血糖値に対する認識の差
2014/02/05 00:01:00 |
ふと思った事 |
コメント:16件
先日とある救急の勉強会がありました。
朝から夕方までみっちりとスケジュールがあり休憩時間も少ない状況でしたが、
昼過ぎになってスケジュールが後半に差しかかろうという時にスタッフの方が「これで少しでも血糖を補充して下さい」とお菓子を持ってきて下さいました。
そうすると他の参加者の皆さんは次々とそのお菓子を口にされ出しました。
それに対して私は特にお腹がすいていないのでお菓子は食べませんでした。
ただ、仮にお腹がすいていたとしても手は出さないと思います。糖質制限をしていればそれを我慢できるくらいの食欲をコントロールすることができます。
ここで血糖値に対する認識が私と他の参加者の皆さんで大きく違うことがわかります。
血糖値とは「血液中のブドウ糖(グルコース)の値」のことですが、
ヒトにの身体の中では赤血球にとってグルコースは唯一のエネルギー源ですので、グルコースは生きて行くために必要な物質ということになります。
この認識は私と他の参加者のみなさんでおそらく共通しています。
世の中には「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源」という考え方がはびこっていますので、
私以外の参加者の方は昼になって疲れてくると、おそらくこう考えるのだと思います。
「昼になって疲れた」
⇒「脳にエネルギーが足りない」
⇒「血糖を補充するためにお菓子をつまもう」
しかし、私は「脳はブドウ糖だけでなくケトン体をいくらでも利用できる」という事を知っています。
一方、このグルコースをヒトは脂肪と蛋白質を利用して「糖新生」というシステムを通じて作り出すことができます。
糖質を制限して、脂質と蛋白質を普段からしっかりと食べている私は血糖が不足することはありませんし、脂肪を分解してケトン体を常に利用しているので、周りの人達ほどは疲れていません。
だから昼にお菓子を食べてわざわざ血糖値を上げる理由はどこにもありません。
それどころか、お菓子を食べると血糖値が上がります。これは身体の恒常性を乱し、酸化ストレスを受けることになります。
これではなおの事、お菓子を食べる理由がありません。
まとめると血糖値に対して他の参加者が「脳の大事なエネルギーで疲れを感じたら補充すべきもの」と認識しているのに対し、
私は「最低限必要なエネルギーだが、自分で作り出すことができ、なおかつ極力変動させない方が望ましいもの」と認識しています。
簡単に言えば「血糖値が上がることが大事だと考えているか、好ましくないと考えているか」の差です。これは決定的な違いだと思います。
そう言えば、精神的ストレスを受けた際にも血糖値は上がりますし、
感染症や手術などの身体的ストレスを受けた場合にも血糖値を上がります。
こう考えれば「血糖値が上がることは好ましくないこと」と考える方が合理的ではないでしょうか。
もっと言えば、緊急事態に対する身体の防御反応ともとれます。
この事について考えるために,「ストレスで血糖値が上がる」という現象について深くみてみます.
ストレスで血糖値が上がる際にはコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのストレスホルモンが働いているのですが、
このホルモンを薬として用いる「ステロイド療法」という治療があります。
ステロイドには炎症を抑える作用があるので、炎症が主病態の病気へ広く用いられていますが、
その一方で長く使っていると様々な副作用があります。その最たるものが免疫力の低下です.
