敵だと思えば思うほど苦しむ構造
2020/04/13 16:00:00 |
ウイルス再考 |
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以前のブログ記事で、「細菌とウイルスは”他者的な病原体”という意味で共通性があり、ウイルスとがん細胞は”自己的な病原体”という意味で共通性がある」という意見を述べました。
今回は後者の「異常な自己」という意味でのウイルスとがんの共通性に注目したいと思いますが、
まず現代医療において、がん医療の問題も相当に問題のある医療だと私は考えています。
「一昔前までがんは不治の病だったけれど、最近は医療が進歩して早期発見・早期治療すれば治る病気となってきた」といいう考えの下、
一生懸命健診を行ってがんを早期発見し、手術可能であれば直ちに切除し、
熱心に健診を受けていたにも関わらず不幸にも進行がんの段階で発見されてしまった人には抗がん剤や放射線治療を行うというシステムがあると思いますが、
それというのも本質的にはがんを「撲滅すべき敵」だと捉えている所に問題の根源はあると私は考えています。 敵だからやっつけなきゃと思うわけですし、敵だと思うから監視して見つけ出そうとするわけですし、敵だと見なすからそれだけを攻撃できる薬を開発しようとしてしまうわけです。
ところが、がん細胞は「異常な自己」です。見た目は自分の細胞とは似ても似つかない姿をしているかもしれませんが、
自分の細胞が変化してそのような姿になっているということだけは間違いのない事実です。
それが証拠にがん細胞には自分の細胞との共通構造がたくさんあります。だからこそ抗がん剤としてがんだけを叩こうとしても正常の細胞までをも障害し、副作用を生じるという事態を生じてしまうわけです。
それは分子標的治療薬と呼ばれる精度を高めた薬でも本質的には同じことです。抗がん剤の副作用はゼロになっていません。
本当は自分自身であるにも関わらず、敵だと認識して攻撃したり回避したり監視したりすることによって、
自分自身に対して得も言われぬストレスを与え続ける文字通り自殺行為となってしまい、そのことが現在のがん医療の到底満足できると言いがたい成績へとつながっているように私には思えるのです。
現在のがん医療がうまく行っていないからこそ、様々な代替医療が発展しているとも言えます。
漢方治療、鍼灸治療、中医学、サプリメント、アロマテラピー、ホメオパシー、アーユルヴェーダ、気功、瞑想、リフレクソロジー、ヨガ、カイロプラクティック・・・などなどたくさんの種類が世の中にはありますが、
これらの代替医療も「がんを敵とみなす」という意味では結局のところ共通しているように思うのです。
この「がんを敵とみなす」発想では、どこまで行っても自分自身への攻撃、あるいはがんの原因となった真の要因の放置となってしまい結局のところがんを根治するという状態に多くの場合持って行くことができません。
ところが、当ブログでも末期がんサバイバーの方々の書籍を何冊か紹介していますように、
撲滅不可能であるはずのがんを撲滅しえたその背景にあったものは、皮肉なことにがんを撲滅しようとしていたその心にあったと、
すなわちがんを「敵」ではなく「味方」、もっと言えば「味方」というよりも「自分自身」だと捉える所にがんを治す本当の秘訣があるのだと私には思えるのです。
言い換えれば、がん医療がうまくいかない最大の原因は「自分自身であるはずのがんを敵だとみなしてしまっている」ことにあるということです。
皮肉なことに、がんと一生懸命戦えば戦うほど悲惨な結末を迎えることになるという構図が今の日本で何度も繰り返されてしまっているように思えます。
ひるがえって、今回の新型コロナウイルス感染症にまつわる一連の騒動を眺めてみます。
ウイルスはがん細胞のように「異常な自己細胞」だとは流石に考えることはできないように思えます。
しかし前提として私は「ウイルスは動植物細胞の複製エラー」という考えに立っているのですが、
そのウイルスがそもそも感染することができるということは、自己細胞との共通性を部分的に持っているということになると思います。
もしも細菌のように完全に他者的な病原体であるのなら、自己細胞の中に取り込まれることはありませんし、感染するとしても細菌のように局所のフォーカスを形成するような感染をしなければ話が合いません。
ウイルスの感染の仕方はそうではなくて、一旦自分の中に免疫で排除されることなくすっと入り込み、その後身体の中でNK細胞やT細胞などの免疫システムによって異常として感知され、
免疫システムが駆動されてウイルス感染細胞が排出されたり、免疫力が低ければ排出されきらずに持続感染、潜伏感染と呼ばれる状態へシフトしてしまうわけですが、
いずれにしても「自己細胞が異常化した状態」という意味ではウイルスも構造的にはがんと同じような病態形成となっている側面があるように思うのです。
そういえばウイルスが持続感染することでがん化するというタイプのウイルスもありますね。
子宮頸癌を起こすヒトパピローマウイルスや肝臓がんの原因となるB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、白血病の原因となるヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)などがその例となります。
ということは、ウイルスもがんと同じように「ウイルスを敵とみなす」発想そのものが悲劇の温床となっているのではないでしょうか。
戦おうとすればするほど、自分を苦しめる行為につながると、その結果、自分の免疫反応がオーバーヒートし、正しく機能できずに自殺行為へとつながってしまうという構図です。
病院でやっている検査とか治療は、常にウイルスが敵だという前提の下に繰り広げられています。
現代医療の価値観に任せれば任せるほど、決して勝利することのない終わりなき恐怖の戦争へと導かれてしまいます。なぜならば戦争の相手は自分自身であるからです。
ウイルスにしても、がんにしても、今自分が一生懸命戦っている相手が自分自身だと心底納得することができた時にはじめて、
私達が行うべき行動の方向性が大きく転換されてくるのではないかと私は思います。
いわばがん医療問題の急性期バージョンとして、今の新型コロナウイルス感染症の問題が立ちはだかっています。
がんも恐怖をこらえながら戦った人ほど悲惨な結末を迎えています。そうではなくてがんを自分自身だと心底納得できたわずかな人だけががんから生還することができています。
そのような構造の問題が急に発生しているのが今の新型コロナウイルス感染症問題なのだとすれば、
病気と戦おうとする人ほど自分自身を苦しめて死に至るという流れが、がん医療の中でのようにゆっくりと散発的に死亡者が現れるのではなく、これからも急性的に一気に出現していく悲劇が起こり続けることが予想されてしまいます。
そしてその悲劇が大きくなればなるほどに「恐怖の撲滅すべきウイルスという敵」という価値観が巨大化していってしまいます。
がんと同じように「ウイルスを味方だと思う」、あるいは「ウイルスを自分自身だと思う」という戦略が、この病気の克服に最も有効なのだとすれば、
その変化を起こせるのは自分自身しかいません。
病気の原因を外に求め、自分自身を変えることから怠らせ続ける受動的医療の構造に依存してきたことのツケが、
今強制的かつ急激に私達に回ってきている状況にあるのではないでしょうか。
時代はまさに今、主体的医療への転換が求められる節目に来ていると私は思います。
知らず知らずのうちに悲劇に巻き込まれないように、医療に対する認識を変えるべきだと、
自分自身を変えるべきだと私は考える次第です。
常識を覆す勇気を。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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