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主体的農業のススメ

category - おすすめ本
2020/ 01/ 01
                 
令和二年、あけましておめでとうございます。

「令和」という新元号、不思議なもので「平成」の時よりなじむのが早い印象があります。

そんな言葉の持つ様々な不思議や魅力にも注目しながら、今年も文章を作り上げて参ります。

さて毎年当ブログの恒例として、元旦には昨年の中で私が強く心打たれた本を紹介しています。

今回御紹介するのは、現在私が農業研修でお世話になっている「石井ピュアファーム」の石井吉彦先生が書かれたこちらの本です。



まず種から始めよ-からだと地球を癒す種と土と野菜の本 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2012/10/19
石井 吉彦 (著)
            

私が全くの門外漢である農業の世界に足を踏み入れてみようと思わせてくれた石井先生の経験や考え方がまとめて書かれているのがこの本です。

そこには私の心に響く言葉がたくさん書かれていました。例えば、まえがきには次のような内容が書かれています。

(以下、p5-6より引用)

(前略)

私はそんな状況の中で、不自然な品種改良の種ではなく、昔から受け継がれてきた自家採種・在来種の種と無肥料栽培の農法を普及させ、もっとも安全・安心な野菜を一人でもおくの消費者のみなさんにお届けしたいと思っています。

アレルギーや化学物質過敏症で食に制限を受けている人も含め、小さなこどもからお年寄りまで、誰もが安心して自由に食べられる野菜を流通させることこそ、職人気質の古い考え方かもしれませんが、食に携わる者の使命だと考えているのです。

しかしながら、野菜の生産・流通は食べてくださる消費者のあっての話です。

消費者のみなさんは、何も知らずに受動的に食べさせられるだけの立場ではなく、これからは食の安全性について積極的に知り、考え、行動する消費者になっていただきたいと思います。

(引用、ここまで)



私はこの文章に非常に共感を覚えます。

なぜならば、私が目指す主体的医療と同じ方向を向いている話であるからです。

私は糖質制限を中心に栄養に関しての知識はあれど、日々食している野菜がどのように生産されているか、どのように市場に出回っているかに関しては全くの素人です。

野菜も糖質量の少ない葉野菜を中心に選択するという程度の行動で、何も考えずに近くのスーパーで比較的安くて大きい野菜を選んで買っているような人間です。そういう意味では非常に受動的な消費者だと言えるでしょう。

それは医療の世界で、私が主体的であってほしいと願う、何も考えずに医者の考えることに従うだけの受動的な患者と全く同じ構造をとっていることに気がつかされます。

要するに私は「他人のことは言えない」のです。野菜の作られ方とそれによって引き起こされる健康問題に無頓着でした。

そんな私を含めた受動的な消費者に対して、石井先生は「知識を得て、考えて、行動する主体的な消費者であれ」とおっしゃっているのです。私が医療で伝えたいメッセージと同じではないですか。

しかも有農薬・有肥料栽培での野菜による健康問題という観点で言えば、健康・医療の話ともリンクしてきます。

引用文中に出てきたアレルギーや化学物質過敏症といった病気は、糖質制限でもなかなか改善しきらないことがあるのですが、

実は石井先生の無肥料栽培で育てたお米や野菜による食事療法はこうした病気を持つ人達をかなり高い確率で寛解に導いてきた実績があるのです。その詳細がこの本の中で書かれています(p140-142)。

もちろんその治療効果は糖質制限関係なしで、です。お米は玄米や七分づき米が使われたそうですが、それでもかなりの糖質量が入っていることが想定される状況です。にも関わらずアレルギー病態は軒並みよくなったというのです。

糖質制限でよくなりきらないアレルギー病態、糖質摂取でも無肥料栽培野菜で改善したアレルギー病態…。

両者の事実を鑑みれば、そこに糖質制限がカバーしきれていない健康課題を解決する糸口があるのではないかと私は考えたわけです。


糖質制限で解決しきれない健康課題をサプリメント大量補充で克服しようとする動きもありますが、この本にはそのやり方に対する警告とも取れる一文が書かれています。

(p6-7より引用)

