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糖質とセロトニンと衝動性

category - 素朴な疑問
2014/ 01/ 29
                 
本日の話題は以下の神経内科専門誌から「衝動性」についてです.

Clinical Neuroscience(クリニカルニューロサイエンス) 2014年1月号
『Decision Making―意思決定・行動選択の神経科学』

以前,衝動制御障害(DDS)という病態とともに,ドーパミンと衝動性の関係について説明しました.

しかし衝動性に関わる神経伝達物質は実はドーパミンだけではありません.

実はセロトニンも衝動性と関係していることが報告されています.

1982年にBrownらが脳内のセロトニン濃度低いと衝動性が増すということを示しました(Brown GL, et al. Aggression, suicide, and serotonin: relationship to CSF amine metabolites. Am J Psychiatry. 1982; 139: 741-6.)

今回はこのセロトニンと衝動性について私なりに考えてみたいと思います.
            

セロトニンが低い状態と言えば,まず「うつ病」が思い浮かぶと思います.

うつ病と言うと意欲や活動性が低下し反応が鈍くなる病気なので,「衝動性」という状態とはほど遠いように思えます.

しかし昔からうつ病でも衝動性が亢進することは知られていて,「激越うつ病(agitated depression)」と呼ばれていました.

うつ病における衝動性は自殺や自傷といった自己に向けられると考えられがちですが,うつ病でも他者への攻撃性や暴力行為につながることが近年の疫学研究でも明らかになっています.

最近ではうつ病における衝動性は躁病とうつ病の混合状態(双極性障害)だとする考えがありますが,うつ病の亜型と考えるのか双極性障害の一部と考えるのかは議論の余地があります.

ただ冒頭に書きましたように,生物学的に脳内のセロトニン低下と衝動性が関係しているというのであれば,SSRIのようなセロトニンを高める抗うつ薬を使えば改善しそうな感じがしますが,実際はそう単純には行っていません.

それどころか,SSRIをはじめ抗うつ薬を使うことで衝動性が増し,若年者での自殺率が増加する皮肉な結果をもたらしました.

以後,衝動性の亢進はSSRI等の新規抗うつ薬の見逃すことができない副作用として注目を浴びることとなったのです.

ということは「セロトニンは低くても高くても衝動性を起こしうる?」ということになります.一体これはどういうことでしょうか.

ここから先は私個人の仮説ですが,

私はやはり基本的にはドーパミンと同様,セロトニンが高まった時に衝動性が現れるのではないかと考えます.

では冒頭に紹介したBrownらの結果はどういうことなのか.

ここで糖質がドーパミン,セロトニンを分泌させるという事実に注目します.

大うつ病と呼ばれる重度のうつ状態においては基本的には脳内のセロトニンレベルは持続的に低下していると考えてよいと思いますが,

そんな人の中でも糖質を摂取することでまだドーパミン,セロトニンが一時的に分泌する能力が残っている人がいるのだと思います.

そうした人にとってはセロトニンが非常に低い状態から糖質を摂取することによって一時的にセロトニンが高い状態に強制的に持って行かれることになります.

その時に衝動性が生じ,「激越型うつ病」と呼ばれる状態になるのではないかと思うのです.

従って,衝動性が亢進したうつ病の患者の脳内を調べても,検査に応じるくらいおとなしくなっている時にはセロトニンが高くなっていない時を調べていることになるので真実(セロトニンが高い状態)を知ることができません.

同様にSSRIなどの抗うつ薬で衝動性が増すというのも,セロトニンが高まるわけなので当然そうなるわけです.

そして実際には脳内でのセロトニンの微妙なゆらぎ変化があると思われます.この値が低いとうつ状態,高いと衝動的になるので,普段はこの値が真ん中付近で恒常性を保つように身体が調節していると思います.

しかしそのゆらぎを知る術が現代医学にはありません.

この仮説が正しいとしたら,セロトニンの変化を踏まえずして抗うつ薬を投与する行為は非常に危険な行為です.

常にセロトニン値が低い値となっているような重度のうつ病ならまだしも,軽度~中等度のうつ病の人は常にセロトニンが低いとは限りませんから,

抗うつ薬を用いたらSSRIの効果によってセロトニンのゆらぎが高い位置にあるタイミングの時には常に衝動性を伴うリスクがあるということになります.

