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強烈かつリアルな問題提起

category - おすすめ本
2019/ 10/ 19
                 
引き続き夏井先生の新刊、「患者よ、医者から逃げろ その手術、本当に必要ですか?」の感想を述べます。



患者よ、医者から逃げろ その手術、本当に必要ですか? (光文社新書) 新書 – 2019/10/16
夏井 睦 (著)


前回、読書を登山にたとえ、今回の夏井先生は序盤に歩きやすい工夫がなされていると表現しました。

その工夫とは何かと言いますと、私は次の文章だと思いました。
            

少し長いですが、非常に重要なので、全文引用させて頂きます。

(以下、p12-16より引用)

【もしもヤケドで大病院に運ばれたら】

もしも、あなたのお子さんが熱いスープやラーメンをひっくり返してヤケドをしたらどうなるだろうか

ヤケドしたお子さんは、痛みと熱さのために半狂乱になって泣き叫び、あなたは冷やしながら119番に電話をして救急車を呼ぶしかない。

幸い救急車はすぐに来てくれたが、ヤケドの範囲を見た救急隊員は、高度なヤケド治療ができる病院に搬送する必要ありと判断し、大学病院か救命救急センターのある総合病院に運ばれる。

医師たちはお子さんの手足に点滴を入れ、患部を軟膏を塗ったガーゼで覆ってくれ、入院が必要と説明する。

大きな病院に運ばれてよかった、大学病院なら安心、とあなたは安堵するだろう。

だが、毎日の処置のたびに子どもは狂ったように泣きわめき、医者と看護師が数人がかりで押さえつけなければならないほど大暴れする。

ガーゼを剥がすたびに出血し、薬をスプレーされるたびにそれまで聞いたことがない恐ろしい悲鳴を上げている。

その様子を見てあなたは思わず悲鳴を上げてしまう。すると医者は、「お母さんに騒がれると治療できないので、処置の時はお母さんは部屋の外で待っていて下さい」と体よく追い出される。

病室に戻った子どもは元気がなく、食欲も落ちてしまった。何かに怯えているのか母親のそばから離れず、医者や看護師の白衣をみるたびに怖がって泣いている。

医者は入院当日には「軽い2度熱傷なので1週間くらいで退院できるでしょう」と言っていたのに、数日後には「細菌感染したために傷が深くなっています。もう少し入院が必要です」と説明し、

その数日後には「深い熱傷です」と説明は二転三転していく。

そして10日目頃、突然、次のような説明がある。

・残念ながらお子さんの熱傷は深い熱傷です。
・このまま軟膏の治療を続けても絶対に治りません。
・傷が治らないと傷からバイキンが入って感染し、敗血症になります。敗血症になると死亡します。
・敗血症になるのを防ぎ、命を助けるためには、「皮膚移植」(以下、「植皮」)をして傷を塞ぐしか方法はありません。
・植皮しないで治した場合、皮膚のひきつれが起きて手足が動かなくなります。
・植皮しないで治した場合、皮膚がんが発生することがあります。
・植皮をするとヤケドはきれいに治ります。
・植皮とは、背中やお尻の皮膚を採って、その皮膚で患部を覆って治す手術です。皮膚を採った背中やお尻の傷はきれいに治ります。
・来週の月曜日なら手術室が空いていて手術ができるので、この手術の同意書にサインして看護師に渡して下さい。


このような説明を矢継ぎ早にされたら、あなたはどうするだろうか。

おそらく、突然の説明と情報の多さと「このままでは死んでしまう」という切羽詰まった状況に圧倒され、脳みそは思考停止状態に陥り、

医師に言われるがままに手術同意書にサインしてしまうだろう。

そして、予定通りにお子さんに皮膚移植が行われる。

【(前作から)10年経っても変わらないインチキ治療】

術後は包帯グルグル巻きだったが、1週間目頃から手術した部位のガーゼが少なくなっていき、次第に移植した皮膚が見えてくるようになる。

医者はニコニコ顔で「きれいに治りましたね」と言ってくれるが、あなたは違和感で一杯のはずだ。

「きれいだ」と医者が説明する移植皮膚の見た目と色は、周りの皮膚と違いすぎてまるでパッチワークだ。

手に移植した皮膚はなぜか日ごとに縮んできているように見え、どう考えても手術前よりひきつれがひどくなっている。

「傷跡は残らない」と説明された皮膚を採った背中には大きな傷跡があり、これがきれいになるなんて信じられない。

だが、大学病院の医者が「きれいに治る」と言っていたのだから、いずれきれいになるのかもしれないと、あなたは無理やり自分に言い聞かせるだろう。

手術から2週間ほどで退院となったが、移植皮膚は何ヶ月経っても色違いのパッチワークのままだし、背中の傷はようやく乾いてきたが、

皮膚を採った部分は周囲の皮膚と色が違っていて、表面はでこぼこしていて、これまたパッチワークだ。

その頃になってようやくあなたは大学病院での治療に疑いの念を持ち、ネットで熱傷治療について調べられることに気が付く。

すると、重症熱傷でも皮膚移植なしに治す治療があって、わが子よりひどい熱傷が植皮なしに治っていることを知る。しかも、傷跡はとてもきれいだ。

外来受診日に手術の説明をした医者に「術前の説明と違うではないか。こんなことなら手術を受けるんじゃなかった」と抗議しようと思っても、

その医者は、医局人事とやらで他県の病院に異動していて、外来担当の医者は全く面識のない医者に替わっている―。

これが嘘でも作り話でもないことは、あなたや家族がヤケドして、大学病院や総合病院に入院になればすぐにわかるだろう

おそらく寸分違わぬ説明を受けて、手術同意書へのサインを求められるはずだ。

身も蓋もない言い方をすれば、この医者の説明は全てインチキ、嘘である。熱傷はどんなに深くても皮膚移植なしに治るし、きちんと治療すれば傷のひきつれは滅多に発生しない。

