麻疹と新型コロナウイルス感染症との共通点

2020/06/01 22:30:00 | ウイルス再考 | コメント:0件

重症化例の圧倒的多数が高齢者や基礎疾患持ちの方である特徴を示す新型コロナウイルス感染症において、

欧米でごく少数例で観察されている川崎病様の小児発症性多系統炎症症候群(PMIS;Paediatric multisystem inflammatory syndrome)にも新型コロナウイルス感染が関与している可能性が指摘されており、

この要因としてこうしたPMISをきたす小児には、獲得免疫システムはともかく、本来であれば正常に機能するはずの自然免疫システムがHLAの適合具合の背景も相まって後天的に障害されていると、

その一部の先天的特性をもつ小児の自然免疫システムを障害する二大要因として「栄養障害」「愛情不足」があるのではないかという考察を以前の記事で行いました。

そう考えると、基本的にすべてのウイルス感染症は、新型コロナウイルス感染症のように小児で稀に重症化し、高齢者で頻繁に重症化するという構造になるのではないかという気がしてきますが、

その考えに待ったをかけるのが、小児に多いウイルス感染症の存在です。 そのうち代表的なものとしてよく知られている小児ウイルス感染症として「麻疹」があります。この病気があるので少なくとも「ウイルス感染症は小児ではほとんど重症化しない」と一般化することはできません。

「麻疹」とは、一般的には「はしか」と呼ばれています。こどもの頃にかかったら、基本的に二度とかからないと言われていることで有名で、この状態になることを「終生免疫」がつく、といいます。

ざっくりとこの「麻疹」という病気の特徴を説明しておきますと、「38.3度以上の発熱・倦怠感・食欲不振に続き、結膜炎、鼻水、咳などの症状が出て、発熱の3−4日後に発疹が出始めて、5−6日目にピークを迎え、多くの場合10日くらいから症状が回復してくる」という経過をたどる病気です。

発疹が出るという点が普通のかぜ症候群とは異なる感じがしますが、それ以外の経過はかぜ症候群に似ていると言えるので、たいした病気ではないと思われるかもしれませんが、「麻疹」は一部の患者で重症化すると言われていて、

報告によって異なりますが、致死率は先進国でも1000人に1人とか、10000人に1人などと言われています。

数としては決して多いわけではありませんが、他ならぬ未来あるこどもの命を奪いうる感染症ということで決して看過できない存在だと認識されているわけです。


さて、終生免疫がつくと言われているのは、「麻疹」の他に、「風疹(三日ばしか)」、「水痘(水ぼうそう)」が挙げられますが、なぜこれらのウイルスだけ終生免疫がつくのかに関してはわかっていません。

そしてもう一つ、「麻疹」の特徴は、以前も記事にしたように「空気感染」するということです。ただしこのウイルスのどんな構造がこの空気感染をもたらすのかという理由もわかっていません。

これは私の推測ですが、麻疹が空気感染するという理由も、麻疹には終生免疫がつくという理由も、実際に起こっている現象から推察されているだけで、明確な根拠はいまだに証明されていないのではないかと考えています。

つまり空気感染したとしか思えない感染の拡がり方をしたから「空気感染する」と、
一度麻疹にかかった人で再び麻疹にかかる人がいないから「終生免疫」がつくと言っているのではないかと、

しかし実際には新型コロナウイルス騒動で明らかになってきているように、遺伝子配列の似た旧型のコロナウイルスを引っかけるなど、検査の偽陽性であたかも空気感染したかのような状況(今世界はそれを「感染経路不明」と解釈していますが)があれば、空気感染しなくても「空気感染する」と解釈することは可能ですし、

「麻疹」にかかった人が、別の理由で再感染しなかったとしても、これを「終生免疫がつく」と解釈することは十分にありえることです。

それはさておき、そんな怖い「麻疹」を予防するためにワクチンが開発され、1966年より日本でも導入されるようになりました。

近年は麻疹・風疹とを合わせて予防できる二種混合ワクチン(MRワクチン)が開発され、2006年4月からこのワクチンが1歳と小学校入学前の2回に渡って定期接種することになっています。

