Post

        

川崎病は対応するウイルスによって自己免疫システムが過剰駆動された状態か

category - ウイルス再考
2020/ 05/ 22
                 
高齢者を中心に重症化例が観察される新型コロナウイルス感染症ですが、

欧米では小児での新型コロナウイルス感染例も観察されており、その特徴が日本人の小児に多い「川崎病」と酷似しているという情報があります。

一方で日本では新型コロナウイルスの感染例はごく少数で、川崎病の症状を呈したものは今のところ一例も報告されていません(2020年5月21日現在)。

この欧米と日本における奇妙なすれ違いは、偶然とは私には思えません。何か関連がありそうな気がしています。

しかも川崎病には今日本人の新型コロナウイルス感染症の重症化を防いでいるのではないかと話題となっているBCGワクチンの接種痕が発赤するという特徴まであります。

私自身はBCGワクチンが新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐとは考えていないということは以前にも記事にしましたが、この特徴自体は興味深くそこから何か考えられそうにも思います。

本日は川崎病と新型コロナウイルス感染症の関わりについて私なりに考察してみたいと思います。
            

まず「川崎病」という病気についてざっと紹介しておきますと、

1961年に川崎富作先生により報告された原因不明の急性発熱性疾患です。

別名を「小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MucoCutaneous Lymph-node Syndrome;MCLS)」とも呼び、

この病名の通り急に高熱が出て数日間続き、目や唇、舌の粘膜が腫れたり、全身の皮膚に発疹が出たり、リンパ節が腫脹したりする病気なのですが、

欧米も含めて「川崎病(Kawasaki Disease;KD)」という呼び方の方が浸透している病気です。

この病気の多くは1ー2週間で治まりますが、中には1ヶ月以上続くこじれたケースもあり、そうしたケースで起こる現象として「血管の持続炎症」があります。

特にその「血管の持続炎症」は心臓において多く認められる傾向があり、ひどいケースでは冠動脈という心臓が心臓自身に栄養を送るための血管に炎症が起こり続けることによって形が変形してこぶができるという「冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)」が発生します。

そして最悪この冠動脈瘤が破裂してしまって死亡に至ることもありうる、小児科領域における重大な疾患のひとつです。

原因はいまだにわかっていないのですが、過去に何度か集団発生が起こった年があったりすることから何らかの感染症が関わっているのではないかとも言われていたり、

あるいは一方で持続的に血管に炎症が起こる「血管炎症候群」としての要素があることから何らかの自己免疫疾患の可能性も考えられています。

しかしそうは言っても地域流行性があったり、夏と冬に流行するという季節性があったりする特徴から、どちらかと言えば感染症の要素の方が強めに考えられているのではないかと思います。

今回新型コロナウイルス感染症で欧米を中心に川崎病の症状を呈する小児患者が出たということで、川崎病の原因は新型コロナウイルスだったということであれば話はすっきりしたのですが、

日本で一例もそのような例が出ていないことが話が合いませんし、そもそも今までの日本の川崎病患者は何ウイルスが原因だったんだということにもなってしまいます。


一方で川崎病で比較的特徴的とされるBCGワクチン痕の腫脹という現象に注目してみます。

BCGワクチンというのは要するに結核菌を弱毒化処理したものを人体に注入する行為ですから、

弱毒化したとはいえ異物は異物、当然身体にとっては異物除去反応としての炎症が惹起されるきっかけとなります。

その結果としていわゆる「ハンコ注射の痕」というのが誰しも多かれ少なかれ起こったと思います。

そのBCGワクチンの痕が強く腫脹するということは、その子は何らかの理由でこのBCGワクチンに対して強い拒絶反応を現しているということになります。

強い拒絶反応と聞いて思い出されるのは以前に考察した輸血後GVHDです。これは拒絶反応の究極系で一旦起こるとほぼ100%死亡するという脅威の拒絶反応でした。

そのような強烈な拒絶反応を起こす背景には何があるかというと、自分とは異なる「非自己(他者)」の要素に多くさらされることでした。

その「非自己(他者)」なのか、「自己」なのかを定めている分子生物学的な因子は「HLA(=MHC)」と呼ばれるすべての有核細胞の表面に存在する膜タンパクでした。

BCGワクチンの痕が激しく反応する子においては、BCGワクチンの中の何らかの成分が、自身のHLAと著しく異なるということが起こっているのだと思われます。

ということは川崎病の小児患者さんでは、ひとつの可能性としてBCGワクチンに存在する何らかの成分に過剰な免疫反応を誘発されているということが考えられると思います。

ただしそれであればBCGワクチンを打った直後から川崎病の症状が出現しなければ話が合いませんが、

BCGワクチンの接種年齢は1歳時で、川崎病の小児患者さんには0歳の子も存在しますので、BCGワクチンですべてを説明することは難しいでしょう。

しかしBCGワクチンにも存在し、なおかつそのBCGワクチン内の成分と共通する分子を持つ未知のウイルスが川崎病の病態を惹起しているという可能性はあるかもしれません。

