物質の毒性の強さを決めているのは何か

2019/11/12 19:15:01 | 素朴な疑問 | コメント:0件

「どんな薬でも多かれ少なかれ副作用がある」

これは薬を扱う者の中で常識と思われている概念だと思います。

よく言われることに、あの安全なイメージの根強い「水」でさえも、摂りすぎると「水中毒」という問題を引き起こすので、

どんな物質でも100%安全だと言えるものはこの世に存在しないのだと言われます。

一方でビタミン剤のように大量に摂取してもさしたる副作用が出ない物質もありますし、

そうかと思えばフグ毒のように少量摂取しただけでも致命的な影響をもたらす物質も存在しています。 こうした毒性の違いは一体何から生み出されているのでしょうか


有機物か無機物かの違いでしょうか。

有機物(有機化合物)とは、炭素を含む化学化合物のことです。

有機リン中毒という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。有機物であれば毒性を持つのでしょうか。

実はおなじみの炭水化物も当然炭素が含まれているので有機物の一種です。

しかしそうかと思えば他の三大栄養素である脂質やタンパク質の中にも炭素が含まれているので、これらも広い意味で有機物に入ります。

従って、有機物であることが毒性の要件というわけでは必ずしもないようです。

一方で炭素を含まない無機物は水(H2O)に象徴されるように安全なイメージがあると思えば、

鉛(Pb)、水銀(Hg)、ヒ素(As)など無機物でも毒性の高い物質はしっかりと存在します。

少なくとも私が見る限りは化学構造からみてその物質が高いのかどうかを見極めるのに一定の法則は存在せず、そこから
毒性の強さを見極めるのは困難であるように思えます。


発想を変えて考えてみます。大量に投与しても比較的安全な物質の共通点は何でしょうか。

それはもともと人体に備わっているかどうか、ということではないでしょうか。

しかも人体に存在する割合が多ければ多いほど、安全性が高いように見受けられます。

水は人体の構成成分の約6割を占めると言われているので非常に安全ですし、

タンパク質や脂質もそれに続く人体での割合を占めているので、これらの過量投与に対する安全性もかなり高めであると感じられます。

それというのもこれらの物質を処理・管理するための専用の酵素やチャネル、トランスポーターなどが備わっているためではないかと考えられます。要は処理し慣れている、ということです。

ところが人体の1%程度しか占めていない炭水化物は血糖値の正常域が100前後と狭かったり、炭水化物摂取に伴い容易に血糖上昇が引き起こされる様子を見ても分かるように、

人体にもともと存在する物質でありながら、その安全域はかなり狭めになっているように見受けられます。

ここに私達がどのような薬をどうやって使うべきかというヒントが隠されているように私には思えるのです。

この話題、引き続き考えていきたいと思います。


たがしゅう
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