「外因」を主とする現代医療と「内因」を主とする主体的医療
2020/05/28 11:45:00 |
読者の方からの御投稿 |
コメント:2件
ブログ読者のタヌパパさんよりコメントを頂きました。タヌパパさん、有難うございます。
> 個々人のストレスに注目する考え方は、免疫学的なアプローチと共通すると考えてよいでしょうか。
> 先生の考え方に強く共感しますが、一方で「主体的に考えること」が「強いストレスになる」方々が、特に日本では多数派と思われるので、何か手詰まりな感覚が消えません。
> ストレスと共存しつつ、体温を高める等で免疫力を高めることも現実的には多くの人を救う手立てだとも思います。(対処療法で根本を残す方法だとは理解していますが。)
これは大変重要なご指摘だと思います。
ストレスマネジメントは確かに免疫力を整える理論的な根拠が存在するアプローチ法ですが、
結局私の主体的医療を実践しようにも、「主体的に考えること自体にストレスを感じる人」がほとんどなのだから、
いくらそのアプローチが正しかろうと、それはどこまで行っても手詰まりであって、
それならばストレスを前提とした対症療法の究極系を極めて、主体的に動くことにストレスを感じる人達も助けられるような医療を発展させるのもよいのではないか、というご指摘だと思います。 それはまさにおっしゃる通りだと思います。
その「主体的に動かなくても病状を安定させられる対症療法の究極系を求めている医療」というのが西洋医学中心型の現代医療だと私は考えています。
勿論、現代医療に携わっている医療者の方々はそんな風には考えていないと思います。
きちんと病気の原因にアプローチして、その原因に対する特異的な治療法を提供して、病人を救う医療を提供していると多くの方は思っていると思います。
しかしその病気の原因を患者自身にしか整えられない内因にではなく、患者の外にある外因に求めてそれを一生懸命究明しようとしているのが現代医療のスタンスだと私は思うのです。
ここでいう内因と外因という言葉の定義ですが、「細菌」や「ウイルス」はわかりやすい「外因」だと思いますが、
例えば「遺伝子によって定められる体質」、これは多くの人が内因だと捉えるかもしれません。
しかし私にとって「体質」は外因です。「自分にはどうしようもない自分の外にある何か」という風に捉えてしまっている要因であるからです。
「体質」「遺伝子」「免疫学的な特徴」などは私にとっては「内因」ではなく、単なる「条件」です。条件は人によって違いますが、病気の「原因」ではありません。
私が意味している「内因」というのは、一言で言えば「心と身体の動き」です。
例えば「ウイルス」は外因ですが、「ウイルスについてどう思うか」は内因です。
「外因」はものによっては西洋医学的アプローチで排除することができますが、「内因」は西洋医学的にはアプローチできないもの、
むしろ西洋医学的なアプローチ自体が悪化させうるものという構造をとっているように思うのです。
別の例を出せば「がん」医療において、現代医療では「がん」を完全に「外因」だと捉えています。
「がん」は自分を苦しめる自分の外にある何かだと捉えているので「外因」というわけですが、「外因」と捉えているが故に「早期発見・早期治療」を謳い、手術や抗がん剤、放射線療法でできるだけピンポイントにこの外因を潰す戦略をとることになります。
しかし「主体的医療」における見方では、「がん」は自分自身の心と身体の動きの「結果」であって、「原因」ではありません。
では原因は何かというと「がんという結果を生み出す心と身体の動き」であって、すなわち「内因」です。
がん細胞は「糖代謝が過剰に駆動された細胞」なので、一つは糖代謝を駆動する「糖質」、もう一つは糖代謝を駆動する「ストレス」が深く関わっているとみます。
具体的には糖質の頻回過剰摂取、あるいはがんを敵とみなしこれを不安や恐怖に感じる心の動きが、「がん」という結果を生み出していると考えるわけです。
従って、「主体的医療」のアプローチで行うべきことは「ストレスに配慮しつつ糖質制限を行う」「がんに対する不安/恐怖に感じない考え方をインストールする」ということになると思います。
このように「外因」を主に考える現代医療のアプローチと、「内因」を主に考える主体的医療のアプローチは全く異なるものです。
ただ私は「外因」を主とする西洋医学中心型の現代医療に全く価値がないとは思っていません。
タヌパパさんのおっしゃるように、「主体的医療」を行うこと自体にストレスを感じる人は世の中の圧倒的多数であって、
その人達を医療があるという安心感を与えながら、確かに救っていることは紛れもない事実です。
特に救急医療、原因はともかく対症的であれ何であれ、とりあえず今の状態を緊急避難的に安定化させる技術は西洋医学が発展したからこそ得られた功績です。
だから「ストレスをマネジメントできないことを前提とした現実的な治療アプローチ」はすでにしっかりとした体系が出来上がっていると言っても過言ではありません。
ただ約8年半前に私が糖質制限に出会うまでの間に、この治療体系で患者さんが実際にどうなっていくかという流れを私はよく知っています。
