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なぜ基礎疾患があると感染症は重症化するのか

category - ウイルス再考
2020/ 02/ 27
                 
ウイルス感染症が重症化するケースには「基礎疾患を有している」人が多いという傾向があります。

基礎疾患とは何なのでしょうか。また基礎疾患があるとどうして感染症が重症化するのでしょうか。

今回はその理由について私なりに解説を加えてみたいと思います。

そもそも基礎疾患というのは、「基礎」というくらいですから、その人のベースの部分にずっとあり続ける病気のことを「基礎疾患」と呼びます。

病気は急に起こって一過性で治まる「急性疾患」と、ダラダラと長期間ずっと起こり続けてなかなか治まらない「慢性疾患」とに大きく分かれますが、

この分類で考えると、「基礎疾患」というのは自ずと「慢性疾患」のことを意味する、ということになります。
            

2009年新型インフルエンザ騒動の時にワクチン接種の優先順位を定めた厚生労働省の資料によりますと、

具体的に基礎疾患というのは次の9つに分類されるということになっています。

1.慢性呼吸器疾患
2.慢性心疾患 (高血圧を除く)
3.慢性腎疾患
4.慢性肝疾患 (慢性肝炎を除く)
5.神経疾患・神経筋疾患
6.血液疾患 (鉄欠乏性貧血と、免疫抑制療法を受けていない特発性血小板減少性紫斑病・溶血性貧血を除く)
7.糖尿病
8.疾患や治療に伴う免疫抑制状態
 8-1 悪性腫瘍
 8-2 関節リウマチ・膠原病
 8-3 内分泌疾患(肥満含む)
 8-4 消化器疾患
 8-5 HIV感染症・その他の疾患や治療に伴う免疫抑制状態
9.小児科領域の慢性疾患


なお「高血圧を除く」とか「慢性肝炎を除く」となっていますが、

これはインフルエンザワクチンの数に限りがあるためにワクチン接種の対象としての「基礎疾患」からは除く、という意味であって、

「高血圧」も「慢性肝炎」も立派な「基礎疾患」に該当するのでご注意頂ければと思います。


さて、「基礎疾患」が何かわかった所で、なぜ「基礎疾患」があるとウイルス感染症が重症化するのでしょうか。

ここから先は医学の教科書ではあまり書かれていないような話をします。その点にご留意頂き、納得されるかどうかは読者の皆様の判断にお任せします。

そもそも「基礎疾患」と呼ばれる病気が、その人のベースとなりうる背景には、

もともと持っている身体のシステムが何らかの原因によって過剰に駆動され続けているという現象が背景にあると私は考えています。

例えば血圧を上げるというシステムは本来身体に必要なシステムとして人間に備わっているわけですが、

このシステムが何らかの原因によって過剰に駆動され続けている状態を人は「高血圧」と呼ぶわけです。

あるいは他にも人間の身体には様々なシステムがあります。

血糖を上げるシステムが過剰に駆動されれば「糖尿病」、

炎症を起こすシステムが過剰に駆動されれば「●●炎」、それが血管に起これば「血管炎」あるいは「動脈硬化」、

それが心臓に起これば「慢性心疾患」、肝臓に起これば「慢性肝炎」も含めて「慢性肝疾患」、腎臓に起これば「慢性腎疾患」、といった具合です。

「悪性腫瘍」に関して言えば、血糖を上げるシステムの過剰駆動を、後天的な遺伝子変化による細胞変形という力業で過剰駆動された血糖処理システムの一表現型として現れています。

ともあれ、もともとの何らかの身体システムが過剰駆動され続けている状態が「基礎疾患」のある状態だと言えるわけです。

その無数にある身体のシステムの中に「免疫」というシステムも存在します。

「免疫」とは外敵を認識し、「炎症」という防御機構によって外敵を排除するために働くシステムのことです。

このシステムを駆動させるためにはエネルギーが必要です。しかし人間の中にあるエネルギーは無尽蔵ではありません。

もしも有限のエネルギーが10あるとして、通常であれば「免疫」に5のエネルギーが必要で、「炎症」には2、「血圧を上げる」のに1、「血糖を上げる」のに1、「その他」に対して1のエネルギーが投入されて身体のシステムが潤滑に動いていると仮定した場合、

「高血圧」のような「基礎疾患」がある状態となった場合、「血圧を上げる」のに費やすエネルギーが1から2に増えてしまったら、「免疫」に費やせるエネルギーが5から4へ減ってしまうということになります。

つまり「基礎疾患」によって何らかの身体システムが過剰使用されることによって、その分だけ「免疫」の力が衰えるということが起こりうるというわけです。

さらに言えば「基礎疾患」の程度によっては、もともとの10あるはずのエネルギーの総量が7とか、5とかに減っている状況もありえます。

なぜならば慢性疾患は根本原因が解決されずにいると、時間経過とともに可逆的な「過剰適応」状態から不可逆的な「消耗疲弊」状態へと進展していくからです。

例えば、「高血圧」という「血圧を上げる」システムの可逆的「過剰適応」状態の根本原因が放置されていると、「脳卒中(脳梗塞・脳出血)」や「心筋梗塞」などといった不可逆的「消耗疲弊」状態へ進展します。

