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抗ウイルス薬がなかなか作れない理由

category - ウイルス再考
2020/ 03/ 02
                 
当ブログでは、ウイルスは「動物細胞の複製エラーの産物」だという私の見解をお伝えしています。

ということは、ウイルスという存在は動物細胞と共通構造を持っているのだから、

ウイルスを攻撃するための抗ウイルス薬というものは、多かれ少なかれ動物の細胞にも害を与えてしまうのではないか、

すなわち全細胞攻撃となる抗がん剤と同様の構造が抗ウイルス薬にはあるのではないかという考えが浮かびます。

しかし現実世界の抗ウイルス薬を用いた際の印象は、副作用はそれなりにはあるものの、抗がん剤ほど激烈な副作用が現れているようには思えず、

多くの場合は、無事にウイルス感染症を収束させることに成功しているように思えます。

言い換えれば抗ウイルス薬は人体への害を最小限にし、きちんとウイルスだけにしか存在しない構造を攻撃できているような印象があります。言うなれば細菌だけにしかない構造を攻撃するという抗生物質に近い印象です。
            

しかし「ウイルスは恐怖ではない」という記事で書きましたように、

例えば抗ウイルス薬の一つである抗インフルエンザ薬の「オセルタミビル(商品名:タミフル®)」はノイラミニダーゼという酵素を阻害する作用機序を持っています。

ノイラミニダーゼはノイラミン酸という物質のグリコシド結合を切断する働きを持っており、このノイラミン酸は細菌や動物にも存在する物質です。

つまり抗ウイルス薬はやはり動物細胞との共通構造を攻撃しており、全細胞攻撃となりうるメカニズムを持っているのです。

では他の抗ウイルス薬はどうだろうということで、数少ない他の抗ウイルス薬の作用機序も確認してみますと、

まず抗ヘルペスウイルス薬のアシクロビルですが、抗インフルエンザ薬とは違うタイプの効き方となっています。

チミジンキナーゼという物質が鍵のようで、まずウイルスの中にあるチミジンキナーゼという酵素が「アシクロビルという薬をリン酸化させる」という現象が起こります。

一方でアシクロビルはDNAの主要構成成分でDNAの並びである塩基配列を作るグアノシンという物質と似た構造を持っており、

宿主の酵素でさらにリン酸化されたアシクロビルはグアノシンと勘違いされて取り込まれ、

グアノシンに作用すればDNAの長さを伸ばしてウイルス細胞の増殖につなげることができるウイルス内のDNAポリメラーゼという酵素が、

誤ってリン酸化したアシクロビルに反応することでそれ以上DNAが伸びなくなり、

結果的にヘルペスウイルスがそれ以上増殖できなくなるという仕組みで抗ヘルペスウイルス効果を発揮すると言われています。

さてここで、「ウイルスの中にあるチミジンキナーゼ」とか「ウイルス内のDNAポリメラーゼ」という言葉を用いましたが、

チミジンキナーゼとか、DNAポリメラーゼという酵素は動物の中には存在しないのかと言えば、動物内にも存在しています。

ところが動物細胞(宿主細胞)のチミジンキナーゼでは抗ヘルペスウイルス効果を出すための最初のステップ「アシクロビルをリン酸化させる」という現象は起こらない、ということが確認されています。

要は動物細胞とウイルスとで同じ名前の酵素で共通構造がありながらも、実際には違う働きを示すという事実がある、

すなわち「ウイルスにしか存在しない物質がある」ということになります。

そうであれば、そこにアプローチしている抗ウイルス薬は、全細胞攻撃の抗がん剤というよりは、やはり細菌だけの構造にアプローチする抗生物質に近い存在、ということになります。

また他に、サイトメガロウイルスというウイルスに効果を示すガンシクロビルという抗ウイルス薬もアシクロビルと同様のメカニズムですが、

ガンシクロビルの場合はDNAポリメラーゼという酵素に対する親和性が、宿主よりウイルスの方で強い親和性を示すということに加え、ウイルスのDNAにチミジンキナーゼでリン酸化されたガンシクロビルが直接組み込まれてウイルスの増殖を阻害するというメカニズムもあるのだそうです。


次に子宮頸癌を起こすことで知られるパピローマウイルスです。

こちらは治療薬というより予防薬に相当するワクチンが開発されています。

こちらは子宮頸癌に関与しているとされるヒトパピローマウイルス16型、18型などの主要なウイルス構成成分であるカプシドの中のL1と呼ばれる蛋白質で構成される物質を「ウイルス様粒子(ウイルスの成分でできているけれどウイルスの機能を持たない粒子)」として製剤化し、

これを投与することで人為的にヒトパピローマウイルスに対する抗体産生、正確にはL1蛋白質に対する抗体産生を促すという仕組みでワクチンの効果を発揮するといわれている薬です。

ちなみにL1という蛋白質は、「後期遺伝子」といって、ウイルスがDNAを複製する際の最初の細胞増殖に関わる遺伝スのことを「初期遺伝子」と呼ぶのに対し、

ウイルスが感染が成立した後にウイルス粒子となっていく際の外殻の形成に関わる遺伝子に相当すると言われています。

ではこのL1という蛋白質が動物細胞にも共通して存在するのかという疑問がわきますが、

私の調べる限りでは、その証拠を見つけることはできませんでした。おそらくはウイルスにしかない構造と考えられますが、

一方で子宮頸癌ワクチンは原因不明の副反応を起こすことでもよく知られているワクチンです。

その因果関係は実証されず、ワクチン忌避感からの心因反応だとか、ワクチンの効果を含めるために加えられているアジュバント(抗原性補強剤)が重金属である事からそれにより慢性炎症が惹起されているですとか、仮説は立てられるものの実証はされていない状況です。