このワクチンは、2回接種することでほぼ確実に麻疹を予防すると言われているので、麻疹撲滅のためにも日本小児科学会からもこのワクチンの全国民への積極的接種が勧められているのですが、

定期接種とは接種に際しての費用負担を公費でまかなうというもので、実はワクチン接種は義務ではありません(昔1970年頃まではワクチン接種は罰則規定のある義務でしたが、種痘後脳炎などのワクチンの副反応が問題となりその後罰則は廃止となりました)。

しかしながら、多くの人はワクチン接種すれば確実に麻疹が予防できるのであればと、素直に接種に従っているというのが実情であろうと思います。

ところが調べてみますと、2018年に報告された279名の麻疹患者のうち、ワクチン1回接種者が56例(20.1%), 2回接種者が43例(15.4%)ありました。

要するにMRワクチンを接種していても、麻疹を発症するケースは稀ながらあったということです。

それでもMRワクチンの接種者が全国民の90%を超えているという状況の中で、たったの279名しか麻疹患者が現れていないということ、

そして50年前までは毎年数千人の患者が出ているような状況であったことを考えますと、

MRワクチンにはやはり圧倒的な効果があるという評価になるのが普通の考えだと思います。

しかしこの「麻疹ワクチンはほぼ確実に麻疹発症を予防できる」というのも、もしかしたら結果論でそう判断されてしまっているだけの可能性も否定できないように思います。

例えば、50年前と言えば高度経済成長期と呼ばれる時代と重なる頃です。

食の欧米化とも表現されるように、人々の栄養状態は飛躍的に改善し、寿命もぐんぐん延びてきたきっかけとなった時代です。

例えばワクチンが減少させたように見えた現象は、実は栄養状態に改善によるものだったということになると麻疹ワクチンは麻疹の発症抑制にどれほど寄与するのかという疑問がわいてきます。

ただ一方でワクチンを接種すると、免疫過剰応答が引き起こされる「異型麻疹」と呼ばれる現象も起こりうることから、

ワクチンが免疫システムに何らかの刺激をもたらしているとは言えると思います。ただその刺激が本当に終生免疫をつけるのか、あるいはその刺激によってもたらされる効果が本当に人体にとってよいものだと言い切れるのかどうかは、検討の余地があるのではないかと思っています。

そしてもう一つ、麻疹で重症化しやすい人の特徴として、まだワクチンを受けていない乳幼児や、免疫のない成人や妊婦、免疫不全患者、 栄養失調、ビタミンA欠乏症などが挙げられています。

乳幼児は1歳に満たない子がMRワクチンをまだ受けていないから重症化しやすいのかと一見思ってしまいますが、

例えば2000年の0歳児は全国で約119万人いますが、同年麻疹に罹患して死亡した0歳児はわずか数名です。

出生後半年程度は母親からの免疫グロブリンが様々な感染症から身を守ってくれると言われていることを加味しても、ほとんどの0歳時は6ヶ月〜12ヶ月の時期を麻疹ワクチン関係なしに麻疹にかからずに済んでいるということになります。

また発展途上国で麻疹の流行は未だに多くのこどもたちを死亡させている現実があるとも聞くわけですが、

麻疹の重症化要因のひとつに挙げられている栄養失調は、途上国においてワクチン非接種と共存している問題であるように思います。

そうするとワクチンを打てないせいで麻疹が重症化するのか、それとも栄養状態が悪いために麻疹が重症化するのか、どちらも考えられるということになります。


いろいろと「麻疹」について常識と考えられていることと、私の疑問を提示して参りましたが、

ここで私がこれまで新型コロナウイルス感染症で積み重ねた考察をもとに、「麻疹」という小児で重症化しうるウイルス感染症について推察を交えて考え直してみます。

新型コロナウイルス感染症で重症化する患者さんは何らかの原因で自然免疫システムが使えなくなっているように思います。

自然免疫システムが使えなくなっていることの裏返しとして、各種身体システムのオーバーヒート、いわゆる基礎疾患と呼ばれる状態が起こり、身体はバランスを崩している状態と考えられます。これが「免疫力低下」と呼ばれる状態です。

