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免疫力の本質とは

category - ウイルス再考
2020/ 04/ 19
                 
前回の記事で、「免疫力が低下すると、ウイルスの他者的な要素が顕在化し、宿主の免疫システムでそのウイルスを攻撃することができるようになる」と述べました。

考えてみれば、これは矛盾のあるような話です。自分の仲間ではないと認識された病原体を攻撃するシステムが、免疫力が高い時は攻撃せず、免疫力が低い時にこそ攻撃してしまう、というわけですから。

いくら「自己」的な要素を持っているウイルスとは言え、それであればウイルスが人知れず増殖して、最後まで免疫システムに異変を感知されないまま、ある時ウイルスの塊が身体の中に出来上がって、それが臓器の致命的な部分の働きを邪魔して死に至るという熱の出ないがんのような経過をたどらないとおかしいような気がします。

しかし実際は違います。むしろ免疫力が低下したと呼ばれる人の身体の中では旺盛な炎症反応が惹起され、そのことが発熱や各臓器の機能障害をきたし人を死に至らしめてしまいます・

自分で起こした免疫システムによる炎症反応によって死に至るという意味では、この現象は細胞レベルで自殺をしているようなものです。それもアポトーシスのように計画された自殺ではなく、むしろ衝動的な自殺という印象です。

なぜそのような理不尽が起こるのか、今回はこのことについて個人的な見解を語ってみたいと思います。
            

これから語ることは、どこの教科書にも書かれていないような話なので、科学的根拠を求める人には物足りないかもしれません

ただ私は科学的根拠のない領域を論理で踏み込んでいくスタンスですので、説得力があるかどうかは読み終えて判断してもらえればと思います。


そもそも免疫力自体が漠然とした概念なわけですが、この能力の中心にあるのが発熱を中心とした炎症反応を起こす働きだという所は多くの方にとっての共通認識であろうと思います。

私が思うに、免疫力というのはこの炎症反応を起こすための「発炎反応」と、炎症反応を終わらせるための「終炎反応」で構成されているもので、

この「発炎反応」「終炎反応」は完全に私の造語ではありますが、この二つの反応がバランスよくとり行うことができる状態のことを、「免疫力が高い」と表現されているのではないかと思うのです。

そして「免疫力が低い」と称される冒頭のような理不尽な持続炎症を起こし続けるような状態というのは、

「発炎反応」ばかりが持続的に駆動され続けて、「終炎反応」が十分に起こらなくなってしまった状態のことを指すのではないかと思うのです。

「発炎反応」に主として関わる物質は、自律神経系の交感神経と、血液中のマクロファージやリンパ球、あるいはNK細胞などの免疫担当細胞、もしくは全細胞間でやりとりされるような情報伝達物質のサイトカインなどです。

そして「終炎反応」に主として関わる物質は、自律神経系の副交感神経と、視床下部-下垂体-副腎系によって産生されるコルチゾールを代表とするストレスホルモンと称される物質の一群です。

発炎反応が起こったのちに、終炎反応が適切に起これば、炎症というシステムが身体の恒常性を維持するために正しく機能するという状態を意味するわけでこれすなわち「免疫力が高い」ということになるわけです。

ところが、現実には「発炎反応」の方ばかりが起こり続けて、いつまでも発熱が起こり続けているという状況があります。

1つは①「終炎反応」を司る物質やシステムが枯渇してしまっている状態です。ストレスホルモンであるステロイド剤が有効なアレルギーや自己免疫疾患がこれに相当します。

もう1つは②「終炎反応」を司る物質は十分に出ているけれど、「発炎反応」を起こすきっかけが存在し続けているという状態です。

私はヘルペスウイルスの潜伏感染での症状再燃、B型肝炎ウイルスのキャリアの再活性化、そして新型コロナウイルス感染症での重症化はいずれも後者の構造を示しているように思います。

ウイルスが発炎反応のきっかけとして存在し続けているから当然ではないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。

なぜならば「免疫力が高い」状態であれば、少なくとも「自己」的な要素の強いウイルスの場合は、そこにウイルスがいるにも関わらず、発炎反応が起こっていない状態がありうるわけですから、ウイルスがいること自体は「発炎反応」のきっかけとはなっていないと思います。

では何が「発炎反応」を起こすきっかけとなっているのか。私はウイルス以外に「発炎反応」を駆動し続けている真の原因があると考えています。

それが一言で言えば「ストレス」ということになると思います。「ストレス」は自律神経系の交感神経を刺激するからです。

その「ストレス」はウイルスと直接の関係がなかったとしても、身体に「発炎反応」を引き起こします。

例えば睡眠時間が十分にとれないストレス、悪い人間関係で思い悩み続けるストレス、そして何らかの報道によって不安や恐怖をあおり続けられるストレスです。

これらは意識されるにせよ、無意識的にせよ、本人へ「発炎反応」を引き起こし、さらにはこれに続いて「終炎反応」が引き起こされることになります。

細菌や「他者」的なウイルスなど外部からの病原体が襲ってきた時は、この異物を排除するための「発炎反応」と「終炎反応」の組み合わせが1つの波のような流れでとり行われて、結果的に一時的に発熱があって局所が炎症によって破壊され、その後修復されていくという流れで反応を終え、また平常時の状態に戻ることになるわけですが、

