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自覚症状がないのに他覚所見がある理由

category - ウイルス再考
2020/ 04/ 30
                 
新型コロナウイルス感染症においては無症状でも実は画像検査で肺炎像が認められるという例があることがすでに症例報告として公開されています。

それ故、症状がなくても新型コロナウイルスのPCR検査を受ける必要があって、陽性であれば肺炎へと進展するかどうかを注意深く見守っていかなければならないという意見が医療界では出てきています。

しかしこの「無症状だけど肺炎像がある」というのは、広く捉えれば「自覚症状はないけど他覚所見がある」という事だと思いますが、それは原理的におかしい話だと私は考えています。

逆の「自覚症状はあるけど他覚所見はない」という事はよく起こります。自律神経系やメンタルの問題などすべての自覚症状をもたらす異常の根源が現代医学の検査で検出できるとは限らないからです。

けれども「自覚症状はないけど他覚所見がある」というのは、限られた人体の異常を捉える検査ではっきりと証拠を押さえた状況なのに自覚症状が現れていないというのはとても不自然な話です。
            

そこをとても疑問に感じたので、冒頭でリンクしたその公開症された例報告を読み込んでみました。

クルーズ船乗船歴のある78歳男性と74歳女性の夫婦症例でしたが、結果的に男性の方が重篤例、女性の方が軽症(普通)例という経過をたどったようです。

レポートを読むと、いずれの患者さんにも確かに無症状だけれどCTで肺炎像が検出されるというフェーズが存在していました。

特に男性の方は、船内待機指示を受けていた2月15日に新型コロナウイルスのPCR検査陽性が判明し、その時点では無症状でしたけれど、

隔離目的で病院へ搬送され、CT撮影を行うと右側の肺の下の部分に限局する肺炎像が認められていました。

同時にSpO2(血中酸素飽和度)も88%(基準は90%以上)と低下していたので、直ちに酸素投与を開始したということも書かれていました。

その翌日16日に38.5℃の発熱、17日に38.8℃、SpO2が思うように上がらず酸素を増量する必要性にも駆られつつ、18日の夕方にようやく呼吸苦、倦怠感、食欲低下の症状が出現したという経過のようです。

抗インフルエンザ薬に続いて、倫理審査委員会を通して抗HIV薬を、さらに脳梗塞の既往があったので誤嚥性肺炎も疑い抗菌薬も併用、さらには漢方薬でのアプローチも加えつつ、それでも進行していく経過をたどり、

2月20日の時点では肺全体に広がる肺炎像にまで増悪したためサイトカインストームの状態を考慮され、ステロイド点滴(ソルコーテフ®200mg)を行った辺りから病態は改善に向かい、最終的には救命できたという経過をたどりました。全体を通じて非常に手厚い治療だと感じます。

女性の症例の方では同じく2月15日にPCR検査が陽性と判明して、隔離目的に搬送された病院においてCT画像で左肺のごく一部に肺炎像が確認される状況があったそうです。

その後16日に37.4℃、18日に38.1℃の発熱を認め、その発熱とともに倦怠感、食欲低下を認めるという経過をたどったそうです。

こちらの患者さんは2月18日が症状のピークだったようで、抗インフルエンザ薬、抗菌薬、抗HIV薬、漢方薬の投与で病態は収束し、同日のレントゲン写真で左肺に軽度の肺炎像を認めましたが、その後は悪化なく経過していました。

ちなみにこの患者さんはクルーズ船乗船中から右膝関節の腫脹が認められていましたが、新型コロナウイルス感染症の治療経過の中で膝の腫脹疼痛が悪化し、下腿も腫脹してきたとのことで偽痛風という関節炎の病態を疑われるという経過もあったようなのですが、

この辺りも新型コロナウイルス感染症がウイルスによって引き起こされるというよりも自分自身のシステムのオーバーヒートだと私が感じられるところです。

それ以外の詳しい経過で興味のある方は実際の症例報告を読んでもらうとして、さて、ここまでわかったところで改めて「自覚症状はないけど、他覚所見がある」問題についてです。

