長く糖質制限を続けているのに症状がよくならない人の共通点
2019/10/09 22:35:01 |
糖質制限 |
コメント:2件
最近立て続けに糖質制限実践中にも関わらず体調が悪いという人の話を詳しく聞ける機会に恵まれました。
糖質制限をしているが足がだるくなる、糖質制限をしているが指が曲げられなくなる、糖質制限をしているが脂肪肝が治らない・・・、
こうした状況に糖質制限をよく知る医師であれば、誤って「糖質制限+カロリー制限」をしている可能性を考えると思いますが、
いずれの人達も私が詳細に聞く限り、とてもカロリー制限を間違って一緒にやっているとは思えない、糖質制限のことをよく勉強している人ばかりです。
そればかりかさらにプロテインや鉄などのサプリメントまで積極的に使用していて、事態を打開しようとしているけど打開しきれないような状況です。
こうした人達の背景には無自覚のストレスが隠れていると私は考えています。 場合によっては糖質制限を続けること自体がストレスになっている可能性さえあると考えられます。
なぜならば、十分な栄養を投与しているにも関わらず一向に体重が増えなかったり、症状が改善しなかったり、
早朝に低血糖症状をきたし、糖新生機能がうまく働いていないことが示唆されたりするからです。
ストレス→消化吸収障害→糖新生の材料が確保しにくい→筋肉の栄養も確保しにくい→やせ型+糖新生機能不十分で低血糖症状
ストレス→糖代謝持続駆動→ケトン体使いにくい→糖新生がうまく働かず絶食時間が長いと低血糖症状
私は糖質制限をやることで体調が悪くなる人は、数日間程度であれば糖質中毒からの一時的な離脱症状の可能性があるので経過をみていいと思いますが、
数ヶ月~数年単位で糖質制限をやっているのに体調悪化が持続する人は、一旦糖質制限を解除した方がよいと思います。
なぜならば糖質制限そのものがストレスになっているか、もしくはまだ解決できていないストレスが慢性持続的にかかり続けるせいで脂質代謝に適応することができないからです。
こういう場合に再度糖質摂取を勧めて症状の改善が得られるというケースを報告している医師達がいますが、私はその主張には一理あると評価しています。
「糖質制限は長期の安全性が保たれていないからダメ」とか、「糖質制限実践中に心筋梗塞や一過性脳虚血発作を起こしたという人が1例いるから危険」などという糖質制限批判の仕方は取るに足りませんが、
「糖質制限を長く続けていて症状が悪化する場合は、一旦糖質制限を緩めるべきである」という意見には賛同します。
ただその主張をする医師達はそのまま糖質制限が危険と一律に評価する所が私とスタンスが違います。
確かに糖質制限自体がストレスになっている可能性があれば、そのまま糖質制限を緩めた方がよいと思いますが、
もう一つの無自覚なストレスがかかり続けていて糖質制限がうまく行っていない場合は、ストレスの解決を試みた後に再び糖質制限に慣らしていくことの価値があると思っています。
それからこうした長く糖質制限を続けているのにうまくいかない人達の話をさらに詳しく聞くともう一つの共通点が浮かび上がってきました。
それは基本的に皆「頻食」だということです。
1日の食事回数を聞けば、2回か3回だと答える人が多いのでそれだけ聞けば普通だと思いますが、
そうした人にはやせ型の人が多かったり、糖質制限でよくならないので必死にサプリメントを摂っている人が多いからか、
サプリメントや間食の回数も含めて改めて食事の回数を聞いてみれば、1日5-6回になることが決して珍しくないことが明らかになりました。
前述のようにストレスがかかり続けると消化吸収障害が起こります。
その状況はいわば消化管がオーバーヒートしている状態であり、消化管としては是非とも休みたいところです。
ところがその状況を知ってか知らずか、1日に5-6回、手を変え品を変え様々な食品が消化管を通過していく事になるので消化管は休む暇がないということになります。
消化管を使い続ければ、消化管に負担がかかり、さらに消化吸収障害が悪化しますし、
タンパク質を再利用するオートファジーの機能が使えず、ますますタンパク質を外部から摂取しないとやせていく悪循環に陥りますし、
さらには食事が入り続けることでタンパク質を含めたインスリンの持続分泌状態が引き起こされてしまい、脂質代謝を駆動できずケトン体をなかなか利用できない状況に追い込まれてしまうという三重苦になっています。
