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思考を深めても先はまだまだ長い

category - イベント参加
2019/ 10/ 01
                 
先週末に日本糖質制限推進協会の東京講演会が行われました。

江部先生の糖質制限食講演に、宗田先生のケトン体と妊婦や子供にまつわる話、

そして宗田先生に招かれ特別ゲストとして東京工科大学教授の佐藤拓巳先生が登壇され、

ポリケトンというインスリン分泌下でもケトン体が産生される物質を開発中だというお話がそれぞれありました。

3者3様の様々な角度からの糖質制限に関わるお話で私も大変勉強になり、いろいろ思う所がある中で、

不詳私もこの偉大な3先生方の中で「病気はなぜできるのか~主体的医療のススメ~」と題して発表をさせて頂きました。
            

冒頭に私は「病気の原因は糖質ではない」ということを申し上げました。

それを聞いて参加された皆さんがどう思われたかはわかりませんが、今回の講演で私は皆さんに物事の本質について考えてもらおうというのが狙いでした。

それは「病気の原因=悪」「糖質=悪」という考え方を一歩引いて俯瞰でみてもらう、ということでもあります。

実はすべての物事に良いも悪いもありません。良いとか悪いとか決めつけているのはいつだって人間だけです。

何かの現象は何かしらの理由が起こっています。糖質を摂取して起こる現象はエネルギー産生、脂肪蓄積、ドーパミン刺激を介しての意欲の賦活…

それらは悪でも何でもなく、本来は人間が、ひいては動物が生きていくために行きやすくするため、困難を克服するために必要なシステムとして駆動されているということを指摘しました。

ところがそのシステムが不自然なまでに何度も何度も刺激されるような事態が起こると、本来は困難を克服するはずのシステムが新たな困難を作るように変貌してしまうわけです。

即ち病気の原因は「自己治癒力の過剰駆動」だと私は思うのです。

糖質は自己治癒力を過剰駆動するものの一つで、もう一つはストレスだと私は考えています。

糖質を適正化し、ストレスを適正化すれば、システムの過剰駆動は起こらず、再び元の困難を克服するための正規のシステムとして働きを取り戻してくれるはずです。

そして糖質とストレスを適正化するのは、自分自身をおいて他にいない、他の誰が変わりにやってくれるわけでもない、

自分自身が主体的に取り組む「主体的医療」が病気を克服するための最大の秘訣である、というのが私の講演パートの要旨でした。


さて私も含めた4名の講師の講演終了後、高齢の質疑応答タイムとなりました。

私はじっくり考えるのは得意ですが、こうした瞬発力が求められる場面の回答はあまり得意ではありません。

案の定、会場からはこんな質問が出て、その質問に私はうまく答えることができませんでした。

その質問というのは、

「最近、とあるYouTuberがGLP-1が分泌されると膵臓β細胞のアポトーシスが減少してβ細胞が増えると言っていて、GLP-1を増やすためにはある程度の糖質や水溶性食物繊維を摂る必要があるというのだが、GLP-1が増えるとβ細胞が増えるなんていう事はあるのか」

というものでした。

これを聞いて私はその場ではグルカゴンノックアウトマウスでかつ人為的にβ細胞をほぼ死滅させたマウスでグルカゴンの過剰分泌がα細胞が過形成をもたらすと共に一部のα細胞をβ細胞へ転化させることがあるという現象のことを、「GLP-1でβ細胞が再生する」という話と勘違いされているのではないかと思うという趣旨の返答をさせて頂いたのですが、

後で調べてみると、GLP-1がアポトーシスを抑制し、β細胞の増殖を助けるという趣旨のデータは確かに報告されているようです。

ただGLP-1を入れれば入れるほど、β細胞が増えて、糖尿病が治るという説に関しては私は否定的に思います。

なぜならば実際の診療現場でGLP-1を増やすと言えば、「GLP-1作動薬」という薬を使うことが最も直接的で、

これは短鎖脂肪酸やアミノ酸などで消化管のL細胞を刺激して分泌させるGLP-1濃度をはるかに超える、人為的で非生理的な高さのGLP-1濃度を実現させることができる薬ですが、

そのGLP-1の臨床的な治療効果には糖尿病を治さんというほどのインパクトは感じられないからです。

つまり人為的な手段を用いて不自然なほど高いGLP-1濃度にしてもそのくらいの効果しかないのであれば、

それより低い食事によるGLP-1濃度の高さで、それを上回る効果があるとは到底思えないからです。


木を見て森を見ずという言葉があります。

確かに試験管レベルでみると、GLP-1にβ細胞の増殖を促したり、アポトーシスを抑制したりする効果は確認されるのでしょう。

しかし、それはGLP-1がインスリンを分泌させることから来るインスリンの細胞増殖作用を間接的に見ているのかもしれません。

あるいはアポトーシスの抑制についても、インスリンの抗アポトーシス作用は知られていますが、それはあくまでもインスリンが適量分泌されている時にだけ発揮される作用なのかもしれません。