相手が見えない「ストレス」の場合はそういうわけには参りません。もともと相手は見えない存在なので、いくら「発炎反応」を起こし続けても相手は実在しないので自分の中で「ストレス」に感じられなくなるまで、「発炎反応」はいつまででも駆動され続けることになります。

それに合わせて、火消しのために「終炎反応」も起こされ続けるわけですが、火元は見えない「ストレス」で延々と火をくべられ続けてしまうために、いくら火消し作業をしても治まり切らない山火事のような状態になってしまいます。

それならば、「終炎反応」を強化するために、ステロイド剤を外部から投与すればよいではないかと思われるかもしれませんが、

それでうまくいくのは、①のケースのみです。さんざん「終炎反応」を酷使してきてシステムが錆びついてきてしまったような状況で、医学的には副腎疲労とか副腎不全と呼ばれる状態がこれに当てはまるのではないかと思います。

しかし多くの山火事ではちゃんと「終炎反応」のシステムは機能しているのです。それにも関わらず火事が治まらないことの本質的な原因は「終炎反応が足りない」ということではありません。

そのことは新型コロナウイルス感染症に対してステロイドを投与しても必ずしもよい結果が得られないということからも理解できると思います。むしろ不自然に終炎物質を投与することでウイルスにとって有利な環境を与えてしまうことにもなりかねません。

山火事がいつまで経っても治まらない原因の本質は、見えない火元をいつまでも与え続けていること、すなわち「ストレスを感じ続けている」ことだと私は考えます。

つまりストレスを感じない心の在り方になった時にはじめて無駄な火元が消え、本来の必要に応じて「発炎反応」が起こり、それに続いて「終炎反応」が起こって恒常性を保つという流れに戻すことができるのです。

実は肺炎で亡くなる人のほとんどは、亡くなる直前まで発熱を起こし続けていますが、最後の最後の段階になるともはや発熱も出せなくなる状態になるということを経験します。

このことは逆に言えば、多くの肺炎患者では死ぬ直前まで良好な「発炎反応」システムを維持しているということになります。まさに衝動的な自殺に及んでいる所以です。

一方でこの状況において「終炎反応」のシステムが、副腎疲労のように本来の力より衰えているかどうかは見抜くことができません。

ステロイドを投与して改善すれば、終炎反応が弱っていたということになるでしょうし、ステロイドを投与して悪化すれば、終炎反応は必要十分に起こっていたけれど炎症を抑え込むことができていなかったということになるでしょう。それはステロイドを投与してみなければわからない一か八かの治療法になってしまいますし、本質的な根治療法には至りません。

なので「終炎反応」システムが不十分であろうと十分であろうと、有効に対処するための方法は火元を止めること、すなわちウイルスという見せかけの火元ではなく、真の火元であるストレスをマネジメントすることだと私は考えます。

それを具体的に行うためにはさらに丁寧な説明が必要となりますので、またの機会に話したいと思いますが、

ここで言えるのはその火元を止めるための行動は本人にしか起こせないということ、少なくとも不安・恐怖を感じ続けている状況下では火元は絶対に消えないということです。

末期がんを克服した刀根健さんが「サレンダー(降伏、明け渡し)」の境地に至って、劇的な回復に至った話とリンクする話ですので、

これは非常に重要な観点だと私は考えています。

新型コロナウイルス感染症においても「主体的医療」が必要です。


たがしゅう

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コメント

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No title
田頭先生
こんばんは。森崎茂さんに紹介していただき、ブログを拝読しています。先日のブログにあった、強いストレスを受けると免疫反応(炎症)が起こるというのは、ぼく自身の肝炎体験からもその通りだと思いました。それにしてもストレスによって免疫力が低下すると、ウイルスに対する攻撃性が高まるというのは、なんとなく奇妙だなと思っていましたが、今日の「発炎反応」と「消炎反応」という説明で、よく理解できました。ストレスは交感神経を緊張させて「発炎反応」を持続的に駆動させる、それが「免疫力が低下している」と表現される一つに様相であるわけですね。なるほど。少しわかったような気がします。ありがとうございます。またいつか鹿児島にお邪魔したいと思っています。これからもブログを楽しみに読ませていただきます。どうぞお元気で。
Re: No title
片山恭一 先生

 コメント頂き有難うございます。
 またご無沙汰しております。鹿児島の時はお世話になりました。今は福岡に移って頑張っております。

> ストレスによって免疫力が低下すると、ウイルスに対する攻撃性が高まるというのは、なんとなく奇妙だなと思っていましたが、今日の「発炎反応」と「消炎反応」という説明で、よく理解できました。

 ご理解の助けになったようで何よりです。
 まとめますと、持続的なストレスによって「発炎反応」がとめどなく駆動され続け、「終炎反応」では次第に抑えきれなくなり、そこにたまたまいたウイルスが増殖しやすい環境になり、その結果さらに「発炎反応」が助長されやすくなるというわけです。
 
 従って、免疫力低下の本質は、「発炎反応」と「終炎反応」のバランスが「発炎反応」に傾き過ぎることだと私は考えています。