こうした患者さんには糖質制限を緩めるのと同時に、食事と食事の間隔をなるべく長くすることを勧めるようにしています。
そうすることで人間がもともと胎児期には皆使えていたはずのケトン体を使うための脂質代謝に慣らそうという、いわば脂質代謝リハビリをしていこうという意図があります。
勿論、根本的なストレスが何かということについて同時に対処していくようにすれば、
その人はストレスに伴う症状から開放され、そのために栄養素も消化管から吸収しやすくなり、
脂質代謝が十分に使えてエネルギーを確保できるようになって、オートファジーも活性化して外部からせっせとタンパク質を摂らなくても現状を維持できるようになるのではないかと思います。
そう考えると、糖質制限での症状悪化の犯人は糖質制限ではないということがよくわかるのではないでしょうか。
糖質制限での症状悪化で糖質制限を解除するだけでは、その裏で症状を悪化させるストレスに対処ができないために、一時的にはよくとも、やはりじりじりと症状の悪化は進んでしまうという流れをとってしまうと思います。
糖質制限を長く続けているのにうまくいかない人は是非この食事回数(食事と食事の間が十分にあいているか)と慢性持続性ストレスの問題がないかを考えてもらうとよいのではないかと考える次第です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
- 2023/05 (5)
- 2023/04 (7)
- 2023/03 (7)
- 2023/02 (5)
- 2023/01 (7)
- 2022/12 (5)
- 2022/11 (4)
- 2022/10 (11)
- 2022/09 (6)
- 2022/08 (6)
- 2022/07 (5)
- 2022/06 (6)
- 2022/05 (4)
- 2022/04 (5)
- 2022/03 (5)
- 2022/02 (4)
- 2022/01 (7)
- 2021/12 (14)
- 2021/11 (4)
- 2021/10 (10)
- 2021/09 (10)
- 2021/08 (8)
- 2021/07 (14)
- 2021/06 (11)
- 2021/05 (17)
- 2021/04 (9)
- 2021/03 (8)
- 2021/02 (9)
- 2021/01 (14)
- 2020/12 (9)
- 2020/11 (7)
- 2020/10 (6)
- 2020/09 (9)
- 2020/08 (11)
- 2020/07 (20)
- 2020/06 (22)
- 2020/05 (18)
- 2020/04 (22)
- 2020/03 (10)
- 2020/02 (7)
- 2020/01 (5)
- 2019/12 (9)
- 2019/11 (19)
- 2019/10 (31)
- 2019/09 (6)
- 2019/08 (7)
- 2019/07 (7)
- 2019/06 (13)
- 2019/05 (21)
- 2019/04 (9)
- 2019/03 (13)
- 2019/02 (15)
- 2019/01 (28)
- 2018/12 (9)
- 2018/11 (2)
- 2018/10 (11)
- 2018/09 (30)
- 2018/08 (31)
- 2018/07 (31)
- 2018/06 (31)
- 2018/05 (31)
- 2018/04 (30)
- 2018/03 (31)
- 2018/02 (29)
- 2018/01 (31)
- 2017/12 (31)
- 2017/11 (30)
- 2017/10 (32)
- 2017/09 (31)
- 2017/08 (31)
- 2017/07 (32)
- 2017/06 (31)
- 2017/05 (31)
- 2017/04 (31)
- 2017/03 (31)
- 2017/02 (29)
- 2017/01 (32)
- 2016/12 (31)
- 2016/11 (30)
- 2016/10 (31)
- 2016/09 (15)
- 2016/08 (11)
- 2016/07 (5)
- 2016/06 (10)
- 2016/05 (8)
- 2016/04 (5)
- 2016/03 (5)
- 2016/02 (10)