「がん」ひとつとっても、現代医療の価値観では「治った」と呼べる患者さんでさえ、私の価値観の中では「治ったとはとても思えない」状態であったり、病院への通院を依然として続けていたりするわけです。
もっと大きく俯瞰でみるならば、この「ストレスマネジメントできないことを前提とした世界の医療」は遅かれ早かれじりじりと悪化へと向かっていく医療であるように私には感じられています。
それは「根本治療」が施されていないからこその結果であると私には思えるのです。
「主体的医療にストレスを感じる人が大多数」というのは紛れもない事実だと思います。
一方で私は医師として、そうだとしても治る可能性を最大限求める医療に身を捧げたいと考えています。
なので「主体的医療」の軌道に乗らない現代医療の発展は、私なんかよりもずっと優秀な医療者の方々に任せて、
私は私の人生をかけて、「主体的医療」の可能性を追い求めていきたいのです。
勿論、同じ対症療法でも質のよい悪いはあると思います。なので、私自身よりよい対症療法がないかを探求はしますし、必要に応じて現代医療的なアプローチも利用します。
しかしながら、主なやり方としては根本治療に唯一アプローチできる「内因」を整えるという、現代医療がこれまであまり気にかけなかった要因の可能性を突き詰めていきたいのです。
このやり方は多くの人にとって、今は確かに「手詰まり」かもしれません。
しかしわずかでもこの治療方針に乗ってくれる患者さんがいるならば、そこから今までにはなかった治療成績を少しずつ出していくことができるかもしれません。
最初はたまたま起こっただけだと取るに足らないと思われることでしょう。
しかし地道に「主体的医療」の実績を積み重ねていくことで、今までは「手詰まり」だと感じていた多くの患者さんに興味を持ってもらえるかもしれません。
これは何かの構造にとても似ています。
そう、糖質制限や湿潤療法の拡がりが最初はほんとにごくわずかの人達から広まってきているという構図にそっくりです。
つまり「手詰まり」だとさせているのは、既存の常識的価値観であって、それを改革するのがパラダイムシフトの構造だということです。
私が、少数の患者さんにしか理解してもらえないかもしれないけれど、
それでも「主体的医療」にこだわり続けるのは、医療業界全体の「パラダイムシフト」に挑んでいるからです。
世界にはびこる「手詰まり感」を解消させることに私の人生を注ぎたいのです。
大げさに思われるかもしれませんが、私は本気でそう思っています。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
真正面から、お答え頂きありがとうございます。
繰り返しになりますが、私も、本質的にはたがしゅう先生の考え方が正しいと思って、あるいは、感じています。
ただ、「嘘も方便」とも言うように、相手に応じたアプローチも(信念を曲げないという前提で)、味方を増やす手立てになるかと思っています。
先生の言葉を使わせていただくと、「外因しか求めない人」に対してなら、いくばくかでも外因を取り除いてやることで、信頼を得て、内因にも向かわせるアプローチの方が有効な感じがします。
速く結果を求められるビジネスの世界に40年近くいた自分なりの感覚とは思いますが。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 相手に応じたアプローチも(信念を曲げないという前提で)、味方を増やす手立てになるかと思っています。
> 先生の言葉を使わせていただくと、「外因しか求めない人」に対してなら、いくばくかでも外因を取り除いてやることで、信頼を得て、内因にも向かわせるアプローチの方が有効な感じがします。
はっきり言って「内因」だけを整えようとするアプローチだけではなかなかうまくいかないケースも多いです。特に長く患っている持病を「内因」アプローチだけで改善に向かわせるのは至難の業です。それができなかったからこそ病気がこじれてきたと言うこともできるでしょう。
なので現実問題として私は今でもオンライン診療で患者さんに西洋薬を処方する場面は確かにあります。ただなるべく少量で必要最小限の量になるように心がけています。そうすることで、たとえ効果が出るのが遅くとも、効果に速さを求めて副作用トラブルを起こし、私に対してだけではなく、オンライン診療に対する信頼を失わせないようにするための、これは私なりの最大限の配慮です。
だから根本的に主体的医療の治療方針がわかっていない人、今までの即座に症状を改善させる対症療法中心の受動的医療に慣れている人にとっては私の治療方針は物足りなかったり、不十分に感じられてしまうかもしれません。それでもそこを受動的医療のノウハウにフルスロットルで振り切れないところが私の今のオンライン診療のスタイルとなっています。こだわりが強くてビジネスマンとしてはイケてないなと自覚するところです。しかし私はそれでいいと思っています。
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