情報は完全には伝わらない
2019/11/01 22:45:01 |
糖質制限 |
コメント:8件
マスコミに加えて、SNS文化が広まったおかげで、
糖質制限という言葉も大分広く認知されるようになってきました。
患者さん達と触れ合っている中で、「糖質制限について聞いたことがありますか?」ということを尋ねてみますと
「はい」と答えられる方が数年前よりも格段に多くなった印象を持っています。
そこでさらに、「糖質制限に対してどんなイメージを持っていますか?」と尋ねると、
「ごはんを食べないで肉を食べるとダイエットになる」というイメージだと答える人達が多数派です。 ところがここでさらに、「ではなぜ糖質制限をするとダイエットになるかは御存知ですか?」と突き詰めていくと、
それはわからないと答えられる方も実に多いのです。
要するに糖質制限の本質などは一切理解されることなく、「糖質制限=ダイエット」と短絡的に情報が伝わってしまっているのです。
ただでさえ私は以前、糖質制限がダイエットとして認知されることに関して否定的な見解を記事にさせて頂いたことがあるのですが、
こうなってくるとそれ以上に伝言ゲームで徐々に情報が不完全化していくとともに、誤った解釈が知らないところでなされていく危険性さえ感じて若干恐ろしさを感じました。
とにかく糖質制限はダイエット法であると。しかしなぜそうなのかがわからなければ
専門家が「糖質制限は危険だ」と言えば、それは専門家がそういうのだから間違いないのであろうと、疑う余地はなくなってしまうことでしょう。
さらに言えば、「なぜ糖質摂取を繰り返すことが悪いのか」ということにも当然考えが及ぶことはありませんので、
折角糖質制限の情報に触れたとしても、あっという間に元の木阿弥、情報はたちまち常識という名の多数派意見にかき消されてしまうのです。
情報の不完全化は致し方ない部分があると思っています。
いくら情報の話し手がわかりやすく、誤解のないように伝えようと心がけていても、
一定の割合で情報の受け手は情報を誤解し、それを誤った形で別の人に伝えてしまうというリスクはどうしても生じてしまうことでしょう。
リテラシーという言葉もよく聞くようになりましたが、まさに情報は話し手と受け手の双方の努力が重要なのであって、
お互いが努力し合う中で価値ある情報がやり取りされるし、そこから何かまた新しいものが生まれるという流れでもって人はさらに成長していくものです。
糖質制限での情報発信者の立場に回るようになってもう6年の月日が流れましたが、
ここに来て再び情報発信の限界と難しさを突き付けられたような想いが致します。
それでも、たとえ不完全に伝わることがわかっていたとしても、
なるべく正確に伝わるよう努力をし続けることしか
私達にはできないのかもしれません。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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理解のプロセス
(1)まず、ある事柄について、書物などに書かれていることをそのまま理解する。
(2)上記の内容に疑問を持つ。
(3)疑問を解決し、理解を深める。
(4)人に説明できる。
(5)得た情報をもとにアレンジできる。
です。
(1)の段階では、教科書に書かれていることをそのまま理解します。これができないとスタート地点に立てません。
(2)の段階は、違う方向から考えられる段階。正面からだけでなく側面からも考えてみると疑問が湧いてきます。即ち、自分なりの解釈が芽生え、そぐわない事があることに気づく段階。
(3)(4)では、理解したことを人に説明できる、質問に答えられるようになるまで理解度を高め、自分のものにする段階。
(5)は、高めた理解度をもとに他にも応用範囲を見つけていく最終段階。ここまで理解度が高められると1つの知識がいろんなことに生かせるようになる。
物事を理解できたかどうかを判断する材料として、自分自身の中で最低限としているのは「人に教えられる」段階まで理解する事です。そうでなければ理解したつもりになっているだけだでどっかで行き詰ります。
私はこの段階を非常に重視しており、仕事で新入社員などに研修するときも習ったことが人に説明できるようになったかどうかで理解度を判断しています。
「理解しました」と答えた人に「では、説明してください」と言って、明確に要点が説明できる事はほとんどありません。人に正確に説明するには、自分が思っている以上の理解度がなければできません。
そして、得た知識をアレンジしていろんなことに応用できるところまで理解度を高め、他の事象に結び付けることができれば、物事が多方面から理解できるようになります。
しかし、こういう物事の理解度を高めるプロセスを踏もうとしない人(教科書が正しいと思っている人、答えを教えてくれと言う人など)とは議論が成り立ちません。いくら議論しても答えにたどり着きません。知識の裏付けがなく、さらには間違っていることにすら気づいていない(説明しても本当の意味で理解できていない)のですから。
その時点で裏付けが間違っていてもいいのです。間違っていても明確であればあるほど、議論の中で間違は正していくことができますから。
問題は裏付けのない断片的な知識しか持ち合わさない事です。正すための間違った知識もないので正すこともできません。そこには間違ったぼんやりとしたイメージが存在するのみなのです。
Re: 理解のプロセス
コメント頂き有難うございます。