そうすると可逆的な段階であれば10のエネルギーをどう分配するかという話であった状況が、

不可逆的な病態が加わってしまうと、もともと10あったエネルギーが7に減ったところでどう分配するかを考えていかなければならなくなります。

不可逆的な病態が多く積み重なった高齢者においてウイルス感染症が重症化しやすいという理由もこれで説明がつきます。

そして慢性疾患の病態を進行させてしまう何らかの原因というのが、私はほとんどの場合「食事」「ストレス(心の在り方)」にあると考えています。

そう考えると、ウイルス感染症を重症化させないためにはどうすればよいかという方針も立ってきます。

「食事」と「心の在り方」を気をつけて、「基礎疾患(慢性疾患)」の病状を進行させないということは勿論大事なわけですが、

ウイルス感染症という「急性疾患」はいわば緊急事態ですので、悠長に自分の身体のシステムを整えている時間はありません。

そこで大事になってくるのが、「全エネルギーを「免疫(・炎症)」に向けられるように余計なシステムを駆動させない」という発想です。

私はよく患者さんに、「風邪(ウイルス感染症)を治すには、無理に食べず水分だけこまめに取りながら温かくしてじっくりと寝る(休む)のが最強の方法」だとお話しています。

それというのは、「消化」という身体システムに無駄なエネルギーを消費させないため、動くことで生まれる「血圧を上げる」という身体システムに無駄なエネルギーを消費させないため、

「体温を上げる」という身体システムに無駄なエネルギーを消費させないようにするためです。その観点からすれば湯冷めにさえ気をつければ風邪を引いている時にお風呂に入ることも全然ありです。

もっと言えば、発熱の最中に自分の身体に対して「(外敵を排除するために)頑張ってくれていてありがとう」と感謝することも大事です。これによって心理的なストレスの処理に無駄なエネルギーを持って行かれなくてすみます。

このように無駄なエネルギー消費を避けて、ウイルスを排除する方向に全精力を傾けさせる環境を整えることがまず大事だと私は考えています。

ちなみに解熱剤やステロイドなどの使用は身体システムを助けているようで自前のシステムを弱らせているようなところがあるので、

命に関わる場合はリスクを承知で使用する場面がありますが、決して気軽に使うべき類いの薬ではないと私は位置づけています。

以上の話を参考に、少しでもウイルス感染症で苦しむ人が減ってくれることを願っています。


たがしゅう

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コメント

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No title
日本人はかぜひいても発熱しても休まず我慢して仕事をする習慣が根付いているようです。
何日も高熱を出しながら身体に鞭打って仕事をしている人が多い。体力の限界に
なってから、ようやく受診する人が多い気がします。
湯浅町で感染した医師がまさにその典型ですね。
このような習慣こそが、病気そのものも悪化させるし、患者さん自身の免疫力も奪う、何よりも感染症のスプレッダーになるので、悪い事ばかりなのです。
「かぜをひいて発熱したら休む」
今後かぜをひいた人たちがこれができるかできないかで、おそらく日本の運命が分かれるといっても過言ではないでしょう。






Re: No title
サイエンス さん

 コメント頂き有難うございます。

> 「かぜをひいて発熱したら休む」
> 今後かぜをひいた人たちがこれができるかできないかで、おそらく日本の運命が分かれるといっても過言ではないでしょう。


 確かにそうですね。
 それを容易にさせないのは、個人の価値観もさることながら社会全体の価値観のせいもあるでしょうね。
 頑張ることが美徳、他人に迷惑をかけたくない、助け合いの精神…
 それらが複雑に絡み合って、野生動物のように体調が悪い時に休むというシンプルな行動を難しくさせています。

 この情報社会の中で揺さぶられることのない自分の軸をしっかり持つことの重要性を、今回ほど強く感じた事はありません。
獲得免疫について
コロナ関連で、大阪の「一旦陰性診断を受けた患者が、数週間後に再び陽性」となったニュース。

医学素人の私は「風邪類ウィルスの場合、身体は一旦その抗体を獲得したら半永久的に抗体は無くならない」と認識していたので、この事例はある種の恐怖です。

獲得免疫はどれほどの期間有効なのか。

コロナは前列にない特徴を持ったウィルスなのか、それとも有り得る事例なのか。

先生ご教授いただけるとありがたいです。
Re: 獲得免疫について
だいきち さん

 コメント頂き有難うございます。

> 「一旦陰性診断を受けた患者が、数週間後に再び陽性」となったニュース。
> 「風邪類ウィルスの場合、身体は一旦その抗体を獲得したら半永久的に抗体は無くならない」と認識していたので、この事例はある種の恐怖です。

 この事例はコロナウイルスの特徴云々というよりは、検査の精度限界の問題だと思います。

 インフルエンザでもよくある話ですが、感染初期にインフルエンザ迅速検査キットを使用しても、本当はインフルエンザウイルスがいるにも関わらず検査で陰性(ウイルスはいない)という結果になる事は多々起こります。

 おそらくこのケースでも一旦検査陰性になったという段階で、本当はコロナウイルスに感染していたのであろうという事が推察されます。「後医は名医」と呼ばれる所以です。特別恐れる必要のない事例と私は思います。
薬の可能性も、、、
基礎疾患を治療中の場合、治療薬が
免疫力を阻害していることも
考えられるのではないでしょうか。
Re: 薬の可能性も、、、
ちっちょ さん

 御質問頂き有難うございます。

> 基礎疾患を治療中の場合、治療薬が
> 免疫力を阻害していることも
> 考えられるのではないでしょうか。


 治療薬(特に西洋薬)はシステム過剰適応の強制的遮断アプローチなので、
 遮断している間に過剰適応の根本原因(食事やストレスなど)に対処して正常適応状態に戻れば一定の意義はあると思いますが、
 それがないままに治療薬が延々と投与され続ける状況だと、過剰適応はますます自力では抑えられなくなり、結果的に免疫力を下げる構造にはなると思います。その意味で治療薬は本質な原因ではなく、根本原因に対処しているかどうかが大事だと私は思います。