やっぱり肺炎像がある以上は、そこで紛れもなく炎症反応が繰り広げられているわけですから、

炎症の4徴候である発熱、疼痛、腫脹、発赤という現象は少なくとも局所では必ず起こっているはずです。

しかも男性の症例に至ってはSpO2の低下という酸素飽和度が低い状態まで確認されているので、

異常な身体反応が客観的に観察されているにも関わらず、自覚症状がないというのはどう考えても不自然です。

さらに言えば、一般的にレントゲンやCTで肺炎像として検出されるのは、自覚症状が出る少し後だと言われています。

というのもレントゲンでCTでの肺炎像とは何を反映しているかというと、主として炎症に伴って発生する滲出液だとされています。

滲出液というのは、炎症により局所の血管透過性が亢進し、毛細血管から組織内にもれ出た液体のことです。レントゲンやCTで肺炎像の認識される異常陰影は基本的にはこの液体を認識している事になります。

しかし実際には炎症反応が起こっているけれど、まだ滲出液が産生されていないという時期が存在しますので、原理的には検査では異常はないけれど自覚症状はあるという状態が起こりうるという話になります。

でも今回の2症例ではそんな肺炎像があるにも関わらず、自覚症状を訴えていないというのです。考えられる可能性は一つしかありません。

それは「自覚症状が存在する状態を、”自覚症状がある”と認識できていない」ということです。

そんなことが起こるにはいくつかの要因があると思います。

①自覚症状がない状態から自覚症状がある状態へゆっくりと変化していく
②自覚症状を”自覚症状”だと捉える能力が低下している
③急に生じた交感神経過緊張状態によって自覚症状を感じにくい臨時状態におかれてしまう


①はいわゆる「ゆでガエル理論」の構造で、この構造のせいで日本の医療で治りもしない治療が延々と繰り広げられる悲劇が起こり続けていますが、

新型コロナウイルス感染症の経過は今回の2症例をみてもわかるように、日単位で変化していくものなので、①の要素による可能性は低いと考えられます。

②は、今回の症例は2人とも高齢者と呼ばれる範疇の方々であったので、全体として身体機能が低下している可能性があるという点で多少はありうる要素かもしれません。

ただ今回の状況は世界的に新型コロナウイルス感染症に関する話題が報道され続け、クルーズ船に閉じ込められて、なおかつPCR検査が陽性だと言われた状況なので、

たとえ普段の身体機能が自覚症状を検出する能力が衰えていたとしても、自分の体調がどうなのかというのが人一倍気になる状態ではないかと推察されますので、

高齢を理由に自覚症状の検出能力が低下しているからだと結論づけるには若干無理があるように私には思えます。

一番ありうるのは③の要素だと私は思います。これは何が原因であったとしても急に交感神経過緊張状態に追い込まれてしまうと人は自覚症状を感じにくくなります。

例えば昔私が空手をやっていた頃に、試合中には緊張や闘争心から交感神経過緊張状態となっているわけですが、

そうした場合というのは頭を何度も蹴られるような打撃が加わって、腫れていようが血が出ていようが不思議なことに全く痛いと感じることはありません。

ところが試合終了後、少なくとも数時間くらい経過してから、あるいは翌日くらいからでしょうか。蹴られた頭の部位がガンガン痛くなってきます。

打撃が加わり組織の損傷が起こり、出血なども生じて、それを修復するための炎症反応が起こって痛くなるという正当な自覚症状が、交感神経過緊張状態が解除されて始めてようやく自覚されるようになってくるのです。

言わば急激な交感神経過緊張状態というのは、あらゆる自覚症状を感じる能力を低下させてでも、何とかこの困難事態を乗り切るために身体機能を最大化させている非常事態モードであるわけです。

当然、非常事態なので本来は一時的に発動されて終了するはずのシステムです。しかしながら高次脳機能を備える人間の脳だけが本来一時的で終了するはずのシステムを持続的に駆動させ続けることができます。

それが精神的ストレスです。精神的ストレスは精神的な不安を燃料にとめどなく交感神経を過緊張にさせる反応を起こし続け、この反応の初期段階では自覚症状を感じにくい状態を作ることができます。

しかしながらこの非常事態モードが延々と駆動され続ける状態が続くと、次第にシステムは破綻し、自覚症状を隠し切れなくなり、身体は身体システムの暴走の表現型の一つ、サイトカインストームへとつながってしまいます。

