人類本来の食性に沿った食事とは
2019/11/08 22:35:01 |
素朴な疑問 |
コメント:7件
長寿だけが人生の価値ではありませんが、ひとつ健康に長寿であり続けることは人類の憧れであり、
人為的に目指せるものであれば目指したいというのは誰もが一度は考えることなのではないかと思います。
糖質制限が健康の秘訣だとか、人為的にビタミンを加えることで健康長寿になれるとか、様々な考え方があると思いますが、
一方で糖質制限もビタミンも関係ない所で健康長寿を成し遂げている人達がいることもこれまた事実です。
はたして健康長寿を成し遂げるための秘訣なんていうものは存在するのでしょうか。
現時点での私の考えは「人類本来の食性に沿った食事」が、健康長寿を成し遂げる秘訣に当たるのではないか、というものです。 では「人類本来の食性に沿った食事」とは何なのか、ということですが、
糖質制限は余剰となるものを取り除く行為なので、ひとつ健康長寿に近づける可能性を持つポテンシャルは持つのではないかと思います。
そして人類の歴史を振り返ってみても、少なくとも現代の平均的な炭水化物の摂取量に比べれば、
農耕開始前の先史時代における炭水化物摂取量は少なかったであろうことが容易に想定されますので、
そういう意味でも糖質制限状態の方が本来の食性に近い可能性が高いということは言えるのではないでしょうか。
多くの方が糖質制限の実践によって様々な体調不良の同時解消を経験するという事実もその考えを支持します。
一方で糖質ゼロ食とか、古典的ケトン食といった糖質の制限具合をかなり強めた食事が健康長寿につながるかと言われたら、
これに関しては糖質という知識がないと実践できない人為的な食事療法なので、「本来の食性」という概念はかけ離れてしまうため、断定はできないものの可能性は低くなるのではないかと考えます。
それではビタミンを大量に投与して栄養を満たすという方法論はどうかと言いますと、
栄養の不足という問題が表面化している患者さんにはビタミンの大量投与は症状の改善をもたらしうる手段です。
しかしこれも本来の食性かと言われたら、そうだとは到底思えません。
またもともと持っている身体機能をビタミンの大量投与でさらに賦活し、寿命を延長させる可能性に関しては、
例えばビタミンCの大量投与で下痢をしたり、ナイアシンフラッシュと呼ばれる不快な紅潮現象が起こったりすることを考えますと、
ビタミンの処理に際しては何らかのキャパシティが存在することが示唆されます。
要するに限界があるということであり、限界があるということはそれ以上に超える投与を行うと身体には処理しきれず何らかの歪みを生じる可能性があるので、
上手に使えば不足を補える可能性はあるかもしれませんが、万全の方法論とまでは思えませんし、一定のリスクは生じうるアプローチだと思います。
一方で目線を糖質制限やビタミン大量投与の関係のない所に向けてみます。
以前当ブログで扱ったアマゾンの奥地に住むチメイン族という集団はアメリカの調査で炭水化物比率が72%でかなり健康な状態を維持している集団でした。
その72%という算出の信頼性に疑問が残るという点についてはブログでも取り上げましたが、それにしても糖質制限状態とは思えない食生活です。
このデータは健康長寿の直接のデータではありませんが、少しヒントとして考えられるのは、
「土着の食べ物で現代文明の介入が入っていない状況であれば、炭水化物主体の食事を摂っていてもうまく適応できている可能性がある」ということです。
つまり本来の食性という概念は全人類に共通の唯一無二のものではなく、
その土地土地で若干のバリエーションを生じる可能性があり、なおかつ自然本来の構造が保たれている事が重要だという可能性を示唆しています。
言い換えれば糖質制限は健康長寿に向けて全人類を集団としてみた時の一般的傾向であるのに対して、
土着の食べ物をありのままの形で食べることで生まれるメリットは健康長寿における個別性の要素という言い方ができるでしょうか。
時々炭水化物を普通に食べている人でも100歳以上の健康長寿を実際に成し遂げている人達がいらっしゃいますが、
そういう方が食べているものは炭水化物比率もさることながら、そこで食べられているものがどのように作られたものかという事にも注目するとよいのかもしれません。
一方でそうは言っても、今の日本に住んでいれば、よほどでない限りは食事は現代文明の息がかかっているはずです。
食事だけでは説明しきれない健康長寿の秘訣としてはストレスマネジメントの観点が入っている可能性があると私は考えています。
理由はプリプリ怒っている健康長寿者をいまだかつてみたことはないということと、
慢性持続性ストレスが身体に様々な悪影響をもたらすという事が医学的にも明らかであるからです。
少しまとまりのない話となってしまいましたが、
以上の考察から私が考える「人類本来の食性に沿った食事」のエッセンスは、
