルスに遭遇して起こる感染症という現象が重症化してしまうのでしょうか。

一般的にはこどもの頃に免疫ができていないと、成人になってからだとウイルスに対する準備が出来ていない状況で対処することになってしまうからといったニュアンスで受け止められている事が多いでしょうが、それでは私は納得できません。

なぜならばどう考えても準備が出来ていないのは、より人生経験の少ないこどもの方だと考える方が妥当であるからです。

ここにもウイルス感染症という現象の本質が、単にウイルスによって直接もたらされるのではなく、その受け手である宿主の状態の如何が深く関わっているということがうかがえます。

ワクチンの話を持ち込むとややこしくなるので、ここではワクチン未接種状態の小児と成人がはじめて麻疹ウイルスに遭遇した場合を考えてみます。

小児にとっても、成人にとっても、これは未知のウイルスですので、獲得免疫の働きは一切期待することができません。

こうした状況においてヒトが持つ頼れるシステムは自然免疫システムのみということになります。

小児の麻疹は結果的に症状が軽くて済んでいますので、この自然免疫システムが比較的良好に働いているということになります。

一方の成人では重症化するということですから、自然免疫システムによってうまく未知のウイルスに対処することができていないということになるでしょう。

いや、むしろ過剰に対処しているというべきでしょうか。

新型コロナウイルス感染症でもさんざん注目されたサイトカインストームと呼ばれる状態に準じた状態が身体の中で起こった結果、重症化という現象が引き起こされているのではないでしょうか。

そのサイトカインストームはある時には後遺症をもたらしますし、またある時には自分自身を死に至らしめるほどの激しい反応です。

それが小児ではなく、成人においてより起こっているということは、

成人において自然免疫を働かなくさせる何らかの要因がかかる、あるいは炎症を惹起させ続ける方向に仕向ける刺激が身体にかかり続けている、はたまたその身体のオーバーヒートを押さえるシステムが何らかの原因で働かなくなっている・・・

小児において不存在で成人において存在するその主因は、慢性持続性ストレスだと私は考えます。

勿論、この状況を生みやすくする栄養の問題も深く関わっているとは思いますが、

ストレス要因の大きさに比べて、食事要因の影響はあくまでも補助的なものだと私は考えています。

なぜならば、ウイルス感染症が重症化していく過程からは「一時も休ませることなく身体をオーバーヒートさせ続ける何か」が感じられるからです。

食事には食べている時間と食べていない時間があります。そうするとウイルス感染症が自身の内因の変化でもたらされる現象という立場に立った時、食べたり食べなかったりすることで症状にはよかったり悪かったりといった波があってしかるべきです。

しかしこういう重症化のケースは基本的には対症療法の甲斐なく悪化の一途をたどることが多いです。ひとしきり悪化の一途をたどりきって落ち着くところへと落ち着く流れとなります。

従って、経過を踏まえますと何らかのシステムをオーバーヒートさせるための燃料が際限なくつぎ込まれ続けていると考える方が妥当です。

そんなことができるのは間欠的な刺激である食事よりも、持続的に刺激を送り続けることのできる精神的ストレスしかないと私は考えるわけです。


また、なぜこどもの頃にかかると終生免疫がつくとされるウイルス感染症が、軒並み大人で発症したら重症化する傾向が見られるかについてですが、

こどもの頃にかかるという時点で、その子の自然免疫は何らかの原因で乱れてしまっているわけですが、

その後、同じウイルス感染症にかからないという特徴があるということは、それを契機に同ウイルスに対する獲得免疫が強化されたという考え方と、

もう一つはその感染症イベントによってその子の自然免疫システムが是正されるという可能性も考えられるのではないかと思います。

以前、風邪(ウイルス感染症)はデトックスだという見解を記事にしたことがありますが、

感染症という現象、もっと言えばその本質である「炎症」という病態そのものは、身体に起こった困難を克服するための適応反応としての意義があるはずです。

それが軽くて済むということは、そのこどもに生じていた身体のシステムのバランス不良はたいしたものではなく、それは感染症というイベントを通じて直ちに是正される程度のものだったということであり、

それが大人になってから同様の感染症にかからなくなっていく理由なのではないかと思うのです。

逆に重症化してしまうということは、「炎症」システムを普通に起動しても是正できない程に身体のバランスが大きく乱れているということを意味するわけですから、

大人の身に起こっていることとしては、炎症を悪化させる何らかの要因が加わり続けていること、そして炎症を収束させるシステムが阻害され続けていることだと思います。

発炎反応が亢進し、終炎反応が阻害されてしまうこの状況こそが、「重症化」という現象をもたらす本質的な原因なのではないかということです。

「麻疹」「風疹」「水痘」「流行性耳下腺炎」といった病気は、極端な栄養失調とか極端な愛情不足といった、

後天的な自然免疫システムの阻害因子さえ存在していなければ、

早めに自身のシステムを乱れを知らせて是正してくれる好機だと捉えることもできるのではないでしょうか。


こどもが「麻疹」にかからなくて済んでいる、あるいは大人も重症の麻疹にならなくて済んでいるのは、

MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)のおかげだと考える医療者が世の中には圧倒的大多数だと思います。

ワクチンが獲得免疫を強化するというメカニズム自体は理解できますし、

実際その効果があると考えて大きな矛盾のない現実が存在しているとは思います。

しかし、ワクチン接種後の免疫グロブリンの産生期間も数年間とか、長くても数十年と有限であったりするというのに、

なぜ自然感染の場合は終生免疫と言い切ることができるのか、本当にその考えは間違っていないのか。

ワクチンなど打たずともほとんどの人が無症状・軽症で済んでいる新型コロナウイルス感染症に対するこども達の現実を見せつけられるにつれ、私の中にはそういう疑問が浮かび上がってきています。

次の記事ではこのワクチンというものについても私なりに深く考察してみたいと思います。


たがしゅう
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する