もしそうだとすればその未知のウイルスを仮に「X(エックス)ウイルス」と呼ぶとしたら、

この「Xウイルス」は日本人のこどもの一定集団に存在する特定のHLAと非常に相性が悪いことによって著しい拒絶反応が惹起されることがまず考えられます。

しかし完全にHLAと不一致であれば、単なる異物として排除されるだけです。特に自然免疫システムが余計な人為によって乱れていない乳幼児期であればなおのこと速やかに排除されるでしょう。

しかし川崎病の小児患者においては過剰な免疫反応が駆動され続けているので、

この「Xウイルス」が潜伏感染していて、その感染細胞から子ウイルスを増殖されて血中へと放出され続けているという現象が起こっていることが想定されます。

ということは「Xウイルス」には潜伏感染を成立させるために「自己」と判定されるためのHLAの要素も存在しているということになると思います。

つまり「Xウイルス」にとって川崎病の小児患者さんは、「自己」的要素が少なめで、「他者」的要素が多めな存在だということです。

その結果、重度の川崎病患者さんのように「血管炎症候群」という形で、自己免疫システムのオーバーヒートが起こっているのだと考えれば、

川崎病に感染症的な要素と、自己免疫疾患的な要素の両方が存在することに説明がつくように思います。

そしておそらく欧米の川崎病様の症状を呈する小児患者のHLAの特徴に対しては、その自己免疫オーバーヒートを起こしうる「Xウイルス」に対応するのが「新型コロナウイルス」だったということではないかと思います。

しかしながらこの仮説では、一つ疑問が浮かびます。

私の理論では自然免疫システムさえきちんと働いていれば、そのような潜伏感染からの自己免疫システムのオーバーヒートはNK細胞を中心とした「非自己」駆逐システムによって制御されるはずですが、

川崎病の好発年齢は0〜4歳です。一方で自然免疫を阻害する要因として私は不安/恐怖情報に伴う慢性持続性ストレスに注目しているわけですが、

0〜4歳のお子さんで複雑な思考に伴う慢性持続性ストレスは存在しないように思います。

それに川崎病の発生率は小児全体の中では0.02%くらいで、かなりの少数派です。この「Xウイルス」仮説が正しいのだとすれば、多くの小児はきちんと自然免疫システムがきちんと駆動していることになります。

となればHLAの不一致(「自己」的要素少なめ、「他者」的要素多め)という先天的条件以外に、小児において慢性持続性ストレスを発生させている要因は何なのでしょうか。

次回の記事で引き続きこの話題について考えていきたいと思います。


たがしゅう

関連記事

            
                                  

コメント

非公開コメント
        

No title
いつも興味深い記事をありがとうございます。

小児において慢性持続性ストレスとは、正しい微生物フローラと共生していない事によって引き起こされるのではないかと思いました。

自己と非自己を認識するのは生後6ヶ月~1歳だと言われます。小さな頃にどの様な微生物に出会うかが、その後の人生で、微生物の感染、非感染に大きく影響するのではないかと思います。どんな微生物と共生し、どんな微生物を排除するのかを、人生の初期に免疫細胞が学ぶのだと思います。

小さな頃から、住環境が衛生的すぎると、免疫細胞の学びが不十分で抑制型T細胞が未熟になる。帝王切開、人工乳などにより、母親から譲り受けるはずの正しい細菌フローラを受け取れず、不利益な細菌が入植してしまい、ヒトの代謝や免疫に悪影響がでる。

ある本で読みました。
ヒトが正しいマイクロバイオータと出会うためのシナリオが用意されているのに驚きました。

赤ん坊は生まれて数時間の間に「大半がヒト」の状態から「大半が微生物」になる。(ヒト=ヒトの遺伝子10%+共生微生物の遺伝子90%)破水と同時に微生物の入植がはじめる。

赤ちゃんは産道を通るときに母親の膣内の細菌叢と出会う。これらの細菌は赤ちゃんが消化、吸収できない母乳の成分ラクトースをエサに増殖し、病原性の細菌から赤ちゃんを守る。母乳に含まれるオリゴ糖は赤ちゃんの腸内細菌のエサになり、未熟な赤ちゃんの腸内フローラを正しい方向へ導く。母親の樹状細胞が母親の腸内細菌を乳房へ運ぶ。母乳を飲む赤ちゃんは母親の腸内細菌を受け取る。

様々な感染症、自己免疫疾患は、有益な微生物と共生することで、免疫を正常にし、未然に防いだり、病原性微生物と戦えるのだと思います。

有益な微生物との共生を意識した生活習慣が大切だと強く思います。
Re: No title
Etsuko さん

 コメント頂き有難うございます。

> 自己と非自己を認識するのは生後6ヶ月~1歳だと言われます。

 そうですね、もしかしたらこの時期に形成されるべきこの認識システムが何らかの理由でうまく構築されなかった時に小児の全身炎症制御不可トラブルは発生してしまうのかもしれません。

 川崎病の好発年齢とも合致します。ただし欧米の小児の新型コロナウイルス感染契機で起こる致死的全身炎症病態はもう少し年齢が上だそうなので、それ以外に自然免疫を乱す何らかの要因が存在しているはずです。

 考察遅くなってしまっており恐縮ですが、次の記事で考えてみたいと思います。