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体調をみる力を失った人への考え方

category - 主体的医療
2020/ 01/ 16
                 
常日頃、「体調が最良のバロメータ」の重要性を語っている私ですが、

「体調など当てにならない。潜在する病気は検査でしか検出することはできないのだから、検査で病気を見つけるべき」という考え方が根強くあることを見聞きします。

確かに、例えばB型肝炎やC型肝炎のように、自覚症状は乏しいけれど実はウイルスが潜在するといった状況に対して、血液検査は病気を発見するのに役に立つという事実はあると思います。

ただし、だからといって体調が当てにならないという話にはならないように私は思います。

仮に肝炎ウイルスが身体の中にいたとして、別に体調が悪くないのであれば、それは何も問題はないのではないでしょうか。

あるいは体調が徐々に悪くなっているのに気づかないのであれば、それは体調を検出する能力の鈍さに問題があるのであって、

体調が当てにならないという話にはならないように私は思うのです。
            

鈍ってしまった体調の検出能力を検査という客観的な手段で補う発想はあってよいと思いますが、

そこで行うべきステップは「なるほど、これは体調が悪い状態だったのか」と納得して、次回からはこの微細な体調の変化を検出できるようにとフォードバックすることであって、

はなから「体調は当てにならない」と決めつけて、以降の健康管理を検査に頼り切るというのは違うように私は思うのです。

勿論、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは血液感染するので、無症状の人がキャリア(血液中にウイルスがいるけど症状のない人)であることを検査によって検出することは、針刺し事故などに十分な注意喚起を行うためにも有用である、といった話を私は否定しません。

ただ、それとて肝炎ウイルスがいないからといって針刺し事故をしてもよいという話にはなりませんし、それは常に注意すべき類いの話だと思います。

話がそれましたが、体調は当てにならないから検査を中心に行うべきというのは、

自分の足で歩くのは不便だから、便利な車を中心に生活すべき、と言っているようなものです。

何をするにも、どこへ行くにも車を使うような極端な状況を思い浮かべた場合に、結果として起こってくるのは自分の足の筋力低下です。

この事実を持ってして、自分の足で歩くことは当てにならないと言えますでしょうか。

自分の体調は当てにならないと断定することは、そういう話と共通構造を持っているように私には思えます。

検査はおおいに行って構いませんし、それによってはじめて知りうる情報も多々あることと思います。

しかしそうした情報も、あるいは未認知の情報も全てひっくるめた結果として自分の「体調」という現象があるのであって、

これを当てにしない治療方針に私は賛同することはできません。

ただし、確かに体調を検出する能力が衰えきっている人がいることもまた事実です。

言うなれば自分の足で歩くことを忘れてしまい、すっかり足の筋肉が痩せ細ってしまった人、という状況と同じだと思いますが、

こうした人に歩くことの重要性を伝えるだけでは現実的な解決策にはなりませんし、下手したら理想論の押しつけで相手にストレスを与えるだけで終わってしまいます。

どうすればいいでしょうか。


人為的な機械やサポートを行いながら、少しずつ歩くことを思い出してもらうようなリハビリアプローチ、

あるいは筋力を元に戻していくための栄養アプローチが必要で、ここの効率性を高めるために人為的な工夫はあってしかるべきでしょう。

同時並行で、そもそもなぜそういう事態に陥ったのかという根本原因もしっかりと踏まえつつ、根本解決につながるようなアプローチも進めていくべきでしょう。

すなわち、最終的に自分の足で歩くという目標を掲げ、そこへ向けての道筋を示していくということです。

体調をみる力を失った人へもそうしたアプローチを試みられる医師でありたいと思います。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

いいですねェー,タガシュウ先生の論理展開は.ほれぼれします.無断借用させていただくかもしれません.ではでは,
Re: ◎
mmm さん

 コメント頂き有難うございます。
 無断借用、大丈夫です。
同感です!
たがしゅう先生、初めまして。
夏井睦先生のサイトからここにに流れついてはや数年、色々共感しながら読ませていただいています。今日のブログの内容は私の仕事でのアプローチとドンピシャだったので、嬉しくって初コメントです。

私は米国でヨガ&瞑想のインストラクター、マッサージ師、心理カウンセラーを生業としていて『心身の痛み・不調は心と体からのメッセージだから、無視せずにしっかり耳を傾ける練習をしよう。練習すれば、それが習慣になって、自ずとその時々に自分に必要なものは自ずとわかるようになる』というメッセージをクライアントや生徒さんに伝えるために、手を替え品を変え、いろんなアプローチを試しています。その結果が上記の仕事の兼業です。自分自身にとっても、この習慣づけがなかなか難しいんですけどね。
No title
たがしゅう先生、こんにちは。
今回の記事を読んで常々思っていることがありましたので、コメントいたしました。
夫はご飯、パン大好き。朝は6枚切り食パン4枚食べます。コーヒー、紅茶に砂糖たっぷり、糖質三昧の食事です。
しかし健康診断はオールA。体脂肪も問題ありません。
ですが、朝は中々起きられない、すぐ風邪をひき必ず重症化するし、寝汗がすごい等々、不調があります。
引き換え私はコレステロール、血圧高め、腹部にも内臓にも脂肪がたっぷり。
しかし、ここ何年も風邪ひいたこともなく、胃腸もすこぶる丈夫。
夫が重症の風邪で寝込んでいても、うつることもありません。健康感は数値の悪い私のほうがあります。
これってどうなのでしょう。



Re: 同感です!
あすか@CA さん

 コメント頂き有難うございます。

> 『心身の痛み・不調は心と体からのメッセージだから、無視せずにしっかり耳を傾ける練習をしよう。練習すれば、それが習慣になって、自ずとその時々に自分に必要なものは自ずとわかるようになる』というメッセージ

 目指すべきところは私と共通しているようにお見受けします。
 私の言葉で言えば「最良の健康バロメータである体調をみる力をコーチングを通じて主体的に高められる方向へ促す」といった所でしょうか。しかし一方で他者は変えられないという側面もあるので、どうコーチングしても難しい場面もあるでしょうし、むしろその方がケースとして多いだろうとも思います。

 それでも、一人だけでも主体的に自分の体調をみる力の大切さに気付き、これを取り戻してもらうことができれば素晴らしい貢献ですし、その積み重ねが医療を良くし、世界を変えていくと私は信じています。
Re: No title
ココア さん

 コメント頂き有難うございます。

> 夫はご飯、パン大好き。朝は6枚切り食パン4枚食べます。コーヒー、紅茶に砂糖たっぷり、糖質三昧の食事です。
> しかし健康診断はオールA。体脂肪も問題ありません。
> ですが、朝は中々起きられない、すぐ風邪をひき必ず重症化するし、寝汗がすごい等々、不調があります。
> 引き換え私はコレステロール、血圧高め、腹部にも内臓にも脂肪がたっぷり。
> しかし、ここ何年も風邪ひいたこともなく、胃腸もすこぶる丈夫。


 これは血液検査が事実を反映するとは限らないということを証明されている内容ではないかと思います。
 
 血液検査については、いわゆる基準値に入っている人でも体調の不良を訴える人は私も医師の立場からこれまで数多く診てきました。きっと血液検査に異常が反映されない何らかの理由が存在しているのでしょうけれど、おそらくそれが現代医学では認知できていないということなのだと思います。

 一方の体調の方は、血液検査がどうであろうと画像検査がどうであろうと、良好なら良好だと動かしがたい事実です。
 勿論、前提として体調をみる能力が適切に働いていることというのが求められはしますが、それさえ保たれているのなら体調は最良の健康バロメータだと私は考えます。