その他にもステロイドの副作用は糖尿病、骨粗鬆症、肥満、高血圧、緑内障、白内障、精神障害、筋障害、にきび、多毛、発疹、月経異常、浮腫、皮下出血など非常に多岐にわたります。
ステロイドというストレスホルモンが連続的に出されて血糖値を上げられることがいかによくないことかということよくわかると思います。
そしてステロイドの副作用は、よく見れば現在増え続けている生活習慣病と大部分共通しています。
ステロイドで血糖値が上げられることと、糖質を摂って血糖値が上げられることは、本質的に共通する部分があるように私には思えます。
糖質にしても,ストレスにしても,ステロイドにしても,
血糖値が上がる事態は必要最小限にしたいものですね。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
共感です
成人になって(中年が正しいかしら 笑)ある時から季節に関係なく年中手のひら側の第一関節や指先に切れ目が入り出血するようになり皮膚科でステロイド軟膏をもらっていましたが若い時に比べ治りが悪く且つ治っても治療を止めるとすぐ亀裂が入り出血していました。
痛いので日常生活に支障を来すし女性だし見た目が汚いのは非常に辛くまたそんな状態でも日々の家事はしなくちゃいけないから薬を何度も塗りなおさないといけないしで嫌になりました。ステロイド剤を使っても完治しないことに疑問と憤りを感じる毎日でした。悪循環でストレスは貯まるばっかり。因みに絆創膏代も結構かかってました。
でも、血糖値が高いとわかって糖質制限を始めて数ヵ月後コントロールがよくなっていくのと同時にすっと指先の亀裂もなくなりました。てが完治したから
ネイルのおしゃれも出来るようになって生活が楽しくなりました。
思えば血糖値が高い状態が一番の原因だったんじゃないかと思っています。
なので、私はもう血糖値をガーンとあげる生活はしません。
糖質制限で血糖値をあげにくい生活をする事が心身共に健康に近づく最適な治療法でした。
雪
東京は雪です(^^)
がぁ!!一時は積もりましたが、白銀の世界にはなりませんでした〔〔泣く)
寒いです。(^^)
寒い、というストレスも血糖値あがるんかな?
Re: 共感です
コメント頂き有難うございます.
「血糖値と皮膚の状態」,一見関係ないように思えるかもしれませんが,糖質制限をすることによって両者がつながっていることを知ることができるんですよね.
皮膚の状態改善,本当によかったですね.
Re: 雪
御質問頂き有難うございます.
> 寒い、というストレスも血糖値あがるんかな?
寒冷刺激で甲状腺ホルモン,アドレナリンなどの血糖上昇ホルモンが分泌されるので,血糖値が上昇するという側面はあるようです.しかし,同時に基礎代謝亢進させる作用もあるので人によっては血糖値を下げることもあります,そのバランスだと思います.
ちなみに
たしかに、皮膚の弱い私、いまでは、カユカユの傷もすっかり、なくなり、その後のカユカユも今のとこないです!(^^)
そうですよね
血糖値をあげることは極力したくないです。
今日は雪が残っていて寒いのですが、部屋にいて、ストーブをつけるのを忘れていました。
寒いとは感じますが、去年までの寒くて感覚がないとか痛いというのではなくなっています。
すっかり冷え性は治ったようです。
Re: ちなみに
コメント頂き有難うございます。
いろいろな状況で血糖値を測って、なぜそうなるのかを考えるのもよいと思います。
皮膚の改善もよかったですね。
Re: そうですよね
コメント頂き有難うございます。
私も冬、だいぶ過ごしやすくなりました。
糖質制限で基礎代謝が高まっているのでしょう。それを乱すような血糖の乱高下はできるだけ避けたいですね。
なんだか寂しいです
ちょっとした団欒も楽しめないなんて寂しい限りです。
その出されたお菓子がおいしかったらなおさらです。
私は糖質制限をそれなりに勉強に理解もしているつもりですが、特に糖尿病・肥満などの症状はないため糖質制限にそこまで傾倒はしていません。
私がその場にいたら絶対お菓子をつまんでいると思います。
こう言うとあなたはやっぱり糖質制限を理解していない!とか言われそうですが…
Re: なんだか寂しいです
率直な御意見を頂き有難うございます。
きくりんさんが寂しく感じたのは、私と価値観が異なっているからかもしれません。
きくりんさんはその場の空気を大事にする、私は長く健康でいられる事を大事にする、その価値観の違いだと私は思います。またどちらが正しいというものでもないと思います。
Re: なんだか寂しいです
> きくりんさんはその場の空気を大事にする
単に食いしん坊なだけです(^^;;;
でも食べ過ぎはダメですね。
きくりんさんの言われることも理解できます
私もやや糖質制限を緩めている一人としてきくりんさんのコメントも理解できます。
たとえば、私の場合、家族との調整があります。配偶者は糖質の含んだ食べ物が好きですし、高血圧なので、できれば健康のために糖質制限すればいいと私個人は考えてますけど、私ほど健康に関心がないのでそんなに食べ物にストイックではないです。
ただ一緒に生活していると、いくつかの場面では一緒にお酒を飲む機会もあるし、ときには外食で糖質の塊そのままのような食べ物を食べる必要も家族として一つの食事を楽しむような場面は必要になってきます。
それまで制限してしまうと、まさに配偶者のひとりが深刻な糖尿病で他の配偶者まで毎日の食事が砂を噛む様な味気ないカロリー制限食になってしまうような感じになってしまいます。
すくなくても両者がそのような深刻な状況でない場合は、頻度は多くなくても緩やかに糖質制限を緩和した食事もとることも普段の生活では必要ではないのでしょうか?
