常在菌を参考にウイルスとの共生を
2020/04/24 05:30:01 |
ウイルス再考 |
コメント:2件
私は身も心もウイルスと共存する世界への移行を推奨している立場ですが、
単にウイルスの脅威をそのままにしてその世界に行くのはむしろ恐怖の世界へと化するだけで望ましいことではありません。
仮に今の日本で緊急事態宣言を解除して元の生活に戻ったとしても、依然としてウイルスに対して恐怖を抱き続ける人にとっては、
日々の生活の中で不安や恐怖に伴う慢性持続性ストレスがかかり続け、免疫力低下という名の発炎反応過剰が起こり続けてしまい、
ウイルス感染を契機とした炎症反応が重症化してしまうリスクは高いままとなってしまいます。
従って、ウイルスとの共存の世界へ心から安心して移るためには、ウイルスとの共存を安心してもらうための情報提供が必要になってくると思います。 その安心を得るために鍵となる存在の一つが、「常在菌」と呼ばれる細菌達です。
「常在菌」とは身体に存在する細菌のうち病原性を示さないもので、かつ多くの人に共通してみられるものを指しています。
具体的には皮膚に存在する表皮ブドウ球菌とか、黄色ブドウ球菌などの「皮膚常在菌」、腸内の乳酸菌や大腸菌などの「腸内常在菌」、あるいは口腔レンサ球菌などの「口腔内常在菌」などです。
ちなみに常在菌として挙げた例は全体のごくごく一部で、常在菌の数はなんと100兆以上だと言われています。
さてそんな常在菌たる細菌の大きさはだいたい1μmで1mmの1000分の1の大きさですが、0.1μmのウイルスに比べれば10倍の径がありますが、それでも到底肉眼で見えるようなものではありません。
そんなとても小さな生き物が100兆も私達の身体の中で共生していますが、普段私達はそれらの常在菌から何かしらの弊害を受けることなく、存在すら意識することなく生活をしてきています。
しかしそんな常在菌が私達に対して牙をむく瞬間があります。それはどんな時かと言いますと、大きく二つあります。
①免疫力の低下
②抗生物質の乱用
①は人体のバランスが崩れた時、②は細菌のバランスが崩れた時と言い換えることもできるかもしれません。
いずれにしても、もともと備わっている自然界におけるバランスが整ってさえいれば一番よい状態がキープできるのですが、
そのバランスが崩される人為が加えられた時に、悪い状態がもたらされるという構造になっていると思います。
①に関しては前述したように病原体に対する不安や恐怖感情によって慢性持続性ストレスが与え続けられることで起こることもあるでしょうし、
一般的には診断がつくことによって治療方針が決まり患者側からすれば安心するとされる作業も、相手が難治性の疾患であったり、死亡率が高いとされる疾患の概念にとりこまれてしまえばこれも慢性持続性ストレスの元になります。
もっと言えば、慢性持続性ストレスが加わっているのと同じ状況を身体にもたらすステロイド剤を飲み続けている状況も免疫力の低下をもたらすわけですし、
その本質は発炎反応が終炎反応を上回り続ける状況のことを意味します。発炎反応を刺激し続けるものは何も物理的な物質だけとは限らないのです。
勿論、ニコチンやアルコール、重金属など毒物と総称されるような物理的な物質でも発炎反応が刺激され続けるきっかけにはなります。あるいは血糖値の上昇をもたらす糖質過剰摂取もそうでしょう。
しかし一連のウイルス再考シリーズの中ではあえて見えない精神的ストレスの存在に注目し続けています。なぜならば昨今の状況で急激に加わった免疫力低下の要因としては物理的な要素よりも圧倒的に精神的な要素の方が大きいと考えられるからです。
もう一つの②に関してですが、例えばある感染症を治療するために抗生物質を使用したとすれば、同時に常在菌の大部分が死滅する現象が起こり、それに代わって他の種類の常在細菌や真菌が旺盛に増殖し、もともとの常在菌バランスが崩れるという現象が起こります。
これが繰り返されるともともとは常在菌として共生していたある細菌が、もともとのバランス以上に増殖できる環境を手に入れることになり、
その過剰増殖が結果的に人体に害をもたらすという結果につながることが起こってしまうわけです。その過剰に増殖した菌は異物として認識されるようになり、やはり発炎反応が過剰に引き起こされる事態へと発展します。
いずれにしても結果的に導かれているのは「免疫力低下という名の発炎反応過剰」であるように私は思います。
という事は、免疫力の低下をもたらさないようにするためにはどうすればよいのかと言いますと、
極力自然のバランスを乱さない生活を送るということになると思います。