従って急性的な交感神経過緊張状態は自覚症状を感じない状態を生み、慢性的な交感神経過緊張状態は難治性の自覚症状の重積を生み出すという構造になるのだと思います。

ではこの症例において何が持続的な精神的ストレスを生み出しているのかというのは...もう、言うまでもありませんね。

自覚症状がないのに他覚所見があるというこの奇妙な状態を生み出しているのは、社会にはびこるとめどない不安/恐怖情報です。

新型コロナウイルス感染症はそのほとんどが人災であると私は確信しています。


たがしゅう

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コメント

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質問させてください
記事内容とは合わない質問かもしれませんがご教授ください。
この感染症に限らず、感染症「無症状」という分類の中にはさらに細かく「罹らない人」と「罹っても無症状の人」がいると思います。
ここで「感染症に対しての免疫力が強い」という人はどちらの場合をいうのでしょうか?

そもそも新型コロナでよく言われるのが「子供は罹りにくい」や「子供は罹っても症状が軽い」というもの。
そのニュースで疑問に思ったのが「罹らない」というのは「ウィルス自体が体内に侵入してこない・侵入を許さない」ということなのか?
それとも「侵入は許しても抗体を獲得して駆逐する能力が高い」ということなのか?
教えていただけると幸いです。
Re: 質問させてください
だいきち さん

 御質問頂き有難うございます。

> 感染症「無症状」という分類の中にはさらに細かく「罹らない人」と「罹っても無症状の人」がいると思います。
> ここで「感染症に対しての免疫力が強い」という人はどちらの場合をいうのでしょうか?


 これは非常に重要な質問で、近くブログか動画にしようと思っていましたが、ひとまずここでお答えします。

 「免疫力が高い」という状態を考えるには、「免疫力が低い」状態の方を考えると理解しやすくなります。
 「免疫力が低い」という言葉だけみますと、「免疫力」という何らかのパワーが「ダウン」したイメージを持つかもしれませんが、
 実際には免疫不全の患者さんがサイトカインストームと呼ばれるシステム暴走をきたすことからもわかるように、「ダウン」ではなく「オーバーヒート」すなわち過剰に働いてコントロールできていない状態の事を意味しています。

 従って、「免疫力が高い」とは、コントロールを保つことができる状態、すなわち「恒常性を維持する能力が高い」ということを意味していると私は考えます。

 よって御提示の質問で言えば、免疫力が高いのは「罹らない人」>「罹っても無症状の人」の順です。
 前者はピクリとも恒常性が乱れていないのに対して、後者はウイルス侵入という恒常性の乱れは許しているからです。

> 「罹らない」というのは「ウィルス自体が体内に侵入してこない・侵入を許さない」ということなのか?
> それとも「侵入は許しても抗体を獲得して駆逐する能力が高い」ということなのか?


 「罹らない」というのが、最高レベルで免疫力が高い状態だと考えますと、
 「罹らない」=「ウイルス自体が体内に侵入してこない・侵入を許さない」の方だと思います。

 なお、免疫力低下が「ダウン」ではなく、「オーバーヒート」だと理解しておくことは極めて重要なことです。
 なぜならば、「ダウン」だと捉えていれば、免疫力を高めるために「何かを補う」というプラスの発想ばかりが浮かんでくるのに対し、「オーバーヒート」だと捉えていれば、免疫力を高めるためのアプローチは「不要な燃料を取り除く」というマイナスの発想に至るからです。
ご回答ありがとうございます。
>「ダウン」だと捉えていれば、免疫力を高めるために「何かを補う」というプラスの発想ばかりが浮かんでくるのに対し、「オーバーヒート」だと捉えていれば、免疫力を高めるためのアプローチは「不要な燃料を取り除く」というマイナスの発想に至るからです。

私のあやふやな理解が、この説明で融解しました。
「マイナスの発想」に気が付いてはいましたが、腑に落ちるまで時間がかかりました。
改めて、身体の素晴らしさを再認識した次第です。
急性の間質性肺炎の特性?
コロナ「突然重症化した人」の驚くべき共通点
https://toyokeizai.net/articles/-/346423

ウイルス感染による急性の間質性肺炎の特性として、初期~中期までは血中ガスが低酸素かつ低炭酸ガスという病態があり得そうです。
自覚症状としての「息苦しさ」は、血中酸素濃度よりも血中炭酸ガス濃度により依存しているようです(頸動脈にある血中ph濃度センサーがCO2をモニターしている)。