一方で獲得免疫システムが存在しないから新型コロナウイルス感染症が重症化するという考え方は明らかに現実に即していないと思います。

それだと新型コロナウイルスのような人類初のウイルスに遭遇したら、ほとんどの人が感染しないと話が合わないわけですし、

先程見てきたように、まだ麻疹ワクチンを打っていない、獲得免疫システムが構築されているはずもない0歳児において、麻疹にかからない0歳時が圧倒的多数という現象を見ていますと、

新型コロナウイルスにせよ、麻疹ウイルスにせよ、それにかからなくて済んでいる原因は自然免疫システムのおかげと考えるのが妥当です。

自然免疫システムというのは生命の歴史の中で生存のためにDNAに組み込まれ受け継がれているシステムだと考えることができ、

なおかつ基礎疾患のある人で自然免疫システムが低下しているということを考えますと、小児の自然免疫システムは基本的に保たれていると考えるのが妥当だと私は思います。

では小児で稀ながら麻疹で重症化しうる人、あるいは新型コロナウイルスでも川崎病様病態を示して重症化している人は一体なんなんだと言われたら、

やはりそれは何らかの原因で自然免疫システムが低下しているこどもだということになると思います。

そこには先天的な要素であるHLAとウイルスとの適合性も背景に持ちながら、

そのような素因に加えて、「栄養障害(食事要因:身体要因)」と「愛情不足(ストレス要因:精神要因)」といった後天的に自然免疫システムを障害する要因が加わることによって、

これらが条件を満たした時に小児におけるウイルス感染症の罹患、及び重症化という現象が起こりうるのではないかと思うのです。

ちなみに麻疹で特徴的な皮疹は、HIV感染症など細胞性免疫が低下した病態では皮疹が薄くなることも知られています。

麻疹の中で起こっている出来事が、麻疹ウイルスによって引き起こされているというよりも、自身のシステムのオーバーヒートによって引き起こされているということの傍証になるのではないでしょうか。

ウイルスのせいではなく、自身のシステムの暴走だという点で、好発年齢は違えど、麻疹と新型コロナウイルスには共通点があります。

最後にもう一つ、麻疹ウイルスは新型コロナウイルスと違って空気感染するわけですが、

このウイルスは非常に感染力が強いにもかかわらず、なぜか不顕性感染(症状はないけど実は感染している)はほとんどないと言われています。

この点も私は納得がいきません。先程見てきたようにワクチン未接種の0歳児のほとんどが麻疹を発症していないのに、その中に不顕性感染者がほとんどいないとなぜ言い切れるのか、全例検査をしない限りわからないのではないでしょうか。

はっきり言って、今回の新型コロナウイルスのように無症状者からの感染がありうるということが取り沙汰されたのは私の知る限り医学の歴史の中で初めてのことです。だからこそ人類史上初めて三密回避とかソーシャルディスタンス騒ぎになっているわけでもあります。

しかしそのように判断されたのは、新型コロナウイルス感染症のPCR検査の陽性者が世界中で発見されるという現象があったからであったからで、もしもそのような出来事がなければ今でも無症状者から感染するという可能性は考えられていなかったからです。

そしてこのように現実に起こっている現象から推察するという形式で感染症の常識が組み立てられてきたということがよくわかります。

麻疹ウイルスは致死率の高いウイルスだという認識をしている医療者も多いかもしれませんが、

そのデータはもしも無症状の患者に全例麻疹ウイルスの抗体検査を行ったら見つかるかもしれない不顕性感染者の数が増えれば増えるほど分母が大きくなって致死率は低下します。

本当は無症状者も含めた100万人の感染者に1人の死亡者という状況かもしれないのに、

有症状者だけに限定して調べた100名の感染者の中で1人の死亡者が出ていると解釈してしまえば致死率は圧倒的に高まります。

・・・とにかく感染症学の定説は現実を適切に捉えることができていないと私は考える次第です。

ウイルス感染症は、ウイルスの種類にかかわらず、基本的に自然免疫システムが崩れたことによる自己システムのオーバーヒートなのではないでしょうか。


たがしゅう
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