大前提を疑ってみる
2014/02/08 00:01:00 |
よくないと思うこと |
コメント:12件
先日、糖尿病の新しい治療薬SGLT2阻害剤について記事で取り上げましたが、
私が好きでいつも見ているカルピンチョ先生のブログにSGLT2阻害剤の事が書かれていました。
「炭水化物50~60%摂りなさいと言っているのに、それをすぐさま尿中に捨てるような薬を使う事に対する矛盾」について鋭く指摘されています。
また先日の私の酸化ストレスについての記事では
高血糖⇒PKC活性化⇒「NADPH oxidase活性異常」⇒活性酸素・フリーラジカル生成⇒生体内タンパク変化、DNA障害⇒血管障害
という流れを紹介しましたが、演者の先生はここで「(酸化ストレスを防ぐために)PKC阻害剤の開発が望まれる」といった見解を述べておられました。
いやいや、どう考えても糖質を控えて「PKC活性化」より上流にある「高血糖」を避ける方が先でしょう。
どうして医者や科学者の叡智が結集しているにも関わらず、そうした変な発想が出てきてしまうのでしょうか。
それは大前提が間違っているからです。「糖質は大事なエネルギー源」だとか考えているからそうなるのです。 同じく好きで毎日見ている夏井睦先生のサイトでは最近科学と宗教の違いについて述べられていました。
科学は疑うところから出発し,宗教は信じることから出発する。科学者はまず最初に自分の考えを否定してみるが,宗教は無条件で信じることから始める。
極めてわかりやすい説明です。前提が間違っていないかどうかを疑い続けられるのが科学者だということです。
例えば、最近話題になったSTAP細胞を発見した小保方晴子さんも細胞生物学の常識を疑い続けたからこそ世紀の発見につながったのではないでしょうか。
「糖質は大事なエネルギー源」は本当でしょうか。では一緒に疑ってみましょう。
糖質にまつわる基礎的な事実は以下の通りです。
・糖質は消化管で吸収されブドウ糖(=グルコース)になる物質である。
・ブドウ糖は赤血球における唯一のエネルギー源である。
・糖質に必須糖質はないが、脂質には必須脂肪酸が、蛋白質には必須アミノ酸がある。
・ブドウ糖は糖新生というシステムによってグルカゴンの分泌をシグナルとして、脂質や蛋白質などの糖質以外の物質から自前で作り出すことができる。
・血液中のブドウ糖の濃度のことを「血糖値」という。
・ブドウ糖が不足すると糖新生が働いたり、血糖上昇ホルモンが働くことで血糖値を一定に保とうとする。
・血糖値の上昇、平均血糖変動幅の増大は酸化ストレスリスクを増大させる。
・ブドウ糖が不足すると、脂肪酸を分解することでケトン体産生が盛んに行われる
・ケトン体は心筋や骨格筋など多くの体細胞の主たるエネルギー源である。
こうした事実から「糖質は大事なエネルギー源」ではなく、「糖質は必須栄養素ではない」「血糖値は一定に保つべき」に行き着くことができれば、
高血糖を避けるのが先決だとわかり、SGLT2阻害剤も、PKC阻害剤も開発する必要がなくなると思います。
糖尿病専門医の間でも食後高血糖の有害性ははっきりと認識されていると聞いています。
また国際糖尿病連合は「食後血糖値の管理に関するガイドライン」を発表しています。
http://www.idf.org/webdata/docs/Japanese_GMPG_Final_280308.pdf
そこまで食後高血糖の害がはっきりしているならば
「糖質は大事なエネルギー源」という大前提そのものを一刻も早く見直すべきではないでしょうか。
そうでないと科学者とは言えないと私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
科学者
なんか、ソチオリンピックの開会式見ちゃった見ちゃったりて(^^)
ワタシノブログでも、同じような事、書いてあります(^^)
http://ameblo.jp/suzu554/
今日は大雪になると、予報されてますが。。。。
まだ、降ってません!(^^)
子供の頃、キュウーリー婦人の伝記を読んで,あこがれました(^^)
今では、もどき、なんちゃって科学者〔大汗)
あははは(^^)
雪、ふんないかなぁー〔期待) (^^)
Re: 科学者
コメント頂き有難うございます。
それぞれ立場は違えど、自分達なりに科学者でありたいものですね。
管理人のみ閲覧できます
科学的な態度
>そうでないと科学者とは言えないと私は思います。
かつての有名な話を思い出します。
「それでも地球は回っている」
×地球が回っているはずがないだろう!
「血糖値を上げるのは糖質です」
×そんなこと言っていないで、日本人なら炭水化物を食べろ!食べないと心筋梗塞など体がボロボロになるぞ!