また、CTのすりガラス様陰影は、肺胞の5%を占める2型肺胞細胞=間質の炎症像のようですが、同細胞の炎症には浸出物は無いかあっても微量、なので湿性咳ではなく乾性咳となり、また酸素吸収能を直接障害することが比較的少ない?
コロナウイルスは、この2型肺胞細胞に発現しているACE2受容体に選択的に取り付く、細胞内にウイルス核酸が封入される、同細胞内の機構を利用してウイルス核酸を複製する=感染成立、複製増殖したウイルス核酸が細胞外に出芽して飛び出る、この時に細胞の脂質膜を拝借してウイルス粒子の外側に外套膜=エンベロープを纏う、というのが感染の流れでしょうか。

2型肺胞細胞は、肺胞の95%を占めガス交換を担う実質である1型細胞を支える=間質(傘に例えれば、1型は傘の布部分、2型は傘の骨にあたる)ですので、少々傘の骨が硬くなって軽度の虚脱があっても、炭酸ガスの拡散を直接的に妨げることはないので、血液の低酸素低炭酸ガス状態が作られてしまう=ギリギリまで「息苦しさ」を自覚しない?

この時に炎症が生じるかどうかが問題で、寄生体を孕んだ2型肺胞細胞に対する自然免疫系の免疫応答=NK細胞などによる攻撃とマクロファージなどの貪食の段階と、適応免疫系のT細胞系の細胞侵害性リンパ球の攻撃の段階の2段階の免疫応答が「炎症」として現象する。
細胞侵害性の攻撃が暴走して、各種の炎症性サイトカインを多量に作り出してしまうのが重症化・重篤化した状態?

疑問なのは、ウイルス感染した肺胞細胞に対する免疫応答が無いかまたは過小であれば「炎症」も生じないし組織侵害もほぼ無く組織侵害=病も無い。無症候性感染で経過してしまう例は、こういうことなのかということです。

ウイルス性炎症の全てでは無いでしょうが、炎症の本態は通常は正常な免疫応答であり、生体侵害性はさほどない。病原性の源は、過剰な免疫応答を生じていまう宿主側の素因・要因にあるのではないかと思うのですが(先生の意見と同じになりますが)。

新型コロナウイルス感染症の対感染者発症率は5%程度、という試算もあります。これが本当に近いとすれば、その5%の発症者の内の80%は軽症、20%が中等症・重症で、重症者のそのまた数%が重篤化して死亡する。とすれば、万病の元の風邪がこじれた状態、と考えるだけでも良いのかも。インフルの主に高齢者の死亡例でさえ年間3000人近いのですから。
どうでしょうか。
Re: 急性の間質性肺炎の特性?
geturin さん

 コメント頂き有難うございます。

> コロナウイルスは、この2型肺胞細胞に発現しているACE2受容体に選択的に取り付く、細胞内にウイルス核酸が封入される、同細胞内の機構を利用してウイルス核酸を複製する=感染成立、複製増殖したウイルス核酸が細胞外に出芽して飛び出る、この時に細胞の脂質膜を拝借してウイルス粒子の外側に外套膜=エンベロープを纏う、というのが感染の流れでしょうか。
> 2型肺胞細胞は、肺胞の95%を占めガス交換を担う実質である1型細胞を支える=間質(傘に例えれば、1型は傘の布部分、2型は傘の骨にあたる)ですので、少々傘の骨が硬くなって軽度の虚脱があっても、炭酸ガスの拡散を直接的に妨げることはないので、血液の低酸素低炭酸ガス状態が作られてしまう=ギリギリまで「息苦しさ」を自覚しない?


 それであれば、同じコロナウイルスであるSARSやMERSでも、
 「SpO2低下しているのに息苦しさは低下しない」という特徴が現れてしかるべきですが、そのような報告は見たことがありません。
 この特徴はコロナウイルス全般ではなく、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のみに認められるものだと思います。

 SARSやMERSの時には認められず、COVID-19で認められる要素として著しく不安/恐怖があおられ続けるインフォデミック(特にロックダウンを行う国に顕著)であり、それに由来する特徴だと私は考える次第です。