納得のいくプロセスです。私自身も教えられるところまで理解を深めるよう日々心がけています。
多くの学校教育では(1)で止まっているのでしょうね。医学部教育もそうです。従って現時点では自然発生的に(2)の段階に入った少数派の人達が世の中の理解を深めていっている構造にあるように思います。
(1)を(2)の段階に引き上げるために他者ができることの一つに「質問を投げかける」があると思いますが、それでも主体性の育っていない人に対してはのれんに腕押しです。
結局はご提示のプロセスが重要であることに本人が気づかない限り、与えた情報の価値は十分に活かせないのではないかと感じる次第です。
No title
さっそくですが、糖質制限に関する質問です。
糖質過剰摂取に起因する身体への悪影響は今や明白な事実と思いますが
ではタンパク質や脂質の過剰摂取についてはいかがでしょうか。
具体的に言うと、良質のタンパク質や良質の脂質をたっぷりと摂取した食生活であっても、肥満を引き起こす(あるいは、引き起こさない)メカニズムとはどういったものでしょうか。
換言すると、インスリンが関与しないプロセスによっても中性脂肪は生成されるとした場合、どういったルートで肥満は生じるのでしょうか。
もちろん、江部医師流の糖質制限は当然の前提とします。
以上です
Re: No title
御質問頂き有難うございます。
> 良質のタンパク質や良質の脂質をたっぷりと摂取した食生活であっても、肥満を引き起こす(あるいは、引き起こさない)メカニズムとはどういったものでしょうか。
まず糖質摂取ほどではありませんが、タンパク質摂取でもインスリンは分泌されます。
どれくらいインスリンが分泌されるかは個人差が大きいです。
> インスリンが関与しないプロセスによっても中性脂肪は生成されるとした場合、どういったルートで肥満は生じるのでしょうか。
脂肪細胞の周囲の前駆脂肪細胞が、脂肪細胞への脂肪酸輸送を促進する転写因子であるPPARγ等の因子によって刺激されて成熟脂肪細胞となり順次肥大化していくというメカニズムがあるようです。そしてそのPPARγが活性化するにはリン酸化という現象が関わっていてと複雑です。ただそれは今ある脂肪細胞もしくは前駆脂肪細胞の数以上は太らないメカニズムなので、太るにしても限界のある太り方です。限界を超えさせる太り方にはインスリンによる細胞増殖作用が重要で、これが肥満の主要なメカニズムとなっていることはほぼ間違いないと思います。
こういう動画を見ると不安になります。
→ https://youtu.be/qUM6tEJfL3c
これも江部先生が言うようにデータの解釈が間違っているのでしょうか?
こういう動画を見てしまうと確信が揺らぎます。
たがしゅう先生、是非とも論破してください。
Re: こういう動画を見ると不安になります。
コメント頂き有難うございます。
> 糖質制限のリスク。
> → https://youtu.be/qUM6tEJfL3c
> こういう動画を見てしまうと確信が揺らぎます。
> たがしゅう先生、是非とも論破してください。
私もこの動画見たことあります。ご不安になる気持ちも理解できます。
ただ私に関して言えば、こういう動画を見ても確信は揺らぎません。
なぜならば私は糖質制限実践から10年以上が経ちますが、糖質制限のせいで体調が改善したことはあっても、体調が悪化したことは一度もないからです。
加えて医学論文が事実と異なる結論をいくらでも導けるということはこれまでの考察でよくわかっているということも確信が揺らがない要因の一つです。コロナワクチンに関しても散々そういうことが起こっていると思います。
この動画では複数の医学論文の情報をもとに、ひたすら糖質制限の危険性を訴えておられますが、こういう誰かが調べた情報だけを論拠にしている人の意見は、眉に唾をつけて聞いた方が良いと私は思います。なぜならば医学論文を利用すれば自分に都合の良い結論を作ることはいくらでもできてしまうからです。実際動画で紹介されている医学論文のいくつかは糖質制限界で過去に話題となったことがある質の低い(研究方法に問題のある)論文でした。
2018年9月15日(土)の本ブログ記事
「医学論文に論拠を頼らない」
https://tagashuu.jp/blog-entry-1472.html
もご参照下さい。
とはいえ、まだ十分に検証されていない医学論文も多くあったように思います。
せっかくのご指名ですし、時間があればこの動画で紹介されていた医学論文の妥当性について検証してみたいと思います。
ただ医学論文の検証を行うのは結構骨が折れる作業なので、いつになるかはわかりませんが気長にお待ち頂ければ幸いです。
Re) 医学論文に論拠を頼らない
結局は、自分の身体で確かめるしかないという事ですね。
それにしても、世の中、エビデンスエビデンスとうるさいのに、そのエビデンスにも頼れないとなると、素人は何も判断することができません。
Re: Re) 医学論文に論拠を頼らない
コメント頂き有難うございます。
> それにしても、世の中、エビデンスエビデンスとうるさいのに、そのエビデンスにも頼れないとなると、素人は何も判断することができません。
自分の身体や経験で確かめるという方法があると私は思います。
面倒かもしれませんし、これであっているのかどうか不安もあるかもしれませんが、この行いだけは素人だろうと玄人だろうと広く門戸が開かれていると私は考えています。
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