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高プロラクチン血症にもストレスの影

category - 素朴な疑問
2019/ 10/ 13
                 
皆さんはプロラクチンというホルモンを聞いたことがありますでしょうか。

一般的にプロラクチンは乳汁を分泌させるためのホルモンと位置づけられているのですが、

このプロラクチン、実はストレスホルモンの一種です。すなわち、ストレスがかかると分泌が促進されるホルモンの一つになります。

一方でこのプロラクチンというホルモン、他の様々な物質とも密接な関わりがあります。

例えば、プロラクチンは下垂体という脳の部位から血液中に放出されるのですが、同じく下垂体から産生される成長ホルモンと共通の先祖遺伝子から進化されるという考えられる分子構造があります。

そのためかプロラクチンには成長ホルモンに酷似した成長促進作用や代謝に対する作用が弱いながらもあるとされています。
            

あるいは報酬系を刺激し、中毒を形成する元ともなることで知られるドーパミンという神経伝達物質がありますが、

このドーパミンにはプロラクチン抑制効果があるとされています。


さて、高プロラクチン血症と呼ばれる病態があります。

その名の通り、なぜかプロラクチンの量が多くなり、女性では無月経や不妊をきたす原因にもなる状態のことです。

薬や腫瘍が原因でプロラクチンが増え過ぎることもあるのですが、なぜプロラクチンが増えたのかの原因が不明の場合を、

医学的には「機能性高プロラクチン血症」と表現され。治療に先ほどのドーパミンを刺激する薬が用いられることがあります。

先日、とある患者さんにパーキンソン病のような症状が出ていることについて相談され、病院で調べてもらうとプロラクチンが高いということが判明したという話を聞きました。

そのプロラクチンを抑えるために先述のドーパミンを刺激する薬を飲むことを勧められたのでどうすればよいかというご相談でした。

ドーパミンを刺激する薬とはすなわちパーキンソン病の治療薬のことです。

パーキンソン病というのは原因は不明ですがドーパミンの分泌が次第にできなくなっていく病気のことを指します。

だからこのパーキンソン病の治療薬を用いることは、ドーパミンを増やし、その事がプロラクチンの抑制をもたらすため、パーキンソンの症状は改善し、高プロラクチン血症も改善するわけだから一件落着、・・・になるでしょうか?


しかしもう一度考えてみましょう。高プロラクチン血症にしても、パーキンソン病にしても、どちらにしても原因不明です。

一方でプロラクチンはストレスによっても分泌されるホルモンです。何らかのストレスがかかり続けて、プロラクチンが分泌され続け、

しばらくはドーパミンによって抑えられていたけど、相変わらずストレスがかかり続けるために、やがてはドーパミンがプロラクチンを抑えきれなくなり、

ドーパミンの相対的分泌不足でパーキンソン症状が出て、プロラクチンを抑える効果も下がったために高プロラクチン血症になったというストーリーはどうでしょうか。

もしそうだとすれば、パーキンソン病の薬を使うことで一件落着となるでしょうか。

もっと他に考えなければならないことに気がつくのではないでしょうか。


私はこの話を聞いた時に恐ろしいなと思ったのは、プロラクチンとか、ドーパミンとかそういう事が意識される事によって、

原因が判明したような錯覚を患者さんにもたらすということと、それを隠れ蓑にして真の原因はのうのうと患者へ負担を与え続けることになるということです。

さらには、プロラクチンがストレスホルモンであるという知識がないとこの構造に非常に気づきにくいということです。

私はストレスマネジメントの重要性を当ブログで何度も強調しているのですが、

おそらく一般的に考えられているよりもストレスの影響ははるかに幅広い影響を心身にもたらしています。

ストレスと言えばコルチゾールだけではないのです。人によってはプロラクチンがメインで反応する人もいるのです。

何がその差を生み出しているのかは正直わかりません。現時点では体質や個人差としか言いようがない話ですが、ともかく人によって様々な影響をもたらしうるのがストレスというやつです。

そこにストレスの関与があるかどうかを見抜く一つよい方法があります。

それは原因不明で身体の機能が過剰に働いている時はストレスの関与の可能性を頭におく、ということです。

今回もプロラクチンがストレスホルモンだという知識がなくとも、高プロラクチン血症が明確な原因なく起きているのだとすれば、

それはプロラクチンを産生するという機能がなぜか過剰に働いているということを意味しています。

そんななぜかわからないけど身体の機能が過剰に働かされているという時はストレスが関与している可能性が高いと考えてよいと思います。

なぜならばストレスというのは身体の機能を高めさせるトリガーであるからです。

そうすることで身体は今目の前にある困難を乗り越えようと身体機能を高めようとしているのです。

しかし本来は暑熱や寒冷、乾燥、湿潤など物理的なストレスに適応するための一時的に発動するシステムであったのですが、

人間のみが思考という高次脳機能を働かせることができる事によって、目の前に存在しない概念や価値観といった目に見えないものにストレスを感じ続けることができ、

本来一過性で終わるはずのストレス反応がいつまででも起こり続けるという離れ業を可能としています。

何でもかんでもストレスのせいと言っていいのか、という反論も聞かれるかもしれませんが、

私はそれくらい何でもかんでもストレスがあらゆる病気に関わっていると考えています。

医学の進歩は結構で、様々な病気のメカニズムが見えるのはよいことですが、

木を見て森を見ずにならないよう、真犯人を見失うことのないようにしたいものです。


たがしゅう

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