そういう意味では、きくりんさんとたがしゅう先生の考え方の違いは価値観の相違というよりも、むしろ自分が置かれた環境、独身か妻帯者とか、肥満であるか、もとより普通の体つきだったのかとか、深刻な病気を発症しているとか、現在病気はないとか、いろいろなファクターによって糖制限食に関する考え方があってもいいような気がします。もちろん、私の場合は糖制限食は自分の体験からも是としたうえでの発言です。
糖質の害を知らないからすすめてしまうのでは?
同様に糖質の害も周知のことだったら、甘いものをすすめられることもないのかなあと、ついつい考えてしまいます。
お菓子をすすめられると正直困ります。特に小さな子どもに「あげる」と言ってお菓子を差し出されたら断れませんし、その場で食べてしまいます。
その程度なら血糖値に大きな影響はないのかもしれませんが、糖尿の私には、「ああ、このひと口の積み重ねが私の寿命を~~」という恐怖感はあります。
そもそも私の場合、糖質の害を知らなかったのが糖尿になった一因でもあります。
もちろん、最終的にどの程度の糖質を摂取するかは、個人が自由に決めてしかるべきです。でもそれも、「血糖値上昇には害がある、そして糖質は血糖値を上げる」という事実を知ったうえで決めることができる。
そんな世の中になればいいのになあ。。。。。
スタチンさん
ポイントは、今深刻な状況ではないとしても、糖質を過剰摂取していれば、体がじょじょに蝕まれることではないでしょうか?
今、肺に問題がないからと、タバコをすい続けるようなものではないでしょうか。
糖質の害について、理解したのであれば、私はそのことを、他の人にも伝えたいと思います。お互いの健康のために・・・
Re: きくりんさんの言われることも理解できます
御意見頂き有難うございます.
> きくりんさんとたがしゅう先生の考え方の違いは価値観の相違というよりも、むしろ自分が置かれた環境、独身か妻帯者とか、肥満であるか、もとより普通の体つきだったのかとか、深刻な病気を発症しているとか、現在病気はないとか、いろいろなファクターによって糖制限食に関する考え方があってもいいような気がします。
そうですね.価値観以外にもいろいろなファクターがありますね.
御指摘のようにいろいろな考え方があってよいし,どれが正解ということはないです.一長一短あります.
また何かを重視したら他の何かを犠牲にしなければいけないという事は一般的によくみられる事だと思います.今回の場合は,私は健康を守る(というよりも健康を害するものを食べない)ことを重視するがあまり,その場にあまりなじめなかったかもしれませんが,私の価値観で考えると別にそれでもいいんです.
Re: 糖質の害を知らないからすすめてしまうのでは?
御意見頂き有難うございます.
> 最終的にどの程度の糖質を摂取するかは、個人が自由に決めてしかるべきです。でもそれも、「血糖値上昇には害がある、そして糖質は血糖値を上げる」という事実を知ったうえで決めることができる。
> そんな世の中になればいいのになあ。。。。。
同感です.偶然にも私も同じようなことを考えていました.
明日の本ブログ記事でもう少し考えてみたいと思います.
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