* * * * * * * * * *
http://www.j-cast.com/tv/2014/02/07196241.html
「糖質制限ダイエット」早死に・成人病まっしぐら!やり過ぎで筋肉も骨もボロボロ
2014/2/ 7
最近ブームといわれる「糖質制限ダイエット」への疑問を呈した記事が『週刊現代』と『週刊ポスト』に載っている。週刊現代のほうから見てみよう。
糖質制限ダイエットは危険だと、糖尿病の世界的権威、関西電力病院院長の清野裕医師がこう解説する。「人間には一日170グラムの糖が必要とされています。そのうちの120~130グラムは脳で消費され、30グラムは全身に酸素などを運ぶ赤血球のエネルギー源として消費されます。糖質は、生命を維持するために欠かせない栄養素なのです。
糖質を制限してしまうと、代わりにタンパク質を構成しているアミノ酸を、肝臓が糖に作り変えるというシステムが働き始めます。タンパク質を糖に変えられるなら、肉を食べれば問題ないのではないかと思う方もいるでしょう。しかし、人体の維持に必要なエネルギーをタンパク質や脂質でまかなおうと思ったら、毎日大量の肉を食べなければなりません。数キログラムもの肉を毎日食べ続けることは現実的に不可能です。糖エネルギーが不足すると、それを補うために、体は自分の筋肉を分解してアミノ酸に変えていきます。結果、筋肉量がどんどん減っていってしまうのです」
このダイエットをやっていた70歳の男性が、ある日、尻もちをついて尾てい骨を折ってしまった。調べたら骨密度がたった1年半で10%も落ちていたことがわかったという。週刊現代によれば、寝たきりの原因ナンバー1の脳卒中も、糖質制限ダイエットと深い関わりがあるということが、最新の医療調査で明らかになったという。
某医師がこう話している。
「一般的に、糖質制限をするとカロリーを補うために脂質やタンパク質を大量に摂るようになります。すると、血管に悪玉コレステロールが溜まっていく。その結果、血管が痛んだり老化が進んだりして、脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性がどんどん高まっていくんです」
* * * * * * * * * *
×人間には一日170グラムの糖が必要とされています。
★毎食60gもの炭水化物を取れば、私の食後血糖値は、200を軽く超え、合併症 まっしぐらです。
* * * * * * * *
国際糖尿病連合のガイドライン
『正常耐糖能者では,食後血糖値は.8mmol/L(140mg/dL)
を超えて上昇することはほとんどなく,一般的に摂食後2~3時間で基礎値に戻る
HbA1c値,空腹時血糖値,および食後血糖値のすべての点においてできる限り正常に近い血糖状態に安全に到達することを糖尿病治療の目標とすべきである。
これらのパラメーターの中では,食後血糖値の治療やモニタリングを行う方法や技術が利用できることを条件として,食後2時間値目標7.8mmol/L(140mg/dL)未満が妥当かつ達成可能である。
最適な血糖値の管理を得るためには空腹時血糖値と食後血糖値の両方を標的とする治療法が必要である。しかし,最適な血糖値管理は適切な食後血糖値の管理なくしては達成できない。
したがって,HbA1c値にかかわらず,空腹時高血糖値と食後高血糖値を標的とした治療が同時に開始されるべきである。
* * * * * * *
清野医師
食後高血糖の有害性を認識しているでしょうか?
糖質タップリの食事を押し付けるのは、もはや犯罪です。患者を合併症に追いやっています。
東京は、久しぶりに、すがすがしい雪景色です。
滑ってケガをする人が少ないといいのですが。
細かいこと言うと同じ糖質制限やってる人達でも全然違いますしね。
私はω3でも余り信じて無かったんですけど、たがしゅう先生のブログ読むと何時も「我が意を得たり」と思います。
一応、ω3飲んでますけどね。
糖質制限さえ場合によっては疑ってみるニートラルな気持ちが大切ですよね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
お互いの立場で,お互いのできる事をやっていきましょう.今後とも何卒宜しくお願い申し上げます.
Re: 科学的な態度
コメント頂き有難うございます.
食後高血糖の有害性を認識しておきながら,食後高血糖を起こす食事を推奨するという矛盾.
自己批判しない限りこの矛盾に気が付くことはできません.権威者ほど自己批判できない傾向があると思います.
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます.
> 糖質制限さえ場合によっては疑ってみるニートラルな気持ちが大切ですよね。
私もそう思います.
「糖質制限していれば大丈夫」と信じ込んでしまえば,その時点で糖質制限も宗教となってしまいます.
自分のやっている事に間違いはないか,常に疑い続けてよりよい方法を模索してきたいです.
No title
今日は全国的に大雪のようですが、出歩かなければ滑って転ぶことも車の事故にも会いません。インフルエンザはじめ各種の感染症リスクも最小限で済むでしょう。
糖尿病も同じですね、糖質は極力取らない、本当に必要な栄養素だけを吟味して摂取する。労働災害予防の鉄則に危ない作業を無くしていく、不可能ならより安全な作業へとシフトする、というのがあります。4人に1人が糖尿病ないし予備軍ですから血糖値の上昇しない食べ物を中心に食生活を見直すというのはまったく当たり前の話ですね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
「糖質を減らすことはリスクを減らすこと」,まさにおっしゃる通りだと思います.
血糖値が上がる事自体がリスクだと理解することができたら,糖質制限は立派なリスクマネジメントですね.
No title
論文に目を通して見て下さい。
大概一番最初のFigureに血糖値や糖負荷試験のデータが乗っています。
それが単純にはなかなか上手くいかないから手を変え品を変え、色々な機序をもつ薬剤が開発されているわけで。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
御指摘のように多くの研究者は食後高血糖の害は認識していると思います。
しかしそれを薬で解決しようとするという発想にとどまっているのが問題なのであって、「そもそも糖質を摂取しなければ食後高血糖は生じない」という認識を持てばこの問題はシンプルに解決できると私は考えます。
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