とは言え、生きるためには外界を触れ合わなければなりませんし、外界の生物を食べることでリスクを請け負いながら栄養素を獲得していかなければなりません。
それ故、バランスの乱れは多かれ少なかれ、生きている限りどうしても起こってきてしまうわけですが、
それを乱す要因を最小化する行動が結局はよい健康状態を維持する本質的なアプローチということになってくると思います。
従って、①の要素を防ぐには毒物やストレスを最小化したり、入ってきたとしてもうまくマネジメントしたりする必要がありますし、
②の要素に対しては、「そもそも抗生物質を使わない」、「使うにしても最小限に留める」というアプローチが必要になってきます。
もっとざっくりと言えば、余計な医療介入は行わず、もともとのヒトの食性に合ったものを食べつつ、余計なストレス負荷がかからないような思考を保持する生活ということになるでしょうか。
抗生物質というのは医学の歴史の中で人類が生み出した叡智の結晶という側面がある点は否めません。これを使わなければならない場面は現実問題として存在します。
しかし抗生物質の正の側面ばかりが強調されて、この薬が細菌と共生するためのデフォルトのバランスを乱す強烈な人為だということは認識されずにきているのではないでしょうか。
強烈な人為を加えなければ元に戻せないような状態に至ったのであれば、緊急避難的にそれを用いることはよしとしても、
それと同時並行で乱れてしまった環境を元の状態に戻すために、それ相応の努力をしていかなければならないのではないかと思います。
具体的には食事やストレスマネジメントを行っていくことにはなりますが、それが忘れ去られてこの強烈な人為を繰り返し続けて細菌との共生環境を期せずして崩し続けてしまっているのが今の医療の現状なのではないかと私は思うのです。
ウイルスとの共生を目指すためには、これの二の舞となってはいけません。
ウイルスに対しては今、抗生物質のようにこれを直接攻撃して死滅させる物質を投与しているわけではない状況ですが、
その代わり、食事経由で物理的に発炎反応をきたす毒物を無意識に取り込んでいたり、不安や恐怖によって精神的に発炎反応をきたすストレスを抱え続けていたりすることはあると思います。
この両方の要素をコントロールして、なるべくデフォルトのウイルスと共生している生体環境をキープするようにする原則を保てば、
ウイルスが私達に何の害をもたらすこともなく共生する環境を保つことは十分に可能だと考えられます。
そしてそうするための第一歩が、「ウイルスを敵だと思わないこと」だと私は考える次第です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
私はマイクロバイオータ(共生微生物)に感謝し、
彼らが住みやすい宿主になれるよう、
日々、気を配っています。
人間の形をした器の内訳は、
人間の細胞遺伝子1割、
マイクロバイオータの細胞遺伝子9割です。
人間は生きるための仕事をマイクロバイオータに
アウトソーシングしています。
私達の健康(体の代謝)や幸せ(心)は、
マイクロバイオータ次第です。
最適なマイクロバイオータを選ぶのは、
私達の「食」「生活習慣」です。
赤ちゃんが生まれるとき、
母親の産道を通る際ある細菌を受け取ります。
その細菌は母乳成分を分解してくれます。
その後、母親の腸内細菌が乳房まで運ばれます。
母乳を飲む赤ちゃんが母親の腸内細菌も受け取ります。
それから母乳以外の「食」が始まります。
生活習慣や薬(抗生物質など)も、
マイクロバイオータに大きな影響を与えます。
共生関係を築けない細菌やウィルスが
突然やって来てもスムーズに排除できるために…
良好な関係を築けるマイクロバイオータとの共生のため、
彼らが住みやすい宿主になることが大切。
良い宿主になるためには、「食」「生活習慣」を、
マイクロバイオータ目線で考えて行動することだと思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
御返事遅くなり失礼致しました。
> 良好な関係を築けるマイクロバイオータとの共生のため、
> 彼らが住みやすい宿主になることが大切。
> 良い宿主になるためには、「食」「生活習慣」を、
> マイクロバイオータ目線で考えて行動することだと思います。
おっしゃる通りだと思います。
共生するためにはどうすればいいかを突き詰めると、結局余計な人為を加えないということになってくるように私は思います。そして今最も厄介な人為は食事の問題以上に、科学を誤って解釈する事によってもたらされる確信的な思い込みにあるように私は思います。
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