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漢方医が柔軟とは限らない

category - よくないと思うこと
2019/ 10/ 04
                 
糖質制限批判は時代ともに様々形で展開されてきています。

一方で糖質制限を実践していると並行して持ちやすいのは西洋医学忌避の価値観です。

なぜならば西洋医学ベースで科学的根拠の下に行われているとされている生活習慣病の病態は、

糖質制限をすることで軒並み改善していく現象は稀ならず観察されており、

これすなわち西洋医学の欠点を大きく露呈していることに他ならないからです。

そんな中、西洋医学の限界を示しながら、一方で糖質制限を批判している本がありました。
            



西洋医学の限界 なぜ、あなたの病気は治らないのか (健康プレミアムシリーズ) 単行本(ソフトカバー) – 2019/8/24
岡部哲郎 (著)


著者は元東大大学院医学系研究科漢方生体防御機能講座特任教授、かつ元日本東洋医学会常務理事の岡部哲郎先生です。

長年東京大学で抗がん剤の研究をなさった後、西洋医学の限界に突き当たり、漢方の道へと進み、西洋医学と東洋医学を融合させる治療で難病の治療に当たっている先生とのことです。

西洋医学の限界を感じた医師が漢方に興味を持つという流れは割と良く見られる流れであり、

何を隠そう私も漢方医のはしくれで、特に脳神経内科分野の病気は西洋医学一辺倒ではとても歯が立たない経験もあって漢方により深く興味を持つようになった経緯があります。

なので漢方に興味を持つ医師は、比較的従来常識に捉われない頭の柔らかい人が多い傾向があるのですが、

そんな漢方医の先生から糖質制限批判の話が出ていたので、少し気になり本を購入して読んでみました。

(以下、p100-104より一部引用)

【糖質制限が緑内障を招く】

(前略)

最近、とくに耳にするのが糖質制限ダイエットです。

お菓子や果物などの甘い物のみならず、米、麺類、パンなどの主食、かぼちゃやいも類などの野菜、ビールや日本酒などの醸造酒といった糖質を多く含むものを、できる限り摂取しない方法。

これで痩せることができたという人の話をよく聞きます。

しかし、医者の立場からは決して推奨できません。単に栄養バランスが悪くなるだけでなく、

糖質は脂肪を燃焼させるために必要な成分ですので、生活習慣病になるリスクを高めます。

また、集中力の欠如や、疲労感の増加にもつながります。

極端な糖質制限は、非常に体に悪いのです。

とくにやってはいけないのは、有酸素運動との組み合わせ。理由は後述しますが、「糖質制限+有酸素運動」は緑内障の発症率を高める大きな要因になります。

糖質制限をしながら有酸素運動に励めば、みるみると体重を落とすことができるでしょう。痩せるということだけを考えれば、完璧なコンビネーションと言えるかもしれません。

ところが、体が受けるダメージは計り知れません。脳の神経細胞はブドウ糖を酸化して神経の活動エネルギーに変換しているのですが、糖質制限中に運動をしたあとの体内の糖質はかなり少なくなっているため、エネルギーを生み出すことができなくなります。

「糖質制限+有酸素運動」は、ガソリンの入っていないクルマのアクセルを踏むようなものなのです。

危惧されるのは、視神経へのブドウ糖の供給が低下すること。それにより視神経の活動が弱まり、やがて視神経が萎縮していきます

そして最終的には、視野欠損などの緑内障の発症に至るのです。

(引用、ここまで)



「糖質制限が緑内障を招く」という今まで聞いたことのない現象を示すタイトルに始まり、

はたしてどのような新発想で糖質制限批判が展開されるのかと興味を持って読んでみれば、

ある意味でかなりびっくりするような論法でした。お偉い先生だとは思いますが、残念ながら勉強不足だと言わざるを得ません。

基本的には「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖」という誤った知識に由来する見解だと思います。

脳は血糖上昇がなく基礎インスリン分泌が保たれていれば、脂質を変換して得られるケトン体をエネルギー源として利用することができますので、

岡部先生が主張する「糖質制限+有酸素運動」でエネルギー切れに陥るというのは医学的に誤りです。

糖質制限で緑内障を招くの根拠が、脳の視神経へのエネルギー供給が弱まることなのだとすれば、当然そんなことも起こり得ません。

百歩譲ってそんな現象(脳組織へのエネルギー不足)が起こるのだとしたら、それは緑内障だけに限った話ではないので、緑内障だけをピックアップして注意喚起するやり方も合理性を欠いています。

ましてやそういう症例を経験をしたという事実さえなくて、想像だけで本に著しているのだとすれば、はっきり言って開いた口がふさがりません。

柔軟だと思える漢方医の先生でも、全てにおいて柔軟とは限らないということを示すよい教訓であるように思います。

「糖質制限+有酸素運動」は、ガソリンの入っていないクルマのアクセルを踏むようなもの”ではなく、

「糖質制限+有酸素運動」はハイブリット車のエンジンをメインに切り替えて、スムーズに運行させている状態というたとえの方が適切ではないでしょうか。

やはり自分の頭で考えることをいつだって怠らないようにする必要があると私は思います。


たがしゅう
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