この点,糖質制限を続けることでセロトニンの活性自体を高めるようにすればそのようなリスクは少なくなります.

というのも糖質制限をする事によって精神面が安定する人はいれど,衝動性が高まるという人はいないことから,糖質制限ではおそらく自然なリズム以上にはゆらぎが変化しないのだと思います.

要するに糖質摂取により,強制的にセロトニン値が上昇させられることが問題なのだと思います.

私は自分の経験から考えても,うつ病が疑われる人にはできるだけ薬を使わないようにしたいです.


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

薬に頼る怖さ
たがしゅう先生
今回はセロトニンに関してですね。病院に行くと簡単な問診のみでSSRIのような薬を処方されることがあります。私は、薬でセロトニンの分泌を調整することに違和感というか、怖さを感じてしまいます。また、依存度が増したり、より、強い薬が必要になるということも聞いたりします。たがしゅう先生のように、薬を第一選択ではなく、糖質制限やケトン食など薬に頼らない方法が私的にはしっくりくる気がします。
腸とセロトニンの関係
再び失礼致します。
私は糖質の問題と並んで腸内環境の問題が健康に大きな影響を及ぼしていると考えています。腸は第二の脳(セカンドブレイン)と言われたりしますし、また、このサイトに書かれているように、腸でセロトニンの95%が作られているという情報も良く目にします。先生はどのようにお考えになりますか?http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=261753
躁鬱
おはようございます☻🙋
遥か昔、精神病院に実習に行き治療として、電気ショックしてたのを見ました😱映画のカッコーの巣の上で、みたいでした!まだ学生だった私に患者の1人が、
あんた、私の事キチガイと思ってるでしょ

と言われたのを思い出す…
今の病院の環境は違うと思うけど、忘れられない経験でした。
No title
>生物学的に脳内のセロトニン低下と衝動性が関係しているというのであれば,SSRIのようなセロトニンを高める抗うつ薬を使えば改善しそうな感じがしますが,実際はそう単純には行っていません.
それどころか,SSRIをはじめ抗うつ薬を使うこと で衝動性が増し,若年者での自殺率が増加する皮肉な結果をもたらしました.
以後,衝動性の亢進はSSRI等の新規抗うつ薬の見逃すことができない副作用として注目を浴びることとなったのです.

● パキシルなどの薬害ですね。SSRIは、いまでもかなり処方されていま す。

ところで、今、私が薬の減数・減量をすすめている後輩がいます。
 糖尿病もあり、HbA1c 9.5です

● 糖尿病系

 インスリン ノポラピッド 朝12単位 夕16
                昼はなし
 リオベル配合錠HD 朝1錠

● 心療内科

 ★就寝前 各1錠
    マイスリー10mg 
    ソメリン錠 10mg 
    フルニトラゼパム錠 2mg 「アメル」
    レボトミン錠 50mg
    ラボナ錠 50mg
    
    それに加えて、就寝前
    ブロチゾラム錠 0.25g「タイヨー」

 ★ 1日 朝・夜  各1錠
    セルシン錠 5mg
メイラックス錠 1mg
アナフラニール錠 25mg (1か2錠)
    
 ★ いらいら時
    リスペリドンナイ内用薬 1mg/mL

 ★ そして
    ビオフェルミン配合散 毎食後3回
    バッフォー錠 20mg が夕食後です。

余りに多い投薬で、逆に体を壊してしまいそうです。話す言葉も、ろれつが回っていません。
 彼は、統合失調症でも、重度のうつ病でもありません。私と、もう25年の付き合いです。
 私の友人と共に、彼に薬を減らすよう勧めています。糖質制限も・・・

患者を診ずにコメント出来ないと思いますが、一般論として、アドバイスをいただければ、幸いです。
  
 
        
         
No title
たがしゅうさん

SSRIの危険性はわりとメジャーですね、まあそれだけ薬の切れ味が良いので使いたくなるんでしょう。でもこれだって最近話題の抗癌剤や各種ウィルスのワクチン同様副作用を告知されたら飲みたくなる人はほとんどいなくなるんじゃないでしょうか。
かつてのロボトミー手術とやってることはほぼ同じ、丁半博打も医療なんでしょうかね、サイコロを振る神も存在するといいますがロシアンルーレットはBB弾でやりたいですね。
Re: 薬に頼る怖さ
carpediem さん

 コメント頂き有難うございます.