便利さの裏には危険な落とし穴があります。使わなくていいものが使われているものもたくさんあります。

(引用、ここまで)



例えば自動車は便利ですが、使い方を間違えれば殺傷能力の極めて高い凶器へと変わります。

住居用・台所用・お風呂用など日常生活で頻用される洗剤に含まれる合成界面活性剤は確かに身の回りから菌を減らし、不衛生に伴う感染症のリスクを減らしたかもしれませんが、

それに伴って現代社会ではアレルギー性の病態が増えてきたのではないかという見解もあります。

このように何事にも便利さの裏にはそれ相応に何かを失うトレードオフの構造があるわけで、便利をもたらす人為で問題を解決しようとするアプローチには常に気づいていない問題をはらんでいるかもという可能性に気づかせてくれる一文です。

それに対して糖質制限にも通じる過剰なもの、あるいは有毒なものを排除するというマイナスの発想にはそのトレードオフの構造がありません。

害であったものを除くことで害によってもたらされていた有害性の分だけ、そっくりそのまま益を得ることができます。

この発想はもともと自然に備わったシステムが結局は非常に素晴らしいという自然重視型医療という考え方へとつながっていき、それは無肥料栽培にも通じる考え方なのです。

そうかと言って、無肥料栽培が種を植えて、本当に何もせず放置するだけの栽培方法かと言えばそれもまた違います。

(p21-22より引用)

(前略)

自然農法というと誤解されることもあるのですが、種を蒔いたら何もせず放っておくだけのやり方ではなく、

雑草があれば抜いたり、日差しが強すぎる場合には覆いをしたりと、その場所の特質や気候に合わせて畑を見守り、土が自然の循環の中で清浄さを保っていけるお手伝いは人間がやります。


(引用、ここまで)



これは自然重視型医療における「自然に適切な人為を加える」という考え方に通じます。

しかもその加える人為はここでもプラスの発想ではなく、有害となる刺激を最小限化するマイナスの発想に基づいていることがわかります。

農薬を与えるというプラスの発想ではなく、雑草を除くというマイナスの発想なのです。

さらには農薬に関しては、次のような文章も書かれていました。

(p23-24より引用)

四季と梅雨の影響で虫の多い日本では、殺虫効果の高い農薬は魔法の薬のように歓迎され、農作物の収量は飛躍的にアップ。生育が一律に早くなる化学肥料の効果ともあいまって、戦後の食料増産に貢献していきました。

(引用、ここまで)



この「農薬」というプラスの発想で問題を解決させるというアプローチをとった歴史は、

てんかんに対して糖質制限(ケトン食)というマイナスの発想ではなく、「抗てんかん薬」というプラスの発想で解決させようとした医療の歴史にさも似ていますし、

一見解決したように見えて、その後のっぴきならない問題を引き起こすことになった経緯までがそっくりです。

そしてもう一つのプラスの発想、「(化学)肥料」が作物の生育を促進していることは一見よいことに見えます。この「肥料」における主成分は窒素ですが、窒素とは植物にとって人間における糖質のような存在です。

しかし植物の過剰成長は、糖質過剰摂取が常態化した現代社会で近視、高身長、早期初潮などが増えているという糖質のドーピング的な側面を彷彿とさせます。

そしてドーピングすれば全体のバランスに歪みが生じます。たとえば高身長化する一方で骨粗鬆化してしまう現象、早期月経開始の一方で乳がん・子宮がんのリスクが増えてしまう現象などです。