全体のシステムの中で、その発見された作用が常時発現されるものなのか、それとも限られた環境においてのみなのか、

それを考えずして狭い世界での現象で持って、世界の全てを説明するような方法論ではしばしば現実の解釈を誤るように私は思います。

私にとってはGLP-1刺激より糖質制限による効果の方がよほど糖尿病を治さんというインパクトが強いように思いますが、

その糖質制限でさえ糖尿病を治そうとしているのではなく、今残っている自分の力を最大限使わせている結果に過ぎないと私は考える次第です。

そんなことを質問の場で答えられれば良かったのですが、時間は待ってくれないので後の祭りです。

全ての質問にきっちりと答えることができるように、まだまだ精進する必要があるように思いました。

いつかまた講師として招かれることがあるように、力を蓄えておきたいと思います。


たがしゅう

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コメント

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東京講演会&懇親会ではありがとうございました
田頭先生、先日の東京講演、とても素晴らしかったです!
糖質制限第一人者の江部先生、宗田先生のお話もおもしろかったです。
また、佐藤先生の話は専門的でしたが、懇親会でお話しさせていただき、講演では聞けない素晴らしいアドバイスを頂戴しました。
田頭先生とは懇親会で二言三言しか話してませんが、とても気さくな方でまた是非お会い出来ればと思います、ありがとうございましたm(_)m

さて講演にもあった主体的医療ですが、自分は納得いきました!
医者任せというのが従来の医療ですが、糖質制限であれなんであれ患者自身のポリシー主体性を持って自分自身の医療を考え、そしてその病気に対しドクター主治医がアドバイスをする!というのが自分が講演を聞いて思ったことです。

糖質制限は患者自身が考え自分自身の主体性を持って行う!
と、自分自身はそうだと思い、今後もなお糖質制限をより躍進していこうと志を新たにしました。
とても参考に、また素晴らしい講演をありがとうございましたm(_)m

田頭先生、江部先生、みなさんご多忙な中ブログもされて大変かと思います。
ついては返事コメント不要です。
お礼かたがたご挨拶まで(感謝)


追記:申し訳ありませんが諸般の事情で実名は控えます(失礼)

Re: 東京講演会&懇親会ではありがとうございました
量産型ギムレット さん

 コメント頂き有難うございます。
 有意義な講演会になったようで何よりでございました。

 私はこの主体性が糖質制限実践に必要不可欠なものと考えております。
 というよりも全ての健康管理のために必要と言った方がいいかもしれません。

 オンライン診療という新しい舞台でこの主体性の重要性を伝え続けていければと思っています。
 今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
仏教的ですね
ご開業おめでとうございます。今回のお話し、仏教的だなと思って拝読させて頂きました。すべてには原因と結果があって、よいも悪いもない。無常、無我、皆苦の三相のごとくですね。主体的に生きるには仏教的な考え方が必要であるように思います。
Re: 仏教的ですね
りんご さん

 コメント頂き有難うございます。

> 主体的に生きるには仏教的な考え方が必要であるように思います。

 そうですね。浄土真宗の親鸞和尚の考え方に影響を受けている部分は少なからずあるように思います。

 2016年4月20日(水)の本ブログ記事
 「苦難を乗り越えるために」
 https://tagashuu.jp/blog-entry-683.html
 も御参照下さい。
病気はタンパク質分子の構造相転移
生物物理学的に考えましょう。病気は生体分子機械といわれるタンパク質分子の構造相転移によって起きる。複数の構造があり、どの構造であるかによって、機能が低下・正常・亢進のいずれにあるか決まる。物理的作用を加えることによって、異常状態から正常状態へ構造を復元させれば機能も正常に戻る。つまり、病気は治る。

これは、分子・原子レベルの階層を支配する量子力学に基づいて説明される現象である。
タンパク質分子の構造を制御することが治療ということになるが、エレキバンや棒磁石を使う磁気療法が現代医学を上回る最強の治療法といえる。

法則や理論を知れば、磁気を加えるだけで、例えば、うつ病やアレルギー性鼻炎、耳鳴り、喘息、過敏性腸症候群、膀胱炎、神経痛などが1日で完治可能です。肝炎、アトピー、帯状疱疹、冷え症なども磁気だけで治療ができる。

医学はパラダイム転換するのです。量子力学によって、化学が物理学の一部になったことによる論理的必然というものでしょう。
Re: 病気はタンパク質分子の構造相転移
zigk69 さん

コメント頂き有難うございます。

> 生物物理学的に考えましょう。病気は生体分子機械といわれるタンパク質分子の構造相転移によって起きる。複数の構造があり、どの構造であるかによって、機能が低下・正常・亢進のいずれにあるか決まる。物理的作用を加えることによって、異常状態から正常状態へ構造を復元させれば機能も正常に戻る。つまり、病気は治る。

確かに理論的にはおっしゃることはわかります。
ですが私は目に見えない思考の部分が実際の代謝変化を引き起こしている可能性を見過ごせないと思っています。そこにはもしかしたら蛋白質の構造変化も関わっているのかもしれませんが、そうだとすれば是正すべきは蛋白質の構造変化のみならず、その変化をもたらしうる見えない思考の問題です。そうしなければ磁気で構造を是正したとしても元の状態に戻るのは時間の問題だと私は考える次第です。