ウイルスが冬の乾燥を好むのは本当か

2020/04/22 14:00:01 | ウイルス再考 | コメント:0件

ウイルスは冬の乾燥する季節を好むという話を聞いたことがあるかもしれません。

それ故かぜやインフルエンザは冬に流行しやすいのだという論法で、実際にも例年そのような現象が見受けられています。

しかし私の考える「ウイルスとは動植物細胞の複製エラー」という仮説に基づけば、

通常の細胞が安定するのに適度な湿潤環境が必須であるにも関わらず、その延長線上にある複製エラーのウイルスだけが乾燥の方が生育に適しているというのはいかにも不自然です。

細胞が好む環境をウイルスも好み、細胞が嫌う環境はウイルスも嫌う環境であるはずです。

ではなぜ実際には冬にウイルス感染症が発生しやすいのでしょうか。 ひとつ言われていることとしては、ウイルスが冬の乾燥を好むのではなく、冬の乾燥した気候では宿主側の粘膜の湿潤環境が乱されてしまうと、

粘膜は免疫システムの中で重要な役割を果たす舞台のひとつなので、これが障害されることによって宿主側の免疫が低下して、結果的にウイルス感染症が発生するのではないかという見解があると思います。

こちらの話の方が矛盾がなく、真実に寄った解釈なのかなと思うのですが、それはそれで新たに少し気になることが出てきます。

以前の記事で、免疫力とは発炎反応と終炎反応のバランスという見解を示しましたが、免疫力が低下と表現される状態の多くは、「発炎反応が過剰に起こっている状態」のことを指していると思います。

冬の乾燥した気候で宿主の免疫力が低下するというのは、言わば「悪条件において免疫反応が過剰に活性化される」という話になってきてしまうので、先程の粘膜の話と矛盾を生じてきます。

「粘膜機能の障害⇒免疫力低下⇒過剰炎症反応」

これだと機能低下が原因で機能亢進が起こるというような構造になっており、話が合わなくなってしまいます。

ところがここで「免疫力低下」を「発炎反応過剰」という言葉に置き換えてみます。

「粘膜機能の障害⇒発炎反応過剰⇒過剰炎症反応」

そうすると粘膜機能の障害は「バリア機能が低下した」という意味ではなく、「バリアがダメージを受けたことで身体がストレスを感じ、それを克服するために身体の対抗システムのスイッチが押される」という意味があることが見えてきます。

要するに冬にウイルス感染症をきたしやすいのは、ウイルスの特徴でも何でもなくて、

冬という季節は身体がストレス反応を惹起されやすい要因がたくさんあるということになるのではないかと思います。

そもそも寒冷は物理的ストレスですし、乾燥もそうでしょう。それから冬は運動不足になりがちなのでエネルギーの代謝が滞ります。

エネルギーの代謝が滞ってもそれに見合った活動をしていれば解消できますが、多くの人間は運動をしないのみならず、飽食環境のせいでろくに動かないのに食事だけはたくさん摂る状況におかれます。

そこで食べるものもクリスマスだとか、正月だとかいう文化的背景もあいまって糖質過剰のものばかりを摂る傾向にありますので、

酸化ストレスも積み重なり、身体はその処理にも追われ、免疫システムを維持するためのエネルギーが余分に使われていってしまいます。

そういえば、「冬季うつ病」と呼ばれる病態もあり、冬はメンタルの調子を崩しやすい状態でもあります。

そのように物理的なストレスが加わりやすいことが、他の季節に比べて冬にウイルス感染症が多い理由であり、

冬に免疫力が低下することの本質は、身体面中心の多重ストレスによって身体のシステムが過剰適応に陥りやすいからなのではないかという姿が見えてきます。

逆に言えば、多重ストレスがかかるような状況だと、ウイルス感染症にかかるのは何も冬だけとは限らないという話にもなってくるように思います。

そこで現在の新型コロナウイルス感染症の状況を振り返ってみますと、

あたかもインフルエンザウイルスと置き換わったかのように、今年の冬は新型コロナウイルス感染症が増加の一途をたどっています。

しかも、夏になっていけば感染症は収束するだろうという大方の予想を裏切り、新型コロナウイルス感染症は4月になっても収束の兆しが見えてきません。

もしもその原因が冬の物理的ストレスを大きく上回るほどの精神的ストレスにあるとすればどうでしょう。

三密を避けて、通常の経済活動が制限されて、大切な人と会えなくなるという辛い環境に伴う精神的ストレスが免疫力低下という名の「発炎反応過剰」をもたらしているとすればどうでしょう。

私達が行うべきことは一生懸命ウイルスを避けることではなく、ストレスマネジメントなのではないかと私は思います。


たがしゅう
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