 私は不幸にして自身でうつを経験しましたが,そのおかげでSSRIの効果を身を持って知ることができました.

 その上で糖質制限の方が抗うつ効果が高いということを身を持って経験しています.

 その事は自分が患者の立場になったことがない医師には信じてもらえないことかもしれませんが,私にとってはそれが真実です.これからも糖質制限の選択肢を患者さんに提示し続けたいと思います.
Re: 腸とセロトニンの関係
carpediem さん

 御質問頂き有難うございます.

 御指摘のように,腸が脳に及ぼす影響は大きいです.細菌の研究で腸内細菌が精神に影響を与えることも明らかにされてきています.「脳腸相関」という言葉もございます.

 ますます,興味深いです.私も引き続き勉強していきたいと思います.
Re: 躁鬱
すず。さん

 コメント頂き有難うございます.

 貴重な経験だと思います.その姿を見て何を感じるかだと思います.

 私も似たような光景を学生時代に見てきました.当時はそういう事は仕方のないことだと思っていましたが,

 糖質制限を知った今は,糖質制限を通じてできるだけそうした人を減らしたいと思っています.
Re: No title
わんわん さん

 御質問頂き有難うございます.

 一般的に見れば薬過剰の状態に思います,特に脳に作用する向精神薬に関して言えば相当な依存状態にあることが示唆されます.呂律困難も薬の副作用の可能性があります.

 向精神薬に関しては,いずれ私の考えを記事にしたいと思います.
Re: No title
SLEEP さん

 コメント頂き有難うございます.

> 抗癌剤や各種ウィルスのワクチン同様副作用を告知されたら飲みたくなる人はほとんどいなくなるんじゃないでしょうか。

 その通りですね.

 現在のSSRIの処方の多さを見ていますと,SSRIの危険性やデメリットが処方時に本当に正しく説明されているとは到底思えません.

> 丁半博打も医療なんでしょうかね

 丁か半かの五分五分勝負ならまだいいですが,8~9割負け戦だと私は思います. 
セロトニンが自然にバランスよくでるように
こんにちは。

うなずくことです。
うつっぽい→ハイハイお薬出しましょう。とはしないように、精神科の先生にはお願いしたいです。
まず食事内容のレシピが処方箋で書かれ保険点数が取れるようになる。薬局ならぬ食事局ができて、処方箋を持っていくとそこで食事ができるかお弁当を作ってもらえる なんてことになったらいいです。
うつ病で入院したとして、出される病院食がご飯3食だったら最悪です。
食べ物には何の注意もなく、内服さえすれば病気がよくなる訳はないと思います。
Re: セロトニンが自然にバランスよくでるように
エリス さん

 コメント頂き有難うございます.

> まず食事内容のレシピが処方箋で書かれ保険点数が取れるようになる。薬局ならぬ食事局ができて、処方箋を持っていくとそこで食事ができるかお弁当を作ってもらえる なんてことになったらいいです。

 面白い発想です.強いて言えば漢方の調剤に近い考え方でしょうか.

 薬剤師と栄養士がタッグを組んでオーダーメイドの処方箋を作る,なんてのも将来の医療の形として面白いかもしれませんね.
SSRIについて
「精神科は今日もやりたい放題」(内海聡)の66頁に、おもな向精神薬の副作用発現率の記載があります。SSRIのジェイゾロフトと、統合失調症治療薬のエビリファイが最も少ない部類に書かれています。私は同感です。両剤は、高齢者に使っても副作用は少ないです。私のexperience からはっきり言えます。初めに evidence ありではなく、experience が積もり積もって evidence へとつながるのです

 ただ、この本を頭ごなしに信用すべきではありません。149頁にこのような文章があります

『ごく簡単にいえば脳は糖質しかエネルギーとして利用できないので、容易に糖質依存となる可能性を秘めており、低血糖になると意思とは無関係に食べ物がほしくなる』
Re: SSRIについて
精神科医師A 先生

 貴重なexperienceを御教示頂き誠に有難うございます.

 ジェイゾロフトは認知症コウノメソッドの中でも必須薬剤として位置付けられていますね.

> 『ごく簡単にいえば脳は糖質しかエネルギーとして利用できないので、容易に糖質依存となる可能性を秘めており、低血糖になると意思とは無関係に食べ物がほしくなる』

 確かに,この点に関しては同意しかねますね.