- 2016/01 (10)
- 2015/12 (7)
- 2015/11 (8)
- 2015/10 (7)
- 2015/09 (6)
- 2015/08 (6)
- 2015/07 (5)
- 2015/06 (5)
- 2015/05 (5)
- 2015/04 (3)
- 2015/03 (10)
- 2015/02 (28)
- 2015/01 (31)
- 2014/12 (31)
- 2014/11 (31)
- 2014/10 (31)
- 2014/09 (29)
- 2014/08 (53)
- 2014/07 (31)
- 2014/06 (30)
- 2014/05 (31)
- 2014/04 (30)
- 2014/03 (31)
- 2014/02 (28)
- 2014/01 (31)
- 2013/12 (32)
- 2013/11 (30)
- 2013/10 (33)
- 2013/09 (39)
カテゴリ
メールフォーム
スポンサードリンク
検索フォーム
ステップメール
リンク
QRコード

コメント
引き算で考える
食欲に合わせて食事量を調整するようにした事は先日コメントしたとおりですが、非常に快適な日が増えています。
よく薬を足し算する医師がいるのですが、ある薬で副作用が有れば中止変更せず、副作用を抑える薬を足し算すると言う事です。こう言う病院には出来るだけ行かないのが私の主義ですが、糖質制限やサプリメントも同じだと思います。まず、原因となる事を止める引き算の理論が良い結果をもたらすと考えています。自分にとって余計なものを摂らないことです。
私の例で言うと食事の量もそうですが、卵を毎日食べるとLDLコレステロールが200位まで上昇しました。食事性のコレステロールは検査値に反映しないのが最近の医学ですが、私には当てはまりませんでした。サプリも試しましたが効果なし。最後はやっぱり引き算です。卵を止めれば正常値に戻り、数ヶ月維持しています。
熱心な人ほど足算する傾向があるように思われますが、引き算で考えることの方が自然で身体に優しいのではないでしょうか。
Re: 引き算で考える
コメント頂き有難うございます。
私もマイナスの医学の重要性を強く感じています。
本当に栄養不足が病気の原因なら、わざわざ糖質制限などしなくても栄養素の消費分を軽く上回るほど大量のビタミンを補充するプラスの医学の発想だけでもよくならなければつじつまが合いませんが、実際にはビタミンなど大量サプリメントの効果を実感するためには糖質制限というマイナスの医学がどうしても必要条件です。この辺りの事実もマイナスの医学の重要性を物語っていると思います。
> 卵を毎日食べるとLDLコレステロールが200位まで上昇しました。食事性のコレステロールは検査値に反映しないのが最近の医学ですが、私には当てはまりませんでした。サプリも試しましたが効果なし。最後はやっぱり引き算です。卵を止めれば正常値に戻り、数ヶ月維持しています。
その点については私は少し意見が異なります。
なんでもかんでもマイナスをしてよいのではなくて、マイナスすべきはあくまでも身体の過剰分です。身体にとって必要な要素までマイナスしてはなりません。その意味で、御指摘のケースでは卵をマイナスにする理由がコレステロールの上昇というわけですが、コレステロールは今までに傷ついた動脈硬化を起こした血管の修復のために末梢組織へ動員されている、すなわちよかれと思ってコレステロールが上昇している可能性があります。その場合、コレステロールが上がっている方がむしろ組織の修復には有利です。
とはいえコレステロールが高い状態が動脈硬化を起こしているという不安が拭えないという人も多いと思います。
その場合、その人にとってコレステロールが高いことがよいことなのか悪いことなのかを教えてくれるのが自分の体調です。コレステロールが高くても卵を食べてみて体調がよくなるのであれば、それは卵は必要な栄養素であってコレステロールが上がることはよいことと判断します。逆に卵を食べてみて体調が悪くなるのであれば、コレステロールが高いことが悪く作用している可能性(例:真の動脈硬化効果の要因とされる小粒子型LDLコレステロールが多い、など)があるので、この状況で卵は取りすぎない方がよいという話になります。
繰り返しになりますが、私にとって重要なのはデータよりも体調です。私はそのように考えています。
コメントの投稿