化学肥料で育てられた野菜にも同じような歪みが潜んでいる可能性は十分にあるのではないでしょうか。

そしてそのことを何も知らずに不自然に育った野菜を長らく常食していった結果、難治のアレルギー性病態や化学物質過敏症などへと進展しているのだとすれば、

これは糖質制限とは別に、今すぐ解決に向けて行動すべき健康問題と捉えるべきなのではないでしょうか。


以上はこの本から私が学んだことのほんの一部に過ぎませんが、

私が専門とする医療において役に立つ考え方と解決につながる具体的な対処行動へつなげるためのエッセンスが多分に含まれています。

私はこの石井先生の無肥料栽培から多くのヒントを得て、

糖質制限で解決しきらない問題を抱える人の助けになりたいと思うようになりました。

「主体的農業」とでも言えるかもしれない石井先生のアプローチ、

一人でも多くの人に知ってもらえればと願います。


たがしゅう
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コメント

非公開コメント
        

石井さんのような主体的農業をされてらっしゃる方、つまりわかりやすく言うと家庭菜園のようなものですね。自分で作って我が家で消費するわけですから、当然無農薬有機栽培ですね。石井さんのような方この世にはたくさんいらっしゃいます。
Re: タイトルなし
ジェームズ中野 さん

コメント頂き有難うございます。

> 石井さんのような主体的農業をされてらっしゃる方、つまりわかりやすく言うと家庭菜園のようなものですね。
> 石井さんのような方この世にはたくさんいらっしゃいます。


そう思われるかもしれませんが、そうではないのです。ただそれだけの話なら私はそこまで興味を持っていません。

無農薬と銘打っていても肥料は使っている農家、無肥料と銘打っていても堆肥は使っている農家はたくさんあります。その状態で家庭菜園をされている人達は、石井先生がなさっていることとはまた違うのです。極め付けは種を自分でとるか、よそから買うかの違いです。この違いはかなり決定的です。

食事療法で例えればDASH食や地中海食を自分で取り組んでいるけど本質的には不十分な食事療法となっている状況、あるいは糖質制限に取り組んでいるけど糖質はとるべきものだと考えているという本質的な認識のズレがある状況のようなものではないかと私は考えます。
私が以前、糖質制限する以前のことですが、8年間ほど水稲栽培をしておりました。使用する種籾は当然自家製のものでした。無農薬有機栽培で米作りをしておりましたので、外から種を購入したりは一切しておりません。高い意識を持った農家はそれが当たり前です。出来上がったお米はすべて自家用ですよ。つまり農家といえども家庭菜園の延長ですね。
Re: タイトルなし
ジェームズ中野 さん

> 外から種を購入したりは一切しておりません。高い意識を持った農家はそれが当たり前です。

現在の農家は9割以上がF1と呼ばれる人為的な交雑種を種屋から購入して農業を行なっていると聞いています。ジェームズ中野さんが自家採種で水稲栽培をなさっていたのであればそれは大変結構なことだと思います。
明けましておめでとうございます!
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!
たがしゅう先生の人生のパートナーと出会えた事、とても素敵な事ですね♡♡
先生とパートナーの方にとって飛躍の年であるようお祈りしています。
話は変わりますが、先生の無肥料栽培のブログですが、本当に考えさせられました。
実は日本のスーパーに出ている鳥肉のほとんどが、遺伝子組み換えの餌を食べているとのことで、その肉を食べている私達は健康になれるのだろうか?と疑問に思っているところでした。
魚もそうです。日本の魚の放射能汚染を測ってくれている団体の方によると、まだまだ魚の放射能汚染は深刻だそうです。
私は3歳と8歳の子供がいるので、これからも無肥料栽培について情報発信して頂けると有り難いです。
それは米のことではないですね。F1は野菜などの種の話ですよ。
Re: 明けましておめでとうございます!
あっぴ さん

 コメント頂き有難うございます。

> これからも無肥料栽培について情報発信して頂けると有り難いです。

 了解です。私の理解度に応じて順次情報を伝えて参ります。
 
 この領域にはフェイクな内容も混じったりして混乱しますが、一番は自分(家族)の身に起こる事実が大事です。情報を取捨選択しつつ、自分や家族の身を守る情報を取り入れていって頂ければ幸いです。