おまけに、感染すると命が危ないというのは大昔の話で、細菌感染しても抗生物質を飲めばすぐに治る。

また、皮膚移植できれいな皮膚に戻るというのも嘘なら、皮膚採取部の傷跡がきれいに治るというのも嘘だ。それらは何年経ってもきれいにはならないのだ。

いわば、医者たちは嘘の説明をして、手術に同意させて皮膚移植をしていたのだ。その結果、患者と家族は地獄に叩きこまれるのだ。

(引用、ここまで)



私は冒頭のこの文章を読んで一気に引き込まれてしまいました。

一般の人はおそらく「それは流石に言い過ぎじゃないの?」「大げさに言っているだけでしょう」と思われる人も多いと思いますが、

私は実際に大学病院に勤務していた際に皮膚科や形成外科がどのような治療をしていたかということを目にしていましたし、

救急科の応援医師としても実際に重症熱傷の処置に関わっていたこともありますし、

遡れば研修医時代に皮膚科を回っていた際にもまさにこの文章のままの治療が行われていたことを現場で知っています。

だから非常にリアリティを感じると同時に、患者さん目線で書かれたその文章に、もしその立場に知識もないままに置かされたら、

この状況に疑いの目を向けて大学病院から逃げて違うところで治療を受けるという選択を取ることは至難だろうと思いましたし、

これだけ湿潤療法の情報がネットで何十年も公開されているにも関わらず、それが平然と続けられている状況を改めて思い起こされて身の毛もよだつ思いがしました。

普段はそのことばかりを考えているわけではないので、こういう文章を読んだ時にドキッとするのです。

こうしたことから、導入の文章としては非常に入りやすい内容になっているように感じました。

これを見て「なんで大学病院の医者がこんな残酷なことをするのか」ということに興味を持たない人はあまりいないのではないでしょうか。

この山道、登った先には何があるのだろうと私は興味をかき立てられていきました。


たがしゅう
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コメント

非公開コメント
        

まさに自分の事のよう
いつもためになる記事をありがとうございます。
私自身の糖尿病性足壊疽も雰囲気としては、正に引用文のような経緯を経ました。間違った食事、間違った治療を施され、悪化させられて「切断」に追い込まれる。幸い、情報を検索する力があったため田頭先生と出会い、切断を免れましたが、多くの人は切らなくても良い足を切ってしまうのでしょう。大病院の医師の説得、家族の説得を押し切って違う方法論を試すことは非常に覚悟のいることですが、その後の人生を左右する程の変化が起こる選択をする時には慎重に自分の頭で考えて「調べつくした」という実感を持って決断するべきだと思います。受動的思考からの離脱・・・広まると良いですよね。
Re: まさに自分の事のよう
栗本通隆 さん

コメント頂き有難うございます。
そしてよくぞ主体的に行動なさいました。

現状では栗本さんのように強い意志で動いた人しか恩恵を受けられないのが偽らざる現状だと思います。
このままでは多くの人達を負の連鎖へ引きずりこむ構造化されたシステムの流れを結局黙って見ていることしかできない人生となってしまいます。その状況を少しでも変えられるよう「主体的医療」の重要性を伝える活動をこれからも展開していくつもりです。
No title
たがしゅう先生

私も引用部分を読んで「それは誇張しすぎているのでは?」と思った1人ですが、
「まさにこの文章のままの治療が行われていたことを現場で知っています」という先生の言葉で背筋が冷える思いがしました。

主体性が重要なのだと普段から少なからず思っていても、いざこの事態を目の前にしたら別の病院に移るという選択は容易にできるものではないと感じました。
ただ同時に、その選択をする勇気ももらったような気もしてきます。

思えば夏井先生は興味を誘うのが本当にお上手ですね。
私は14年に「炭水化物が人類を滅ぼす」の題を新聞広告で見つけ「なんて暴論だ!」と思い検索し夏井先生のサイトに辿り着いたのが糖質制限のきっかけでした。

これがもし健康本にありがちなタイトルであったら、私は気にも留めなかったと思います。
夏井先生のテクニックに改めて気づかされました。
Re: No title
mina さん

 コメント頂き有難うございます。

 「炭水化物が人類を滅ぼす」などの本のタイトルは著者ではなく、出版社の方がつけるのだそうです。
 そういう意味では夏井先生と出版社の方の合わせ技一本!といった所でしょうね。

> 主体性が重要
> 選択をする勇気ももらったような気もしてきます


 そうです。この事実を知っているか否かで選択のしやすさが随分変わってくると思います。
 無知は罪ではなく、無知が害を生む世の中となってしまっているのかもしれません。