「全体としては現代の視点から見て糖質が比較的少な目であること」
「自然の構造が保たれた形で食事を摂取していること」
この2つあたりに集約できるのではないかと思っています。
そうなると、自然の構造が保たれた食事とは何なのか、ということになってきます。
はたして現代文明に触れた場合と何がどう違うのかということに関しては、もう少し理解を深めていく必要がありそうです。
もっと言えば、自然の構造が保たれた形であれば炭水化物を取ることでも健康長寿につながる可能性さえありうると思っています。
そこには「腸内細菌との共生」という点にポイントがありそうです。
ひとまずここまでが私の現時点での考察となります。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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必要な栄養量と代謝機構
それが、どういう事かと言えば、ある量のビタミンを摂取すれば、ある部位では不足、ある部位では過剰と言う事が起こります。体は、それを吸収や排泄と言う調節機構によって最適解(損益分岐点)を維持するようにできています(恒常性維持)。
しかし、メガビタミンはそれを無視した量を摂取するため、本来の調節機構が働きません。特に自然界には存在しないキレートされたサプリ(日本では認可されていないキレート鉄など)では、そもそも代謝機能を無視するように設計されていますから、当然過剰になります。
ある部位に有効に働く量を摂取すれば、他の臓器では過剰症状が出る場合もあり、機序がはっきりしていないメガビタミンはリスキーなのです。
メガビタミンを実践される方の多くが効果だけを強調し、リスクをほとんど理解していないのが問題なのであり、「メガビタミン=だめ」とは思いません。リスクをしっかり理解した上で自己責任で実践されることは何の問題もないと思います。
No title
キャパはあります。そして、必要量も人それぞれ異なります。
メガビタミンは、闇雲に大量に飲めという事ではありませんし、色々細かいルールがあります。
例えば、ナイアシンもフラッシュが起きにくいアミドから始めるとか、ヒスタミンを破壊できるようにビタミンCも飲むとか。
> 理由はプリプリ怒っている健康長寿者をいまだかつてみたことはない
プリプリ怒ってると、ビタミンCも破壊されますからねw
チメイン族が食べている炭水化物は、血糖値を上げにくい炭水化物なのかもしれませんね。
それに随分歩くようで、運動量や筋肉量も関係しているのではないでしょうか。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
私も食糧難に対しては糖質制限+1〜2食が今すぐできる対策だと思いますが、様々な常識の壁があって現実的には厳しい道のりです。それでも必要最低限栄養で人間は十分素晴らしいという考えを少しでも多くの人に伝えられればと願います。
承認待ちコメント
Re: 必要な栄養量と代謝機構
コメント頂き有難うございます。
> メガビタミンはそれを無視した量を摂取
メガビタミンでも過剰摂取を意識していないわけではないようです。
例えばナイアシンフラッシュのリスクを減らすためにナイアシンアミドという形のサプリから始めるよう勧めたり、ビタミンCならば初期投与時の推奨投与量というものが定められていたり、過剰投与を避けるための一定の工夫は設けられています。
ただ、それはあくまでも過去の経験から導き出されたものであって、本当の至適量に至るまでにはそこから試行錯誤を繰り返していく必要があります。またサプリだと味もありませんので、味覚も当てになりません。
ここは体調をバロメータにする食事療法のアプローチとは決定的に異なるところです。食事療法ならば味が合わなければ避けますすし、食欲がわかなければ無理に食べる必要はなく、食欲が満たされればそれ以上食べる必要はなしです。ところがメガビタミンだとここをgで決めていくことになります。むしろ体調が悪ければgを増やす傾向さえあるので、この辺りの考え方は逆と言っても過言ではないかもしれません。
> メガビタミンを実践される方の多くが効果だけを強調し、リスクをほとんど理解していないのが問題なのであり、「メガビタミン=だめ」とは思いません。リスクをしっかり理解した上で自己責任で実践されることは何の問題もないと思います。
そうですね。私もそう思います。
あらゆる方法には正の側面と負の側面があると思います。自らのやり方についてその両面を見過ごすことなく、謙虚に向き合っていけるように私も気を引き締めて参りたいと思います。
コメント非承認
「承認・非承認の基準」
https://tagashuu.jp/blog-entry-617.html
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