少なくともウイルスだけの構造と思って攻撃していたつもりだけれど、類似の宿主細胞構造を同時に攻撃している可能性があるという事は頭の隅においていてもよいかもしれません。

そうした未解決の問題をはらみつつも、その他無数に存在する様々なウイルスの中で、これらのウイルスは治療薬やワクチンの開発・実用化にこぎつけることができたという点で他のウイルス対策に比べると一歩抜きん出ているわけですが、

はたしてこれら抗ウイルス薬が開発できたウイルスと、その他大勢の薬が開発できないウイルス達とで一体何が違うというのでしょうか。他のウイルス達に対してもウイルスにしかない構造を見つけ出してその特異的にその構造・もしくはその構造によってもたらされる仕組みをブロックする薬を作ることはできないものでしょうか。

他のウイルス達がそれほど重症な病気に関わるわけではないからだとか、流行病では薬を作ろうにも時間がかかりすぎて開発できた頃には流行が治まっているから製薬会社的にうまみがないから作らないだとか、そういう噂も見聞きしますが、私はそれは違うと思います。

なぜならば、例えばエボラ出血熱とかクリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病など危険度の高い1類感染症だと指定されている感染症は軒並みウイルス性感染症です。いずれも発見から50年以上は優に経過しているものばかりです。

またノロウイルス(ノーウォークウイルス)は皆さんもご存知冬に主として嘔吐・下痢を流行性感染症をきたします。これに対する治療薬を開発すれば製薬会社的には相当にうまみがあるはずです。なのに現実にはこれらの薬はいまだに開発されていません。

要するに製薬会社的に対象疾患が軽症だからとか、うまみがないからといった理由で開発しないのではなく、本当に開発できないのだと私は思います。はたして抗ウイルス薬を開発できるウイルスと、そうでないウイルスとの差にはどんな差があるというのでしょうか。

そう思って、抗ウイルス薬が開発できたウイルスの共通点を探ってみると、

ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、パピローマウイルスは全てDNAウイルスです。

また人類がワクチンで撲滅に成功したとされる天然痘ウイルスもDNAウイルスです。

また針刺し事故で感染するため医療従事者に接種が推奨されるワクチンが実用化されているB型肝炎ウイルスもDNAウイルスです。

要するに人類が何とか対処できているウイルスはほとんどDNAウイルスで、対処できていないウイルスはほとんどがRNAウイルスだということです。

そしてDNAウイルスについてのWikipediaには次のような記載があります。

「DNAウイルスには増殖の過程で生じたDNA複製のミスを修正する機構が備わっているので、RNAウイルスと比較すると遺伝子の変異が少ない。」

ここで冒頭の「ウイルスとは動物細胞の複製エラー」という考え方に立ち返ってみます。

まず動物細胞が細胞分裂をする際に何らかのエラーが起こると、一定の確率で不完全な細胞ができあがります。

この時にDNAがしっかりと残っていれば、ウイルス化せずに元の動物細胞と同じものを作っていくことができますが、

まれにDNAの塩基配列が変化し、もとの動物細胞と似て非なるDNAとなってしまった細胞が出来てしまうことがあり、

この細胞はDNAは存在しているものの、最初の設計図とは異なる言わば偽物の設計図のようなDNAの塩基配列となっているため、

「DNA」⇒「mRNA」⇒「蛋白質」という流れで一応、蛋白質は作れるものの細胞としての秩序を持たない塊のような構造物になると、

しかしDNAとしての構造は保たれているから、その塊構造を量産することはできると、これが「DNAウイルス」と呼ばれるものの正体なのではないかと私は考えます。

そしてこの仮説が正しいのであれば、ウイルス特異的な構造が存在していても決しておかしくはないわけです。

対してRNAウイルスというものは、RNAがDNAほど安定性が高くないという特徴があるので、

なんとなくは共通構造を持っているようだけれど、不安定なので常に塩基配列が変わりうるリスクと隣り合わせ、いわゆる変異が起こりやすい状態にあるのではないかと、

だからDNAウイルスのようにウイルス特異的な構造に攻撃しようと企てても、微妙に構造が変化し続けるものだから、ある構造に対する薬を作った所で、それを使おうと思った頃には別の構造に変わっていると、

しかもそれらの構造はもともとは動物細胞のそれを模した構造であったりするものだから、開発してもRNAウイルスに効かないばかりか副作用ばっかりが出てしまう全細胞攻撃の抗がん剤のような構造になってしまうと、

だからRNAウイルスに対する抗ウイルス薬はなかなか開発することができないのではないかと思うのです。

ところが、皆様おなじみインフルエンザウイルスはRNAウイルスの一種です。

あとウイルスに感染することで免疫不全状態となる病気「AIDS(エイズ:acquired immunodeficiency syndrome;後天性免疫不全症候群)」という病気の原因として知られる「HIV(エイチアイブイ:Human Immunodeficiency Virus;ヒト免疫不全ウイルス)」もRNAウイルスです。

抗ウイルス薬は必ずしもDNAウイルスに対してしか作れないというわけではなさそうです。

この矛盾についても考えてみたいと思いますが、長くなるので次回の記事に回したいと思います。


たがしゅう

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